16
ズガガガァァァァッ!!!
と、莫大な衝撃波が、その線上にあるアスファルトや建物を、全て薙ぎ払っていく。
(ニャロォ……でけぇ攻撃ヲバカスカバカスカ打ちやがって)
聴覚潜り(ノイズキラー)はその攻撃を見つめて、そう思う。
そして、その視線を、その衝撃波を生み出した人物へと向ける。
それは、
「……また外したか」
突き出した拳を引っ込め、指の関節をボキボキ鳴らしている、削板軍覇だった。
どうやらこいつは超能力者(レベル5)の最低位の念動砲弾(アタッククラッシュ)というらしい。
(……これデ最低位かヨ。一方通行《アクセラレータ》とカいう奴とハ死んでモ戦いたくねぇナ)
チッ、と聴覚潜りは小さく舌打ちする。
と、そこで、
「……らぁぁっ!!!」
気合を込めたような大声が響き、そして、
『ウザッてぇっつってンだよぉッ!!』
その場から飛び退りながら、その言葉を放つ聴覚潜り。
本来ならばその言葉だけで軍覇は倒れなければおかしいのだが、そんなことが起きる気配はない。
それどころか、
ッガガガァァァァァァッ!!
と、またその拳から考えられないほどの衝撃波が生み出された。
そのままその衝撃波は直進し、破壊の嵐を生み出す。
聴覚潜りは二回ごろごろんと転がり、何とかその難から逃れた。
その華奢な頬についた泥を手で拭いながら、
(……わっけ分からネェ。なんデあいつにハ、俺ノ居場所ガ曖昧にだガ分かル?)
本来ならば、聴覚潜りの存在は誰にも確認できないはずなのだ。
まぁ、上条はその右手(イマジンブレイカー)があるので例外とする。
だが、
「……なんデテメェは、俺らノ能力ガ効かネェのかナァ!!」
あまり能力が効いていないと思われる軍覇に、聴覚潜りは叫ぶ。
その叫びは妙な封に木霊し、周囲一体に響き渡った。
もしそれを誰かが聞いていれば、100%の確立で即死していただろう。そういう能力なのだ、聴覚潜りは。
なのだが、
「…そこか」
声の出所を聞いたのか、軍覇が今度はためを行わずに拳を突き出した。
聴覚潜りに向けて。
(確かニ、アイツハ俺ノ声ヲ聞いテいる……のニ、何デ死なネェんだヨッ!!?)
その事実をその頭で分析しつつ、やはりその拳の上から聴覚潜りは飛び去る。
今度もやはり、かなりギリギリのところで避けられた。
だが、ギリギリのところだ。
(……いつかハ当たっちマうな。んなことニなりやがったラ、もう負けダ)
忌々しそうな表情を聴覚潜りは作り、そして目を閉じる。
(なんだ、何デ効かネェ。何デあいつにハ、俺ノ能力ガ効かナイ?)
傍から見ればパニックに陥っていそうな思想だが、聴覚潜りは超能力を所持する頭脳で、それを冷静に考える。
だが、その思考を遮り、
ガァァァァァ!!
と、またもや轟音が轟いた。
が、しかし、聴覚潜りは目を閉じたまま、そちらを見ない。
だが、聴覚潜りはその状態のまま、その攻撃を避けた。
そんな、命を落としていたかもしれない回避行動の最中でも、聴覚潜りは考えていた。
(俺ノ能力。声。耳。脳。干渉。操作。影響)
そこまで考えた聴覚潜りは、
と、莫大な衝撃波が、その線上にあるアスファルトや建物を、全て薙ぎ払っていく。
(ニャロォ……でけぇ攻撃ヲバカスカバカスカ打ちやがって)
聴覚潜り(ノイズキラー)はその攻撃を見つめて、そう思う。
そして、その視線を、その衝撃波を生み出した人物へと向ける。
それは、
「……また外したか」
突き出した拳を引っ込め、指の関節をボキボキ鳴らしている、削板軍覇だった。
どうやらこいつは超能力者(レベル5)の最低位の念動砲弾(アタッククラッシュ)というらしい。
(……これデ最低位かヨ。一方通行《アクセラレータ》とカいう奴とハ死んでモ戦いたくねぇナ)
チッ、と聴覚潜りは小さく舌打ちする。
と、そこで、
「……らぁぁっ!!!」
気合を込めたような大声が響き、そして、
『ウザッてぇっつってンだよぉッ!!』
その場から飛び退りながら、その言葉を放つ聴覚潜り。
本来ならばその言葉だけで軍覇は倒れなければおかしいのだが、そんなことが起きる気配はない。
それどころか、
ッガガガァァァァァァッ!!
と、またその拳から考えられないほどの衝撃波が生み出された。
そのままその衝撃波は直進し、破壊の嵐を生み出す。
聴覚潜りは二回ごろごろんと転がり、何とかその難から逃れた。
その華奢な頬についた泥を手で拭いながら、
(……わっけ分からネェ。なんデあいつにハ、俺ノ居場所ガ曖昧にだガ分かル?)
本来ならば、聴覚潜りの存在は誰にも確認できないはずなのだ。
まぁ、上条はその右手(イマジンブレイカー)があるので例外とする。
だが、
「……なんデテメェは、俺らノ能力ガ効かネェのかナァ!!」
あまり能力が効いていないと思われる軍覇に、聴覚潜りは叫ぶ。
その叫びは妙な封に木霊し、周囲一体に響き渡った。
もしそれを誰かが聞いていれば、100%の確立で即死していただろう。そういう能力なのだ、聴覚潜りは。
なのだが、
「…そこか」
声の出所を聞いたのか、軍覇が今度はためを行わずに拳を突き出した。
聴覚潜りに向けて。
(確かニ、アイツハ俺ノ声ヲ聞いテいる……のニ、何デ死なネェんだヨッ!!?)
その事実をその頭で分析しつつ、やはりその拳の上から聴覚潜りは飛び去る。
今度もやはり、かなりギリギリのところで避けられた。
だが、ギリギリのところだ。
(……いつかハ当たっちマうな。んなことニなりやがったラ、もう負けダ)
忌々しそうな表情を聴覚潜りは作り、そして目を閉じる。
(なんだ、何デ効かネェ。何デあいつにハ、俺ノ能力ガ効かナイ?)
