【名前】甘水螢灯(あまみ けいと)
【性別】女
【所属】科学
【能力】不和感応(ディセンションチャット)レベル4
【能力説明】
念話能力の一種で、複数の人物と同時に思考のやり取りを行う能力。能力の適用範囲は自身から100m、同時に念話できる最大人数は25人。
範囲内で能力の影響下にある場合、甘水本人とだけでなく第三者同士ででも念話は可能。ただし念話は第三者同士が互いに甘水の能力でリンクしていると自覚していなければならず、甘水を介さない会話であっても全ての念話は甘水本人に筒抜けとなる。
更に普通の念話能力と一線を画するのが、能力の影響下にある人物の間に不和を招く特性である。具体的にはリンクした人間の心にある不安や苛立ち、嫉妬といった感情を増幅して周囲に対して攻撃的な状態に陥らせてしまう。つまり甘水とリンクし続ける限り、彼女を取り巻く輪はやがて身内の仲違いによって自滅の道を辿る。ただし皮肉にも、それらの悪意が甘水当人に向けられる事はないため、隔絶された輪の外にいる者達と苦しみを分かち合う事はできない。
能力発現当初はこの特性を抑え込む事ができず、念話能力についても無意識に発動してしまう所謂暴走能力者だったが、長年の訓練によって周囲を蝕む
不和をほぼ完全に抑え込む事を可能とした。しかしAIM拡散力場については如何ともし難く、彼女が一カ所に長く留まるとそれだけで周囲の空気を悪くしてしまう。
【概要】
長点上機学園の一年に在籍する少女。ただし登校したのは入学後の数日だけで、以降は休学扱いになっている。根は真面目な性格だが、他者に影響されやすかったり周囲の意見に流されがちな所がある。多少打算的な人物である一方で、目的の達成には努力を惜しまない。能力柄他人の悪意には敏感であり、能力を使わない素の状態でも始めて会ったグループ内の人間関係を瞬時に推測する事を得意とする。
明知中等教育学院の卒業生であり、在籍時は同校の風紀委員に所属。三年次は支部長を務め、学院を席巻する『
女帝』を影で支える縁の下の力持ち的なポジションとして認知されていた。元々リーダーシップを発揮するような人柄ではなかったが、電子戦に長けた優秀なオペレーターであった事と、明知において何より栄誉とされる黄道十二星座の一角『スコルピオ』に選ばれた事が甘水を支部長たらしめた。
甘水が明知への進学を決意したのは、彼女の能力とそれに纏わる小学生時代の出来事に起因する。能力発現当初、不和を招く特性が元で甘水がいじめの対象になる事を憂慮した担任教師は、彼女に「友達には普通の念話能力だと言うように」と釘を刺し、能力の秘密を隠す事にした。彼女自身も一日でも早く周囲に胸を張って自分の能力を明かしたかったため不和の特性を抑える訓練を続けたが、能力の暴走はすぐには改善されなかった。クラスメイトは念話能力の暴走をテスト中のカンニングに利用したり、お手軽なチャットルーム扱いしたりとどこか楽しんでいる節すらあったが、彼らの無意識下で『不和』はじわじわとクラス全体に蔓延していった。チャットには醜い陰口が溢れ、グループ同士の衝突を招き、そうして遂に学級崩壊に至った。己の無力を詫びる担任の最後の願いを受け入れた甘水は別の学校へと転校したが、そこでも結果は同じだった。何度も転校を繰り返し、そこに不和の種を蒔いて、やがて破滅がやってきた。
甘水が転機を迎えたのは、中学進学の折だった。伝統的な実力主義のエリート校たる明知の評判を耳にしたのだ。明知の充実した設備なら能力の暴走や不和の特性を抑える有効な手段が見つかるかもしれない。そして何より、競争社会で他人を蹴落としてでも栄光を掴む事を是とするような環境でなら、もしかしたら自分の『不和』の事で周囲に負い目を感じなくて済むかもしれない。そんな淡く身勝手な希望を抱いて、甘水は明知の門を叩いた。
能力の暴走を抑える訓練に励む日々の中で、同じように類稀な努力家である
白雪窓辺と出会い、互いに意気投合。窓辺に付き合わされる形で風紀委員の夏季公募に応募し、研修をパスして風紀委員になったのは二人の内甘水だけだった。窓辺に負い目を感じはしたが、かねてより風紀委員の仕事に興味はあったし、治安維持活動という実践を通して能力の制御を磨くというのも魅力であったため、そのまま明知支部に所属する事に。
