天井の実験に大成功を納め、すっかり気を良くした冥土返しはアレイスターへの直通回線を繋いだ。
「やぁ、元気にしてるかい?」
『いままで元気だったが、たった今気分が最悪になったところだ。切っていいか?」
「おやおや、それは大変だねぇ。
ところでアレイスター、実はボクは画期的な実験に成功してね、人間の性別を五分程度で反対にしてしまう装置なんだけど」
『また酔狂な物を作ったものだな、それが私とどう関係があるのだ?
例のIDならもう貴様の病院宛に送ってあるだろう?
与太話ならもう切るぞ』
「ああ、それなら確かに受け取ったよ。本人はあまり乗り気ではないみたいだけど、上条当麻の学校へと転入手続きをしてくれるかな?」
電話口の向こうでガラスの壁にでも頭をぶつける音がした。 おそらく冥土返しの想像は合っている。
『――――断る!』
「それでは経過が研究できないじゃないか」
『そんなはた迷惑な研究止めてしまえ!』
「君がそれを言うかい?」
『ッ!』
「別に上条当麻をどうこうしようっていうんじゃないんだ、転入手続きぐらい簡単なものだろう?」
『常盤台中学でも、霧ヶ丘女学院でも長点上機学園でもいいだろうが!!なんであの高校なんだ』
「そりゃあ、面白いからさ。あ、いま君は病院へ向けて特殊部隊を送り込もうとか考えてるね?
止めておきたまえ、この病院にはまだ上条当麻が居るんだよ?」
『それがどうした、猟犬部隊なら上条当麻を確保しつつ、お前を蜂の巣にする事なんて造作も無い』
「いいのかい?
もしそんな事をしたらボクはこのスイッチを押してしまうよ?」
冥土返しの手は例の機械のスイッチにかかっていた。
液晶パネルに表示されているデータを、ゆっくりと読み上げる。
「性別変換対象――上条当麻」
電話口の向こうの空気が不穏な物へと変化し、あらん限りの罵声が届いた。
かるーく無視して、言葉を続ける。
「設定身長――百五十六センチ。
設定体重――四十三キロ。
培養効果で髪をロングヘアーに、いっそ目の色も青にしてしまおう。
そうだな、あと声のサンプルは……、ああ丁度いい。妹達のデータがあった。あれを使おう。
胸のサイズか……C、いやBあたり……Aで貧乳なのを気にしてると、いうのも萌えるな。よしAで行こう。
ウエストはうんと細く、ヒップはまぁそれなりに……おぉ、まさにパーフェクトだ」
頭の上にPってつけたいぐらい完璧な女神の完成予想図が液晶パネルに表示された。
電話口の向こうが本格的にうるさい。
『貴様という奴は!!やって良いことと悪いことが!!
何が望みだ、コンチクショォォォォッォオ』
「いや、なに、天井君を上条当麻の学校へと、転入させるのと……
もうひとつ、上条当麻の代わりに性別変換機に入れても構わない人間をニ、三体欲しい。
そうだな……犯罪者とかいいな、後腐れなくて。
君のお抱えの記憶剥奪能力者を使って記憶を抹消しておいてくれると手間が省ける。
どうだい? この条件飲むかい?」
『グヌヌヌヌヌヌヌヌ……待ってろっ、即日送りつけてやる! だから上条当麻に手を出すなよ! 性別変換なんて持っての他だ!」
「おーけー、それでいい。楽しみにしているよ、それじゃ、おやすみ」
冥土返しは受話器を置いて、液晶パネルを見やり、少しだけ残念そうに溜息をついた。
「やぁ、元気にしてるかい?」
『いままで元気だったが、たった今気分が最悪になったところだ。切っていいか?」
「おやおや、それは大変だねぇ。
ところでアレイスター、実はボクは画期的な実験に成功してね、人間の性別を五分程度で反対にしてしまう装置なんだけど」
『また酔狂な物を作ったものだな、それが私とどう関係があるのだ?
例のIDならもう貴様の病院宛に送ってあるだろう?
与太話ならもう切るぞ』
「ああ、それなら確かに受け取ったよ。本人はあまり乗り気ではないみたいだけど、上条当麻の学校へと転入手続きをしてくれるかな?」
電話口の向こうでガラスの壁にでも頭をぶつける音がした。 おそらく冥土返しの想像は合っている。
『――――断る!』
「それでは経過が研究できないじゃないか」
『そんなはた迷惑な研究止めてしまえ!』
「君がそれを言うかい?」
『ッ!』
「別に上条当麻をどうこうしようっていうんじゃないんだ、転入手続きぐらい簡単なものだろう?」
『常盤台中学でも、霧ヶ丘女学院でも長点上機学園でもいいだろうが!!なんであの高校なんだ』
「そりゃあ、面白いからさ。あ、いま君は病院へ向けて特殊部隊を送り込もうとか考えてるね?
