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邪眼学園黄龍譚8限目【激痛】後編


10/19(日)夜

部屋で適当に時間を潰していた
退屈だがこういう時間は嫌いじゃない
特に執行部との戦いの中でこういう時間は貴重だとも思える
平穏というものはいつも突然崩れ去るものだから…

「本当に最近心休まるときってのが少ないな…」

そう呟いた時だった

「その通り、平穏なんてのは偽りだぁ」

後ろから聞こえた声
咄嗟に黄龍鉄甲を取り構えたまま振り向く

「ノスフェラトゥ!!!」
「ククッ、こんばんは…だなぁ」
「テメェ…!!」
「血の気が多いなぁ…?」
「黙れ!ゆき兄から全部聞いたぞ!
 どういうつもりだ!何が目的だ!!」
「カッカするなよぉ…同志だろぉ?
 お互い執行部を倒すのが目的だろぉ?」
「リカちゃんを人質に取ってまで
 ゆき兄と執行部を戦わせたお前に同志なんて言われる筋合いはない!!」
「ああ…そのことで怒ってるのかぁ…
 それについては謝るよぉ、悪い悪い」
「…信用できない」
「悲しいなぁ…じゃあほらぁお詫びに執行部…雷雲だっけ?
 あいつについて教えてやるよぉ」
「何だと…?」
「率直に言うと、今のオマエじゃあいつにはどう足掻いても勝てないねぇ
 ゆき兄と協力したところで勝てる可能性なんて1%にも満たないだろうねぇ」
「なら俺はその1%に満たない可能性に賭ける」
「聞こえはいいがそんなの馬鹿のやることだぜぇ?
 勝つには、やはりソレが鍵だぁ」

ノスフェラトゥはその長い爪で黄龍鉄甲を指差した

「いいかぁ?お前は先日ソレの秘められし力の1つ朱雀を解放した
 だけど雷雲には朱雀では勝てないんだぁ」
「…なぜ…知っている?」
「…ククッ、いいかソレにはまだ力が秘められてるんだぁ
 その力を解放できるかどうかが鍵だぁ」
「お前は一体何者なんだ…」
「…何度も言ったろう?
 俺はな、生徒会が邪魔なんだよぅ」
「…」
「…期待してるぜぇ?それじゃあなぁ」
「待てッ…?」

ノスフェラトゥがこちらに走ってきた
咄嗟に腕を前に組んで防御姿勢を取る
だけどノスフェラトゥは俺の横をすり抜けて窓から飛び出した
3階だぞここは!?
慌てて窓から外を見る
夜が広がっているだけでノスフェラトゥの姿はもうどこにもなかった
…奴は一体…


10/19(月)朝

あまり眠れなかった
昨日は日曜だと言うのに気疲れすることが多すぎた
ノスフェラトゥのことは気になるが今はともかく雷雲だ
仕掛けてくるとしたら学校も始まったことだし今日ぐらいだろう
教室につくとリカが話しかけてきた

「おはよーたまゆら君」
「あ、おはよう」
「なんか疲れ顔だよ?」
「寝不足かな…」
「あー、テスト勉強してたんだね」
「え?」
「あれ?」
「いや、テスト勉強って?」
「…あー…そっか寝てたから聞いてないんだよね…
 今週末から2学期中間テストだよ」

聞 い て な い

なんだそりゃ、この頭が痛い状況にさらにテストなんて絡んでくるのか

「…まぁ…たまゆら君は執行部とのこともあるし…
 私のノートを貸してあげるから」
「…心遣い痛み入ります…」
「そもそも俺は紙切れ一枚で個人の力量を判定するってのが気に食わない」

いつの間にか後ろにゆき兄がいた

「ゆき兄…テストの日ぐらいサボるなよ?」
「…ああ…」
「信じられないな…」


10/19(月)昼休み

シャインには昨日行ったので購買でパンを買って屋上で食べることにした
ゆき兄も誘ったが「今日はいい」とどこかに行ってしまった
リカも友達と食べていたのでしょうがなく1人で食べることにした
屋上につくととても会いたくない奴にあった、高橋
逃げようとしてすぐにドアを閉めて階段を降りようとした

「待てよ」

観念して後ろを振り向く

「そう睨むなよ、今日は別に何もしやしねーよ」
「…本当かよ?」
「ノスフェラトゥ…」
「え?」
「こんだけ噂になってんだ、知ってるだろ?」
「…まぁ」
「そいつを探してる」
「どうして…?」
「…どうしても嫌な予感がしてな
 一般生徒を煽り生徒会と対立させる
 自らの手は汚さずな、それがどうにも気に食わない」
「…お前は、生徒会を守ろうとしているのか」
「…生徒会自体を守ろうとしてるわけじゃない
 俺が守るものはもっと別にある…
 だけどそのためには気に食わなくても生徒会を存続させる必要がある」
「お前は…何を背負っているんだ?」
「…お前に話すようなことじゃないさ
 何も情報は出てこないようだな、それじゃ俺は行くぜ」
「…」

