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第3部 序章-第一幕- 結成、魔神軍





年は改まり、C・C3538。
かの魔神王教団との激闘を経て、勇者軍は対イグジスター用の
作戦に専念し、大きく鳴りを潜める形となりつつあった。
イグジスター識別装置のマスターハードから量産された
量産型の配備も順調に進み、一旦惑星アースからは
ほぼ全てのイグジスターが狩り尽される形となった。
勇者軍が水面下での活動や各国の支援を進めていた頃、
ダイギン共和国の、とある花も豊かな草原地帯において、
イノ=ヘレティックと名乗る女性は五名の重要人物、
そしてその後方に多数の人間を直立させ、
堂々としたその勇姿を衆目に晒していた。

「まずは自己紹介を……私はイノ。イノ=ヘレティック大将。
 …………私の主張である、勇者軍に必ずしも頼らず、
 時と場合によってはカウンターとしてすら機能する
 独自の最強クラス私設軍、その名も『魔神軍』の設立に
 同調、協力、そして参加してくれた人達に礼を言う」
イノは静かに口を開き、重要人物五名を見渡し、名を呼ぶ。
「レイビー。旧所属と現行の階級を復唱して」
「旧魔神王教団所属! レイビー=ショルダーズ中将です」
レイビー=ショルダーズと名乗った青年は、
理知的に小気味良く答えた。
「同じく、ラケル?」
「旧魔神王教団所属、ラケル=エフォート少佐だZE!」
やたらと陽気に答えてくるアフロヘアのラケル=エフォート。
口調も独特でラップでもそのうち歌いだしそうに見える。
「同じく、ノーラ?」
「ひゃうん!?」
前に一歩踏み出そうとしたノーラと呼ばれた女性がいきなりコケる。
「いたた……失礼しました。国際医療団体『グリーン・クロス』
 医療部隊所属でした、ノーラ=アドミラブル准佐です!」
ノーラ=アドミラブルは子供っぽく笑う。
グリーン・クロスは本人も言った通り国際医療団体だが、
勇者軍とは反目する事も多く、
結果論として魔神軍のスポンサーとなった。
ノーラはそこをほぼ無断で退職しており、あまり良く思われていない。
それらの事情とその無垢さを垣間見て、イノは少しだけ苦笑する。
「同じく、ゲイル?」
「うむ」
何故か無駄に偉そうに腕組みして一人のサムライが前に出た。
「ほぼフリーに近いが……まあ元サムライギルド専任所属、
 ゲイル=ウィッシュ大佐とは拙者の事でござる」
野心深さを匂わせる、挑戦的な眼差しで周囲を威嚇する。
「最後に、レオナ?」
「元勇者軍サブメンバー、作戦部所属だった
 レオナ=タブーフィールダー……軍曹?」
「中佐でしょ」
やんわりと訂正してくるイノに対し、頷くレオナ。
「――っス!」
わざとらしく敬礼して済ませた。

「私と、以下この五名を合わせた六名をメインメンバー、
 残りをサブメンバー及び予備役として私達の戦いを始める。
 誰か異論のある者は? 挙手しなさい」
すると、予備役の列に並んだ一人が挙手した。
「何か?」
「えーと、総帥閣下?」
「……大将よ」
「すんません、そのレオナさんでしたっけ?
 勇者軍のカウンターになりうる軍を発足しようってのに、
 勇者軍の出身者がメインに据わるのはいいんですか?」
「誰かは言い出すと思ったけれどね――」
嘆息してイノはレオナを庇うように前に出る。
「言っておくけど、この軍が無事発足に至ったのは
 誰のおかげだと思っているの? 大半は彼女のおかげよ。
 勇者軍を脱走までして、その組織体系や構造のデータを
 流用したおかげで、こうも短時間に組織構成が出来た。
 サブリーダーに据えても良かったぐらいかしらね」
「へへ……」
べた誉めされて柄にもなく照れるレオナ。
「結果として勇者軍を模倣する形で勇者軍のカウンターとなる。
 それが初期における目標となるかしら……異論は?」
「いえ、もう無いです!」
納得したのか、予備役の兵卒は引っ込んだ。
「レオナは私の志を一番最初に支えた盟友よ。
 彼女を悪し様に扱うようなら、私の手で粛清する。
 レイビーも、ラケルも、ノーラもゲイルも、いい?」
「何を今更……私より先にいた者に対して異論などありますまい」
「俺っちはそういう事にはこだわらねぇYO!」
「こちらこそよろしくお願いしますね!」
「実力は手合わせの時に見せてもらっている。問題は無い」
四人の同意も改めて取り付け、イノは砲斧アックスボンバーを掲げる。
「各自、それぞれに武器を天に掲げて」
その指示に従い、魔神軍メインメンバーが、サブメンバーが、
そして予備役隊員が武器を、武器を使わない者は拳を掲げる。

