邪眼学園黄龍譚9限目【堕人】
10/19(月)深夜
「…白虎断極烈殺斬…」
「たまゆらぁああああああああああ!!」
白虎の力を発動させた俺は雷雲を倒すことは出来た
だけど身体が言うことを聞かなくなった
そして白虎はその牙をゆき兄に向けた
止まらない、ダメだ、この攻撃が命中すれば間違いなくゆき兄が死んでしまう
だけどもうゆき兄は満身創痍でとてもこの技が避けれる状況じゃない
誰でもいい、頼む、俺を止めてくれ
白虎の大牙が、ゆき兄を噛み砕く
その寸前に辺りに響いた、金属音
牙は、止まっていた、いや、止められていた
「ふんぎっぎぎぎぎ…!!」
「ほろにが!?」
「ギリギリ…セーフか…!?
って何て…力だ…こんにゃろ…!!」
縦に構えられた鉄パイプが白虎の牙を受け止めていた
しかし鉄パイプは曲がり、今にもねじ切れそうそうだった
俺の身体はそれでも力を緩めない
「…あ、これヤバい…
やっぱり来るんじゃなかった…諦めていい?」
「いや、ちょ、馬鹿!
諦めるよな!!」
「いや、だって…これもう…鉄パイプ…ちぎれる…」
「俺はもう動けねぇんだぞ!!
それに今力を緩めたら2人とも噛み砕かれるぞ!!」
「あ、そうか…
でもまぁ諦めるって言ったのは助かる確証あってこそでな」
「はぁ?」
「上出来だ、ほろにが」
「ヤチャマル!?」
俺の身体の後ろにヤチャマルがいた
「悪いな、たまゆら」
ヤチャマルの手が背中に触れる
「絶気断脈」
次の瞬間、何かが弾け飛ぶ感覚
同時に視界が真っ暗闇になり、地面に倒れる
正確には倒れたのかどうかすらもわからない
全身の感覚が消え失せ、何も見えない、何も聞こえなかった
まるで意識だけの存在になって永遠の闇に落とされたのかのような
何も出来ない、生きているのかもすらわからない
気が狂いそうなほどの恐怖が俺を包んだ…
10/19(月)同時刻
「…会長」
「…これでもう…
全く転校生といいノスフェラトゥといい…」
「だから、僕が行きます、行かせてください」
「…いや、あいつを呼べ」
「あいつ?」
「最後の執行部員だ」
「…あんなやつを呼び出したところで
それにあいつが素直に命令を聞くかどうか…」
「お前は俺の命令に背くのか?」
「う…いえ…わかりました」
「出来る限り早くここに来いと伝えておけ」
「…了解、しました」
10/20(火)明け方
一体どのくらいの時間が立ったのか
1分のようにも感じるし、1日のようにも感じる
俺は死ぬまでこのままなんだろうか
そんなのは絶対に嫌だ…だけどどうしていいかわからない
必死に恐怖に耐えていると不意に辺りに光が戻った
ゆっくりと辺りを見渡すと
そこは保健室だった、またこのパターンか…
「気がついたか」
「あ…ヤチャマル」
「すまなかったな、暴走したたまゆらを止めるには強制的に気の流れを断ち切るしかないと思ってな」
「気の流れ…」
「それもどこをどう止めていいかわからなかったから全身を止めたからな…
5感全てを奪われた世界はとてつもない恐怖だったろ?」
「…うん、一生あのままかと思ったよ…」
「まぁあの場合それしか方法が思いつかなかったんだ許してくれ」
「大丈夫…
そうだ!!ゆき兄は!?大丈夫なのか!?」
「あーあー、騒ぐな騒ぐな、俺なら平気だ、傷は意外と大したことなかったみたいだ」
部屋の奥からゆき兄の声が聞こえた
どうやら無事だったらしい
「…ごめんね…ゆき兄…本当に…ごめん」
「…気にするなよ、俺は平気だからな」
その言葉を聞いて少し安心した
同時になぜ自分がああなったのか、不安が沸いてくる
「…一体どうして俺は…」
「理由はわからんが…原因はやはり…
黄龍鉄甲だろうな」
ヤチャマルが右手に黄龍鉄甲をぶら下げていた
「…俺…もう少しでゆき兄を…」
「…気にするな、といっても気にするんだろうが…
まぁ誰も死んではいないんだあまり気に病むな」
「…」
「とは言っても…今後も暴走する可能性がある以上は…まぁ…」
「だからさーやめちゃえばいいわけよー」
「ほろにが!」
ヤチャマルを押しのけてほろにがが近づいてきた
そしてベッドで寝ている俺の横に立った
「前も言ったけどなぁ、お前ガキのくせに背負いすぎだっつーの
毎回毎回こんなふうになって悩むよりかはさっさと逃げたほうが楽だぜ?」
「…」
「逃げてもあいつらは襲ってくるとか言ってもよぉ
最悪学校を辞めるなり転校するなりで遠くに逃げちまえばいいだろ?