高橋は屋上から去っていった
あいつも何かを知っているのか…
そうこう考えてるとまた誰かが屋上に入ってきた

「先輩、調子はどうですか?」

その声に飛びのく
入り口には雷雲が立っていた

「ふん、怯えてますね」
「…雷雲」
「安心してくださいよ、今はやりません」
「…」
「執行部員の本当の戦いは深夜ですからね…」

…どうやら本当にここでやるつもりは無いらしい
それでも警戒態勢は解かずに話し続ける

「深夜、どこにいけばいい?」
「あれ?やる気マンマンですね?
 まぁ話が早くて助かります…
 そうですね、深夜0時にグラウンドでいいですよ」
「…わかった」
「楽しみにしてますよ…逃げたら…
 想像にお任せしますよ、クスクス」

笑いながら雷雲は行ってしまった
どのみちやるしかない
なら早いほうがいい
ただ気になるのはノスフェラトゥの今のままでは勝てないということか…
とにかくゆき兄に連絡しないと…

10/19(月)放課後

「やっぱり今日の夜か、来るんじゃないかと思ってた」

放課後の教室でゆき兄が机に座ってボヤいていた

「深夜0時にグラウンドだってさ」
「…わかった」
「その…勝てるかな?」
「勝てるかどうかはしらねぇ、でも勝たなきゃいけねぇんだろ」
「…うん」
「さっさと帰るぞ…
 いつもどおり夜までに覚悟を決めとけ」
「ああ」

俺はゆき兄と一緒に寮に戻った
そう、勝たなきゃいけないんだ、勝とう
たとえ可能性が1%に満たなくてもそこに賭けるしかない

10/19(月)深夜

時計が0時丁度をさした
グラウンドには俺とゆき兄、そして雷雲
しかしゆき兄が持ってる剣は本物なんだろうか…

「逃げずに来ましたね」
「ああ、来てやったぜ」
「…じゃあ始めましょうか」

そう言いつつも雷雲は動かない
警戒してる素振りもない、隙だらけだ

「…たまゆら、気をつけろ、下手に飛び込むな」
「わかってるさ…」

誰も微動だにしないまま時間だけが過ぎる
雷雲はあさっての方向をぼーっと見つめている
何を考えているんだ…?

「…どうしたんですか?
 攻撃しないんですか?」
「え?」
「ハンデですよ…さ、抵抗しないから1発どうぞ」

そう言って雷雲は手を広げた
挑発…?
それとも本当に1発ハンデなんてふざけたことを考えているのか?
もしそうなら、1発当てればやつの能力を無効化できる俺の勝利が確定する
こいつは黄龍鉄甲の力を知らないのか?
…どうする?
雷雲は動かないただこちらを見ている
…これで決まればそれでもいい、どちらにせよあいつが動かないならいつまでたっても終わらない!
虎穴にいらずんば虎子を得ず、やってやる!!
俺は一気に雷雲に向かって走り出した

「たまゆらッ!」
「1撃だ!これで決めて速攻で終わりにしてやる!!」

雷雲はそれでも動かない
もう完全に射程距離だ、舐めやがって!
この1発で終わりにしてやる!!


「吹っ飛べ!!!黄龍天光破邪爆裂拳!!!」

雷雲は避けなかった、全速力で走った勢いを乗せた黄龍鉄甲の1撃は雷雲の顔を完璧に捉えた
ゴガァッとした感触
そのまま雷雲は後ろに盛大に吹っ飛び地面に叩きつけられた

「…勝った?」
「…」

雷雲は地面に倒れている
本当に勝てたのか?

「…違う」
「え?」

ゆき兄が呟いた

「煙が出ない」
「あっ…」

そうだ、確かに今までは黄龍鉄甲の1撃を当てれば黒い煙と共に執行部の力は消えていた
しかし雷雲の身体からは一向に煙が出る気配が感じられない
状況が把握できずに動けないでいると雷雲がゆっくりと起き上がった

