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第十七章-第三幕- メインメンバーの秘宝






主力部隊の救援のために突如として現れた
エリシャ=ストレンジャーの活躍によって、
キョウカ王妃は無事以上に蘇生。
ジルベルトの武器により、戦局は一挙に勇者軍側に傾いた。
「うおおおおおおおおおッ!!」
まずデウス=エクス=マキナに向かって先陣を切ったのが
機動力に長けるフローベールとバスクであった。
これほどの実戦に立て続けに放り込まれているのだ。
もういつまでも新米面はしていられなかった。
二人の攻撃はほぼ同時にクリーンヒットするが、
大したダメージになっていないようであった。
「軽い!!」
ぶん!!
大きくマキナが腕を振るだけで、大きく吹き飛ばされる
フローベールとバスク。
「ずぇいッ!!」
テディやコンラッド、ヴァジェスが立て続けに攻撃を加える。
「遅い!!」
全てを予測し、適切にそれぞれカウンターで返す。
ヴァジェスは何とか持ちこたえるが、他二名は吹き飛んだ。

そして遂にジルベルトが前に出る。
「……!」
無言でストレンジバスターを手に斬りかかるジルベルト。
かわされると見るや否やすぐに砲撃を行う。
どがんどがんどがん!!
容赦無しの三連射だ。
「遠い!!」
本人の言う通り、その巨体故に大きくステップを踏むだけで、
ストレンジバスターの砲撃の効果範囲外近くにまで出てしまう。
「……!」
自らの必殺攻撃がかわされた事に
少なからず驚愕するジルベルト。
だが、多少なりとダメージは受けているようだった。
完全に爆風から逃れるのは、いくらマキナでも無理なのだろう。
「くそっ、いくらなんでも火力が足らん、連携もなってねぇ!」
コンラッドが愚痴をこぼすが、今、近くには
彼の艦、レッド・ワイズマンMk-Ⅱも来ていない。
援護射撃など望むべくも無かった。

「ならば、今こそこれの封印を解く時ね!」
「誰だ!?」
テディを筆頭に、一同が声のした方を振り向くと、
またしてもエリシャ達の世代の勇者軍メンバーが
何名か立っていた。


いずれも稀代の傑物ばかりであった。
「母さん!?」
「母か!?」
ライナスとテディが勿論真っ先に驚いた。
「いいから、これを!」
ロゼッタとカリンは手に持っていた物を投げつける。
ライナスが受け取ったのは一本の鞘であった。
テディが受け取ったのは聖杯である。
「その鞘は、呪鞘カオスリキッド。
 負の感情を溜め込んで刃の切れ味を増す鞘さ。
 生きた液体金属で出来てるから、剣以外にも使えるよ!」
「その杯は、聖杯ライブチャージャー。
 生物の生命力を吸収して溜め込み、いざという時に
 治療用エネルギー貯蔵タンクとして機能するんだよ」
懇切丁寧に説明すると、レノールが困ったような顔をする。
「あのー、それはいいんですけどシルヴィアは?
 あの子にこのミームを渡さないといけないんですけど」
レノールが持っているのは謎の黒い球体だった。
きっと、大事な物なのだろう。
「あ、シルヴィアならいませんよ」
と、あっさりソニアが言ってのけるので、
なんかレノールはがっくり肩を落としてしまった。
「じゃあまたの機会にします……」
先に帰ってしまうレノールであった。
「私等の役割はここまで、しっかりやるんだよ!」
異口同音に言って、二人はそこから姿を消した。

「よし、これならいけるかもしれない!」
テディは早速、聖杯ライブチャージャーの力を一部開放し、
ライナスの疲労を大きく回復させた。
「決めろ、ライナス!!」
「よしきた! 任せてくれ!!」
ライナスはその俊足を生かしてたちまち接近。
一度鞘に収めた彼の剣は、凄まじい切れ味を付加されていた。
「疾風剣!!」
素早い連撃がマキナを襲う。
「ぐわぁッ!!? 何だと!?
 たかが鞘一本でこうも違うか!?」
大きく怯み、マキナは後ずさった。
明らかにストレンジバスター以上の破壊力が、
局所的にとはいえ、与えられていた。
「凄い……!」
レイリアとエイリアさえも素直に驚き、見ていた。
彼女達自身、噂には聞いていたが、常時展開されているに等しい
ルスト家の家宝『ニノンの翼』や、進化の特性を持つ
ストレンジャー家の秘宝『ストレンジャーソード』に匹敵する
オーバーテクノロジーウェポンが
本当に存在していたとは思わなかった。
もちろん見たのは初めてである。

「ぐっ……このままでは不利か! 一旦退却するぞ!
 各員、動ける者は負傷者を抱えて離脱だ!!」
マキナもようやく撤退の意思を示し、
自らが多数の負傷兵を抱えて全力で退避を始めた。
ライナスとテディの戦闘能力は
家宝によって以前の比ではないほどになっていた。
「やったぞ!!」
ライナスが珍しく勝利を全力で喜んだ。
「よくやったぞ、ライナス、テディ!!」
そしてこれまた珍しい事に、ヴァジェスも素直に二人を誉めた。

これで勝利は確定的となったが、まだ全てが終わりではない。
ネイチャー・ファンダメンタルの本拠地へ乗り込み、
組織そのものを壊滅させない限り、レイリアやエイリア、
それに他の遺伝子調整生物全てや関係者にも安息は訪れない。
「反撃の要素は整いましたの。
 ならば行くべきですの、ジルベルト。
 惑星アース国際平和機構の本部であった場所へ……」
『分かってるのー』
エリシャにジルベルトが返事した後、突如声が挟まれた。
「そう、私達は行かなければなりません。
 クルーズ・シティ郊外にある、私自身の寄る辺である、
 惑星アース国際平和機構本部へ……」
「キョウカ王妃! もういいの!?」
イスティーム王とユイナ王女に連れられて、
キョウカ王妃が姿を現した。
「いつまでも寝ていられません……すぐに向かいましょう」
「キョウカ。無理を言ってはいけない。
 主力部隊も相当に消耗している。まずは休息して
 態勢を整え直すべきだろう。いいね?」
「はい……」
イスティーム王が諭すと、素直にキョウカ王妃は聞き入れた。
どうやら予想以上に夫婦仲の良い間柄であるようだった。
一部では不仲説も囁かれているが、それはむしろデマで、
公人としてあるべき態度を二人とも繕っているのかもしれない。

ともあれ、これでキョウカ王妃の防衛戦は一通り終了した。
戦局は、新たな舞台へと向かおうとしている。



<第十八章-第一幕-へと続く>
最終更新:2011年05月22日 21:19