図書館の1階に集った8人は、1人の姫の下に決意を固め、この殺し合いを打破しようとしていた。
このままの流れに乗って、これ以上犠牲を出さずに、殺し合いを止められればいいとさえも誰もが思っていた。
「朝日が昇れば、ここを出てデパートに向かうぞ。」
「デパートまで8人でぞろぞろ歩くと目立って仕方がありません。ここに残る組と、デパートへ向かう組に4人ずつ分かれませんか?」
「うむ。一理あるな。だが統率者がいなくて、この場所は保つのか?」
支給品のパンを頬張りながら提案する柊ナナに対し、ボトルの水を飲むデマオンが意見を唱える。
「なんでアンタが向かう側のリーダーってことになってるのよ……。」
クリスチーヌが大魔王相手とは思えぬほど歯に衣着せぬ物言いで横槍を入れる。
「勿論、目的地で見つけた物が良き道具でも、キサマらでは上手く使えぬ可能性があるからだ。」
協力相手とはいえ、傲岸不遜な態度をとるデマオンに対し、指導者の座に立てるのは力や頭脳以上に、自分だけは何でもできるという不動の自信ではないかと彼女は思う。
「ではこちら側では私が指揮を取りましょう。それで問題ないですか?」
そこにゼルダが意見する。
「うむ。貴様なら問題なかろう。次はどういったメンバーを振り分けるかだな。」
一方で、フロアの隅の方で複雑な表情を浮かべている満月博士に対し、不信感を覚えたミドナが声をかける。
「月頭、オマエさっきからずっと黙っているけど、会話に入らなくていいのか?」
「いやあ、こういう決め事は、若い者たちに任せた方が良いのではないかと思ってな。」
「アンタまだそういう年じゃないだろ……。」
「この際年齢なんて関係ない。これだけ多くのメンバーが集まったんだ。上手く行けば一気に殺し合いを転覆することが出来るのではないか?」
「何かさっきと言ってる事矛盾してないか?」
神妙な顔つきを浮かべていたと思いきや、急に笑顔になって景気の良いことを言いだす満月を不審に思いつつも、ミドナもまた会話の中心に入ろうとする。
『諸君。今いる世界を楽しんでいるか?』
そこで図書館内部にも、この戦いの主催者の声が響いた。
『空気が重くなる』というのは、こういうことなのだ。
この場には満月博士にとっての美夜子の様に家族が呼ばれた者もいたし、逆に重清のように近縁の者が一人も呼ばれていない者もいた。
だが、誰もが共通して、空気が重くなる瞬間というのを味わった。
そして全参加者の4分の1がわずか6時間で脱落するという事実は、この殺し合いが何たるかを示すのには充分だった。
「おのれぇぇ!!あのデク人形共!!図に乗りおって!!」
デマオンが最初に激怒の声を漏らす。
自らをかつて倒した相手、だからこそ協力関係を築ければ頼りになりそうな相手の喪失への嘆き……ではなく、やりたい放題やって悦に浸っているであろう主催者に対しての怒りだったが。
しかし、その響きは図書館に空しく響くだけだった。
それからは8人もそろっていながら、暫くの間誰も言葉を発さず、誰もが他者が先に話すことを待っている状態が続いた。
ある者は不安な顔つきをし、ある者は歯を食いしばり、言葉に出さなくても想いは自ずと伝わってきた。
だからこそ言葉にする形で、それぞれの想いを聞きたがっていた。
「あの……これからどうするど?」
一番我慢が出来なかった重ちーが、会話を切り出そうとする。
「変えるつもりなどはない。犠牲になる者の数に脅えて行動を躊躇すれば、それこそ敵の思うツボだ。
それとデパートへ向かう者のうち1人はキサマだ。」
「え!?」
突然訳が分からずメンバーに抜擢され、重ちーは驚く。
「ハーヴェスト……だったか?貴様の虫のような生き物を出す力はモノ探しの上で極めて有用だ。連れて行かぬワケにはいくまい。」
「ホ、本当かど?オラの能力を評価してくれるなんて、大魔王様は見る目あるど!!
