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第二十八章-第二幕- 運命共同体





魔神軍と正式に共闘を決意した魔族軍、及び勇者軍は
全ての戦力を可能な限り、早期にかき集めるべく、
出来うる限り全ての生命に、水上、水中ないし離島、空中への避難、
ないし疎開を要請するべく、今、魔王城の通信施設がフル稼働する。
すべてはレイビー=ショルダーズの打ち立てた策の元に、
敵にとってはやりづらくなる天険の篭城戦を挑むために。
「こちら、竜宮城……どうしました? あなた」
「イシターか! 俺達は魔族軍、勇者軍、魔神軍全てと
 同盟を組み、他のナインサークルロードにも連絡を取る!
 ただちに全竜族はドラグーン化を解除し、
 通常の形態に戻るよう通達!
 可能な限り高所、あるいは水中、水上への
 避難を決行しろと伝えろ!
 イグジスターに対しての対策だ……急がせろ!!」
「は、はい……! 急な話ですが、やってみます」
「頼むぞ……俺がここにいる以上、お前が竜族の指揮官だ!
 お前だけで不足でも思うなら、
 ナーガでもランドグリーズでも何でも呼べ!
 手段のどうこうや威厳の云々を論じている場合じゃねぇぞ!」
「わ、分かりました!」
慌ててドタバタ動き出す竜王妃イシュタリア=リヴァイアサン。
たった今まで彼女自身もドラグーン状態だったはずだが、
慌てて通常の竜状態に戻ったのか、
奥の方で結構な大きい音が聞こえたりするが、
それこそが竜族の取り得る最善の対処なので、
むしろヴァジェスは頷いた。

魔王サタンは魔界に繋がるゲートを開き、音波によって呼びかけた。
「魔界に生きる愛しき全ての同胞達に、魔王サタンの名をもって告ぐ!
 全ての同胞よ、可及的速やかに、全員物質界に来訪するのだ!
 我等が貴重な食料供給源となってくれる友、人類の危機なのだ!
 人類のもたらす負の感情を完全に失っては魔族の滅亡も必定!
 既に多くの人間が食らい尽くされ、食糧供給のバランスも危うい!
 だが安心せよ、人類の敵、イグジスターと呼ばれる物質は
 我等が食料になり得る! その牙をもって敵を貪り喰らえ!
 そうすれば、人類も助かり、我々も助かり、敵も減る!
 この一石三鳥の策に敢えて不満を持たぬなら、我が命に従え!
 無限獄の晩餐の開幕はもう迫っている! 諸君等の来訪を待つ!
 繰り返す! 我が名は魔王サタン……同胞よ来たれ、物質界へ!」
そこからほどなく、来るわ来るわ、イグジスターに負けじとする勢いで
凄まじい数のありとあらゆる魔族が、地獄の晩餐を待ち遠しそうに
訪れ始めた。既に離島は結構窮屈になっていたりするので、
大型魔族に小型魔族が乗っかる形で何とか待機していたりする。

「神王ゼウス……聞こえておりますか?
 私は勇者軍メインメンバー、
 ウォルフ=テオ=ザン=アームⅣ世王子。
 魔王から既に聞き及びでしょうが、
 人類は既に未曾有の危機になっております。
 神族も、この連合に参加し、
 イグジスターの殲滅に加わっていただきたい。
 それがナインサークルロードの総意となれば、
 結束もより固まります」
「ふむ、話は聞いておる。我々も神界に点在する特殊装置を使い、
 一時的に堕天して、擬似魔族となり、
 イグジスター捕食に参加しよう。
 捕食して毒気を抜くのには数年かかるかもしれんが、
 神族の尺度で言えば、その数年は大したことではない。
 仮に勝利し、人類が復興する期間の長さに比べれば、な。
 だがこれには少々時間が要る。若干遅れるぞ」
「構いません、頼みます!」
これで神族の協力も取りつけた。