風紀委員として学院の治安を預かり、窓辺や級友らと切磋琢磨する充実した日々の中で、強度の上昇に反比例するように能力の暴走は抑えられ不和の発生をほぼ完全に掌握するに至り、三年生への進級に伴って黄道十二星座『スコルピオ』を拝命し同時に明知支部の支部長に就任する。窓辺とはこの頃から擦れ違いが多くなり、『女帝』の台頭もあって風紀委員と生徒会の関係が険悪化した事に甘水は心を痛めた。本心では二年前の黄金期のように二つの組織が手を結ぶ事を望んでいたのに、しかし彼女は周りの顔色を窺ってばかりで何もしようとはしなかった。
そして迎えた卒業式の日、『それ』は起きた。後に『伝説の卒業式』などと言われる事件に、卒業生の一人として、また風紀委員として関わった、まさに『当事者』の一人。……のはずなのだが、甘水は抗争勃発直後に気絶したらしく、目覚めた時には既に事件は終息していた。結局事件については風紀委員の同僚から断片的な情報を伝え聞いただけで、全貌は杳として知れないまま忸怩たる思いで学院を後にした。
長点上機学園に進学しても、支部長としての責任を果たせなかった中学最後の事件が心残りで、自然と母校に足が向く甘水。まだ記憶に新しい学院を彷徨する卒業生に最初に声を掛けたのは、誰あろう学院長の
蕩魅召餌だった。蕩魅の私邸へ招かれた甘水は事件の真相を尋ねようとしたが、逆に彼の巧みな話術によりマインドコントロールされてしまう。
以降は蕩魅の私設部隊『
白夜部隊』の下部構成員・コードネーム『アップル』となり、蕩魅邸の地下施設にある作戦司令部にオペレーターの一人として詰めている。今は蕩魅の支配下に置かれ、各種雑務の他監視カメラに映る学院内と周辺の様子をモニターする任務を淡々とこなしているが、それでも時折あの事件に思いを巡らせたり、もう会う事はないだろう苛烈な級友の消息を案じたりする日々を送っている。
ちなみに同じ部隊に風紀委員で同期だった
逢坂葦耶がいた事は軽くショックだったようだが、向こうは特に反応を示す気がないようなので甘水としても過去の関係は清算されたものと割り切って接するようにしている。ただ彼を前にすると、風紀委員時代には感じた事のないような得体の知れない寒気を感じるようになった事が最近の悩みだという。
【特徴】
栗色のお下げに蛍光色のシュシュが特徴的な小柄な少女。
任務中は蕩魅が用意したオペレーター然としたシックなスーツを着ているが、成長途上の体とは不釣合いでどこかぎこちない。
仕事がオフで暇な時は居住施設の自室に篭って読書するか、邸内を散歩している事が多いが、これは自身の能力が生み出すAIM拡散力場で空気を悪くしないための周囲への配慮である。
【台詞】
「私の電子戦におけるスキルは、中学時代に
先輩に教わったものです。短い付き合いでしたけど、私にとっては良い思い出ですよ。……先輩、今頃どうしてるかな」
「逢坂君、模擬戦訓練お疲れ様。体、気を付けてね。うん、それじゃまた……。はぁ、一体どうしちゃったんだろ。彼を目の前にすると、なんだか背筋が寒くなるっていうか。こんなの風紀委員時代には感じなかったのに。……彼が、怖い? いやまさかね」
「結局、私は誰かに咎めてほしかったんだと思います。周りに不和という毒をばら撒いて、自分だけ痛みを感じない破滅をもたらす存在、それが私なんです。私は尾の先に光を灯す螢なんかじゃなくて、毒を滴らせる蠍だったんですよね。だから、あの事件はその事をはっきりと自覚する良い機会でしたし、その事を教えて下さった蕩魅先生には感謝してるんです」
「一体どういう……
白雪窓枠が、二人……? いや、もしかして、そんなまさか、でも……窓辺、ちゃんなの? どうして今頃になって、貴方が……。この映像はたしかライブ中継のはず、急げば話ができるかもしれない。でも……今更会って、何を話せば良いっていうのよ……」
【SS使用条件】
特になし
最終更新:2015年12月17日 22:53