【初出】
禁書SS自作スレ>>798-800
禁書SS自作スレ>>798-800
もう昼だというのに、其の広場は暗闇に包まれていた。
プラスチックの屋根に覆われた路地の中間地点にある広場。
四方をビルに囲まれた其処の左右の端にはバスケットボールのゴールが設置されている。
どうやらストリートバスケなどに使われているのか、幾つかのボールが転がっていた。
その暗闇に包まれている場所には幾つかの人影があった。
その人影の数は丁度十人分。
そして、其の内の一人分を除き、他の人影には共通している事があった。
その全てが地面に倒れ伏しているのだ。
「しっかし参ったぜよ」
ただ一つ立つ人影は、男の声を放つ。
ツンツンとした短い金髪にやや茶色いサングラスをかけた軽そうな大男。
名を土御門・元春という高校生である。
またの名を嘘つき村の住人。様々な場所で活躍している多角スパイである。
土御門は、黒のTシャツと青色のジーンズで包んだ其の身を動かし周りを見渡す。
周囲には黒いスーツを着込んだ九人の男達が倒れ伏していた。
顔にはサングラスが付けられているが、その誰も彼もが印象に残らない。
言ってしまえば、特徴の無い顔をしていた。
土御門はその全員が意識を失っている事を確認してから、同時に男達が目的の品を持っていないか確認。
持っていないのを確認すると同時に、土御門は立ち上がり、その表情を歪めた。
「……触ったら最後、殺すまで追跡する悪夢、か。本当にそんな霊装がこの都市に紛れ込んでいるとしたら――」
最後まで言う前に唇を噛み締める土御門。
その表情は彼の友人達が見たら驚く様な真剣なものだった。
土御門は顎に手を当てて暫し黙考。
結局、取り敢えずはこの男達をなんとかしなければ、という考えに至り、何か縛る物は無いかと周りを見渡し始める。
と、同時に広場に響く水風船が弾ける様な音。
土御門はその音に眉を訝しげに顰め、音のした方向へと振り向いた。
そこには――、
「水……?」
音のした方向、先程まで男達が倒れていた位置にはそれぞれ水溜りが出来ていた。
「なるほど……こいつ等は囮の使い魔というわけだにゃー」
土御門は水溜りへと近づき、そこに残った人型に切り取られた紙を拾う。
その紙の中央には、蛇がのた打ち回ったような記号の様なものが書いてあった。
「古典的な術式……しかもこれは、オレと同じタイプだぜい」
魔術師――陰陽師である土御門は、其れを見て僅かにだが驚きの表情を漏らす。
しかし、次の瞬間、その表情はすぐに引き締められた。
「全く……厄介事を持ち込んでくれるもんぜよ」
血反吐を吐き捨てるが如く空を見上げる土御門。
戦闘の邪魔だと道端に放ってあったオレンジ色の派手なジャケットを拾い、肩に担いだ。
そこで気づいた事が一つ。
「……濡れてるにゃー」
Tシャツがどんどん濡れたジャケットの影響を受けて侵食されていく。
土御門はサングラスを持ち上げなおしてプラスチックの屋根に覆われた路地裏へと向かう。
「覚悟しておくぜよ、犯人。今日の土御門さんは一味違うぜい」
なんだか黒い空気を発する男こと、土御門は更に暗い闇の中へと濡れたジャケットを持って去って行くのであった。
プラスチックの屋根に覆われた路地の中間地点にある広場。
四方をビルに囲まれた其処の左右の端にはバスケットボールのゴールが設置されている。
どうやらストリートバスケなどに使われているのか、幾つかのボールが転がっていた。
その暗闇に包まれている場所には幾つかの人影があった。
その人影の数は丁度十人分。
そして、其の内の一人分を除き、他の人影には共通している事があった。
その全てが地面に倒れ伏しているのだ。
「しっかし参ったぜよ」
ただ一つ立つ人影は、男の声を放つ。
ツンツンとした短い金髪にやや茶色いサングラスをかけた軽そうな大男。
名を土御門・元春という高校生である。
またの名を嘘つき村の住人。様々な場所で活躍している多角スパイである。