傍から見ればパニックに陥っていそうな思想だが、聴覚潜りは超能力を所持する頭脳で、それを冷静に考える。
だが、その思考を遮り、
ガァァァァァ!!
と、またもや轟音が轟いた。
が、しかし、聴覚潜りは目を閉じたまま、そちらを見ない。
だが、聴覚潜りはその状態のまま、その攻撃を避けた。
そんな、命を落としていたかもしれない回避行動の最中でも、聴覚潜りは考えていた。
(俺ノ能力。声。耳。脳。干渉。操作。影響)
そこまで考えた聴覚潜りは、
『……おい精神操作(メンタルコントロール)、念動砲弾とカいう能力者ノ情報寄越せ』
ある考えが浮かび、そして冷や汗も浮かんだ表情を浮かべながら、仲間にそう言った。
(……また、外したな)
削板軍覇はそう考え、突き出した拳を己の下に引き寄せる。
(しかし、何故だ……? まずそもそも姿が見えないのも甚だ疑問だが)
あの男―――オッレルスとの一戦以来、ガラリと変わったその心で軍覇は考える。
(念動砲弾《アタッククラッシュ》で作り出した壁であいつの居所が分かっても、すぐに回避行動に移られるから意味がない。それに、相手だっていつまでも避けているつもりはないだろう)
そう思いながらも、視覚潜り(ノイズキラー)の居場所を探らないわけにはいかない軍覇は、自分の周りに念動力の壁を生み出し、それを『押し広げていく』。
軍覇は、その広がっていく壁に当たる視覚潜りの感触に反応し、そこに向けて拳を放っているのだ。
念動の壁の方は異様に弱い造りにしてあるので、触れられたくらいでは、人間にはそれを察知できない。
なので視覚潜りは、その軍覇のサーチに気付く事ができなかった。
と、また軍覇が、人肌の温度を感じ取った。
「ハッ!」
やはり今回もためを行わず、予備動作なしで一気に拳を、その地点に向かって放つ。
それにより、軍覇の前に構成されていた念動の壁が破壊され、その衝撃波が破壊を生み出していった。
だが、
「くっそガ! なんなんだヨ、その能力ハよぉッ!!」
やはり視覚潜りは、ダメージを感じさせない言葉を、軍覇に向かって吐いた。
それに軍覇は、
削板軍覇はそう考え、突き出した拳を己の下に引き寄せる。
(しかし、何故だ……? まずそもそも姿が見えないのも甚だ疑問だが)
あの男―――オッレルスとの一戦以来、ガラリと変わったその心で軍覇は考える。
(念動砲弾《アタッククラッシュ》で作り出した壁であいつの居所が分かっても、すぐに回避行動に移られるから意味がない。それに、相手だっていつまでも避けているつもりはないだろう)
そう思いながらも、視覚潜り(ノイズキラー)の居場所を探らないわけにはいかない軍覇は、自分の周りに念動力の壁を生み出し、それを『押し広げていく』。
軍覇は、その広がっていく壁に当たる視覚潜りの感触に反応し、そこに向けて拳を放っているのだ。
念動の壁の方は異様に弱い造りにしてあるので、触れられたくらいでは、人間にはそれを察知できない。
なので視覚潜りは、その軍覇のサーチに気付く事ができなかった。
と、また軍覇が、人肌の温度を感じ取った。
「ハッ!」
やはり今回もためを行わず、予備動作なしで一気に拳を、その地点に向かって放つ。
それにより、軍覇の前に構成されていた念動の壁が破壊され、その衝撃波が破壊を生み出していった。
だが、
「くっそガ! なんなんだヨ、その能力ハよぉッ!!」
やはり視覚潜りは、ダメージを感じさせない言葉を、軍覇に向かって吐いた。
それに軍覇は、
ビィィィィィィィィィィ………ン、
と、『耳の方から来る振動』を感じ取る。
と、『耳の方から来る振動』を感じ取る。
そして軍覇は、
(……もう、あいつの能力は、聴覚系能力……みたいなもので決定だな)
平然と、その声を聞いたのにもかかわらず、冷静にそう考えた。
(だが、とすれば……問題は、奴の居場所が確認できない、ということ)
まぁ、肉眼に頼らない方法でならば確認できるのだが、さすがに何の能力もなしに姿を消す、なんていうのはありえないだろう。
だが、そうなると、もっとありえないことが浮上してくる。
それは、
(……まさか、多重能力者《デュアルスキル》……なのか?)
―――幻の存在と謳われた、今ではありえないといわれている現象。
だが、そうでなければ、奴のことの説明がつかないしな……、と軍覇は呟く。
(……しかし、多重能力者のほうも……今まで学園都市の闇が、総力を挙げて『不可能』と導き出した結果であるのも事実……それを垣根聖督は、可能にしたというのか?)
意外に結構裏の事情にも手を出していたりする学園都市第7位は、その情報を駆使して考えていく。
(あの一方通行《アクセラレータ》さえ扱った特例能力者多重調整技術研究所さえも、不可能と叩き出した『多重能力者』。対し、能力を使いもせず、人間の肉眼から逃れている『何らかの方法』。さて、どちらの方が考えられる?)
軍覇はそう考え、そして、
(……もう、あいつの能力は、聴覚系能力……みたいなもので決定だな)
平然と、その声を聞いたのにもかかわらず、冷静にそう考えた。
(だが、とすれば……問題は、奴の居場所が確認できない、ということ)
まぁ、肉眼に頼らない方法でならば確認できるのだが、さすがに何の能力もなしに姿を消す、なんていうのはありえないだろう。
だが、そうなると、もっとありえないことが浮上してくる。
それは、
(……まさか、多重能力者《デュアルスキル》……なのか?)
―――幻の存在と謳われた、今ではありえないといわれている現象。
だが、そうでなければ、奴のことの説明がつかないしな……、と軍覇は呟く。
(……しかし、多重能力者のほうも……今まで学園都市の闇が、総力を挙げて『不可能』と導き出した結果であるのも事実……それを垣根聖督は、可能にしたというのか?)
