8月31日。
幻想殺しが二人の魔術師と交戦し、学園都市第一位が運命的な出会いを果たすその頃、イギリスでは。
「やあ皆、誤ってティル=ナ=ノーグの壁を粉砕してゴドリック君とジュリアさんの顔を某火星G退治漫画ばりの切れ顔と殺気で溢れさせた結果、修繕費を支払うべく臨時バイトをしている
尼乃昂焚さんだよ。」
「誰に向かって言ってるんだはよ掃除の続きしろ。」
「へいへい。」
ゴドリック=ブレイクは空を見ながら日本語で解説している昂焚に掃除の催促をする。右手の『灼輪の弩槍(ブリューナク=ボウ)』には既に火矢が装填されている。
二つ返事で昂焚は床掃除の続きを続ける。モップでひたすらゴシゴシと磨きながら、
姫野七色の鼻歌を歌う。気怠い暑さは時折吹いてくる風でまぎれる。昂焚が空けた、ブルーシートに覆われた穴の隙間から漏れ吹く風のおかげだ。
一方のゴドリックはレジで計算をしていた。後いくら貯めれば修繕費まで行き着くのか。電卓片手に計算していた。
ちなみにジュリアはフリーランスの魔術師としての仕事の最中だ。
カラン。とドアの鈴の鳴る音がする。客が来た報せだ。
「はーい。いらっしゃいま、せ……。」
「………いらっしゃいませ。二名様でよろしいでしょうか?」
気軽に返事した後、客の姿を見て沈黙したのが昂焚。
数秒間黙ってから人数確認をとったのがゴドリックだった。
「ああ、二名でいい。一番奥の席でいいかね。あと、私は紅茶を頼む。」
一人はペスト医師のようなカラスの仮面の人間だった。
仮面は勿論、ヘリウムガスを吸った後のような声で話すものだから性別は解らない。
身に着けている何一つ汚れのない真っ白なマントには黒い羽毛がついている。
この人間の名前は
双鴉道化(レイヴンフェイス)。
魔術結社『
イルミナティ』を束ねる首領だ。
「へぇ。お前をここで見るとはな。意外なものだ。アイスコーヒーを頼む。」
もう一人の客である
ミランダ=ベネットはブラウスとスラックスに身を包んだ灰色の長髪の美女だった。
顔立ちはとても整っているがその眼光は冷酷な性格を思わせるのに十分だった。
しかし彼女の一番の象徴は氷の美貌と形容するにふさわしい顔では無く、養豚場の豚を見るような眼つきでもない。
では、何かといえば。それは胸である。
Gカップの豊満な胸が、日本男子(アマノタカヤ)であろうと英国男子(ゴドリック=ブレイク)であろうと一度は喰いつく様に見るであろうその胸こそが彼女、ミランダ=ベネットの特徴だった。
二人は一番奥の席に座ると、ウェイターと化している昂焚を茶化し始めた。
「しかし、どういう風の吹き回しだね?世界中を駆け巡っている君が一箇所に留まって掃除をしているとは?」
「あー、それは訊かないでくれると助かる。」
「大方この店の壁に大穴を開けたんだろうさ。」
そんなこんなで茶化しているうちに、ゴドリックが注文を持ってきた。
そんな彼の顔を見て、ミランダは何か重大な事に気付いたかのような表情になった。
「お待たせしました、紅茶とアイスコーヒーで……ッ!!」
そして、次の瞬間にはミランダは両手でゴドリックの顔を掴んでいた。ついでにその豊満な胸に顔が触れるか触れないかの距離だった。
突然の出来事に「あ、よし。コーヒーと紅茶零れてないな。」と思わず現実逃避してしまう程度には戸惑っていた。
「おい、お前。名前と年齢を言え。」
「………ゴドリック=ブレイク。18だ。」
ゴドリックに緊張が走る。
もしかしてこの女は何か自分に恨みでもあるんじゃないのかと。
フリーランスの仕事で彼女、もしくは彼女の知り合いを傷つけてしまったのではないかと、脳裏によぎった。
ならば、後は魔術師として戦うまでだ。
この女がどんな魔術を使おうと構わない。
真っ向勝負は本職ではないが、苦手という訳でもない。
闘って。生き残って。約束を護る。
―――――――――ただ、それだけだ。
そう、氷の視線を緊張の眼差しで真っ向から返すゴドリックに、ミランダは言った。
「…ダメだ。熟れてる。」
そう言って、掴んだ両手を離した。
今さっきまでの覚悟はなんだったのか、と目をキョトンとさせているゴドリックを余所にアイスコーヒーを飲んで優雅に寛いでいた。
ついさっきまで宝物の真偽を確かめる鑑定士の如く見つめていたのに、その宝物は贋作だと解ったかのように今はひとかけらの興味も無い。
完全にアイスコーヒー>>>>>>(越えられない壁)>>>>>>ゴドリック=ブレイクの構図が出来上がっている。
「ミランダ。君もう自分の性癖を隠すつもりないだろう?」
双鴉道化がこの一言を放つその直前までは、ミランダは優雅さを保っていられた。