いくら生徒会の奴らが特殊な能力や絶対的な権限を持ってたってさぁ
誰にも行き先を告げずに学園自体からおさらばして遠くに逃げちまえばいいだろ?」
「逃げる、か…考えたことなかったな…」
「まぁ、気持ちはわからんでもないけどな
お前らぐらいの歳の時は自分にしか出来ない、自分がやらなくちゃいけない
これは自分に課せられた使命、だとか何とか勘違いしちゃうんだよねー
そういう時期なのになんかよくわからん武器まで手に入れちゃったら
そりゃそうなるのもわかるけどよ」
「…」
「でも逃げたきゃ逃げれるんだぜ?その、なんだっけ、ああ、黄龍鉄甲?
それをどっか適当にぽーいって投げ捨てて遠くに逃げればそれで解決だ
使命なんかより自分の命だって、少なくとも俺がお前ならとっくに逃げてるな」
「…違う」
「え?」
「もう使命だとかそういう問題じゃないんだ…!
俺が戦うことで他の誰かが傷つけられてしまうのも知ってる!!
色んな奴らに言われてきてもうそんなことは充分理解してる!!
それでも俺が戦うのは止めないのはただの意地なんだ…!
絶対に1歩も後ろに下がれない意地なんだよ!!」
「…意地…か…」
ほろにがはくるりと俺に背を向けた
そして頭を掻きながら言った
「…悪かった
そーいうことなら…意地なら仕方ないよな…」
「…ほろにが」
「…まぁ…誰だって貫きたい意地ってもんがあるんだよな…」
「…あれ…そういえば…
なんでほろにがとヤチャマルは助けに来てくれたの?」
「ああ、あれ?いや、寝てたらウオオーとかグアアーとかやかましくて寝れなくてよー
誰か喧嘩でもしてんのかと見に行ったらお前らが何かやっててよー
で、しばらく見物してたんだけど危なそうだったから助けに入ろうと思ったんだけど…
なにぶん1人だと心細くてヤチャマルを呼びに行って戻ってきたらあんな状況だったんだ」
「…」
「いや、何だよ、その顔
だいたい俺が命を捨てる覚悟でゆき兄とお前の間に飛び込まなきゃ今頃どうなってたか…!
ちょっとは感謝して欲しいもんだね!」
「正確には私が間に向かって蹴り飛ばしたんだけどな」
ヤチャマルからのツッコミが入った
バツが悪そうな顔でほろにがは黙ってしまった
「…でも一応感謝するよ」
「ん、おお」
「それと、雷雲は…」
「あー、あのズタボロの雑巾みたいになって倒れてた奴ね」
「雷雲なら隣のベッドで寝てるぞ
最も当分目は覚まさないだろうが…」
「…そっか…」
「それよりたまゆら」
「ん?」
「暴走の原因がわかるか?」
「…」
「…わからないだろうな」
「あの時、雷雲を倒した後に頭の中に声が響いたんだ」
「声?」
「殺せ、殺せって…そしたら頭が割れるように痛くなって
あとはもう身体が言うことを聞かなかった」
「…」
しばらくの沈黙の後
ほろにがが口を開いた
「黄龍鉄甲を使えるのはたまゆらだけだろ?