意外に結構裏の事情にも手を出していたりする学園都市第7位は、その情報を駆使して考えていく。
(あの一方通行《アクセラレータ》さえ扱った特例能力者多重調整技術研究所さえも、不可能と叩き出した『多重能力者』。対し、能力を使いもせず、人間の肉眼から逃れている『何らかの方法』。さて、どちらの方が考えられる?)
軍覇はそう考え、そして、
突然、華奢な腕が、軍覇の顔―――いや、耳を襲った。
「なっ!?」
唐突なその出来事に対し、軍覇はとっさに左手でその腕を払おうとする。
だが、それが届くよりも早く、その華奢な腕は軍覇の耳を襲った。
ギンッ!
と甲高い音が、軍覇の耳から鳴る。
それは同時に、
唐突なその出来事に対し、軍覇はとっさに左手でその腕を払おうとする。
だが、それが届くよりも早く、その華奢な腕は軍覇の耳を襲った。
ギンッ!
と甲高い音が、軍覇の耳から鳴る。
それは同時に、
軍覇の生命線が切れたことを意味していた。
(……おし。ヤったカ!!!)
その細い指に伝わってきた感触を確認し、聴覚潜り(ノイズキラー)は思った。
そして、つまりそれは軍覇の硬い装甲が破れたことを意味しているのも、聴覚潜りには分かっていた。
次の瞬間、
その細い指に伝わってきた感触を確認し、聴覚潜り(ノイズキラー)は思った。
そして、つまりそれは軍覇の硬い装甲が破れたことを意味しているのも、聴覚潜りには分かっていた。
次の瞬間、
『やぁっトテメェヲ殺せるようダぜぇ? 念動砲弾《アタッククラッシュ》さんよぉッ!!』
「ぐぁッ!!?」
その声を直に聞いた軍覇は、耳ではなく頭を押さえた。
頭が、ひどく痛い。
いや……痛い、なんてレベルではない。もはや高温で脳が溶かされているかのような感覚が、軍覇の内を駆け巡っていた。
「がぁぁぁぁぁッ!!!?」
さらに激しくなる痛みに、何も考えられずに地面をのた打ち回る軍覇。
それを上から、満足そうな笑みを灯しながら見つめている聴覚潜り。
「クククッ! いやぁ、愉快愉快! 今まデ散々てこずらせテきタ敵ガ、こんな風ニのた打ち回っテるんダもんなぁッ!!」
聴覚潜りは甲高く笑いながら、必殺の『声』ではなく、ただの武器の足や手で、さらに軍覇を痛みつける。
それに軍覇は、脳内の焼けるような痛みと、身体を鈍く走る痛み、両方に絶叫していた。
「ギィャァッハハッアァァッ!!! いいねいいねぇ、こうやっテ自分ノ手デ傷つけルってのもさぁっ!!」
裂けるような笑みをその顔に浮かばせながら、聴覚潜りの攻撃はさらに増していく。
そんな攻撃に、軍覇はなすすべなくただ体を跳ね回すだけだ。
数分間、軍覇の叫びと聴覚潜りの笑い声、そして鈍い音だけがその空間に響いていた。
「……ふぅ」
一息つくように、聴覚潜りはその手を止めた。
軍覇の方に目を向けてみると、もはや声を上げるほどの体力も残っていないようだった。
その身体には、生々しい傷跡がいくつも残っている。特定の箇所に限っては、骨まで見えているようなところさえもあった。
どかっ、とその場に胡坐をかいて座り、聴覚潜りは楽しそうにそれを見つめる。
「……トいっテも、流石ニ疲れテきタしなぁ……もう、これハやめダ」
そう言い、聴覚潜りはその場に腕を投げ出した。
そして、ガサゴソとその腕が動く。
再びその腕が掲げられたとき、その中に握られていたものは―――
「これ、テメェガ勝手ニ作り出しタやつダよなぁ? ハハァッ! 無様ダなぁ、自分ノ能力ガ敵ニ使われルなんテよぉッ!!!」
軍覇の念動砲弾の衝撃波で削られた、アスファルトでできた鋭利なナイフが、その華奢な手に握られていた。
それを楽しそうに、聴覚潜りは手の中で弄ぶ。
「さぁってぇ……どこかラやっテやろうッカなぁっ!!?」
狂気に満ちた笑みを浮かべ、そしてその凶器を高く振りかぶる。
次の瞬間、
その声を直に聞いた軍覇は、耳ではなく頭を押さえた。
頭が、ひどく痛い。
いや……痛い、なんてレベルではない。もはや高温で脳が溶かされているかのような感覚が、軍覇の内を駆け巡っていた。
「がぁぁぁぁぁッ!!!?」
さらに激しくなる痛みに、何も考えられずに地面をのた打ち回る軍覇。
それを上から、満足そうな笑みを灯しながら見つめている聴覚潜り。
「クククッ! いやぁ、愉快愉快! 今まデ散々てこずらせテきタ敵ガ、こんな風ニのた打ち回っテるんダもんなぁッ!!」
聴覚潜りは甲高く笑いながら、必殺の『声』ではなく、ただの武器の足や手で、さらに軍覇を痛みつける。
それに軍覇は、脳内の焼けるような痛みと、身体を鈍く走る痛み、両方に絶叫していた。
「ギィャァッハハッアァァッ!!! いいねいいねぇ、こうやっテ自分ノ手デ傷つけルってのもさぁっ!!」
裂けるような笑みをその顔に浮かばせながら、聴覚潜りの攻撃はさらに増していく。
そんな攻撃に、軍覇はなすすべなくただ体を跳ね回すだけだ。
数分間、軍覇の叫びと聴覚潜りの笑い声、そして鈍い音だけがその空間に響いていた。
「……ふぅ」
一息つくように、聴覚潜りはその手を止めた。
軍覇の方に目を向けてみると、もはや声を上げるほどの体力も残っていないようだった。
その身体には、生々しい傷跡がいくつも残っている。特定の箇所に限っては、骨まで見えているようなところさえもあった。
どかっ、とその場に胡坐をかいて座り、聴覚潜りは楽しそうにそれを見つめる。
