Erickson&Rossi 円熟の3部作を読む


 ヘイリーは、エリクソンを世に広めるのにあたって、自身の出発点ともなる『戦略的心理療法』の他に、エリクソンの仕事をまとめた2冊の本を世に送りました。
 多くの人を引きつけ、のちにエリクソン財団のトップとなるザイクをエリクソンのもとに走らせた、エリクソンの論文から選りすぐりをまとめたいわゆる「選集」、
Jay Haley(ed.),"Advanced techniques of hypnosis and therapy : selected papers of Milton H. Erickson" (Allyn and Bacon, 1967).
です。
 もう一冊は、さらに多くの人々にエリクソンの治療を紹介し、最晩年の弟子オハンロンをエリクソンの下に走らせた(彼は1975年にヒッピーのトランスパーソナル心理療法家としてキャリアをはじめ、そのあとNLPまで学んでいました)『アンコモンセラピー』です。

 一方、もうひとりの高弟アーネスト・ロッシは、その翻訳が少ないことから(しかも自分独自の仕事となると、あまりにエリクソンから離れてしまっていることから)光が当たりにくいのですが、彼こそが、ヘイリーの「選集」を超えて、エリクソンの論文を集めた4巻本のThe collected papers of Milton H. Erickson on hypnosis(日本ではエリクソンの「全集」として翻訳が進められています)の編者であり、また円熟期のエリクソンに協力して、そのエッセンスをまとめあげた共著3部作の実質的な著者でもあります。
 この3冊の共著は、内容の充実もさることながら、エリクソンの論文を読むよりもはるかにわかりやすい点でも特筆に値します。。
 これは多分、エリクソンが、それまでの催眠研究やさらには催眠についての誤解と闘うために、ひとつの導入技法を論じる際にも、いろんな配慮や反論などを書き添えなければならなかったのに対して、そういった雑多なことに悩まされず、ある種到達した場所から、これまでのエリクソンの仕事をわかりやすくまとめることが、この頃のエリクソンとロッシには可能だったということだと思います。
 この3冊は音声テープなどの音声付録がついていて、これがまたこの本の価値を高めているのですが、いざ翻訳するとなると、映像でないので字幕を入れる訳にも行かず、英語のままつけるのも出版事情から難しく、この先、翻訳化が難しいと思われます。
 そんな訳で、事情があって翻訳が難しいけれど、文章自体は読みやすいこの本を読まない法はないでしょう。
 このカテゴリーでは、以下のエリクソン&ロッシの3部作を読んでいきたいと思います。

1. Milton H. Erickson & Ernest L. Rossi, "Hypnotic Realities: The Induction of Clinical Hypnosis and Forms of Indirect Suggestion"(Irvington , 1981).
2. Milton H. Erickson & Ernest L. Rossi, "Hypnotherapy: An Exploratory Casebook"(Irvington , 1981).
3. Milton H. Erickson & Ernest L. Rossi, "Experiencing Hypnosis: Therapeutic Approaches to Altered States"(Irvington , 1981).

Hypnotic Realitiesは、エリクソンの催眠を全体的に取り上げ、Hypnotherapyは実際のケースにあたってエリクソンのセラピーを掘り下げ、 Experiencing Hypnosisはエリクソンの講演をひとつの軸に、さまざまな技法についての議論を含んでいます。







最終更新:2010年07月11日 00:12