たまゆらがわからないっつーのなら誰にもわかんなくねぇか?」
確かにそれもそうだ
黄龍鉄甲のことをよく知っている奴なんて誰も…
いや、たった1人だけ俺以上に黄龍鉄甲のことを知っている奴がいた
「…」
「たまゆら?」
「…ごめん、何かわかったかもしれない
寮に戻る」
「おい、たまゆら…」
「無理やり止めた気の流れはすぐには治らない、まだ休んでおけ」
「大丈夫、動けるから」
ベッドから降りる
若干足元がふらつくが問題は無い
そういえばさっきからゆき兄が静かだ
「ゆき兄、俺先に戻るけど」
「…俺は疲れたからもう少し休んでから戻る」
「そっか…わかった、ごめんなゆき兄
しっかり休んでてくれ」
「……ああ」
保健室を出て廊下を進む
外はもう薄っすらと明るくなっていた
あいつを探さなければ
黄龍鉄甲に秘められた力を知っていたアイツ
ノスフェラトゥなら…恐らく…
しかしノスフェラトゥはいつもこっちの都合関係無しに突然現れる
奴が現れたのはいつも夜だった
恐らく今日はもう無理だろう…
とりあえず俺は寮に戻った
10/20(火)朝
寮に戻ってなんだかんだとしているとすぐに学校の時間になった
どうしようか多少迷ったが身体のほうはもう問題が無いようだったし
もしかしたらノスフェラトゥの情報が掴めるかもしれないと思い行くことにした
教室について辺りを見回す
ゆき兄の姿は無い、やっぱり休んだか…
周りの奴らがテストについて話している
…とてもじゃないがテスト勉強をする気にはなれないな
リカがノートを貸してくれるのかせめてもの救いか…
「おはよーたまゆら君ー」
「おはよう」
「ゆき兄今日もサボったかー」
「…昨日さ、戦ったから…今日はしょうがないよ」
「あ…そうなんだ…ごめん」
「いやいや、謝らなくても」
「でもたまゆら君はちゃんと来てるのにね」
昨日のことを話そうかどうか迷った
俺が暴走してゆき兄を傷つけたことを
いや、余計な心配をさせることはない、ゆき兄は無事なんだからそれでいい
「…そうだね」
「あ、テストのノートのほうは任せてよ」
「うん、ありがとう」
そこまで話してチャイムが鳴った
リカは自分の席へと戻っていく
俺はどうやったらノスフェラトゥに会えるかを考えていた
10/20(火)午前
「来たか」
「あ、あの…」
「転校生を倒せ、執行部はもうお前だけだ」
「む、無理ですよ!怖いじゃないですか!!」
「それでも倒すんだ」
「そんなぁ…だって僕戦いとか怖いし…痛いし…」
「…」
「うぅ…わかりました…出来るだけやります…」
「確実にやれ」
「あぅぅ…」
「…」
「…会長、奴が素直に命令を聞くとは」
「そう、奴は素直に命令を聞かずに逆らう
しかしそれは逆に言えば…」
「?」
「死のイメージで縛り付けた執行部員の中で唯一私に逆らうことが出来るということだ」
「…!」
「奴は臆病者だ」
「ええ…」
「だが臆病者故に…強い」
10/19(火)昼休み
食欲があまり沸かない
ヤチャマルの言っていた気の流れを強制的に止めたことによるものだろうか
まぁ別に一食ぐらい食べなくてもさほど問題はないのだが…
特にやることも無く廊下を歩いていると誰かがこっちを見ていた
その視線に気づくとそいつはビクッとして動きが止まった
「?」
近づいていくとアワアワとした感じでキョドりだす
そして目の前まで行くと突然頭を下げだした
「ごごごご、ごめんない!ごめんなさい!