「……トいっテも、流石ニ疲れテきタしなぁ……もう、これハやめダ」
そう言い、聴覚潜りはその場に腕を投げ出した。
そして、ガサゴソとその腕が動く。
再びその腕が掲げられたとき、その中に握られていたものは―――
「これ、テメェガ勝手ニ作り出しタやつダよなぁ? ハハァッ! 無様ダなぁ、自分ノ能力ガ敵ニ使われルなんテよぉッ!!!」
軍覇の念動砲弾の衝撃波で削られた、アスファルトでできた鋭利なナイフが、その華奢な手に握られていた。
それを楽しそうに、聴覚潜りは手の中で弄ぶ。
「さぁってぇ……どこかラやっテやろうッカなぁっ!!?」
狂気に満ちた笑みを浮かべ、そしてその凶器を高く振りかぶる。
次の瞬間、
「よォ。なかなかに楽しそうなことやってンじゃねェかァ。俺も混ぜてくンねェかなァ?」
ピタリ、とその腕が止まった。
そして聴覚潜りは、
『ざぁっんねん。これさぁ、早い者勝ちノ先着お一人様まデなんだよッ!』
正体不明の敵に向け、ためらわずに死を唱えた。
軍覇にはいたぶれる程度に体力を残す声を放ったが、正体不明の敵には手加減無しだ。
それを聞いたものは、一人の例外もなく、身体の内側から、内臓や骨、筋肉、脂肪などをぶちまけ、惨殺死体よりも酷い死に方を喫する。
クククッ、と聴覚潜りは笑みを漏らす。
が、
(……そういやぁ、それだっタらこの野郎モ死んじマうじゃねぇカヨ。チッ、また誰かヲ探スか)
そう思い、軍覇の爆破に巻き込まれるのはごめんなので、聴覚潜りはその場から立ち去ろうとした。
だが、
「ああ?」
一向に、軍覇の身体がどうこうなる兆しはない。
いや、それどころか、今ではもう、聴覚潜りの能力の影響が消えたかのように、ある程度息が整ってきていた。
(……なんだぁ?)
聴覚潜りはそう思い、そして、
(……ま、て。そういや、まだ『アイツ』ノ叫び声ガ聞こえテねぇぞ……)
恐る恐る、その首を後ろに向けた。
そこにいたのは、
そして聴覚潜りは、
『ざぁっんねん。これさぁ、早い者勝ちノ先着お一人様まデなんだよッ!』
正体不明の敵に向け、ためらわずに死を唱えた。
軍覇にはいたぶれる程度に体力を残す声を放ったが、正体不明の敵には手加減無しだ。
それを聞いたものは、一人の例外もなく、身体の内側から、内臓や骨、筋肉、脂肪などをぶちまけ、惨殺死体よりも酷い死に方を喫する。
クククッ、と聴覚潜りは笑みを漏らす。
が、
(……そういやぁ、それだっタらこの野郎モ死んじマうじゃねぇカヨ。チッ、また誰かヲ探スか)
そう思い、軍覇の爆破に巻き込まれるのはごめんなので、聴覚潜りはその場から立ち去ろうとした。
だが、
「ああ?」
一向に、軍覇の身体がどうこうなる兆しはない。
いや、それどころか、今ではもう、聴覚潜りの能力の影響が消えたかのように、ある程度息が整ってきていた。
(……なんだぁ?)
聴覚潜りはそう思い、そして、
(……ま、て。そういや、まだ『アイツ』ノ叫び声ガ聞こえテねぇぞ……)
恐る恐る、その首を後ろに向けた。
そこにいたのは、
「なンだよ、今ので終いかァ? ッたく、人造超能力者(レベル5)ってのはここまで止まりかよ」
正体不明の、敵だった。
意識が朦朧とする中……というよりも、半分死にかけの中、軍覇は『それ』を見た。
『それ』は、聴覚潜り(ノイズキラー)の必殺である声を全て無効にし、何事もなかったかのようにこちらに歩いてきている。
『それ』は、聴覚潜りの必殺の声の影響によって壊れかかっている軍覇の精神を元通りにし、それでも、ただ禍々しく笑ってこちらに近づいてきている。
『それ』は、
『それ』は、聴覚潜り(ノイズキラー)の必殺である声を全て無効にし、何事もなかったかのようにこちらに歩いてきている。
『それ』は、聴覚潜りの必殺の声の影響によって壊れかかっている軍覇の精神を元通りにし、それでも、ただ禍々しく笑ってこちらに近づいてきている。
『それ』は、
ただ白く、地獄のように白く堕ちた、地獄の底に白く住まう……悪魔のような者だった。
軍覇は、彼の名を知っている。
「……アクセラ……レー…タ」
学園都市第1位の能力者の名を、もはや動きそうにもない口で呟く。
彼は、ただ最強として君臨するだけであり、
彼は、ただ悪魔として君臨するだけであり、
彼は、
「……アクセラ……レー…タ」
学園都市第1位の能力者の名を、もはや動きそうにもない口で呟く。
彼は、ただ最強として君臨するだけであり、
彼は、ただ悪魔として君臨するだけであり、
彼は、
ただ、軍覇を救うために君臨しているだけであった。
(……一方通行《アクセラレータ》……か)
最後の意識の中、軍覇は曖昧な頭でそう思い、そして意識を閉ざした。
最後の意識の中、軍覇は曖昧な頭でそう思い、そして意識を閉ざした。
そいつは、ただただこっちに近づいてきているだけだ。
だが、それだけのはずなのに、たったそれだけのはずなのに。
聴覚潜りの額から、汗が止まることはなかった。
(……な、んダヨ……コイツ。俺ノ能力ヲ、あっさり一蹴しやガっテ……しかも、そこニ転がっテいル奴ノことも……助けタ、ッぽイしナ)
ジリジリ、と聴覚潜りは後ずさりする。
(とにかく、コイツハダメダ。洒落んなんネェ。馬鹿げテる。こんな奴相手ニしてタら、命ガいくつあっテも足りネェッてんダよッ!!)
