私は強くなんてない。ただ、大好きな人たちと一緒にいたかっただけなんだ。
ㅤ嫌だ。死にたくなんてない。殺したくなんてない。私を、皆から引き離さないで。大切な皆を、殺さないで。
「殺し合いなんて……嫌だよ……。」
ㅤとめどなく溢れる気持ちを言語に変換していく 。そうしなくては、本当に自分がそう思っているのかも分からなくなってしまいそうだったから。
ㅤ知ってしまった。人間が、同じ人間とも争って殺し合うような出来事が、1000年前の現実にあったのだということ。
ㅤそして知ってしまった。親友の早季のことを大好きだという想いも、呪力で人間を攻撃しないために仕組まれた偽物の気持ちだったということ。
ㅤ分からない。本当に、私は早季のことが好きなのか。本当に、私は殺し合いを望んでいないのか。大人たちに植え付けられ、書き換えられ続けてきた自分の頭の中さえも、もう信じられない。
ㅤこれ以上、知りたくない。早季にも知ってほしくない。大切な関係がひとつ、終わってしまう。だから私は――彼女の邪魔をした。世界の真実を求める彼女の足を引っ張って、虚飾の中に浸かっていく道を選んだ。彼女の隣に並び立てる人で居たいと思っていたのに、足手まといにはなりたくなかったのに、だけどこれでいいとほくそ笑んでいる自分が自分の中にいたのも確かなのだ。
ㅤもはやこれが自分の気持ちであるのかすら分からないけれど――嫌い。いつまで経っても強がってばかりで弱いままの私が嫌い。私を置いて、どこかへ行ってしまう早季も嫌い。
ㅤ色々な想いが交錯し、ぐちゃぐちゃになって。気が付けば、私――秋月真理亜は、本当は大好きなはずの早季と喧嘩していた。
ㅤそしてまだ、気持ちはぐちゃぐちゃのまま。偽物に塗れた自分の、本当の気持ちも分からずに。唯一の会いたい人への想いも、本物なのか分からない。
ㅤ考えれば考えるほど、目に映る世界は目まぐるしく回っていくように見える。
「私は……どうすればいいのよッ!!」
ㅤその場にへたりこんで、虚空に向けて叫んだ。応答なんて期待していない。ただ、頭の中で考えたことなんて、明日には思い出ごと無くなっているかもしれない。大人たちに記憶を弄られて――或いは、殺し合いの果ての死によって。
ㅤ何でもいい。自分がここで何かを思った証を外部に残したかった。
――ポトッ。
「ヒイッ……!」
ㅤ何かが落ちる音がした。唐突な物音に、背筋が凍りつく感覚に襲われる。その音の正体が、自分のザックから何か支給品がこぼれ落ちた音だと間もなくして気付く。
「鏡……?」
ㅤ美しい装飾が成された丸型の鏡だった。裏面には説明書きのようなものがセロテープ貼りで備え付けられている。
(わざわざ鏡に説明書……?)
ㅤ不思議な取り合わせだと思った。鏡など説明されるまでもなく用途は分かっている。もし鏡を用いる文化の無いバケネズミのスクィーラが招かれていることに真理亜が気付いていれば、連鎖的に説明書に疑問を持つことも無かったのかもしれない。しかし結果的に説明書に疑を持ったことで、一周まわって多少冷静になり、おそるおそる説明書に目を通す。
【ラーのかがみ】
『真実を映す鏡。』
ㅤ拍子抜けしてしまうほどに、あまりにも簡潔に纏められていた。そもそも鏡は真実を映すものではないのか。否、厳密には、鏡に映る像は実態に比べ左右対称であり、人は自分の顔を正しく観たことがない。では、そこを矯正すれば真実なのか?
ㅤ堂々巡り。ラーのかがみについての疑問は尽きない。だが、その全てがどうでもいい。
「真実なんて、いらない。」
ㅤ説明書に書かれていた二文字が、嫌に重く真理亜の心にのしかかる。真実を追いたがっていた早季と、それを邪魔した自分。どうしても、思い返してしまう。
「真実なんて……ああもうっ!ㅤこんなものッ!!」
ㅤ鏡面の無い裏面を自身に向けたまま持ち上げる。そしてそのまま、鏡面を大地に叩きつけようとして――
「――はぁ……はぁ……。」
ㅤその手を、ピタリと止めた。別にこの鏡が、自分と早季を繋ぐ要素はまるで無い。だけど、このまま破壊してしまえば、二度と真実を求める早季の隣に並び立てないような気がした。
(――私も、変わらなくちゃ。)
ㅤ変革を望むのは、怖い。大切な人との関係が変わってしまう。だけど、変わっていく早季と一緒にいられなくなるのは、いちばん嫌だ。
ㅤおそるおそる、ぎこちないまま鏡をひっくり返しながら――最終的には半ばヤケクソでガバッと覗き込んだ。
ㅤそこに映し出された真実は――
「……何よ。」
――相も変わらず、自分の顔そのものだった。
ㅤ拍子抜けだった。覚のデタラメな怪談話を聞かされた時と同じ。前フリの割に、特に何も得るものは無かった。
「……いや、違うか。」
ㅤだけど、それでも。
ㅤいろいろあったけど、やっぱり私は私だ――不思議な鏡のお墨付き、これが真実なのだ。この頭の中をぐるぐると巡っているこの感情が、例え仕組まれたものであったとしても。私がこうしたいという気持ち、それだけはやはりまがい物なんかじゃないんだ。
ㅤ両の足を地に付け、立ち上がる。大丈夫、私は私を信じられる。
ㅤそして、ある種吹っ切れた彼女が、悩んだ末に選び取った道は――
「私は――早季を護りたい。例えそれが、誰かを殺す道であっても。」
ㅤ殺し合いなんて嫌――先に語った言葉に、何の嘘偽りも無い。だが、それは逃避でしか無かった。殺し合いをやれと言われているのだから、大人の言いつけには従わなければ処分される未来しか待っていない。
ㅤそれに、本当の望みは早季が無事でいることだけ。どんな虚飾であろうとも、胸の内に燃えたぎるこの愛だけは否定させてやるもんか。
ㅤでも、きっとあの子は人を殺さないし殺せない。早季のそういう優しいところを私は好きになったのだ。この世界で生き残れるのは1人だけ。だったら、早季の分まで私が殺さないといけない。
ㅤそしてもし、早季が望んでくれるなら。願いで生き返らせる人は、私を選んでくれたら嬉しいなって――そっと、願いを込めてみる。
【B-6/草原/一日目 深夜】
【秋月真理亜@新世界より】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品 ラーのかがみ@ドラゴンクエストⅦㅤエデンの戦士たちㅤランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:早季を優勝させる。
1.早季が蘇生の願いで私を選んでくれたら嬉しいな。
※ミノシロモドキから世界の真実の一部を聞いた後、不浄猫に襲われる前からの参戦です。
【ラーのかがみ@ドラゴンクエストⅦㅤエデンの戦士たち】
真理亜に支給された道具。モシャスの呪文などで姿を偽っている場合、真実の姿を暴く事が出来るが、それ以外の者にとっては普通の鏡。
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秋月真理亜 |
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最終更新:2021年02月27日 20:01