さわさわ、さわさわと風が空き地の草を鳴らす。
空は雲一つなく、太陽の光が輝いている。
カンカン、ギラギラといった効果音が聞こえてきそうな程だ。
だからと言って、暑すぎることはない。
むしろ春の半ば、桜の木が桃から緑になったぐらいの季節なので、丁度良い暖かさだ。
チュンチュンと雀のなく声が聞こえる中、9人の老若男女が広い空き地の真ん中にいる。
観客はいない。敢えて言うなら、空き地の隅でピラミッド状に積まれているドカンだろうか。


「のび太、大丈夫か!?」


朝比奈覚が、声をかける。
何のことはない。子供を心配する、普通の好青年といった様子だ。
休みの日に、地域のレクリエーションに参加する会社員、そんなものだろう。


「こ、ここは?」


のび太は覚に呼ばれると、起き上がった状態で辺りを見渡す。
辺りには、8人の色んな姿をした者達が集まっていた。
さながら、町内の集まりと行った所か。ほら、町内会だって人だけじゃな犬とか連れて来た人がいただろ。
少なくともこれ書いてる奴の地元はそうだった。


「一人で集合場所に来ていて、誰もいないから昼寝してるなんて。やっぱりノビタ君はぐうたらね。」
「ちょっと、ぐうたらは余計だよ!」

彼のリアクションに呆れているのは、クリスチーヌだ。
背が低いため、座っているのび太と顔が近い。

「まあいい。これで全員が揃った訳だ。早く出発しようではないか。」

メンバーの中で図体も態度も最も大きいデマオンが、全員に呼び掛ける。
指揮を執ることからして、町内会の会長と言った所か。

「ちょ、ちょっと待つでござる!!」


白髭が印象的な老人、メルビンがデマオンに問い直した。
いつもは冷静な彼らしくなく、どこか困ったような表情だ。


「出発って何処へ行くのでござるか?」
「おいおい、じーさん、ボケるのはまだ早くないか?」

白髪の青年、小野寺キョウヤが答えようとする。
だが、その場所を言おうとした瞬間、言葉に詰まった。

「……あれ?どこだっけ?」
「仕方のない奴等よ……どこのことだ……。」

答えようとしているキョウヤはおろか、言い出しっぺのデマオンでさえ、呑み込めないと言った表情だ。


「え~と……。」
「さあ?誰かが知ってるんじゃないか?」
「私も知りません。」


ローザやカイン、ミキタカも同じような様子だ。
結局の所、9人の中で誰も行き先が分からないのだという。


「まあ、そのうち思い出せるかもしれません。誰も覚えてないってことは、大変なことじゃあないってことでしょう。」

「じゃあさ、ここで遊ばない?野球する?丁度ここにバットがあるし。」

空き地には無造作にバットが並べてあった。
長いものや短いもの、丁度ここの参加者に合わせたデザインで、9本置いてある。
勿論、グローブも似たような形で重ねられていた。


「私はクリボーだし、見学しておくわ。」
「そうですね……私も遠慮しておきます。それよりもどんなプレーをするのかが気になります。」


ミキタカとクリスチーヌを除いて、7人で野球を始める。
一見、コスプレ同好会のレクリエーションに見えなくもない。


「じゃ、僕からバッターやるね。」
「それなら、俺がピッチャーをやるとするかな。こんなことするのも久しぶりだな。
まあ野球を通じて、親睦を深めるのも悪くないか。」

他の5人は、キャッチャー、ファースト、セカンド、サード、ショートと、外野を除いた野球のポジションに散らばる。


のび太が打席に立ち、キョウヤが振りかぶって第一球を投げる。
勿論、少し手加減して、ふわりとした勢いの投球だ。
小学生相手に全力というのは、大人げない話だ。
いくら野球の経験がほとんどないキョウヤといえど、高校生と小学生の差は大きいだろう。