土御門は、黒のTシャツと青色のジーンズで包んだ其の身を動かし周りを見渡す。
周囲には黒いスーツを着込んだ九人の男達が倒れ伏していた。
顔にはサングラスが付けられているが、その誰も彼もが印象に残らない。
言ってしまえば、特徴の無い顔をしていた。
土御門はその全員が意識を失っている事を確認してから、同時に男達が目的の品を持っていないか確認。
持っていないのを確認すると同時に、土御門は立ち上がり、その表情を歪めた。
「……触ったら最後、殺すまで追跡する悪夢、か。本当にそんな霊装がこの都市に紛れ込んでいるとしたら――」
最後まで言う前に唇を噛み締める土御門。
その表情は彼の友人達が見たら驚く様な真剣なものだった。
土御門は顎に手を当てて暫し黙考。
結局、取り敢えずはこの男達をなんとかしなければ、という考えに至り、何か縛る物は無いかと周りを見渡し始める。
と、同時に広場に響く水風船が弾ける様な音。
土御門はその音に眉を訝しげに顰め、音のした方向へと振り向いた。
そこには――、
「水……?」
音のした方向、先程まで男達が倒れていた位置にはそれぞれ水溜りが出来ていた。
「なるほど……こいつ等は囮の使い魔というわけだにゃー」
土御門は水溜りへと近づき、そこに残った人型に切り取られた紙を拾う。
その紙の中央には、蛇がのた打ち回ったような記号の様なものが書いてあった。
「古典的な術式……しかもこれは、オレと同じタイプだぜい」
魔術師――陰陽師である土御門は、其れを見て僅かにだが驚きの表情を漏らす。
しかし、次の瞬間、その表情はすぐに引き締められた。
「全く……厄介事を持ち込んでくれるもんぜよ」
血反吐を吐き捨てるが如く空を見上げる土御門。
戦闘の邪魔だと道端に放ってあったオレンジ色の派手なジャケットを拾い、肩に担いだ。
そこで気づいた事が一つ。
「……濡れてるにゃー」
Tシャツがどんどん濡れたジャケットの影響を受けて侵食されていく。
土御門はサングラスを持ち上げなおしてプラスチックの屋根に覆われた路地裏へと向かう。
「覚悟しておくぜよ、犯人。今日の土御門さんは一味違うぜい」
なんだか黒い空気を発する男こと、土御門は更に暗い闇の中へと濡れたジャケットを持って去って行くのであった。
○
『いただきます』
席についた結標・淡希達はのんびりと昼食の挨拶をしていた。
席は窓辺、ガラス張りの大きな窓が真横にあり、外の風景がすぐに見える場所である。
これならば探し人が横切った場合などでもすぐさま対処出来るから、との結標の判断であった。
「そういえば、シスターちゃん、上条ちゃんはどうしたのですかー?」
「んー?」
食事を開始してから数分。
ハンバーガーを頬張りつつ、疑問の声を上げた小萌へと首ごと動かして視線を送るインデックス。
インデックスの口がもごもごと蠢く。
どうやら何かを伝えようとしているようだが、その口の中にある食べ物が邪魔をしているらしい。
「あ、喋るのはキチンと口の中のものを飲み込んでからですよー?」
小萌はその様子に思わず苦笑。
人差し指を立てて、無理矢理食べ物を飲み込もうとするインデックスを制止する。
こうして見ると確かに先生っぽいわね、とそれを見て結標は感心していた。
噂に聞く、熱血チビッコ教師。
その肩書きは間違いではないようだ、と結標も口元にハンバーガーを運ぶ。
その熱血教師の言葉に頷き、インデックスは食べ物をゆっくりと咀嚼し始めた。
それから数十秒経ち、インデックスはようやく口に詰め込んだハンバーガーを飲み込む。
「ぷはっ」
満足そうに息を吐くインデックス。
その膝元ではスフィンクスと呼ばれていた猫がおこぼれに預かっていた。
「口。横についてる」
テーブルに付属していたティッシュを使ってインデックスの口元を拭うのは姫神・秋沙。
切り揃えた前髪に腰辺りまで伸びた黒髪とその身を包む巫女服が特徴の少女だ。
「んんぅ……ありがとう、あいさ」