実はオラ、こう見えて前デパートでモノ探しをしたことがあるんだど!!」
豚もおだてりゃ何とやらと言うか、最初は驚いていた重ちーは自分のスタンドを高く評価され、得意気になる。
彼がデパートで行っていたこととは、捨てられた商品券や福引券をデパート中のゴミ箱からネコババしていたことなのだが。
「それならば私も連れて行ってくれないか。」
満月博士という、予想外な人物からの名乗り出たため、今度はデマオンの方が驚いた。
「知識がある者はこの際多ければ多いほど良いが……キサマはどういうつもりだ?」
「まだあなたのことは信用出来ないから、見張りのつもりだ。」
「いいだろう。わしがこの殺し合いに乗ってないことは、その目で確認するがよい。」
争いは避けられないとは思っていたし、現に相手は信用できないとは言っていたが、今の所敵意は向けられていないのだと安堵する。
「では最後の4人目は、私で問題ありませんか?」
次に提案したのは、4人ずつに分かれてグループを結成しようと最初に言ったナナだった。
彼女としては気になるのは、今も生き残っている3人の能力者だ。
他の参加者は死のうが生きようが割りとどうでもいいとして、生還後のことを考えると、この場所で殺しておいた方が最善だ。
中でも彼女にとって厄介なのが佐々木ユウカだった。
なぜ生き返ったのかは相も変わらず不明なままだが、殺した原因は自分である以上、きっとどこかで手ぐすね引いて報復の機会を狙っている可能性が高い。
下手をすると、自分を危険人物だと参加者に吹聴していることも考えねばならない。
ここに滞在するのも悪くはないが、結局ここの来訪者は誰も能力者の情報を知らなかったし、そろそろ外へ出て彼らの情報も欲しい。
「ならばついてくるがよい。」
先程本の暗号を読むのに貢献したこともあり、デマオンはナナの同行をあっさりと許可した。
「では、私、クリスチーヌ、ミドナ、アイラの4人がこの場に残ることで良いでしょうか。」
メンバーが決まり、向かうことになる4人が階段から入口に歩いて行き、反対に残りの4人は階段を上って2階へと向かう。
この時、まだ図書館にいる8人は気づいていなかった。
屋上にくすぶっている火種のことを。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
時は少し遡る。
炎を表したかのような髪色の少女、秋月真理亜は、躊躇していた。
いくら忌死機構が取り払われているとはいえ、彼女ら呪力持ちには先祖代々から二重三重に植え付けられた、攻撃に対する嫌悪感が残っている。
モイを殺した時は殺そうと思って殺したのではなく、半ば自分の身を護るために殺したようなものだった。
たとえ愛する者のためだとしても、これほど多くの参加者を殺すのは憚られる。
しかしここにいる連中を食い止めないと、必ず優勝に差し支える。
自分はそれが出来るのか?
しかし、時は残酷だ。
例え彼女の時間が止まったままでも、周りは容赦なく動いていく。
そして、放送によってこの殺し合いがいかほど進んでいるか思い知らされた。
(嘘……13人!?)