「な、双鴉道化何故それを……って違う!!断じて違うからな!!」
「ゴドリック良く見とけ。あれがショタコンって奴だ。」
「たぁあああああああああああああああかぁやぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「……世界は広いんだな。」
仮面越しに紅茶を飲んでいる双鴉道化、『黙示録の四騎士』の術式が一つ、『黒騎士』となり今にも暴走寸前のミランダ、本人は顔に出しているつもりはないが思いっきり「あ、これヤバいや。」と顔で語っている昂焚。
それらを止める事すら忘れたゴドリックはただ傍観するだけだった。
そんな時またカラン。とドアの鈴が響く音がした。
「ディアンドルー!このカフェすげーぜ魔術師だらけだ!!俺オレンジジュース飲みたーい!!」
「まさか喜んでいるわけじゃないだろうな、
アイアコス?……いや、違った。メラク。とりあえず私はシンデレラを。」
入ってきたのは白に近い金髪を細長い三つ編みを垂らし、薄い緑色の瞳を持った身長160cm程の小柄な少年。
服装は石灰岩を連想させる白を基調としたノースリーブのTシャツにエーゲ海を彷彿とさせる青を基調とした短パンだ。
もう一人は身長162㎝のプラチナブロンドのロングヘアの少女だ。
服装は極地の氷と深海の底の暗闇をそれぞれイメージした淡い白と濃紺のフリフリのついた、布地の薄いドレスに髪飾り、ネックレスや指輪など色とりどりの装飾品を着けている。
昂焚はそんな二人組のうちの少女の方を見て何かを思い出す。
『七曜の星(ビッグディッパー)』
北極付近を活動地域とする拠点不定の魔術結社。北斗七星の形状を例えた「黄金のスプーン」を紋章に掲げている。
民間の海洋開発企業『ノースポール』を隠れ蓑としており、北極海周遊客船「ポラリス」と調査船「ツインクエーサー」の二隻を所有。表向きは資源開発だが、沈没船からの魔術関連品の引き上げや極地の神秘解明を真の目的としている。
ドロミーティ=フリウラーネをボスとし、個性的な魔術師幹部メンバー7名が名を連ねる。メンバーの多くが何かしら
科学サイドと
魔術サイドとの条約に違反した魔術を行使するため、危険視されつつある。
歴史は浅く、少数だがメンバーそれぞれが平均よりは上の実力を持っており、自由な風紀だが、団結力は高め。
メンバーの偽称は北斗七星の恒星に対応している。
一般人スタッフも所属しているが、魔術関係の事情は知らない。
そしてそのボス、ドローミティ=フリウラーネこそ、今まさに昂焚が目の前で話している少女なのだ。
「おや、私の名前を知っているのか?」
「ああ。有名じゃないか。『よく船酔いする魔術結社のボス』で。」
「な、んだとぉ!!」
うっかり本音を漏らした昂焚に対してドローミティは思わず服の襟元をつかみ、顔を赤らめる。
羞恥と怒りの感情で顔を赤くしているドローミティを見て昂焚は心のどこかで「……いいな。」とか思っていた。
ゴドリックはヤバいと直感で解り、フォローに入る。
「い、一応カフェでの魔術の行使はやめてくれ。頼む。」
「ほぉーう。では魔術(物理)ならいいんだな?」
「それもダメ!!(物理)つけてもダメなものはダメだから!!おい、連れの君もなんか言って―――――――――――!!」
ゴドリックがアイアコスに助けを求めようとドローミティから目を背ける。
するとそこには、ミランダの膝の上に座っているアイアコスがいた。
アイアコスは頭の上にGカップが乗っていてもをまるで気にしておらず、さり気なくミランダのアイスコーヒーを飲んでいる。その様は天真爛漫としか表現できない。
一方のミランダはハァハァと息を荒げ、何より手が今にもアイアコスを掴もうとしていてヤバい。その様は爛れた大人としか表現できない。
その今にもR‐18な展開になりそうな一触即発な雰囲気(SS的に)が、この何気ない発言で大きく動いた。
「アイアコス君はエライなー。もうコーヒーが飲めるなんて大人だな。」
「うん、だって俺もう25だし!」
『七曜の星』以外のその場全員が硬直した。
特にミランダにいたっては目が点になっており、さっきまでの荒ぶる吐息が止まっている。
「え、…15歳の言い間違いか?」
「いいや、俺は『メラク』ことアイアコス!25歳だ!!」
「に、じゅう、ごさい・・・。」
ミランダはガックリと項垂れ、手からは力が抜けた。
周囲も余りのショックの受け様に慰めの対応を取ろうとしていた、その時。
「な、………尚更イイナッ!!ショタ爺ではないか!!」
ミランダが、―――――――――――――覚醒した!!