「どういたしまして」
僅かにだが微笑む姫神と、それに釣られて笑顔になるインデックス。
和やかな雰囲気が流れる中、結標は柔らかい口調で小萌の提示した疑問を少々改竄して引っ張り出した。
「それで……なんであんなところに一人で倒れてたの?」
「それは話すも涙、聞くも涙な話になるんだけど……」
よよよよ、と嘘泣きの芝居を前置きに事情を話し始めるインデックス。
席についた結標・淡希達はのんびりと昼食の挨拶をしていた。
席は窓辺、ガラス張りの大きな窓が真横にあり、外の風景がすぐに見える場所である。
これならば探し人が横切った場合などでもすぐさま対処出来るから、との結標の判断であった。
「そういえば、シスターちゃん、上条ちゃんはどうしたのですかー?」
「んー?」
食事を開始してから数分。
ハンバーガーを頬張りつつ、疑問の声を上げた小萌へと首ごと動かして視線を送るインデックス。
インデックスの口がもごもごと蠢く。
どうやら何かを伝えようとしているようだが、その口の中にある食べ物が邪魔をしているらしい。
「あ、喋るのはキチンと口の中のものを飲み込んでからですよー?」
小萌はその様子に思わず苦笑。
人差し指を立てて、無理矢理食べ物を飲み込もうとするインデックスを制止する。
こうして見ると確かに先生っぽいわね、とそれを見て結標は感心していた。
噂に聞く、熱血チビッコ教師。
その肩書きは間違いではないようだ、と結標も口元にハンバーガーを運ぶ。
その熱血教師の言葉に頷き、インデックスは食べ物をゆっくりと咀嚼し始めた。
それから数十秒経ち、インデックスはようやく口に詰め込んだハンバーガーを飲み込む。
「ぷはっ」
満足そうに息を吐くインデックス。
その膝元ではスフィンクスと呼ばれていた猫がおこぼれに預かっていた。
「口。横についてる」
テーブルに付属していたティッシュを使ってインデックスの口元を拭うのは姫神・秋沙。
切り揃えた前髪に腰辺りまで伸びた黒髪とその身を包む巫女服が特徴の少女だ。
「んんぅ……ありがとう、あいさ」
「どういたしまして」
僅かにだが微笑む姫神と、それに釣られて笑顔になるインデックス。
和やかな雰囲気が流れる中、結標は柔らかい口調で小萌の提示した疑問を少々改竄して引っ張り出した。
「それで……なんであんなところに一人で倒れてたの?」
「それは話すも涙、聞くも涙な話になるんだけど……」
よよよよ、と嘘泣きの芝居を前置きに事情を話し始めるインデックス。
簡潔にインデックスの話を纏めるとこうだ。
今朝方、久方ぶりに外に出る事が出来たので二人で散歩をしていたら、公園で困っているおばあさんを発見。
事情を聞いて見ればおばあさんの飼い猫がどこかに行ってしまったのだという。
『それなら俺達に任せておけ』
と、困るおばあさんを見て耐え切れなかったのか唐突に声を上げる"とうま"。
そうして、おばあさんからその猫の特徴を聞き、捜索を開始した"とうま"とインデックス。
捜索から約三十分。
猫が行きそうな場所を片っ端から調べてようやくそれらしき猫を見つけたインデックス達。
しかし、その猫はインデックス達を見つけると同時に逃げ出してしまった。
思わず追いかけるが、スフィンクスを抱えた状態であるインデックスはそこまでスピードが出せない。
『くそっ!悪い、インデックス!お前は此処で待っててくれ!ぬおおおおおおおおーっ!』
暑苦しい叫び声を上げて駆けていく"とうま"。
インデックスはスフィンクスの身を案じて"とうま"を見送ったのだが―――、
「待っているうちに御腹が空いて来て、倒れていたと」
思わず楽しそうに苦笑する結標。
「うぅ、笑い事じゃないかも。あわきが来なきゃ本当に行き倒れになってたかもしれないんだよ?」
「良かったね。結標先輩が良い人で」
「結標ちゃんみたいな良い子を持てるなんて……先生は貴女の先生が羨ましいですよー」
感謝の視線を向けるインデックスと微笑む姫神と小萌。