「よし来た……あわわわわ!!」

絶好球と意気込み、思いっきりバットを振るのび太。
しかし、その一打はボールに当たることなく、空を切った。
おまけに勢いを付けすぎたせいで、どさりと尻もちをつく。

「いった~。」
「おい、大丈夫か?」

ピッチャーのキョウヤも、これには少しばかり心配してしまった。
まさかここまで大胆な空振りを見るのも、そうそう無いだろう。


「のび太殿、もう一回やるでござるか?」

キャッチャーのポジションを担っているメルビンも、心配そうにしていた。
だが、のび太を励ましながらも、別のことを考えていた。


(何か……何か大事なことを忘れている気がするでござる……。)


「もちろんだよ。次、投げて!」

だが、メルビンの疑問も他所に、キョウヤは第二球を投げる。
またも、投球はキャッチャーのグローブに吸い込まれていく。
キョウヤは一応手加減している。だが、打率一分ののび太には、その程度の手加減では通用しない。


「なあ、ノビタ。そんな風に大振りしてたら打てる球も打てないぞ。バットを短く持って、少し早すぎると思うタイミングで打て。」
「え?わ、分かった!」

ファーストのポジションにいたカインが見かねて、のび太に助言する。


「おい、そろそろ次投げるぞ。いいな?」
「うん!」

スパーン、と心地良い音が響く。
少しのことにも、先達はあらまほしき事なりとはよく言ったものだ。
カインのアドバイスを受け、綺麗にキョウヤの投球を撃ち返した。
いや、綺麗に打ち返したことで、新たな問題が発生してしまったが。


ボールが飛んで行った先で、ガチャンとガラスが割れる音がする。


「しまった!みんな逃げよう!あそこのおじいさんおっかないんだ!!」

バカもんと声を荒げて、髪が薄くなり始めた初老の男性が怒って来ると思いきや。
それからは誰も来なかった。


「誰も来ないわね。」
「まあ、来なければ来ないに越したことないし、今日は帰ろうか。」
「うん。そうだね!今日の晩御飯は何だろうなあ。お腹空いてきちゃったよ。」



こうして、今日も何気ない1日が終わる。
今日の夕食のメニューは何だろうか。
ほんのわずか、退屈さを覚えるが、それが掛け替えのない宝物なのだ。




【表裏・バトルロワイヤル 完―――――――――




















――――――そうなるはずだった。
だが、偽りの平和を拒絶した者達は、このようなまやかしに飲まれることはない。




(この曲!!)

それぞれが帰ろうとする中、メルビンは感じ取った。
1日の終わりに町が流す曲だと言えば、それまでだ。
朝比奈覚がいた町でも、1日の終わりにドヴォルザークの『家路』を流したことがあった。
だがメルビンだけは違った。この曲を、ずっと前に聞いたことがあった。


(この楽器……どこかで聞いたような……!)


その旋律は、この中でメルビンのみが知っている楽器でなければ出せないのは知っている。
でもそれをどこで聞いたのか、どういった過程で知ったのか思い出せない。
分からないまま、のび太やキョウヤに向けて、メルビンが大声を出した。


「ワシらは今、何処にいるでござるか!?」
「じ、じーさん!?冗談はやめてくれ!!」


メルビンはバットをキョウヤに付きつける。
どうにもシュールな光景だったが、白髭に覆われた表情は真剣そのものだった。

「良いから答えるでござる!!」


冷静な彼らしからぬ、勢いの付いた詰問だった。

「え?ここっていつもいる空き地でしょ?」

キョウヤより先に、のび太が答える。
そう、この場はのび太にとって、一番馴染みの場所のはずだ。
逆に言えば、他の8人は知っているはずがない。
だというのに、なぜ知っている場所のように振る舞っているのだろう。


「なぜワシらは集まっているのでござるか!?集合をかけたのは誰でござるか!?」
「のび太だろ?コイツがみんなで遊びたいって言ったからじゃないのか?」


メルビンは質問を繰り返す。
今度答えたのはカインだ。
だが、彼はその答えに納得せず、さらに質問をする。


「デマオン殿!ワシらはどこへ向かおうとしていたのでござるか!?どこからここに来た?」
「分からんと言ったはず……いや待て、確かどこかの廊下を歩いていたような……。」
「やはりか!」


『廊下』とは専ら、屋内に使われる言葉だ。
しかし、この場は太陽の光が降り注ぐ屋外。
空地へ来るのに、通った道だとするなら、それは『道路』か『歩道』あたりが打倒のはずだ。
関係の深い言葉とは到底思えない。