そしてその両腕でアイアコスをガッチリホールドする。
「さて、テイクアウトテイクアウト……。」
「「…ってちょっと待て―――――――――――!!」」
そしてそのまま帰ろうとするミランダを魔術結社のボス二人が引き止める。
「ちょっと待てそこの爆乳女!!何うちの幹部誘拐しようとしてくれてんだ!!」
「君の強欲はなんだ?ショタを持ち帰る事か?、いや違うだろう!!?」
「安心しろドローミティ、幹部は必ず幸せにする。そして双鴉道化。許してくれ今はいっときのGカップの高鳴りに従いたいんだ!!」
ドローミティと双鴉道化が必死になって説得しようとするがミランダはその手を離そうとしない。
その頃昂焚とゴドリックは机をバリゲート代わりにして様子を見ていた。
「普通に考えれば簡単にわかる。こんなハチャメチャなヤツには勝てねぇってことぐらい…」
「何かっこよく情けない事言っているんですか?」
「じゃあ、君はあの状況に突貫できるかい?」
「無理です。」
嘆かわしきかな。フリーランスの魔術師二人と魔術結社のボス×2と幹部相手じゃ話にならない。
―――――――――はずだった。
「これはアレを使うしかないな。」
「何か手段があるのか?!」
「ああ、ただしとても危険な賭けと言ってもいい。死ぬかもしれないぞ?」
「この不問な争いが止まるなら、それでも敵わない。それに、僕は死なない。“必ず生き残る”って約束しているからな。」
「その言葉を待っていた。」
そう言うや否や、昂焚は霊装『都牟刈大刀(つむがりのたち)』を取り出す。そしてすぐ様『都牟刈大刀』の千羽鶴が重なり、鎖状となった刃をゴドリックに巻き付けた。
そして、彼は言い放った。
吹雪の如き冷酷さで、楽園でイブを唆す蛇のような残忍さで。
「第4次●斗人間砲弾大作戦、状況を開始する。」
「は?」
そして、尼乃昂焚はゴドリックを投擲した。ターゲットはミランダ=ベネットの頭部だ。
これが昂焚のとった作戦。『第4次●斗人間砲弾大作戦』。
要は人間一人を霊装『都牟刈大刀』で寸分たがわぬ精度で投擲すると言う、単純ながらに効果のある作戦である。ちなみに良い魔術師の皆さんは真似してはいけない。
「(さあ逝け、若人よ。これが日本の伝統文化“KAMIKAGE”だ。そして忘れるな。老人の犠牲になるのは常に若者だと言う事を。)」
昂焚は冷静に、そして巣立ちを見守る親鳥のような目で勇気ある行動をとったゴドリックに敬意を払った。
「(F●CK!!ふざけんな!!こんなあほらしい作戦の為に僕はあんなことを言ったのか!!『いけ』の字違うだろ!!第4次ってことは前に三回もやったことあるのか!!アンタまだギリギリ二十代だろ!!ああもうどこからツッコんでいいか分からない!!)」
ゴドリックはまるで昂焚の心を読んでいるかのようにツッコミを何とか入れていきながらミランダ目がけて飛んでいく。
ミランダが比例するゴドリックに気付く。対するゴドリックもミランダと目が合う。
「よし、このままいけばmouth to mouthだ。イケる!!」
「イケんでいい!!」
そう言い合っているうちにミランダとの距離は息がかかるほどに近くなった。
そして、遂に。
「おっと、危ない。」
ミランダは避けた!!すでにゴドリックをストライク圏外だと知ったミランダの態度は冷たい物だった。
そして目の前に迫るのは硬い木製のドア。その上ガラス張りでもある。
「あ、こりゃダメだ。ゴメン、ゴドリック君。」
「ゴメンで済むかぁー―ーーーーーーーーーーーーーー!!」
そう、辞世の句(?)を言いながらそのまま真っ直ぐドアに向かい、ゴドリックは激突した。
しかし、激突の感触は硬くなく、ガラスが皮膚に刺さる感覚もない。
むしろ柔らかいナニかが、ゴドリックを包み込んでおり、このまま突っ込んだままでいたいとすら感じるほどだ。
しかし、これはどういう事なのかと思い、状況を確かめるべく自分を挟んでいる物を掴み、一気に頭を引っこ抜く。
「んっ、はぁ……………ああっ。」
突如、くぐもった喘ぎ声が聞こえた。声の主はゴドリックの目の前にいた。
うなじより少し上くらいまでの長さのウェーブのかかった黒髪で、青い縁の眼鏡をかけた顔立ちの整った女性だ。
女性が目を開ける。メガネの奥にある金色の瞳は、どこか清廉ささえ感じ取れた。