止めておきたまえ、この病院にはまだ上条当麻が居るんだよ?」
『それがどうした、猟犬部隊なら上条当麻を確保しつつ、お前を蜂の巣にする事なんて造作も無い』
「いいのかい?
もしそんな事をしたらボクはこのスイッチを押してしまうよ?」
冥土返しの手は例の機械のスイッチにかかっていた。
液晶パネルに表示されているデータを、ゆっくりと読み上げる。
「性別変換対象――上条当麻」
電話口の向こうの空気が不穏な物へと変化し、あらん限りの罵声が届いた。
かるーく無視して、言葉を続ける。
「設定身長――百五十六センチ。
設定体重――四十三キロ。
培養効果で髪をロングヘアーに、いっそ目の色も青にしてしまおう。
そうだな、あと声のサンプルは……、ああ丁度いい。妹達のデータがあった。あれを使おう。
胸のサイズか……C、いやBあたり……Aで貧乳なのを気にしてると、いうのも萌えるな。よしAで行こう。
ウエストはうんと細く、ヒップはまぁそれなりに……おぉ、まさにパーフェクトだ」
頭の上にPってつけたいぐらい完璧な女神の完成予想図が液晶パネルに表示された。
電話口の向こうが本格的にうるさい。
『貴様という奴は!!やって良いことと悪いことが!!
何が望みだ、コンチクショォォォォッォオ』
「いや、なに、天井君を上条当麻の学校へと、転入させるのと……
もうひとつ、上条当麻の代わりに性別変換機に入れても構わない人間をニ、三体欲しい。
そうだな……犯罪者とかいいな、後腐れなくて。
君のお抱えの記憶剥奪能力者を使って記憶を抹消しておいてくれると手間が省ける。
どうだい? この条件飲むかい?」
『グヌヌヌヌヌヌヌヌ……待ってろっ、即日送りつけてやる! だから上条当麻に手を出すなよ! 性別変換なんて持っての他だ!」
「おーけー、それでいい。楽しみにしているよ、それじゃ、おやすみ」
冥土返しは受話器を置いて、液晶パネルを見やり、少しだけ残念そうに溜息をついた。
翌日正午、例の機械は稼動中だった。
「エンゼル様!?エンゼル様!?えんぜぇぇるさぁぁまぁぁぁ!」
中の様子は液晶モニターの半分に映されている。
後日、冥土返しの病院に急患を装って搬入されて来たのは、連続殺人犯である火野神作だった。
さっきつっこんだばかりだから、作業ゲージは十パーセント程しか進んでいない。
コンディションを示す波形もひっきりなしに位置を変えている。
冥土返しはコーヒーのカップを片手に机の上に置かれたノートパソコンに目を落とす。
完成予想図、と銘打たれたフォトデータが表示されている。
薄桃色の髪の毛に、不思議な薄紫の瞳。
抱きしめればぽっきりと折れてしまいそうな華奢な体つき。全体的にスレンダーというか、未発達な感じで起伏は少ない。
「はふぅ……たまらん」
機械の中で暴れているアレがコレになるのだから、まさに魔法の箱といったところだった。
「名前は、そうだな……ヒノタンでいいか……記憶消去は同時進行っと……」
エンターキーを押し込んで、コーヒーを啜る。電波系少女ヒノタンが完成するおよそ四分前の事だった。
「エンゼル様!?エンゼル様!?えんぜぇぇるさぁぁまぁぁぁ!」
中の様子は液晶モニターの半分に映されている。
後日、冥土返しの病院に急患を装って搬入されて来たのは、連続殺人犯である火野神作だった。
さっきつっこんだばかりだから、作業ゲージは十パーセント程しか進んでいない。
コンディションを示す波形もひっきりなしに位置を変えている。
冥土返しはコーヒーのカップを片手に机の上に置かれたノートパソコンに目を落とす。
完成予想図、と銘打たれたフォトデータが表示されている。
薄桃色の髪の毛に、不思議な薄紫の瞳。
抱きしめればぽっきりと折れてしまいそうな華奢な体つき。全体的にスレンダーというか、未発達な感じで起伏は少ない。
「はふぅ……たまらん」
機械の中で暴れているアレがコレになるのだから、まさに魔法の箱といったところだった。
「名前は、そうだな……ヒノタンでいいか……記憶消去は同時進行っと……」
エンターキーを押し込んで、コーヒーを啜る。電波系少女ヒノタンが完成するおよそ四分前の事だった。