幸か不幸か、神栖66町の3人は全員無事だった。
早季以外の2人はやがて殺すことになると分かっていても、安堵してしまう。
だが、彼女が知っている者の中には、バケネズミのコロニーの将軍、奇狼丸も含まれていた。
彼のことは早季から聞いたことがほとんどだったが、バケネズミの中でも特に手練れの将軍だという。
いくら呪力が使えないバケネズミと言えど、そのような者がこれほど早く呼ばれてしまう事実、それだけではなく、この殺し合いで既に13人もの犠牲者が出ていることは、彼女に事態は予想以上に深刻だということを知らしめた。
このままだと、優しい彼女が殺されてしまうのも時間の問題だ。
もう迷っている時間は無い。
覚悟はできた。せざるを得なかった。
あの放送が、彼女にとっての最後の藁になった。
支給品袋から、赤と橙で構成された一輪の花を出す。
屋上から地面、図書館の裏側に降り立つ。
図書館の近くに生えている太い木の枝の上に座り、呪力で1階の窓ガラスに穴を空ける。
音を出さずに開けたのと、図書館の中の人が集まっている場所とは離れていたことで、まだ誰も気づいていない。
呪力で微量な風を起こし、花を図書館の中心まで飛ばす。
「ん?アレは何だど?」
図書館の中から声が聞こえた。
道具には気付かれたようだが、自分には気付かれていないと確信する。
今、賽は投げられた。
すぐに図書館の1階の中空へと飛んで行った花に、呪力を送る。
彼女が図書館に入れた花は、予想に違わずただの鑑賞物ではない。
花粉の様に火の玉を飛ばすことが出来る、曰くつきの品物だ。
図書館と言う場所である以上、火攻めにも使うことが出来る。
とはいえ、これだけで戦禍を潜り抜けてきた者達全てを倒すのは極めて難しい。
事実先程の戦いで、真理亜さえもそれを認識している。
ただ使うだけでは、敵に僅かながらの損傷は与えても、8人全体に響くほどの威力は間違いなく発揮しない。
ではここで1つ問うが、この植物と彼女らの呪力の相性は良いのか悪いのか。
答えは最高である。
そもそも植物と言うのは、呪力の下で無限の変化を遂げてきた。
例えば呪力による品種改良によって無毒で美味な野菜を作ったり。
呪力が暴走する業魔がいる場所で、異形な姿と化した植物があったり。
ファイアフラワーと言う植物は、元の世界にあるはずの無かった呪力によって、新たなるステージへ行きつくことになる。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
重ちーが気づいた時には、もう手遅れだった。
ファイアフラワーから、小さい花とは思えないほど大きな火の玉が大量に散布され、図書館全体に飛び散る。
元々の力を、簡易的な発火呪力によって増幅させたのだ。
いくら炎の力を秘めていると言えども、植物は植物だ。
強すぎる炎の前では、その力を出すことなく灰燼に帰す。
しかしその壁を、呪力と言う未知の力によって乗り越えたのだ。
荒々しい火球は、図書館の本を、本棚を、絨毯を、床を次々に焼いていく。
1階にいた4人は、その急襲に戸惑った。
「く……やはりひと時であっても、見張りを払うべきではなかったか……。」
デマオンだけは敵の急襲だと察し、メンバー全員を図書館内部に集めたことを僅かながら後悔する。
「あっついど!何とかならないのかど!!」
「バカを言うな!こんな場所で魔法を打てば、キサマらも巻き添えになるのが分からんのか!!」
そう言いながらしてやられた、とデマオンは思った。
彼自身が本気を出せば、炎も図書館も襲撃者も全て魔法で吹き飛ばし、強引に脱出することさえ難しくはない。
