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 国家基準が存在すべきかどうかが、まず大きな問題であるが、存在する場合それを遵守させる手段がとられる。

(ア) 教科書検定制度
 学校教育ではほとんどの場合、「教科書」を使用して教育活動を行う。しかし、これは決してすべての場合ではなく、教科書を使用しない教育活動も少なくない。欧米の歴史教育では、特別に生徒の年齢に合わせて作られた教科書を使用する場合は、むしろ少ないのではないだろうか。大人も読むことを想定した歴史の概説書を使用したり、あるいはさまざまな資料を使いながら教えていく歴史教育のスタイルも珍しくない。私がオランダに滞在中、よく市立図書館には、昼間から小学生が歴史の勉強に来ていた。彼らは普通の歴史書物を数冊開いて、レポート作りをしていた。
 欧米に数百の学校があるシュタイナー教育では、原則として教科書は使用せず、教師と生徒があるテーマを調べながら学習が進む。
 このような中で、小学生・中学生・高校生の年齢段階に合わせた独自の歴史教科書を別々に作成するのは、先進国ではむしろ少ない事例に属するかも知れない。
 もちろん、数学や理科のように、系統的な学習が求められる場合には、各段階に合わせた教科書が作成されるのが普通である。
 さて、教科書とは、日本の法律では以下のようなものを指す。

教科書の発行に関する臨時措置法
(昭和二十三年七月十日法律第百三十二号)
第一条
 この法律は、現在の経済事情にかんがみ、教科書の需要供給の調整をはかり、発行を迅速確実にし、適正な価格を維持して、学校教育の目的達成を容易ならしめることを目的とする。
第二条
 この法律において「教科書」とは、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及びこれらに準ずる学校において、教科課程の構成に応じて組織排列された教科の主たる教材として、教授の用に供せられる児童又は生徒用図書であつて、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名義を有するものをいう。
2 この法律において「発行」とは、教科書を製造供給することをいい、「発行者」とは、発行を担当する者をいう。
 昭和23年の「臨時措置法」が今でも有効であるということの是非は検討しないとして、ここでは学校教育用に編集され、検定を経た図書が教科書であるとされている。

 教科書が国家基準に準じているか、直接確認する制度である。先進国では検定制度を採用しているのは、ドイツと日本であるが、その目的、効果はかなり異なるといわれている。
 ドイツではナチス的な価値観が、教科書の中に入ってくることを防ぐために、内容のチェックが行われるが、日本では戦前的な価値観が温存される傾向がある。教科書訴訟は、その点が争われている。長い訴訟の結果、検定の厳格さや密室性は大分少なくなったと言われているが、むしろ現在の教科書の近似性を生み出していることの是非が問われるだろう。
 いずれにせよ、検定制度は、教育内容を国家が定める、国民の価値観を国家が規制することになる可能性があり、その点の是非が問われてきた。

文部科学省設置法弟四条
十 教科用図書の検定に関すること。
十一 教科用図書その他の教授上用いられる図書の発行及び義務教育諸学校(小学校、中学校、中等教育学校の前期課程並びに盲学校、聾学校及び養護学校の小学部及び中学部をいう。)において使用する教科用図書の無償措置に関すること。

 教科書は使用しなければならないものだろうか。これには、法的に諸説ある。また教育的には別に考えなければならない。
 文部科学省は次の条文をもって、学校教育は教科書を授業において使用する義務があるとしている。

学校教育法
(昭和二十二年三月三十一日法律第二十六号)
第二十一条
 小学校においては、文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない。
○2 前項の教科用図書以外の図書その他の教材で、有益適切なものは、これを使用することができる。
○3 第一項の検定の申請に係る教科用図書に関し調査審議させるための審議会等(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条に規定する機関をいう。以下同じ。)については、政令で定める。

(イ)payment by result
 payment by result とは、イギリスで19世紀に行われた補助金のシステムである。これは現在のナショナル・カリキュラムの実効性を確認するためにも、似たようなことが行われている。
 つまり、学校単位で学力試験を行う。19世紀は単なる学力試験だったが、現在では「ナショナル・カリキュラム」が基準になっている。成績のよい学校に補助金を出すわけだが、これは教育内容の統制としては、効率的である。また、申請した教師には義務が生じるが、成果があがったときには、ボーナスが出る制度も導入されつつある。
 しかし、最近のイギリスの最大の教育問題となっており、1999-2000年の年度には教師の自殺者が2名でた程である。
 アメリカでも州単位で試験を実施し、その成績によって教師に特別ボーナスを支給する制度をとっているところが段々増えてきている。
 現在のイギリスでも賛否両論あるが、19世紀に行われたイギリスの政策は、学校における過度の試験勉強などの弊害が目立つようになり、廃止される結果になった。

(ウ)全国学力テスト
 「全国学力テスト」とは、1960年代に文部省によって、全国の学校に対して、悉皆調査として行われたテストを指す。文部省は県単位での成績を、事実上公表したので、いくつかの県が、学力テストの成績向上のために、ゆがんだ教育体制をとったために、当初からあった批判が増大し、取りやめになった。
 オランダはまったく国家基準が存在しないが、小学生が最終学年で多くが受験するCITOテストという制度がある。その成績を参考にして、その後の進学を決めるのであるが、これはあくまでも参考に過ぎないが、実質的に小学校教育の内容にある程度の規制力があると考えられる。
 ヨーロッパはEUになって、統一的な試験が行われるようになった。
 ドイツの成績が悪かったので、ドイツで深刻な議論がおき、時間数の増大などの改革案が検討されている。

(エ)視察
 自治体の教育当局が直接学校を訪れ、授業の様子を観察し、評価する方法である。学校が公費によって運営される以上、これらが全く行われない国はほとんどないと思われる。日本でも教育委員会からの視察があるときには、学校を綿密に清掃し、生徒たちの応対について、事細かに注意がなされるなど、特別の配慮が徹底されることが、多くの報告書によって批判的に紹介されている。
 近年イギリスでは、有名なサマーヒル学校が、視察を契機にして水準の低さを指摘され、廃校の危機に陥った。結果としては弁護する論者もいて継続しているが。
最終更新:2008年08月04日 21:19