(考えるでござる…辻褄の合わない所……。恐らくそこが出口でござる……)


メルビンに聞き覚えのある調べが流れてきた方向。
のび太が窓ガラスを割ったというのに、いつもいるはずの主が出てこない家。
そして割れた窓ガラスから見えたのは、家の中ではなく、黒い靄。


「そこでござる!!」

メルビンが手にしたバットを、やり投げのように投げた。
その一撃は、窓から見える闇に吸い込まれていく。


突然、窓からこぼれていた闇が、凄まじい勢いで溢れ出していく。


「しまった!これも罠でござったか?」

当然、闇は空き地にいた9人も呑み込んでいく。
辺りは真っ暗になり、他の者達がどこにいるかも分からない。



「か、帰って来れたでござる!!」


いつの間にか闇は、視界を確認できるぐらいに晴れた。
場所は、元いた場所の廊下。
先の空き地と、巨悪の総本山。どちらが居てて安心できる場所かと言われれば、普通に考えれば後者だろう。
だが、不気味な灯りも、重苦しい空気も、全て本物だから安心できてしまう。
いつの間にか、全員が持っていたバットやグローブは、既に付けていた武器に変わっていた。


「今の空き地は何だったの?夢?」

のび太はまだ辺りをキョロキョロとして、意識がはっきりとしていないようだった。

「夢じゃない。」


それを諭したのは、ずっとのび太と一緒にいた覚だ。


「俺達は暗示にかけられていたんだ。ご丁寧に、記憶まで改ざんされてな。」

9人の中で、朝比奈覚だけは知っていた。
子供時代、死した人間を忘れられるように、呪力で暗示をかけられていたことを。
強すぎる魔力や呪力は、記憶のすり替えることさえ可能なのだ。
勿論、タダでそんなことが出来る訳ではない。だが、人の心にほんの僅かでも、それを望む衝動や気持ちがあれば、簡単にできてしまう。


「どういうことだ!?」

さしものデマオンも、先の状況には驚いているようだった。

「簡単な話だ。人の死なんて無かったことにしたい。平和な頃に帰りたい。そんな風に思っている気持ちに付け込まれたんだよ。」
「わしもか……もしかすれば遥か昔、無力な一介の悪魔でしかない頃の記憶を呼び起こされたのかもな……。」
「ここへ来て悪趣味な………クリスチーヌ殿は!?」

ようやく気づいた。
否、改めて気づかされた。
偽りの平和を乗り越えた先にあるのは、救いなどではなく、ありとあらゆる問題だけだということを。


「カインさんや、ミキタカさんもいないよ!!」
「キョウヤさんもいないわね……。」
「完全に、はぐれさせられたな。味な真似をやりおる。」


仲間を探さねばならない中、既にいる仲間がさらに減り、今進んでいる道が、正しい道なのかも分からない。
勿論、また先程のような幻想空間に飛ばされるかもしれないし、今度は脱出できる保証もない。
この場で残された5人、のび太、デマオン、ローザ、メルビン、覚の意見は、満場一致で決まった。


「行こう。」
「たわけが。魔王が指示を出す前に呼び掛けてどうする。
わしが言おうと思っておったわ。」
「奇遇ね。私も同じことを思っていたわ。」
「ああ。今さらここで再会を待ちぼうけている訳にもいかないしな。」
「また幻が現れても、わしが破るでござる。」

ただ、前へと前進する。
今一番悪いことは、ただ突っ立っていたり、先へ行くことを恐れることだ。
前へ進めば、探しているリンクやカイン達、そしてキーファにも会えるかもしれない。


「先の魔力の気配は、さらに高まっている。本丸を叩けば問題なかろう。」

(キーファ殿も、いるかもしれないでござるな。)

一つ思い出したことがあった。
幻の世界で聞いたあの曲は、ユバール族の集落で聞いた調べだ。
トゥーラにしか奏でられない曲は、メルビンでさえも信じられないことを起こしてきた。


☆☆



不意にザントの背後に、巨大な紋章が現れた。
それが何の前触れか、リンクはすぐに分かった。


(まさか……ここでも!!)