そう心の中で叫び、どうにかして逃走ルートを、頭の中で組み立てていく聴覚潜り。
そう考えてしまうのも仕方ないだろう。彼の必殺であるはずの『声』が、まったく効かなかったのだから。
しかも相手は、完璧にこちらの居場所が分かっている。なぜかは知らないが、あいつらの能力が効いていないようなのだ。
そんな相手と戦えば、一瞬で地理になってしまうのがオチだろう。
それに、どうやら軍覇はアイツの身内のようだ。あいつが軍覇を救ったらしいことから、それが伺える。
……身内をこんな風にされといて、黙っている奴が果たして何人いるだろうか?
(クッソ……なんなんダヨ、ッタクッ!!)
一人で悪態をつき、一方通行から目を離さずに、聴覚潜りは機会を伺っている。
と、そんな聴覚潜りに、一方通行が軽いノリで言った。
「ああ、そンなに気ィ張り詰めなくて良いぜェ? 確かにそいつは身内みてェなもンだが、俺はただの戦力としてしか見ちゃいねェ」
もちろん聴覚潜りは、そんな言葉に耳を貸すことはない。
それも気にせず、一方通行は続けた。
「だからさァ、別に俺は怒っても悲しンでも喜ンでもないわけよ。けどよ」
一方通行はそこで一度言葉を切り、面倒そうに首の間接をゴキゴキ鳴らした。
そして、
だが、それだけのはずなのに、たったそれだけのはずなのに。
聴覚潜りの額から、汗が止まることはなかった。
(……な、んダヨ……コイツ。俺ノ能力ヲ、あっさり一蹴しやガっテ……しかも、そこニ転がっテいル奴ノことも……助けタ、ッぽイしナ)
ジリジリ、と聴覚潜りは後ずさりする。
(とにかく、コイツハダメダ。洒落んなんネェ。馬鹿げテる。こんな奴相手ニしてタら、命ガいくつあっテも足りネェッてんダよッ!!)
そう心の中で叫び、どうにかして逃走ルートを、頭の中で組み立てていく聴覚潜り。
そう考えてしまうのも仕方ないだろう。彼の必殺であるはずの『声』が、まったく効かなかったのだから。
しかも相手は、完璧にこちらの居場所が分かっている。なぜかは知らないが、あいつらの能力が効いていないようなのだ。
そんな相手と戦えば、一瞬で地理になってしまうのがオチだろう。
それに、どうやら軍覇はアイツの身内のようだ。あいつが軍覇を救ったらしいことから、それが伺える。
……身内をこんな風にされといて、黙っている奴が果たして何人いるだろうか?
(クッソ……なんなんダヨ、ッタクッ!!)
一人で悪態をつき、一方通行から目を離さずに、聴覚潜りは機会を伺っている。
と、そんな聴覚潜りに、一方通行が軽いノリで言った。
「ああ、そンなに気ィ張り詰めなくて良いぜェ? 確かにそいつは身内みてェなもンだが、俺はただの戦力としてしか見ちゃいねェ」
もちろん聴覚潜りは、そんな言葉に耳を貸すことはない。
それも気にせず、一方通行は続けた。
「だからさァ、別に俺は怒っても悲しンでも喜ンでもないわけよ。けどよ」
一方通行はそこで一度言葉を切り、面倒そうに首の間接をゴキゴキ鳴らした。
そして、
「ただ、ちょっとしたウゼェ奴から、テメェを殺せって言われちまってるもンでさァ。だから、悪ィが死ンでもらうぜ」
次の瞬間、
ドンッ!
と、アスファルトが爆発するような音が、周囲に響いた。
ドンッ!
と、アスファルトが爆発するような音が、周囲に響いた。
※ グロテスクな表現が、多少なりあります。ご注意ください。
溶ける。
私の周りに存在している物、全てが。
アスファルトも、石も、鉄も、金属も、建物も、地面も、空も、空気も。
私も。
私は、ろうそくが高熱で溶けていくような状態の腕を見つめる。
それは、もはや腕と呼べるものじゃない。
ドロドロに溶けたアメのようなものが、少しだけ残っている骨を通り、ドロドロ、と地面に流れていく。
その地面も、もう溶け始めていて。
その手で、地面を触ろうとする。
だがもちろん、そんなことできるはずがない。どちらも溶けているのだから、まともな感触など伝わってこない。
と、その時、
ドロォッ、と、髪の毛がベッタリとこぶりついた頭の皮膚が、そのままの状態で溶けた。
そしてそれは、私の目の前を通り過ぎて、地面へ落ちる。そして溶ける。
地獄。
これを形容するには、それがもっとも相応しいだろう。
その状況に、私は、
私の周りに存在している物、全てが。
アスファルトも、石も、鉄も、金属も、建物も、地面も、空も、空気も。
私も。
私は、ろうそくが高熱で溶けていくような状態の腕を見つめる。
それは、もはや腕と呼べるものじゃない。
ドロドロに溶けたアメのようなものが、少しだけ残っている骨を通り、ドロドロ、と地面に流れていく。
その地面も、もう溶け始めていて。
その手で、地面を触ろうとする。
だがもちろん、そんなことできるはずがない。どちらも溶けているのだから、まともな感触など伝わってこない。
と、その時、
ドロォッ、と、髪の毛がベッタリとこぶりついた頭の皮膚が、そのままの状態で溶けた。
そしてそれは、私の目の前を通り過ぎて、地面へ落ちる。そして溶ける。
地獄。
これを形容するには、それがもっとも相応しいだろう。
その状況に、私は、
「……全ッ然、甘いわね……こんなんで私の意識をぶっ飛ばすつもり?」
そう呟いた。
すると次の瞬間、
周囲の光景が、ガラリと変わった。
そこは、何も溶けてはいない、普通の光景。
普通にアスファルトだってあるし、地面も溶けてなどいない。建物だって同じだ。
もちろんのことだが、私も無事だ。
それを確認し、私はニヤリと笑った。
「こっちは精神系能力の最高位よ? こんなもの、ただのグロ好きの変人でも耐えられる」
先ほどの光景を、鼻で笑い飛ばす。
そして、
すると次の瞬間、
周囲の光景が、ガラリと変わった。
そこは、何も溶けてはいない、普通の光景。
普通にアスファルトだってあるし、地面も溶けてなどいない。建物だって同じだ。
もちろんのことだが、私も無事だ。
それを確認し、私はニヤリと笑った。