何もかも見透かされそうな眼から、思わずゴドリックは眼を背け、手元を見る。
眼に入ったのは、紫色のマントの奥にある衣装。
黒い網で出来たボディタイツの上から胸だけを覆う布を纏い、股間はCストリングのようなプロテクターで覆っている。腕には籠手をはめ、金属が蛇のように絡み合ったブーツを履いている。
母なる海を連想させるような豊満な胸が淫靡さを醸し出し、金色の瞳が清廉さを醸し出す。対極的な印象なのにバランスよく二つの雰囲気を保っている女性が目の前にいた。
そんな女性の胸をゴドリックは鷲掴みにしていた。
「ご、ごごごごごごごごごごごごめんなさい失礼しました申し訳ありませんでしたぁああああああああああああああああああああああ!!」
気づくや否や、ゴドリックは謝罪三段活用を使い、すぐさま胸から手を離す。
「いえ、いいのですよ。私はさほど気にしていませんから。」
その返答に安心したゴドリックであったが、それも束の間だった。
「(あ…ありのまま今起こったことを話すぜ。
突然視界が急上昇したと思ったら、目の前には憤怒の表情の筋骨隆々(マッスルマッスル)な英傑がいる。
な…何を言っているのか解らねーと思うが…)」
と、まさに某ルナレフ状態だった。
「貴様。ティア団長に手を出すとはいい度胸しておるではないか…。」
そう、身長約270cm、体重およそ400kgもある大男がゴドリックの頭を鷲掴みにしていたのだ。。
ギリシャの彫刻のように美しく整った肉体が今にもゴドリックを殺しにかからんとするほどの勢いだ。
「おやめなさい
ヘラクリーズ。彼だって故意ではないのですから。」
「む、しかし。俺だってティア団長の胸を鷲掴みにしたいくらいだと言うのに!!」
「……ヘラクリーズ。いいから彼を解放しなさい。あとこの後ミッチリお話ししたいと思いますが、よろしいでしょうか。」
「お、おう。(なんなのだ今の冷たい目は。)」
ゴドリックはヘラクリーズから解放されると、すぐ様昂焚の元に帰り胸倉を掴む。
「おいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!なんてことしてくれんだアンタ!!」
「いいじゃないか胸揉めたんだし。」
「そりゃそうだけど…。」
「それよりオーダー取りに行かなくていいのかい?」
「あ、そうだった。……ご注文はなんですか?」
「では、私はアイスココアを。」
「俺はコーヒーを一つ。」
「かしこまりましたー。」
そう言って、ゴドリックが厨房へ行きココアとコーヒーを持ってきた後。
三つの魔術結社の三つ巴と一人のフリーランスの魔術師のバリゲートが店内に出来上がっていた。
「まさか、このような場所で出会うとはね。魔術結社『
革命者の王冠』首領ティア=ラスター=ホルスタインと千人長が一人、ヘラクリーズ。」
双鴉道化が興味深そうな声でティアとヘラクリーズを見通す。
革命者の王冠。
簡単に言えば魔術師で構成された小規模な傭兵団で「金さえあれば善にも悪にもなる使い勝手のいい集団」と魔術業界では評されている。
『シルク・ド・ラ・クローヌ』というサーカス団の巡業に偽装して移動や活動を行っており、活動資金の一つでもある。サーカス芸で魔術を使う事は無い。
実際の所は掲げている信条、目的は『虐げられている者の救済』。そのため誰であろうと救いを求めているのならば雇われる。過去にはワンコインで雇われたこともあるとかないとか。
構成員は様々な理由で『革命者の王冠』に入団しており、普通の魔術師もいれば近代兵器や科学をメインに霊装を組み立てている『条約』に触れている者、魔術師に改造されたが故に異形の姿になった者もいる。
そのため、扱う魔術も多種多様である。
結社内において部隊が幾つか小分けされており、第一戦力である『第一紅蓮騎士部隊』。
遊撃や錯乱を務める『第二新緑遊撃部隊』。
諜報や暗殺を目的とした『第三瑠璃暗躍部隊』。
補給や治療、財政管理などの雑務を担当する『第四金糸雀補衛部隊』で構成されている。
首領、各々の部隊を纏める千人長(コマンダー)、千人長を補佐する二人の幹部、その他によって構成されている
「そう言うあなたは『イルミナティ』の首領、双鴉道化ではありませんか。それに『七曜の星』の首領まで……。『七曜の星』はともかく、『イルミナティ』の構成員が何度か私たちの所に奇襲を仕掛けているのですが?