正直、素直な感謝の念を向けられると、自分が昔やっていた事を思い出して胸に幾つか矢が刺さる思いだった。
そして、それと同時に結標は小さな違和感を感じた。
違和感の元は先程のインデックスの話だ。
猫とそれを追いかける少年。
その様な構図に結標は会った事がある。
しかも、今日の朝にだ。
恐らくだが、インデックスの言っていた時刻的にも合致しているだろう。
「ねぇ、もしかして、その"とうま"って子。ツンツンの黒い短髪が特徴の?」
「ふえ?」
「結標先輩。あの人を知ってるの?」
「知ってる、というよりも今朝方それっぽい子に会ったんだけど……高校生くらいの男の子よね?」
「えぇ、そうです。私の自慢の教え子なのですよー」
えっへんと胸を張る小萌。
その顔は実に誇らしげだ。
結標はその様子を見て、良い教師ね、と微笑みつつ頷きを一つ。
その表情を真剣なものに変え、両肘をテーブルについてやや腰を落として顔の前で手を組み合わせる。
特に意味はないけれど大事なのは雰囲気だ。
「今朝、ゴミ捨てに行った時のことなんだけど……」
ふんふん、と勢い良く頷くインデックス。余程"とうま"という子が心配らしい。
他の二人も結標の次の言葉を待つ。
その空気が結標の何かを刺激したのか思わず、結標は悪戯心を動かしてしまった。
そう、人が自分の中の悪魔に誘惑されて堕落していくように。
「……いきなり私の胸に飛び込んできたの」
頬に手を当て、出来るだけ顔を赤らめ、恥ずかしそうに言う結標。
今朝方、久方ぶりに外に出る事が出来たので二人で散歩をしていたら、公園で困っているおばあさんを発見。
事情を聞いて見ればおばあさんの飼い猫がどこかに行ってしまったのだという。
『それなら俺達に任せておけ』
と、困るおばあさんを見て耐え切れなかったのか唐突に声を上げる"とうま"。
そうして、おばあさんからその猫の特徴を聞き、捜索を開始した"とうま"とインデックス。
捜索から約三十分。
猫が行きそうな場所を片っ端から調べてようやくそれらしき猫を見つけたインデックス達。
しかし、その猫はインデックス達を見つけると同時に逃げ出してしまった。
思わず追いかけるが、スフィンクスを抱えた状態であるインデックスはそこまでスピードが出せない。
『くそっ!悪い、インデックス!お前は此処で待っててくれ!ぬおおおおおおおおーっ!』
暑苦しい叫び声を上げて駆けていく"とうま"。
インデックスはスフィンクスの身を案じて"とうま"を見送ったのだが―――、
「待っているうちに御腹が空いて来て、倒れていたと」
思わず楽しそうに苦笑する結標。
「うぅ、笑い事じゃないかも。あわきが来なきゃ本当に行き倒れになってたかもしれないんだよ?」
「良かったね。結標先輩が良い人で」
「結標ちゃんみたいな良い子を持てるなんて……先生は貴女の先生が羨ましいですよー」
感謝の視線を向けるインデックスと微笑む姫神と小萌。
正直、素直な感謝の念を向けられると、自分が昔やっていた事を思い出して胸に幾つか矢が刺さる思いだった。
そして、それと同時に結標は小さな違和感を感じた。
違和感の元は先程のインデックスの話だ。
猫とそれを追いかける少年。
その様な構図に結標は会った事がある。
しかも、今日の朝にだ。
恐らくだが、インデックスの言っていた時刻的にも合致しているだろう。
「ねぇ、もしかして、その"とうま"って子。ツンツンの黒い短髪が特徴の?」
「ふえ?」
「結標先輩。あの人を知ってるの?」
「知ってる、というよりも今朝方それっぽい子に会ったんだけど……高校生くらいの男の子よね?」
「えぇ、そうです。私の自慢の教え子なのですよー」
えっへんと胸を張る小萌。
その顔は実に誇らしげだ。
結標はその様子を見て、良い教師ね、と微笑みつつ頷きを一つ。
その表情を真剣なものに変え、両肘をテーブルについてやや腰を落として顔の前で手を組み合わせる。