だが、それを行えば他の7人はただでは済まない。
加えて、ここは図書館という人工物で構成された空間である以上、岩や星に魂を与えて迎撃する悪霊降臨術も使えない。
従って、ここはデマオンが力を活かすのには最も不向きな場所なのだ。
すぐに火球は4人が固まっている場所にも飛んでくる。
「ドカン!!」
そこでナナが空気砲で、火球を弾いた。
完全には相殺しきれず、細かい火になって辺りに落ちるが、一時しのぎにはなった。
「早く脱出しましょう!!」
一時は難を逃れたが、降って来る火球は数は少なくなりつつも、火は次々に引火し、燃え広がっていく。
侵略すること火のごとく、と言う言葉を体現したような状況だった。
ここにいれば全員蒸し焼きにされるのも時間の問題だ。
「ハーヴェスト!!おらを乗せて、早く脱出するど!!」
重ちーは急いでスタンドを出して、自分はその上に乗る。
既に床はあちらこちらが火の海になっているが、ハーヴェストはそのコンディションの悪さをカバーできる。
一団となったハーヴェストは重ちーを乗せて床ではなく、壁伝いに移動する。
「やりおる。」
「私達も早く脱出しましょう!!」
重清は安全だと考え、残りの3人もそのまま出口へと向かう。
単純な距離では図書館の端まで移動しないといけない以上は遠回りだが、壁は燃えてないため、極めて安全な手段だ。
移動経路に、先程ファイアフラワーが入ってきた窓、つまり真理亜が近くにいなければ。
そして、満月やデマオン、ナナと距離を離さなければ。
「あ、あんたは!!?」
穴が空いた窓の外で、そのすぐ近くに隠れていた人が見えたことに重清は目玉をひん剥いて驚くも、既に遅かった。
彼女のすぐ近くまで移動してしまったことで、呪力によって吹き飛ばされる。
「うわああああああああ!!!」
急に予想外な方向から引力が掛かったかと思いきや、突如それが失われ、重力に従って落下していく。
そして、その下は炎が燃え盛っている場所。
ドシャ、と重い物を落とした時の音が、燃え盛る本棚から響く。
他の3人の距離は、もちろん離れている。
ハーヴェストを再度集合させようとするも、最早手遅れだった。
「おらは……パパとママの所へ……かえ……。」
火の中で彼はもぞもぞとしばらく動くも、やがて動かなくなった。
死んだ。
主催を倒そうと手を組んだ8人のうち、1人が早くも死んでしまった。
〇
またしても敵が予想外な方法を使って脱出をしてこられたことに真理亜は驚くも、どうにか脱出を止めることに成功した。
「ギーーーーーーーッ!!」
上の方から使い魔の声が聞こえて来る。
元の飼い主でもいたのか、何故か1階から攻撃することを拒否していたので、2階から攻撃させることにした。
その時一筋の汗が額から両目の間を通って行った。
気が付くと、服は汗でびっしょりと濡れていた。
図書館内部から伝わってくる熱気だけではない。
大量殺人という、自分のやっていることの恐怖感が要因だった。
これは彼女の友達である早季しか知らないことだが、かつて彼女がいた町を襲った悪鬼とはやっていることが似ていた。
かの悪鬼と呼ばれた少年は、町の人を殺し、町中に火を放ち、焼いていく。
そして火の無い場所から逃げた者は、更に呪力で殺して行った。
――おらは……パパとママの所へ……かえ……。
真理亜はあの炎に包まれた少年が、最後に大声で発した言葉を思い出した。
きっとあの子の家族は、ずっと帰りを待ち続けることになるのだろう。
早季の両親が、早季の姉のことを忘れたこととは違って。
――あなた、誰かに怨まれながら生き続ける覚悟はあるのよね!!