「次は妖精族だ、妖精族に連絡を取るぞ!」
エリックが故郷にいる
妖精王ヴァルキリーに連絡を取ろうとするが、
「ふむ、わざわざご苦労な事だ。
 ここにいる私に連絡を取ろう、とはな」
エリックが聞き慣れた声に振り向くと、
妖精王ピオン=ワルキューレ=ヴァルキリーが
堂々と弓を持って立っていた。
女性のみの人型妖精族、ワルキューレ族の長である。
「って、妖精王!? なんでここに!?」
「ふん、馬鹿め。我々も既に事態に巻き込まれているのだ。
 亜人族と並び、最も自然生命族に近い生態と体躯を持つ故にな。
 連絡など取らずともほれ、この通り
 大方の妖精はここを目指し、動いている。
 妖精族の情報網を侮らぬ事だな、エリック=ルスト」
「事態に巻き込まれているって……
 妻と子供達は!? フォルテは!?」
「言っておくが、彼女の方がより鋭敏だったな。
 この事態に陥る前に既に勇者軍総帥とやらの所に避難したぞ。
 今は総帥の庇護を受けて、
 安全な所を探して移動でもしているだろう」
「そうか……約束を守ったか、フォルテ……
 ならば、俺は……今は戦うのみ!」
「そうだ。精々実力を見せてみるのだな、エリック」
ふてぶてしい笑いを見せるピオン王。

「亜人族の里に繋げ! 緊急だ!」
ロバートはその人脈をもって、亜人王に連絡する。
「おいこら亜人王、聞こえてるか!
 勇者軍筆頭、ストレンジャー家の名を知らねぇたぁ言わせねぇぞ。
 いいか、一回しか言ってる暇はねぇからよく聞きやがれよ?
 イグジスターとかってバケモンがそっちにも迫ってるはずだろ!?
 すぐに海上、海中、空中、離島どこでもいい、全員退避させろ!
 戦力になりそうな奴には魔王城にも来てもらう!
 そうでなければナインサークルの生態系もろともに消し潰される。
 そうなりたくなかったら、すぐに来い、先祖のよしみだろ!」
「随分と不遜な物言いだが、まあいい。緊急事態は確かだ。
 よし、これより亜人族も勇者軍に協力しよう。先祖のよしみでな」
「話が早くて助かるぜ、流石は名君、亜人王タイタン」
「ふ、現金なことだ。まあいい、切るぞ」
亜人王はドライに通信を切り、クールに行動を始めた。

「残るは、精霊王……キングエレメンタラー……
 それと怪物王ドラキュラ……連絡出来るのかしら」
イノはぼつり、と呟く。
「私の名を呼んだのは、誰?」
すると、凄まじいオーラを発する人型の精霊が現れた。
見た目は女性にも見えるが、そんなものはただの見た目だけだ。
あらゆる属性が混在し、なおかつ凄まじい力を見せる。
「精霊王キングエレメンタラー。あなたの力もまた必要……
 ナインサークルロードの秩序を根底から守るためだけに」
「あなたは静か……ただ有るがままに存在する水の子のよう。
 けれど、そのうちに熱を秘めたとき、また違う力を見せる。
 面白い子、気に入った。二千年前の勇者軍のしがらみとは
 一切関係無く、私はあなた自身に興味が出てきた。
 魔神軍との連合という形で、協力させてもらってもいい?」
「体裁は何でもいい。今は全ての生命が結束する時だもの」
あくまでクールにイノはそれを受け入れた。

そして最後に、まったく空気を読まず自分から来た者もいた。
「……結束は固まりつつある。
 で、真打ちは最後に登場するわけだな?」
側近を連れて現れたのは、
怪物王ドラキュラ=ヘイズル=ツェペシュだ。
史書に名高い双雄、トリストラムとミルトンも一応随行している。
「怪物王ドラキュラ!?」
何の脈絡も無く、突如大軍勢と共に現れた
ナインサークルロードに、そりゃあもう
びっくりしまくったマリーや、その場にいたゲイルだった。
「まあ、概ねの事情は察しているし、快く協力しよう」
随分と話の早いことである。

「よし、これで全ての種族の協力を繋いだ……
 これより我等は生命の存在する意義に対する敵、
 イグジスターに対抗し、全種族同盟『生命連合』を
 立ち上げ、篭城戦を展開するぞ!」
魔王サタンの名乗りにより、その場に集まった者も、
入りきらなかった者も怒号を挙げ、その事実を歓迎した。
そうでなければ生き抜くことさえ難しい戦場が、
今後の彼等を待っているのだから。

だが、特に奮闘する勇者軍の活躍を
じっくり見つめる影が、その中に一つ。
隠密行動するには目立ちすぎる外見の男が、勇者軍の資質を
今一度見定めるべく、機会を伺っていた……



<第二十八章-第三幕- へ続く>
最終更新:2013年08月29日 23:23