だが、その後すぐに見させられた場所は違った。
かつては毒沼に溢れた、森の神殿の最奥が現れたはずだが、今度は夜中の草原だ。
影に覆われているわけではない。星が瞬き、雲一つない空が月を良く映している。


そしてその月光をバックに、ザントは空中に浮いている。


「ヒィアアヤアア!!」

笑い声とも、叫び声とも、怒声とも区別がつかぬ甲高い声が、夜空に響く。
両手から、黒い魔法弾がマシンガンのような勢いで放たれた。

「くっ!」

横っ飛びを繰り返し、避けきれないものはトルナードの盾で弾いていく。
明らかに、以前戦った時より弾の一発一発の威力が増している。
だが、強くなったのはリンクとて同じこと。
たった1日だけのこととはいえ、未知の存在との戦いは、確実に彼を強くした。
そして、今リンクが持っている盾は、かつてのハイリアの盾より優れた性能を持っている。


弾幕の嵐が止むと、早速反撃を開始する。
懐から疾風のブーメランを取り出し、ザント目掛けて投擲する。
かつても剣の届かない場所から遠距離攻撃を繰り返したザントだったが、その時も同じ方法で近くに引き寄せた。


だが、羽を模したブーメランに纏った竜巻が、ザントを巻き込む瞬間。
一瞬で彼の姿は消え、リンクの攻撃は不発に終わる。


(どこだ?)

戻って来たブーメランを、すぐにキャッチする。
辺りを伺い、次に現れる瞬間を捉えようとする。
だが、空に見えるのは星と月ばかり。とてつもなく禍々しい空気を加味しなければ、月見でも出来そうな場所だ。


「!!」


急に殺意が鋭くなる。
真上だ。


「イイイアアアアア!!!!」

散々焦らせたザントは、リンクの丁度真上に現れた。
ザントが上から、2本の剣を前に突き立てながら、ドリルのように錐もみ回転しながら急降下。

予想外の現れ方と攻撃に、聊か驚くも、盾を上に構えて攻撃を受ける。
風の精霊の力を受けた盾でさえも、威力を殺しきれぬ一撃だが、それを横に受け流す。
予想外の方向から力を加えられたからか、ザントはまたも奇声を上げながら草原を転がって行く。

だが、いつの間にか姿を消し、再び上空から魔法弾の連撃が来る。


(なるほど……そういうことか!!)


ザントの攻撃を受けながら、そしてフィールドの観察を続けながら、リンクはあることに気付いた。
かつて戦った時もそうだが、彼の世界は何もかもが狂っているように見せかけて、確かな法則がある。

この場所は、殺し合いの舞台だったあの場所。
もっと正確に言うと、カイン・ハイウィンドと戦いを繰り広げた北西部だ。


ザントが姿を消した瞬間、リンクはトルナードの盾を捨てて、マスターソードを両手持ちした。
案の定というか、ザントは空から剣を構えて降って来る。


「でえやああああああ!!!!」

だが彼の双剣が刺さる前に、リンクの乾坤一擲の斬り上げが、ザントを深く斬りつけた。
そのまま尻尾を撒いて逃げ出すザント。
どことなく間抜けな様子に見えるが、逃がすことはない。
すぐに盾を拾い上げ、ザントを追いかける。


予想通りだった。
かつてザントが作り出した空間では、かつてその空間でカギになった道具や戦術が、そのまま有効打になった。
あの時と同様、戦った場所に応じた勝利のカギがあるのだと推理した。
この場所がかつてカインと戦った場所だと分かった瞬間、何をすればいいかすぐに気づいた。


斬られた箇所を片手で押さえながら、逃げるザントを、背後から斬りつける。
勿論、勝ったと思ったわけではない。


空間が消え、現れるのは先ほどの魔法陣。
今度は、バツガルフと戦ったハイラル駅の中だ。


(この場所ということは……ならば!!)