特に意味はないけれど大事なのは雰囲気だ。
「今朝、ゴミ捨てに行った時のことなんだけど……」
ふんふん、と勢い良く頷くインデックス。余程"とうま"という子が心配らしい。
他の二人も結標の次の言葉を待つ。
その空気が結標の何かを刺激したのか思わず、結標は悪戯心を動かしてしまった。
そう、人が自分の中の悪魔に誘惑されて堕落していくように。
「……いきなり私の胸に飛び込んできたの」
頬に手を当て、出来るだけ顔を赤らめ、恥ずかしそうに言う結標。
時が、止まった。
そのまま、誰も身動きが取れずにきっかり一分が経過。
そして時は動き出す。
そのまま、誰も身動きが取れずにきっかり一分が経過。
そして時は動き出す。
「ちょ、かかか、上条ちゃんがそんな破廉恥なー!?いやするかもしれませんけど!」
「うふふ。私達って。やっぱり救われない」
「とーうーまー……」
「え、えーっと……」
慌てて手を振って自らの教え子の容疑を晴らそうとする小萌と虚ろな目で窓の外を見る姫神。
インデックスに至ってはハンバーガーなどが置いてあったトレイを噛みはじめる始末だ。
「って、インデックスちゃん。それは噛んだらいけませんよー」
「あ、うん。ごめん、こもえ」
「いえいえ」
小萌にツッコミをきっかけに冷静に戻る一同。
そして、インデックスは呼吸を整えてテーブルを叩いて結標の方へと身を乗り出した。
その表情は真剣そのものだ。
「で、どういう事なの、あわき!?」
「あ、いや、えっと……」
ここまで派手にリアクションを取られるとは思っていなかった結標は正直な所どうしたら良いのかわからない状態だ。
オロオロと視線を彷徨わせた後、小萌や姫神の方を見るが、二人もコチラを真剣な眼差しで見ている。
ブルータス、お前もか。
「えと、あの、その……あー!窓の外に巨大怪獣がー!」
もはや何がなんだかわからなくなった結標は思わずそんな事を口走って窓の外を指差す。
そして、固まった。
「もう。結標ちゃん。そんな妙な事を言って会話を濁そうとしても駄目ですよ――って本当になんか出ましたー!?」
結標の言葉を一応確認しようとして振り向き、叫び声を上げる小萌。
それもそのはず。
窓の外では水色の巨人が拳を振り上げていたのだから。
間も無く、振り下ろされる拳。
結標達のいる席へ向けて水色の巨人の拳がガラスの窓を打ち破り、無慈悲に突っ込んだ。
「うふふ。私達って。やっぱり救われない」
「とーうーまー……」
「え、えーっと……」
慌てて手を振って自らの教え子の容疑を晴らそうとする小萌と虚ろな目で窓の外を見る姫神。
インデックスに至ってはハンバーガーなどが置いてあったトレイを噛みはじめる始末だ。
「って、インデックスちゃん。それは噛んだらいけませんよー」
「あ、うん。ごめん、こもえ」
「いえいえ」
小萌にツッコミをきっかけに冷静に戻る一同。
そして、インデックスは呼吸を整えてテーブルを叩いて結標の方へと身を乗り出した。
その表情は真剣そのものだ。
「で、どういう事なの、あわき!?」
「あ、いや、えっと……」
ここまで派手にリアクションを取られるとは思っていなかった結標は正直な所どうしたら良いのかわからない状態だ。
オロオロと視線を彷徨わせた後、小萌や姫神の方を見るが、二人もコチラを真剣な眼差しで見ている。
ブルータス、お前もか。
「えと、あの、その……あー!窓の外に巨大怪獣がー!」
もはや何がなんだかわからなくなった結標は思わずそんな事を口走って窓の外を指差す。
そして、固まった。
「もう。結標ちゃん。そんな妙な事を言って会話を濁そうとしても駄目ですよ――って本当になんか出ましたー!?」
結標の言葉を一応確認しようとして振り向き、叫び声を上げる小萌。
それもそのはず。
窓の外では水色の巨人が拳を振り上げていたのだから。
間も無く、振り下ろされる拳。
結標達のいる席へ向けて水色の巨人の拳がガラスの窓を打ち破り、無慈悲に突っ込んだ。