第二十三章-第二幕- カオス、そしてロウ
勇者軍及び
ザン共和王国民政部が
人類の避難計画を立てていた時に、
突如、
イグジスター以外からの襲撃が
アーム城を襲う。
突発的かつとんでもない事態に周囲は騒然となり、
対処するため、勇者軍は真っ先に動く。
「おらぁぁッ! そこどけぇッ!」
おたおたしている味方兵士を押しのけると、
ロバートは一気に敵兵の集団に突っ込んで行く。
「でぇぇぇぇぇぃ!」
ロバートのタングステンソードをただの敵兵士が見事に受け止めた。
「……! ほう!? やってくれやがる!」
ロバートは一撃でも雑兵が耐えた事に驚愕しつつ、
あくまで中身は冷静に攻撃を続ける。
「剣撃だけだと思うなら、甘いぜ!」
銃や拳による攻撃も加えつつ、丁寧に一人一人鎮圧していく。
「ロブ! こいつら只者じゃない! 統率の取り方といい、
一人一人の個人的能力といい、プロの仕業だぜ!」
ローザも複数の敵を殴り倒しながら叫ぶ。
「ンなモン最初の一撃で分かるだろうが! こいつは是非とも
背後関係を調べてやらねぇとな!
手前ェ等、一人たりとも殺すなよ!
一人でも多くとっ捕まえて、洗いざらい吐かせるんだ!」
「はい!」
エナとウォルフ王子、そして勇者軍予備役部隊が応じる。
「勇者軍よ、我々の存在を侮るなよ!
イグジスターと対峙し、日々努力している者が
自分達だけだなどと、ゆめ思わぬ事だ!」
「だったら正体を明かして、速やかに俺達に協力しやがれ!
イグジスターを潰す立場は共通なんだろうが!」
「所詮我々は予備役程度よ! それを決めるのは我々でなく、
我々を率いる、
メインメンバーたる六名の方達だ!」
「メインメンバー……六人?」
あまりにも身近かつ、聞き慣れ過ぎた単語の羅列に、
エナは若干混乱し、
ソーサーのコントロールも疎かになる。
「勇者軍を模倣した、という事か……?
えげつない真似をする! だが、確かに予備役級で
その実力なら、上はとんでもないでしょうね」
ウォルフ王子は冷静に観察しつつも、敵を薙ぎ払う。
「せぇやぁッ!」
敵兵八人ほどがエナ一人に向かって豪快に斬りかかってくる。
誰が一番貧弱かをわきまえた、適切かつ合理的な選択だ。
「ひゃっ!?」
だが、エナもまた今は豪の者である。
ソーサー十枚を同時に駆使し、防御用の布陣を張る。
大きく切り傷を負い、兵士達は悲鳴をあげながら転倒した。
「うぐぐ……傷が……!」
「ご、ごめんなさい、痛かったですか!?」
「しゃ……謝罪など無用、ここは戦場ぞ!」
と言いつつ、何とか生き延びようとする矜持在りし敵兵達。
退き際も何も無いイグジスターとは、やはり根本的に違う。
彼等もまた、どこまでも人間以上でもなければ人間以下でもない。
一人でも捕縛しようと動く勇者軍に対して、
敵軍はお互いを庇い合いながら、どこか本気でない様子で、
牽制しながら距離を取る戦法に変えてきた。
人命優先を重視する構えもまた、勇者軍の模倣なのだろうか。
「……これは、ただの模倣というレベルじゃねぇな」
ローザもヴァジェスも、それに感じ入るものがあった。
だとすれば、尚更解せない。一体そこまで優秀な軍が、
このタイミングでわざわざ勇者軍に仕掛けてきたのか。
兎にも角にも、絶対に究明したくなる。
「貴様等の計画は既に露呈している……
限られた人間だけを空中に非難させ、残りの民に
苦しみながら、ひたすらもがいていけとのたまうか! 愚劣な!」
なんと、こちらの計画が露骨に漏れていたのだ。
彼等はそれに憤慨しているのだろう。
秩序を是とする者達の論として、至極まっとうである。
内部、特に民政部やその関係者に
彼等に同調する者もいるのであろう。
だがその非を問うには及ばない。主張がぶつかり合うのなら、
遅かれ早かれ、まずはこうなっていただろうという事は、
一応部外者扱いたるヴァジェスにも、容易に想像がついた。
「一人でも多く生き残れる道を選ぶのが当然だろうが! 分かれよ!」
だが、それでも一人でも多くを生き残らせたい。
それが自由を是とする勇者軍の主張である。
その暗喩として、ローザは叫ぶ。
「さあ、互いの主張が出揃ったところで、
拙者の出番というわけでござろうかな」
大多数が撤退し、少数になった敵軍を分けるように、
一人の
サムライマスターがゆるりと歩み出てくる。
若干胡散臭さがあり『侍』というより
『サムライ』という出で立ちだ。
強いて言えば強引過ぎる感じのマゲとか、
全然着こなせていない袴とか。
何故か腰でなく背中に長刀を装備している辺りもだろうか。
「……なんか、色々間違ってるぞ?」
ひっそりとヴァジェスが指摘してやると、サムライはびっくりした。
「ど、どこか間違っていたでござるか!?」
「いや、色々あるが、とりあえず刀は腰な?」
「そ、そうか! 何故誰も人前に出る前に
指摘してくれなかったのでござるか……!」
慌てて腰に刀を装備し直す。
「せ、拙者は
ゲイル=ウィッシュ。しばらく前に創設された
治安維持部隊『
魔神軍』メインメンバーが一人にござる」
「魔神軍? あの伝説の
魔神王軍のつもりか?」
「否!」
力強く握り拳で否定するゲイル。
「我々はかの軍の如く、勇者軍の
存在そのものを否定する軍ではない!
自由と混沌の象徴たる勇者軍の対となり、
互いに道を誤ったならば、その道を互いに正し、
切磋琢磨し、共闘という立場を取る事もあれば、
敢えて敵対という立場をも取る事がある、
ある種の対称(カウンター)組織でござる!」
「勇者アルファに対する
魔神王のつもりか……!」
ロバートはその理念に唸り、感心してみせる。
ここまで良く考え、組織立てて行動し、
また勇者軍の喉元に食らいついてもみせる実力に
素直に感心したのであった。
「然り! 今、我々の立場は一致せぬ!
我々は、市民を別の方法で避難させる計画を進行中でござる!
そなた達の計画は、考えを改めてもらうでござる!
勇者
ロバート=ストレンジャー! まずは敗北の味を知れ!」
ゲイルは真っ先にロバートに突っ込んで来た。
「上等だ! その反逆、俺が自ら買ってやる! 来いや!!」
二人の剣と刀が真っ向からぶつかり合い、
その他の兵士は他のメンバーに襲い掛かる。
勇者軍と魔神軍、二つの道がまずは交差する。
衝撃と怒号、そして鉄と血の匂いを纏って……
最終更新:2012年07月02日 20:29