夜、殺そうとした少女から言われた言葉を思い出した。
これだけ多くの人間を殺せば、さぞかし多くの者に怨まれながら生きることになるとは、彼女も分かっていた。
違う。
そんなものを恐れている場合ではない。
早季の命と、他の参加者の命は、重さが違う。
彼女は、
新世界の礎になるべき人間だ。
あの少年も、今わの際に家族の名前を言った男も、きっとこの殺し合いから仲間と共に生還できれば良いはずだ。
だけど、私は違っていた。
私一人が無事に帰ることが出来ても、全く意味はない。
町からの脱走者として、誰からも怨まれずに、誰からも恐れられずに生きる方法なんて、最初からない。
帰ることが出来ればそれで良い人たちとは、絶対に違う。
出来るか出来ないかじゃない。
やるしかない。
私がやることは他の参加者とは違い、生還することではない。
人間もバケネズミも、そうじゃない生き物も全て殺して、彼女に託す。
それが私の願いであり、目的で、残された出来ることだ。
彼女の外で広がっているのは、紅蓮の炎。
しかし彼女の狭い心の内で静かに輝いているのは、空の色の様に鮮やかな青の炎。
それは愛する人と、その人が作る新世界のために戦う彼女の意思を燃料として、代わりに冷静な思索と、赤い炎以上の熱い闘志を齎す。
一時は頭を動かすこともままなら無かったが、燃え盛る青の炎の裏で、彼女の思考はとても冷静だった。
この世界では、自分の呪力とは異なった超能力を持っている者がいるのかもしれない。
だからこの炎だけではじきに脱出されてしまうと思う。
これ以上1階の窓から脱出を試みる者はいないことを考えて、今度は図書館の入口へ回る。
彼女が図書館の正面で行ったことは一つ。
金属製の扉の僅かな点に熱を加え、形を歪ませたのだ。
熱が加わると膨張するのは金属の共通する特徴の一つだ。
全人学級時代に鉄の玉と金属輪の実験でやった。
これで敵を閉じ込めることが可能だろう。
〇
「……間に合わなかったか」
デマオンは冷静に、しかし苛立たしげにつぶやいた。
場所が離れているのと、崩れ落ちた本棚が邪魔をしているので、彼の死の姿は幸か不幸か見えなかった。
だが、彼の悲鳴が聞こえなくなったことで、どうなったのか嫌でも分かってしまった。
「ドカン!!ドカン!!」
なおもナナは必死で脱出経路で燃えている火を吹き飛ばそうとしていた。
しかし、炎が燃え広がっていくペースの方が早い。
そこへ、火の付いた本棚が3人の中で1人、満月博士の方に崩れてきた。
「満月さん!!」
慌ててナナが声を上げた。
「落ちよ!!水柱!!」
しかし、その程度で死ぬほど、彼も弱い男ではない。
突然現れた水は、本棚の火を消し、崩れてくるそれを吹き飛ばした。
仮にも魔法学の第一人者である彼の魔力は、決して侮れるものではない。
そして彼の魔法は、大魔王たるデマオンに比べれば断然劣るが、大量の本棚が支配する迷路のように狭い場所で活かすには、魔王以上にふさわしい物だった。
「すごいです!!」
少し服が濡れるも、危機を脱したナナは喜ぶ。
(これが出来るなら、もっと早くやっておけば重清も助かったんじゃないのか?)
満月を賞賛する裏で、彼の妙な間の悪さに、違和感を覚えるナナ。
それの正体を気付けなかったのは最大の痛手になることを知らなかった。
行先はデマオンが示し、小さい火はナナの空気砲が、大きい炎は満月の魔法が処理していく。
熱気が渦巻く通路を潜り抜け、どうにか無事に入り口にたどり着いた。
この場所は本棚の数も少ないため、火の手はあまり上がってない。
しかし、そこでデマオンが怒りの声を上げた。
「どういうことだ!!」
ドアに手を触れるも、それが押しても引いてもびくともしないことに、苛立ちを覚えた。
「火事のせいで、建物の骨組みがおかしくなっているのかもしれません!ここはこれで……。」
始めてナナは既に亡き重清から承った、ナンシーダイナマイを取り出した。
「私がどうにかします。デマオンさんは下がってください。」
ナナが鞄から爆弾を取り出す。
「うむ。頼むぞ。」
「皆さん、耳を塞いで下さい!!」
けたたましい爆音と共に、ケーキの姿をした武器は爆ぜる。
そこに花火の様に作成者ナンシーの姿を見せ、最後に図書館の扉を吹き飛ばした。
炎獄から解放されたことを表すかのように、外気の清涼感がナナを迎え入れる。
「地球人にしては二人とも良き働きであった。
だが気を付けろ。外で侵略者が命を狙っておるかもしれぬ。」
危機を脱してもなお、デマオンは警戒を怠らなかった。
「ええ、まずは……。」
「チンカラホイ。」
最も、それは外からの敵にだけだが。
最終更新:2021年08月27日 15:52