「古来、勇者軍は魔神王と戦ったアルファ=ストレンジャーの系譜を
 直系とし、現在までその連綿たる命脈を保ってきた。
 それも、人類史上最強の私設軍として……
 けれど、その本質はカオス。自由と混沌の象徴であると断じる。
 それに対する私たちはアルファに対する魔神王に等しく、
 魔神軍として発足し、その本質をロウ。
 秩序と束縛を是として活動を開始するものとする……
 まずは、ただ誇りなさい。魔神軍である事、ただそれだけを!」
「おおーッ!!」
鬨の声をあげ、大きく武器を突き上げるメンバー達。
「そして、私達の最初の任務は、イグジスターの完全討伐よ。
 その障害になる場合においては、たとえ勇者軍と言えども
 撃退やむなしと判断し、各々の判断にて行動しなさい。
 また、必要に応じて救援の必要性は随時認める。
 各自、任意に作戦行動及びその他の活動を開始……解散!!」
「了解!!」
バタバタと慌しく走り去って行くサブメンバー及び予備役隊員達。
残るはレオナを含む、メインメンバーのみとなった。

「さあ、これから忙しくなる……早速で悪いけれど
 レオナ、あなたにはサブメンバーの総指揮を任せる」
「はいッス!」
「元勇者軍でも大丈夫だと意識払拭してあげて。頼りにしてるから」
「任せとけッスー!」
レオナもすぐに去って行った。
「レイビー。あなたには各自治体との折衝をお願いしたい。
 出来れば勇者軍謹製の量産型識別装置も回してもらって」
「まあ、私にしか出来んでしょうな。では、失礼」
「ラケル、ゲイル……あなた達は我が魔神軍が誇る一騎当千の戦力。
 遊軍として好きに動いてもらって構わない。
 任意にイグジスターを潰して。
 ただし、味方からの救援要請があった場合、
 及び勇者軍と対立状態に陥った場合は、
 それらを優先してもらえると助かる」
「分かったZE! HEY!!」
「了解したでござる!」
ラケルとゲイルはそれぞれにバラバラに動き出した。
「最後にノーラ、あなたはイグジスターに
 どこかの市町村が襲撃されたら
 最優先で急行して治療及び避難の援護を一任する。
 人手を使ってもいいから」
「はい、任せて下さい。
 元グリーン・クロスの面目躍如ですから!」
何回かすっ転びながらも、ノーラはたくましく走り去っていった。

「そして私は全軍の総指揮……責任重大ね」
ふぅー、と嘆息し、砲斧アックスボンバーを
砲撃モードにして真上に構える。
「任務、開始!」
ズドン!
イノの砲撃。それは号砲となり、
発足完了と作戦開始の合図を思わせた。
「血の雨が降りしきる大地でも、薬莢の転がる爛れた大地でも、
 私はひたすらそれを踏みしめ、とにかく皆で生き延びてみせる。
 それがソル達に対する最高の弔いになると信じるから――」
落ちてきた砲弾が大地を焦がすが、それを振り返る事無く、
イノ=ヘレティックは歴史に大きな一歩を刻むのだった。



最終更新:2012年07月02日 20:04