「…痛いねぇ…たっぷりもらった…この痛みを…
 ククッ…そう、そうさ…この痛みこそ生きてる証…!
 激痛の中にこそ生きている実感が溢れ出す!!」

雷雲が突然飛びこんできた
咄嗟のことで対応できず、完全に射程距離にとらえられた
雷雲の両の掌が俺の胸に当てられた

「さぁ痛みを知って生を実感しろ!!」
「なにッ!?」

世界が吹っ飛んだ
いや、正確には俺が吹っ飛んだ
全身を貫く強烈な衝撃、身体の内から粉々に砕け散ってしまいそうな衝撃
地面と空が逆転し、意識すらも彼方へと吹き飛びそうになる
そして地面に叩きつけられる激痛でおぼろげな意識がはっきりし同時に体中に激痛が走った

「が…あがっ…」
「たまゆら!!大丈夫か?」
「だ、い…ごぼっ…」

急激な嘔吐感がこみ上げた
なんとかそれを押さえ込む、口の中の液体からは強烈な血の味がした

「はぁー…はぁー…」
「1撃でこの威力かよ…」
「さぁかかってこい…俺にもっと痛みを…!
 生きている実感をよこせ!!」
「たまゆら!ちょっと待っとけよ!
 今あの野郎斬り倒してやる!!」

視界の端でゆき兄が剣を持って雷雲に向かう
身体が思うように動かない

「斬れろ!!」

ゆき兄の剣が、雷雲の右肩から左わき腹に走り抜けた
やったのか!?

「斬られる痛みってのもいいもんだな!お前も味わえよ!!」
「何ッ…!?」

視界の端
ゆき兄の胸から、鮮血が飛び出した
信じられないと言った顔で、その場にゆき兄が崩れ落ちる

「ゆき兄ぃぃぃぃいいいい!!」

無理やり身体を起こし立ち上がる

「がっ…斬撃だと…!?
 …こいつ…受けた攻撃を…?」

死んではいないみたいだが明らかにゆき兄は重症だった
倒れ込んだ場所に血だまりが出来ている
その目の前で雷雲が笑っていた

「そうだよ、俺は痛みを蓄積させるんだ…
 そして狙った場所から開放するんだ…その威力は数倍に跳ね上がっている…
 開放と同時に受けた傷も治る…さぁ…もっとだ…もっと俺に痛みをよこせ…」
「黄龍鉄甲の1撃まで…蓄積させることができるっていうのかよ…
 これじゃ…勝てない…」
「だけど勿論、相手の攻撃を待ってるだけじゃ駄目なんだ…
 だから俺は通常戦闘に置いても…」

倒れているゆき兄を飛び越え
雷雲がこちらに向かってきた

「強いんだよ」

雷雲の拳が顔に叩きこまれた

「かは…ッ…この…!」

思わず黄龍鉄甲で殴ろうとする
でも駄目だ、また返される!
そう思うと拳が止まる

「いい判断だぜ、次にくらったら全身の骨が砕けるだろうな
 だけどどっちにしろ生かして返さないがな!!」

腕をすり抜け下からアッパーが顎に直撃する
足から力が抜け、倒れそうになる
そこに雷雲の膝が叩きこまれた

「げぶぇっ…」
「さぁ痛みで実感しろ!お前は生きている!!
 これから死に至るその時まで痛みだけがお前の生きている証だ!!」

次々に全身に叩き込まれる猛攻
目の前が霞んでいく
襟首をつかまれ、吊るされる

「終わりだ…」

雷雲がそう言ったその時
視界の端に何かが見えた

「終わるのは…テメーだ…!」

ゆき兄が剣を構えて雷雲の後ろにいた
剣先は首を狙っていた

「…ハァ…ハァ…1撃で仕留めたなら蓄積もクソもねぇだろ?」
「やってみろよ?さぁ痛みを俺にくれよ?」
「…死にやがれ!!!」
「ただし俺が今こいつに触れていることを忘れるな」
「…!!!」

ゆき兄の剣が止まった
雷雲は笑っている

「その甘い考えが死を招くんだぜ?」

俺を地面に投げ捨て
雷雲は振り向き様にゆき兄の剣の刃に自らの腕を当てて思いっきり腕を引いた
雷雲の腕に大きな傷が開き、血が流れ出た
そのまま手をゆき兄の身体に当てた

「飛べよ」

何かが引きちぎれるるような、嫌な音がした
ゆき兄が力なく地面に崩れ落ちるのが見えた
それはやけにゆっくりで、スローモーションのようだった
殺された?ゆき兄が、殺された…?