別にガンつけたわけじゃないんです!ごめんなさいごめんなさい!!!」
何だこいつは
「…いや、別にそんな喧嘩売ってるわけじゃ」
「そ、そうなんですか!?本当ですか!?
突然殴ったりしません!?」
「殴らないって…」
「あ、あの…それともう1個、お、怒らないで聞いてください…」
「何?」
「僕、その、執行部なんです…」
「!!」
咄嗟に身構える
「ひゃぁあ!ごめんなさい!ごめんなあい!!」
目の前の執行部と名乗った男子生徒は尻餅をついて
そのまま後ろにズルズルと逃げていく
…これが執行部?
「あ、あのあの、僕その、か、会長に、転校生を倒せって言われたんですけど
でも僕、戦いとかそういうの嫌いで、なんとか穏便に済ませないかなって、おお、思って」
「…」
「だだ、駄目ですか?やっぱり戦わなきゃ駄目ですか!?」
「…いや、そりゃ…戦う気が無いっていうなら…」
「ほ、本当です?」
「…うん、まぁ…」
「よ、よかったぁ~…」
どうにも調子が狂う
こいつが本当に執行部なんだろうか
「…そのー…僕、蝶っていいます…」
「…うん」
「ぼ、僕ですね…力をもらったのはいいんですけど…
怖くて1回も使ったことなくて…だから執行部でもお荷物扱いだったんですけど…
もう僕以外たまゆらさんにやられたから僕しかいなくて…」
「待て!執行部がもう蝶以外いないだと!」
「あ、あぅ、こ、これ言ったらまずかったのかな?
あ、でももう言っちゃったし…えと、そうです…」
「…そうか!」
「それであの…出来れば…一切僕とは戦わずに…お願いしたいんですけど…」
話を聞くぶんにはこいつは本当に執行部のお荷物だったんだろう
力を使ったことが無いってことは断罪をしたことも無いってことで
執行部がもういなくなってきてしまい苦肉の策でこいつを送り込んできたってわけか
白やんのやつも必死だな
だけどこいつが戦いたくないというなら無理に戦う事も無い
「…わかったよ、俺だって執行部は皆殺しとか言うつもりもないし
蝶とは戦わないよ」
「本当ですかぁ…!よかったぁ…!!
ありがとうございます!お礼にパンでも奢らせてください!!」
「え…おい…」
「早く早く!」
蝶は走り出して手招きしている
しょうがなくついていくと購買でカレーパンやらなんやらを買って俺に渡してきた
「それじゃあ僕これで…また会いましょう!」
パンを渡すと蝶はどこかに行ってしまった
…執行部にもあんな奴はいたんだなぁ…
しかしこの大量のパンをどうするか…
あ、そうだ
俺はそのまま裏のゴミ捨て場に行った
「おーい、ほろにがー」
「はいは~い」
ゴミ山の中からほろにがが姿を現した
「お、なんだ、たまゆらか、どうしたよい」
「パンやるよ」
袋ごとほろにがに向かって投げた
見事にキャッチするとほろにがは袋の中を覗いて言った
「うっは!こんなにパンくれんの!?
お前マジいい奴だな!見直したぜ!!」
言うが早いか、途端にほろにがは大量のパンをバクバクと食いだした
かなり豪快な食べ方だ
「ふんもっふ…!がはっぷもぎゃっぷ…!!