「こっちは精神系能力の最高位よ? こんなもの、ただのグロ好きの変人でも耐えられる」
先ほどの光景を、鼻で笑い飛ばす。
そして、
『……ふむ。本当に、そのようですね……』
頭の中に、直接声が叩き込まれる。
それのメカニズムは理解できていないが、とりあえず害がないものだ、ってことは分かっている。もしそうなら、とっくに殺しているはずだ。
なので私はそちらには精神を注がず、逆探に専念する。
それに相手も、もちろんのことそれを防ごうとしてきた。
唐突に、身体が破裂した。
文字通り、私の身体が破裂した。身体の中心に仕込まれた爆弾が、爆発したかのように。
それにより私の身体は飛び散り、顔のパーツ、足の爪、内臓の一片、脳の神経……身体を構成する全てに散り散りに分かれ、周囲に転がっていた。
こんな情景、B級ホラー映画でも取り扱わないだろう。
それをマジマジと見せ付けられた私は、
「だから、想像できる範囲のことだったら、なんでもないわけよ。ほら、逆探終わっちゃうわよ?」
やはり嘲笑しながらそう言って、そして、
それのメカニズムは理解できていないが、とりあえず害がないものだ、ってことは分かっている。もしそうなら、とっくに殺しているはずだ。
なので私はそちらには精神を注がず、逆探に専念する。
それに相手も、もちろんのことそれを防ごうとしてきた。
唐突に、身体が破裂した。
文字通り、私の身体が破裂した。身体の中心に仕込まれた爆弾が、爆発したかのように。
それにより私の身体は飛び散り、顔のパーツ、足の爪、内臓の一片、脳の神経……身体を構成する全てに散り散りに分かれ、周囲に転がっていた。
こんな情景、B級ホラー映画でも取り扱わないだろう。
それをマジマジと見せ付けられた私は、
「だから、想像できる範囲のことだったら、なんでもないわけよ。ほら、逆探終わっちゃうわよ?」
やはり嘲笑しながらそう言って、そして、
「いらっしゃい。想像もつかない、私が支配する世界へ」
べつにその場所は、特別おかしいというわけではない。
ただ、二人の少女が対峙しているだけだ。
一人のほうは、冷酷に整った端麗な顔。その細い口は皮肉気に歪み、黒い瞳は目の前の少女を睨みつけている。
もう一人のほうは、全くといっていいほど、感情が捉えられない、無表情な顔。その口も軽く閉ざされていて、瞼も閉じていた。
はたから見れば、少し興味をそそるくらいの空間でしかない。
しかし、
ただ、二人の少女が対峙しているだけだ。
一人のほうは、冷酷に整った端麗な顔。その細い口は皮肉気に歪み、黒い瞳は目の前の少女を睨みつけている。
もう一人のほうは、全くといっていいほど、感情が捉えられない、無表情な顔。その口も軽く閉ざされていて、瞼も閉じていた。
はたから見れば、少し興味をそそるくらいの空間でしかない。
しかし、
一度、その世界に入れば、ほとんどの者は発狂してしまうだろう。
それが、彼女たちの創る世界だ。
その世界は、地獄とは呼べないであろう。
地獄などという表現では、生温すぎる。
もっと、人間では想像もつかないほどの、何か。
一番考えたくないからこそ、自分の内に隠しておきたい、何か。
それが蠢いているのが、彼女たちの創る世界。
その世界は、地獄とは呼べないであろう。
地獄などという表現では、生温すぎる。
もっと、人間では想像もつかないほどの、何か。
一番考えたくないからこそ、自分の内に隠しておきたい、何か。
それが蠢いているのが、彼女たちの創る世界。
がぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?
という声が、その世界に響く。
しかし、それに耳を傾けるものは、一人とていない。
そんなことに耳を傾けていれば、この世界全てを気にしなければならないからだ。
その声は、この世界を創っている『音』なのだ。
叫び声ではなく、音。
それを叫んでいるのは、顔面を恐怖で染め上げている、頬が痩せこけてほとんど皮と骨しかないような男。
そんな男が象っているのは、音と、そしてもう一つある。
地面、だ。
その男たちが必死にもがいている『それ』が、その世界の地面と化している。
顔が地面と化していたり、腕が地面と化していたり、腹が地面と化していたり……
そんなこと、普通の人間ならばまずできないだろう。必死に助けを求めている者の上に乗れ、と言われているようなものだ。
しかしその男たちは、そんな些細なことを気にしない二人の少女の靴に、顔面や腕を踏みつけられていた。
さらに、
カサカサカサッ、と何かが顔面の上を通り過ぎる感触が、その肌と呼べるのかすら分からない身体に伝わってくる。
それの正体は、
という声が、その世界に響く。
しかし、それに耳を傾けるものは、一人とていない。
そんなことに耳を傾けていれば、この世界全てを気にしなければならないからだ。
その声は、この世界を創っている『音』なのだ。
叫び声ではなく、音。
それを叫んでいるのは、顔面を恐怖で染め上げている、頬が痩せこけてほとんど皮と骨しかないような男。
そんな男が象っているのは、音と、そしてもう一つある。
地面、だ。
その男たちが必死にもがいている『それ』が、その世界の地面と化している。
顔が地面と化していたり、腕が地面と化していたり、腹が地面と化していたり……
そんなこと、普通の人間ならばまずできないだろう。必死に助けを求めている者の上に乗れ、と言われているようなものだ。
しかしその男たちは、そんな些細なことを気にしない二人の少女の靴に、顔面や腕を踏みつけられていた。
さらに、
カサカサカサッ、と何かが顔面の上を通り過ぎる感触が、その肌と呼べるのかすら分からない身体に伝わってくる。
それの正体は、
男たちと同じように痩せ細った男の、生首だった。
それは、その切り口から大量の血液を噴射させながら、ある一点へと動いている。
いや、正確には『動かされている』。
その男の首の切り口の下に、何かがいる。