またも空から襲い来る弾幕を、マスターソードを放り投げて弾き飛ばす。
くるくると宙を舞う聖剣は、邪悪な魔法弾を吹き飛ばした。
その動きは、バツガルフの雷からリンクを守る避雷針のようだった。



☆☆


「ここは……。」


通路の先に会ったのは、大広間だった。
中央部に赤い絨毯が敷いてあるだけで、床には何もない。
だが、5人が一同に注目したのは、下ではなく上だった。


高い天井の上に、巨大な光の玉のようなものがぶら下がっている。
いや、浮かんでいると考えるべきだろうか、天井に張り付いている可能性もある。
何にせよ重力に逆らっているのは間違いない。
分かるのは、それが凄まじい力を秘めているということだ。


「これは……図書館にあった本で見たものだ……。」


天上にある得体の知らない物を見て、一番驚いていたのは、デマオンだった。
正確には殺し合いの会場内で、クリスチーヌが見つけた本なのだが。


「どういうこと?知ってるの?」
「ああ。これは、人から奪った力を貯めておく設備らしい。」

「聞いたことがある……オルゴ・デミーラの手下に、人間達から力を奪い、魔王を強化するために1つの光の玉に貯めていた者がいたと……。」


メルビンは顔を顰め、天井の力の塊を睨みつける。
あくまで英雄時代、魔王の手下がそのようなことをしていたということと、アルス達からダーマ神殿に巣食っていた魔物がそんなことをしていたと聞いたぐらいだ。
だがこの殺し合いも、8つの世界の異なる力や技術の総取りを狙うためと考えれば、納得が行くことだ。


「じゃあ、あの戦いもこれのためにあったってこと?」
「そうだと考えるのが妥当でござるな。」
「いや……違う。」

光に照らされていたため、朝比奈覚の青い顔が良く映った。


「何故わかるでござるか?」
「理屈でわかるワケじゃないんだ……きっと力を手に入れることじゃなくて、もっと恐ろしいことを起こそうとしている……。」

覚はまだ、地下で旧友からメッセージを受け取ったことを話してはいない。
だが、自分たちの思い出や未来が消えるという言葉が、どうにも気になった。


「なあメルビンさん、これをどうすれば、壊すことが出来るんだ?」

迂闊に呪力を撃ってしまえば、呪力の干渉で最悪の結末を呼び起こしてしまう恐れもある。
少しでも知っている者に尋ねるのは、当然の話だ。


「残念だが、わしにはどうしようもない。そもそもこれは聞いただけでござる。」
「同様だ。本で読んだのは確かだが、壊し方など載っていなかった。」

メルビン自身は、この光の珠について詳しくは知らない。
神殿の地下にこれに似た物があったことを知っていたのは、仲間だけだ。
アルス達からは、その光の下に行けば魔力は取り戻せたと聞いたが、それを壊す方法は終ぞ聞くことはなかった。
デマオンも同様。あくまで知識として知らなくはないと言うぐらいだ。


「と、とにかくこれをどうにかしないと、ヤバいことになる。」
「待て。」

急にデマオンの声が、静かになった。


「奴が来る。わしが強い力の主と感じていた奴が。」

その言葉を受けた4人は、全員武器を出し、いつでも戦える態勢に出た。
邪悪な気配がどんどん強くなる。
姿を見せたのは、ローザが知っている仲間だった。


「ダレじゃ……わらわの城に入りこんだ者は……。」
「リディア?」
「ローザさん、知っている人?」
「ええ、そうよ。私の仲間だった。けれど、どうしてここにいるの……。」


味方の仲間なのは分かった。
だというのに、5人の中で安堵する者は誰一人いなかった。
格好が違う。緑のレオタードを付けていた彼女は、今は真っ黒なローブを身にまとっている。
口調が違う。明るく朗らかな口調が、今ではひどく重苦しい。
そして何より、醸し出す気配が全く違う。ローザからすれば、操られていた頃のゴルベーザや、ゼロムスの雰囲気に近かった。
この女性は、見た目と魂が全く異なる存在なのだと、言われずとも分かった。


「ほう……そうか。あの儀式を生き残った者達か。」


それは、ただの言葉。呪いが籠っているわけでも、特別な種族にしか聞けぬ言葉でもない。
だというのに、言の葉の一枚一枚が鼓膜を突き抜けるたびに、心臓がより高鳴って行く。
のび太や覚のような人間は勿論、歴戦の英雄であるメルビンや、魔王であるデマオンでさえも同じだった。
目の前にいるのは、リディアを騙った、ザントやデミーラにも並ぶ巨悪だと理解できた。