「いずれも俺や千人長達、ティア団長が返り討ちにしてやったがなぁ?」
そう言いながらティアは奇妙な仕掛けが施された『十字剣』と『槌』を取り出し、ヘラクリーズは3mもの『棍棒』を取り出す。
「イルミナティには我々『七曜の星』も手を焼いている。貴様のような奴らがのさばっているんじゃオチオチ安心して紅茶すら飲めない。」
ドローミティはネックレスへと加工した『魔術鉱石』に魔力を通し、水の翼を顕現させる。
「若い衆が勝手にやったことは知らないよ。それに私は君たちが欲しいだけだ。特に
ティア=ラスター=ホルシュタイン。君はその清廉な金色の瞳の奥に何を隠している?何を秘めている?私はそれを解き明かし、手に入れたいのだ。」
三人の魔術師に狙われているにも関わらず、余裕そうな態度をとる双鴉道化は双頭の鴉を出現させた後、その身体を雷撃へと変える。
「(ああ……今季アニメ、見てから逝きたかったなぁー。)」
そして、昂焚はバリゲートの奥ですでに燃え尽きた表情をしていた。
そんな店内が吹き飛びそうな一触即発の状況はゴドリックが口にした言葉で動き出した。
「あれ?ミランダとアイアコスは?」
その言葉にティアとヘラクリーズ以外の人間がお互いの顔を見合わせ、そして。
「「「「し、しまった―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!」」」」
そんな風に後悔したのだった。
「ヤバい、あのままじゃメラクの貞操が、貞操がぁ―――――――――――――――――――――――!!」
「どんな強欲すら飲み干す私ですら、ミランダのあの性癖だけはみとめてはいけない、そんな気がする!!」
「あの…いったいなんのことですか?」
「実は、かくかくしかじかこういうじじょうで…。」
唯一事情を知らない『革命者の王冠』のメンバーにゴドリックが説明する。
「な、なんですって!?それは聞き捨て成りませんね!!ヘラクリーズ、これよりその少年を奪還しますよ!!」
「おうとも!!このヘラクリーズ、ティア団長と共に向かいましょうぞ!!そこの少年も協力してくれるな?」
「ああ、昂焚さんは―――――――?」
さも当たり前の様に二つ返事をしたゴドリックは昂焚はどうするのか確認する。
「報酬は(ピ―――!!)ドルでいいか?」
「乗った!!」
「え、え――――――――――――――――――!?」
その一方で昂焚はドローミティに交渉をしていた。値段は丁度『ティル=ナ=ノーグ』の壁を修理できる値段だった。
そのしたたかさにゴドリックもびっくりだった。
しかしこれで互いの目的は、やるべきことは一致した。
6人の魔術師が一人の誘拐された(似非)少年を爛れた大人から助けるべく作戦を遂行するのだ。
その作戦が無事遂行された後、ミランダは泣きじゃくりながら双鴉道化と共に消え。
ドローミティは無事奪還したアイアコスと共に海の向こうへ。
ティアとヘラクリーズは昂焚とゴドリックに4枚の『シルク・ド・ラ・クローヌ』のチケットを渡した。
そして昂焚はいまにも掴みかかってくる勢いで自身を追いかけてきたユマを宥めるためにチケットを渡し。
ゴドリックは顔を真っ赤にしながらジュリアにチケットを渡したのだった。
めでたしめでたし。
【出演キャラ】
尼乃昂焚
ゴドリック=ブレイク
双鴉道化
ミランダ=ベネット
ドロミーティ=フリウラーネ
アイアコス
ティア=ラスター=ホルシュタイン
ヘラクリーズ
ユマ・ヴェンチェス・バルムブロシオ
ジュリア=ローウェル
最終更新:2014年06月30日 01:30