それは、得体の知れない蟲のような生き物。
それは、身体がどこにあるのかも分からず、ただ細い糸が何本も集まったような毛のような部分で男たちの首を持ち上げ、同じように糸のような、本来ならば下半身と呼ぶべきであろう場所で、男たちの顔面の上を移動している。
そしてその下半身と呼ぶべき場所には、ある一つの大きな目玉が付いている。
それは上から見ると全く分からないのだが、下から見上げる時のみ存在しうる。
それが男の顔の上を通り過ぎるたび、まるで主婦のような目をしてその男たちを見るのだ。
まるで、どれが一番いい食材か、品定めするかのような目で。
いや、正確には『動かされている』。
その男の首の切り口の下に、何かがいる。
それは、得体の知れない蟲のような生き物。
それは、身体がどこにあるのかも分からず、ただ細い糸が何本も集まったような毛のような部分で男たちの首を持ち上げ、同じように糸のような、本来ならば下半身と呼ぶべきであろう場所で、男たちの顔面の上を移動している。
そしてその下半身と呼ぶべき場所には、ある一つの大きな目玉が付いている。
それは上から見ると全く分からないのだが、下から見上げる時のみ存在しうる。
それが男の顔の上を通り過ぎるたび、まるで主婦のような目をしてその男たちを見るのだ。
まるで、どれが一番いい食材か、品定めするかのような目で。
そうしながらワサワサと気味悪く蠢く蟲たちは、男の生首を抱えたままある一点へと集っていく。
その一点にたつ者は、
その一点にたつ者は、
ゴリバリ、と男の生首を、あまり感情が宿っていない顔で食している、巨体を持つ男だった。
その者の姿は、筋肉質であり巨大。
身に纏っているのは、薄い布のような綿。
そしてその顔の表情は、変化に欠ける憤怒の表情。
さらに、その口から滴り落ちるのは、完璧な赤、というわけではなく、唾液、男の汗、脂肪、先程の蟲の毛のような部分、そして気持ちの悪い緑色の、ネットリとした液体……さまざまなものが含まれ、もはやネットリとした感触を伝えてくる、変色した、男たちの血。
その憤怒の巨人は、何食わぬ顔で肉と、いくらか骨を食い潰した男の頭蓋骨をそこらに投げ捨てると、近くでまって蟲ごと男の生首を掴み、そしてそれを、やはり何食わぬ顔で、それを口へと運んだ。
キーッ!? と甲高い泣き声が、男の口元からする。おそらく、一緒に口へと運ばれた蟲のものだろう。
だがしかし、巨人はそれをまったく気にせず、躊躇することなく、蟲ごと男の生首に噛り付いた。
その口から覗くのは、もはや鋭いナイフを無理矢理顎に突き刺したかのような、鋭利な犬歯。
それを以ってして巨人は生首に噛り付き、そして勢いよく、それを噛み千切った。
身に纏っているのは、薄い布のような綿。
そしてその顔の表情は、変化に欠ける憤怒の表情。
さらに、その口から滴り落ちるのは、完璧な赤、というわけではなく、唾液、男の汗、脂肪、先程の蟲の毛のような部分、そして気持ちの悪い緑色の、ネットリとした液体……さまざまなものが含まれ、もはやネットリとした感触を伝えてくる、変色した、男たちの血。
その憤怒の巨人は、何食わぬ顔で肉と、いくらか骨を食い潰した男の頭蓋骨をそこらに投げ捨てると、近くでまって蟲ごと男の生首を掴み、そしてそれを、やはり何食わぬ顔で、それを口へと運んだ。
キーッ!? と甲高い泣き声が、男の口元からする。おそらく、一緒に口へと運ばれた蟲のものだろう。
だがしかし、巨人はそれをまったく気にせず、躊躇することなく、蟲ごと男の生首に噛り付いた。
その口から覗くのは、もはや鋭いナイフを無理矢理顎に突き刺したかのような、鋭利な犬歯。
それを以ってして巨人は生首に噛り付き、そして勢いよく、それを噛み千切った。
ブチブチッ! と、人間の細胞やら筋肉、繊維が切れる生々しい音が、その場に響いた。
それにより、生首はさらに裂け、そして新たにできた切り口から、さらに大量の血が噴射する。
そして男は、あろうことかその首の切り口を、大口を空けて構えている、自分の口へと向けた。
ドバァァァーッ、と噴射されるその人間の本物の血を、まるで酒でも飲むかのように、快楽に染まった顔で巨人は飲む。
そして巨人は、血があまり出てこなくなったのを見て、イラついた表情で、乱暴に生首を揺すった。
しかしその度合いが激しすぎたのか、またもやブチリ、という音が、その生首から聞こえた。
髪の毛を鷲掴みにしていた巨人の手から、男の生首が、ゴロンと転がり落ちる。
巨人がそちらに目を向けると、髪の毛がほとんどついていなかった。
そして、巨人は自分が手にしている物を見つめる。
それは、別になんら不思議のない、普通の男の短い髪の毛だ。
そして男は、あろうことかその首の切り口を、大口を空けて構えている、自分の口へと向けた。
ドバァァァーッ、と噴射されるその人間の本物の血を、まるで酒でも飲むかのように、快楽に染まった顔で巨人は飲む。
そして巨人は、血があまり出てこなくなったのを見て、イラついた表情で、乱暴に生首を揺すった。
しかしその度合いが激しすぎたのか、またもやブチリ、という音が、その生首から聞こえた。
髪の毛を鷲掴みにしていた巨人の手から、男の生首が、ゴロンと転がり落ちる。
巨人がそちらに目を向けると、髪の毛がほとんどついていなかった。
そして、巨人は自分が手にしている物を見つめる。
それは、別になんら不思議のない、普通の男の短い髪の毛だ。
その先端にこぶりついている、人間の薄い頭皮を除きさえすれば。
随分と皮膚がついてきたようで、ブヨブヨとした脂肪の塊が、その先端についているのが確認できる。
それは淡いレモン色のような色を持っていて、しかしそれで、丸で警戒色のような感じを放っていた。
それを見た巨人は、
イラついた表情でその脂肪を髪の毛からむしりとり、それを口へと放り込んだ。
男の口の中から、ぐっちゃぐっちゃ、と丸で巨大なガムを噛んでいるかのような音が聞こえる。