「よく見ればなかなかの面構え。どうじゃ?わらわに使えぬか?悪いようにはせぬぞ?」


声色が冷たさを含んだものから、全く違うものに変わる。
その問いは、町を1つ地の底に沈めた魔物のものとは思えぬほど、花のように優しく、蜜のように甘かった。
かつてのある英雄を、手籠めにした言葉だ。



「ふざけるのもいい加減にしろ!!」


その言葉を振り払うかのようにのび太が大声を出し、銃を向ける。
彼の態度は、勇敢な少年というよりむしろ、怖い物を寄せ付けまいと玩具を振り回す子供のように見えた。
事実、何かしなければ全てを奪われてしまいそうだと、肌で理解した上での行動だった。



「立てよ、火柱!!」

デマオンの叫び声と共に、高い火柱が立ち上る。
カゲに飲まれた少女を襲う。だが、冷たい笑みを絶やさない。


「あくまでわらわに逆らう気か……よかろう……。」



勇者たちと、闇に属する王と女王。
最後の戦いが今、幕を開けた。









【最終章 力の間】



【デマオン@のび太の魔界大冒険 】
[状態]:健康 首輪解除
[装備]:炎の爪@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち アイスナグーリ@ペーパーマリオRPG
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:主催者共に借りを返す。
1.影の女王を倒す。




【野比のび太@ドラえもん のび太の魔界大冒険】

[状態]:健康 決意 首輪解除
[装備]:ミスタの拳銃(残弾3)@ジョジョの奇妙な冒険  空気砲@ドラえもん のび太の魔界大冒険
[道具]:基本支給品 替えの銃弾×5
[思考・状況]
基本行動方針:戦う。
1.ドラえもんや美夜子、満月博士のためにも生きる。


【メルビン@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】
[状態]:健康 首輪解除
[装備]:オチェアーノの剣@DOVII エデンの戦士たち  魔法の盾@ドラゴンクエストVII ツラヌキナグーリ@ペーパーマリオRPG
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2(一部ノコタロウの物) 勇気と幸運の剣@ジョジョの奇妙な冒険 キングブルブリンの斧@ゼルダの伝説 クローショット@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス ジシーンアタック@ペーパーマリオRPG ラーの鏡@DQ7 
[思考・状況]
基本行動方針:主催者の打倒
1.キーファの安否が気になる

※職業はゴッドハンドの、少なくともランク4以上です。
※ジョジョ、無能なナナ、FF4、ペーパーマリオの参戦者に関する情報を得ました。


【朝比奈覚@新世界より】
[状態] 同郷の者の喪失の精神ダメージ(中) 首輪解除
[装備]:サンダーロッド@ff4 銀のダーツ×5@ドラえもん のび太の魔界大冒険
[道具]:基本支給品、北風のテーブルかけ(使用回数残り0/20)@ドラえもん のび太の魔界大冒険 ランダム支給品0~2 ダンシングダガー@Final Fantasy IV ゾンビキラー@ドラゴンクエストVII、スパイ衛星@ドラえもん のび太の魔界大冒険 『早季』という名の一輪の花@現地調達
[思考・状況]
基本行動方針:それでも生きる
1.早季を連れて帰る。彼女の生きた証を離さない。
2.瞬のメッセージは何だったんだ?

※参戦時期は26歳編でスクィーラを捕獲し、神栖66町に帰る途中です。




【ローザ・ファレル@Final Fantasy IV】
[状態]:健康 決意 首輪解除
[装備]:与一の弓@FFIV+矢7本 ふしぎなぼうし@ドラゴンクエストVII
[道具]:基本支給品、 カチカチこうら@ペーパーマリオRPG×2ランダム支給品0~1 偽クリスタル@現地調達、その他首輪の素材 
[思考・状況]
基本行動方針:セシルのためにも戦う
※参戦時期は本編終了後です。
※この殺し合いにゼムスが関わっていると考えています。
※ジョジョ、無能なナナ、DQ7、ペーパーマリオの参戦者に関する情報を得ました。
1. リディア?どうして?
2.目の前の敵を倒す。


【カゲの女王@ペーパーマリオRPG】
[状態]:??? 愉悦 リディア@FINAL FANTASY IVに憑依
[装備]:???
[道具]:???
[思考・状況]
基本行動方針:全てを影に飲む
1.???