「うっ…あっ…あああぁ…!!」
「次はお前だよ」

雷雲は笑っていた
その笑みに純然たる殺意を覚えた
殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる!!
世界が狭まっていく
同時にあの声が聞こえだす

『お前が力を望むのならば…』

「力をよこせ!!あいつを殺してやる!!!
 必ず殺してやる!!」

『ならば聞け新たなる力の名は…』

雷雲はゆき兄の剣を拾い上げ
それを持ってこっちに向かってきた

「さぁ終わりだ…痛みの先にある死に向かえ!!」

雷雲が剣を振りかざした
同時に俺は、叫んだ

「お前を殺してやる!!目覚めろ白虎ォォォォォオオ!!!!!」

辺りが真っ白な光に包まれた
同時に、振り下ろされる刃がとてもはっきりと見えた








雷雲はありえないという表情で地面に叩きつけられた剣を見つめていた

「あの状況で、どこに…逃げたっていうんだ…?」
「ここだ…」
「!?」

俺は、剣が当たるより早く
雷雲の後ろに回りこんだ
振り返った雷雲が、言った

「なんだ…その姿は…?」

朱雀の時と同じように
黄龍鉄甲が分裂し、変形した
今度は4つに分裂し、両手両足を装甲が覆った
そのどれにも、鋭い爪がついていた

「…この力で…お前を殺してやる…」
「ハハッ!少し姿を変えたぐらいで俺を倒せると思ってるのか!?
 今までボコボコにやられてたお前がよぉ!!」

ゲラゲラと笑い出した雷雲
その顔が、とてつもなく、イラついた

「お前の笑い顔は2度と見たくない…!!
 全身切り刻んでやる…!!」

その言葉と同時に走り出した
そしてすれ違い様に、雷雲の身体を、爪で切り裂いた
そのまま走りぬけ、気がつくとグラウンドの端までついていた

「な…?」

雷雲の身体から血が流れ出す

「…いつ…斬られた…?
 て…いうか…あいつは…どこにいった…?」

その声が聞こえていたもの
俺はそれに答えずもう1度走り出した
そして同じように、すれ違い様に爪で切り裂く
走り、切り裂き、走り、切り裂き、走り、切り裂く
例え雷雲が痛みを蓄積させることが出来ようとも
完全に俺を視認できない雷雲には痛みを開放することは不可能だった
逃げようにもこの速さからは逃げれない

「馬鹿なッ…こんなッ…
 痛みが…ああ…痛みが…」

もはや雷雲は倒れてもおかしくない状態だった
だけど俺がそれを許さない
斬ると同時に、弾き飛ばし、倒れさせない
まるでコマのようにその場をフラフラと回転する
それは血に染まった、赤いコマ

「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!!」

掌を合わせると爪が、まるで牙のよう
感覚でわかる、これが白虎の力の最終奥義

「消えろ!!白虎断極烈殺斬!!!」

白虎の全てを噛み砕く大牙の1撃
これで終わりだ!!!

「よせたまゆらぁぁぁあああああ!!」

…ゆき兄…!?
不意のゆき兄の叫び声に、俺の攻撃が止まる
その瞬間、雷雲が地面に倒れた

「そいつはもう意識を失ってるんだ…」
「ゆき兄…生きてたの…?」
「ははっ…」

ゆき兄は力無く笑いながらシャツを捲った
シャツの下では何かが切り裂かれていた

「ヤチャマルから借りた…鎖かたびらだ…
 最もさすがに鎖かたびらだけじゃすまなかったがな…」
「よ、よかった…生きてたんだ…」
「もう雷雲も戦えないだろう…
 お前の勝ちだよ…」
「…そっか勝ったんだ…」

『殺せ』

「え?」
「どうした?」
「今、何かが」

『殺せ』

「つぅっ…!頭が…!!」
「たまゆら!?」

『殺せ!!』

「もう勝負はついた…!
 もういい…!!」

『殺せ!!!!』

「あぁああああああああああああああああ!!!!!」
「た、たまゆら…?」

まるで檻の中から、テレビの画面を見ているように
俺の意思とは無関係に身体が動いている
止まれと叫んでも、どんなに止まれと願っても止まらない

「ウゥゥゥウウウ!!!」
「たま…うわッ!?」

爪がゆき兄を切り裂こうとした
やめろよ、やめてくれ

「ウォオォオオオオアアアアアア!!!」
「たまゆら、正気に戻れ!!」
「ガァァァアアアア!!!」

そして俺が雷雲にやったのと同じ攻撃がゆき兄を襲った
肉眼で捉えられないほどの速度ですれ違い様に切り裂く
何度も、何度も…
やめてくれ!!ゆき兄は違うんだ!!

「たまゆらっ…!!」

ゆき兄が倒れそうになる
俺の身体は両手を前に組んだ
よせ、それだけはやめろ、お願いだ、やめてくれ

「…白虎断極烈殺斬…」
「たまゆらぁああああああああああ!!」

やめてくれぇぇぇえええええええええええええええええええ!!




8時間目 - 激痛 -



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最終更新:2009年11月01日 02:48