しかし男は、すぐに顔を顰めて、やはりガムを吐くかのように、口の中にはいっていた『モノ』を吐き捨てた。
それは、もはやなんと表現すればいいのか分からない、ただ無残に切り裂かれている『何か』としか表現できない物体だった。
普通なら、そんなモノはどんな事があっても目にはしたくないだろう。
だがしかし、巨人の近くで待機していた蟲たちは、男の生首をその場に捨て、キーッ! と甲高い音を鳴らしながらソレに群がる。
その細い脚のようなイトを上手に使い、蟲たちは意外に綺麗にその何かを切断し、各々平等に行き渡るように分けていく。
そしてすぐに、その瞳が裂け、獰猛な肉食獣のような口が現れ、それを貪り始めた。
バリバリ、ぐちゃぐちゃ、キーキー、という気味の悪い音のみが、辺りを包みこむ。
だがしかし、それも長くは続かない。
それは淡いレモン色のような色を持っていて、しかしそれで、丸で警戒色のような感じを放っていた。
それを見た巨人は、
イラついた表情でその脂肪を髪の毛からむしりとり、それを口へと放り込んだ。
男の口の中から、ぐっちゃぐっちゃ、と丸で巨大なガムを噛んでいるかのような音が聞こえる。
しかし男は、すぐに顔を顰めて、やはりガムを吐くかのように、口の中にはいっていた『モノ』を吐き捨てた。
それは、もはやなんと表現すればいいのか分からない、ただ無残に切り裂かれている『何か』としか表現できない物体だった。
普通なら、そんなモノはどんな事があっても目にはしたくないだろう。
だがしかし、巨人の近くで待機していた蟲たちは、男の生首をその場に捨て、キーッ! と甲高い音を鳴らしながらソレに群がる。
その細い脚のようなイトを上手に使い、蟲たちは意外に綺麗にその何かを切断し、各々平等に行き渡るように分けていく。
そしてすぐに、その瞳が裂け、獰猛な肉食獣のような口が現れ、それを貪り始めた。
バリバリ、ぐちゃぐちゃ、キーキー、という気味の悪い音のみが、辺りを包みこむ。
だがしかし、それも長くは続かない。
まるでソレをもの欲しそうな目で眺めていた、やはり地面と化している男が、何とか腕を伸ばして、それを両手で確保したからだ。
キーッ!? と、蟲たちが甲高い声をあげる。
だが男はそんなもの微塵も気にせず、その『何か』を掴んだ手を……
だが男はそんなもの微塵も気にせず、その『何か』を掴んだ手を……
あろうことか、口へと運んだ。
ぐちゃぐちゃ、と鳴る気持ちの悪い音。
まだその『何か』にくっついて離れなかった蟲たちが男の口の中で裂かれ、男の口の端からは、何かドロドロした緑色の液体が流れ出ている。
が、やはり男はそんなことはまったく気に止めない。
飢えているかのようにその『何か』と蟲を貪り、顔面に笑みを浮かべている。
その光景を見ていたほかの男たちは、移動できもしない身体を必死に動かし、その男の口へと手を伸ばす。
まさかと思うが、男の口を強引に開き、中のものを取り出そうとでも考えているのだろうか。
しかし蟲たちはそれを許さない。
いつもは下を向いている眼を大きく見開き、そして、
まだその『何か』にくっついて離れなかった蟲たちが男の口の中で裂かれ、男の口の端からは、何かドロドロした緑色の液体が流れ出ている。
が、やはり男はそんなことはまったく気に止めない。
飢えているかのようにその『何か』と蟲を貪り、顔面に笑みを浮かべている。
その光景を見ていたほかの男たちは、移動できもしない身体を必死に動かし、その男の口へと手を伸ばす。
まさかと思うが、男の口を強引に開き、中のものを取り出そうとでも考えているのだろうか。
しかし蟲たちはそれを許さない。
いつもは下を向いている眼を大きく見開き、そして、
シュプッ、
と、軽快な音を立てて、男の首が、地面へと転がり落ちた。
と、軽快な音を立てて、男の首が、地面へと転がり落ちた。
一瞬遅れて噴出す、切り口からの赤い液体。
蟲たちはそれを盛大に浴びながらも、男の顔の解体作業に移る。
先程、男の首を容易く切った『糸』を用い、男の口を開く。
中には、もはや緑色のものと糸とが混合し、見るだけで吐き気を催すような物体が、唾液と混じって転がっている。
蟲たちは、その男の口の中に侵入した。
そして眼から口を大きく開き、それにまたがぶりつく。
グジュグジュ、という音が響く。
そのうち、男の頬が裂け始めた。おそらく蟲たちが、男の頬をも食しているのだろう。
そして数秒後には、男は頬がなくなったわけの分からない何かへと変貌する。
その光景を眺めていた巨人が、無造作に腕を振り上げた。
そしてその丸太のような強靭な腕を、
男の、もはや顔面とは呼べないような何かへと叩きつけた。
一瞬にしてなくなる男の顔面。
巨人が腕を挙げると、その腕には緑色の液体がべったりとこぶりついていた。
そして巨人は、やはり何食わぬ顔でその液体を舐め取る。
そして―――
蟲たちはそれを盛大に浴びながらも、男の顔の解体作業に移る。
先程、男の首を容易く切った『糸』を用い、男の口を開く。
中には、もはや緑色のものと糸とが混合し、見るだけで吐き気を催すような物体が、唾液と混じって転がっている。
蟲たちは、その男の口の中に侵入した。
そして眼から口を大きく開き、それにまたがぶりつく。
グジュグジュ、という音が響く。
そのうち、男の頬が裂け始めた。おそらく蟲たちが、男の頬をも食しているのだろう。
そして数秒後には、男は頬がなくなったわけの分からない何かへと変貌する。
その光景を眺めていた巨人が、無造作に腕を振り上げた。
そしてその丸太のような強靭な腕を、
男の、もはや顔面とは呼べないような何かへと叩きつけた。
一瞬にしてなくなる男の顔面。
巨人が腕を挙げると、その腕には緑色の液体がべったりとこぶりついていた。
そして巨人は、やはり何食わぬ顔でその液体を舐め取る。
そして―――
「一言だけ感想。わけが分からないわ。ただそれだけ」
その世界に、凛と澄んだ少女の声が響いた。