【最終章 始まりの場】

【リンク@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス】
[状態]:健康 首輪解除 服に裂け目
[装備]:マスターソード@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス トルナードの盾@DQ7 アイスナグーリ@ペーパーマリオRPG チェーンハンマー@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス 疾風のブーメラン@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス 勇者の弓+矢9@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス クローショット@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス
[道具]:基本支給品 ランダム支給品0~2  水中爆弾×1@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス アルスのランダム支給品1~2 (武器ではない) 正宗@Final Fantasy IV  柊ナナのスマホ@無能なナナ 火縄銃@新世界より 美夜子の剣@ドラえもん POWブロック@ペーパーマリオRPG 
基本支給品×2(ユウカ、ピーチ)、遺体収納用のエニグマの紙×2@ジョジョの奇妙な冒険 陶器の馬笛@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス、虹村家の写真@ジョジョの奇妙な冒険、ランダム支給品×1(佐々木ユウカでも使える類)、愛のフライパン@FF4 ディフェンダー@ FINAL FANTASY IV まだら蜘蛛糸×2@ドラゴンクエストVII 最後のカギ@DQVII エデンの戦士たち
[思考・状況]
基本行動方針:主催を倒す
1.ザントを殺す




【ザント@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス】
[状態]:???
[装備]:ザントの双剣 フエーゴのかぶと@DQ7
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:
1.優勝者として、リンクを今度こそ殺す
2.青沼瞬@新世界より を?







【最終章 ???】



【ヌ・ミキタカゾ・ンシ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康 首輪解除
[装備]:魔導士の杖@DQ7 
[道具]:基本支給品 バッジ?@ペーパーマリオRPG 紫のクスリ(残り半分)@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス グリンガムのムチ@ドラゴンクエストⅦㅤエデンの戦士たち
[思考・状況]
1.それでも生きる

※参戦時期は少なくとも鋼田一豊大を倒した後です。






【小野寺キョウヤ@無能なナナ】
[状態]:健康 首輪解除
[装備]:モイのバズーカ@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス (残弾5)
[道具]:基本支給品(切符消費) ランダム支給品(×0~1 確認済) 鬼は外ビーンズ×8@ドラえもん のび太の魔界大冒険 セシルの首輪 首輪に関するメモを書いた本@現地調達 
[思考・状況]
基本行動方針:主催者が何を考えてるのか。少なくとも乗る気はない。
1.他の仲間と共に、生還する。
※参戦時期は少なくとも犬飼ミチルの死亡を知った時期より後です。

※不老不死の再生速度が落ちています。少なくともすぐには治りません。
※死亡した場合一度死ぬと暫くは復活できません。
※別の世界の存在があると理解しました。
※この殺し合いが強力なスタンド使いを作るため、と言う仮説を立ててます。
※ジョジョ4部、DQ7、FF4、ペーパーマリオの情報を得ました。




【カイン@Final Fantasy IV】
[状態]:健康 服の背面側に裂け目 首輪解除
[装備]:デーモンスピア@DQ7 ミスリルヘルム@DQ7 
[道具]:基本支給品  トワイライトプリンセス、ホーリーランス@DQ7 金の鍵@現地調達
[思考・状況]
基本行動方針 :脱出する
1.リンクの決断が不安
※参戦時期はクリア後です



【クリスチーヌ@ペーパーマリオRPG】
[状態]:健康 首輪解除
[装備]:フラワーセツヤク@ペーパーマリオRPG 
[道具]:基本支給品@ジョジョの奇妙な冒険 マリオの帽子 ビビアンの帽子  ビビアンの基本支給品、ランダム支給品1~2(確認済み) クローショット@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス ランダム支給品(×0~1 確認済) 
[道具]:基本支給品×2(マリオ、セシル) 
[思考・状況] 
基本行動方針:仲間と共に戦う
1.マリオやビビアン、ノコタロウのためにも戦う。
2.知らない世界の話を聞けたのは楽しい




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最終更新:2023年05月07日 11:44