ずびずるばーばんーこくちゃぴーぶるるっる…!!」
「いや、どういう食い方してんだよ
つーかガッつき過ぎだろ」
「んがっぷ…いや、やっぱり普通の食べ物はうめぇーよ
もう黒いバナナは嫌だったんだ…最近はしおれたリンゴとか…」
「…そうか…よかったな…んじゃ俺行くから」
「ん、んー、さんきゅー、ふがっぷ、んが」
ほろにがにパンを渡して戻っいると丁度昼休みが終わった
俺は教室に戻ることにした
10/20(火)放課後
とりあえず今からどうするかが問題だって
部屋に戻ってノスフェラトゥを待つか、それとも奴の情報を集めるか
しかし恐らくこの時間にやつは現れないだろう
と、なると情報を集めていたほうがいくらか生産的だろう
とはいえ確かにノスフェラトゥは学園全体で噂になっているが
実際はほとんどの奴は姿を見たことはない
もちろん、誰も居場所なんか知らない
やっぱりノスフェラトゥがまた直接俺に接触してくるのを待つしかないのか
なんてことを考えていると前方からフラフラと歩いてくる…ピュアがいた
そして突然ピュアが倒れた
「お、おい!」
慌てて駆け寄って揺り起こす
少し呼吸が荒い
「…あ、ああ、たまゆら君か」
「どうした、大丈夫か?」
「すまない…少し…貧血のようだ」
「貧血?」
「ここ最近…あまりしっかり寝た覚えが無くてね…」
ピュアがゆっくりと立ち上がった
「…もう少しなんだ…もう少しで…」
「ピュア?」
「…」
鬼気迫る、そんな感じでピュアはただ一点だけを見つめていた
「すまない、それじゃ僕はいくよ」
「ま、待てよ…」
「…僕には、僕の…やることが…
誰にも…譲れない…」
ピュアはフラフラとおぼつかない足取りで廊下の先へと歩いていった
心配だったが、恐らく何を言ってもとまらないだろう
「…奴を探そう
俺は俺のやることを…」
情報を集めるということだけは意外と簡単だ
ノスフェラトゥ派の生徒はもう学園のほとんどだ
しかし、その情報は全て推測の域を出ない
酷いものになると宇宙からやってきたどうのこうのとかわけのわからないものまである
しかし1つだけ気になった情報があった
曰く、ノスフェラトゥは時計塔に住み着いている、と
他に有用な情報も無く、俺は時計塔に向かった
校舎や他の建物に囲まれとても目立たない、もうその動きを止めた時計塔
普通に学園生活をしていると気づきもしないだろう
実際ここに来るのは初めてだった
「うーん…」
入り口のドアを開けようとしたがカギがかかっていた
他に入れそうなところも見当たらない
しばらく辺りをウロウロしてみるもやはり侵入できそうなところは無い
扉をブチ破れば入れるだろうが…さすがにそこまではぁ…
そんなことを考えていると、下校の鐘が鳴った
「あっ…」
一瞬慌てた、が
気にしないことにした転校してきてから下校時間は守れとか言われてきたが
もう執行部も減っている、あまり神経質になることもない、そう思った
思っていたが…突然周りの空気が変わった
「え…?」
冷たい空気、なのに蒸し暑く絡みつくような不快感
そして至るところから見られているような…
「なんだ…?」
そのとき、背後から何かの気配がした
咄嗟に振り向くと、後ろには人の姿はしているが人ではない何かがした
なぜわかったのかはわからない
ただ一目見た瞬間に理解した
こいつは人ではないと
「ウゥゥウウウ…」
その人ではない何かが呻き声を上げた
こちらにゆっくりと近づいてくる
黄龍鉄甲は無い、どうする…!?
「ウオォォォォ…!!」
その人ではない何かが、俺に向かって飛びかかってきた
そして近くに来た時、恐ろしいものを目にした
そいつの両の目は白目も黒目も存在しない
ただの真っ赤な目
本能がこいつはまずいと理解する、逃げなくちゃいけない
だけど、目に興味を逸らされた俺は避けれない…!
思わず目を瞑ってしまう
しかしいつまでたっても痛みは来なかった
おそるおそる目を開けると…
「…!」
「下校時間はとっくに過ぎたぞ、転校生」
「白やん!!?」
黒い人ではない何かは、白やんの右手の剣に後ろから貫かれていた
そしてその身体がまるで溶けるようにどろどろと溶けていき
やがてその水は蒸発するように黒い煙になって消えていった
黒い煙…これは…まさか…!?
人では無い何かがいなくなり、白やんはこちらを見ている
「…下級堕人すらも倒せないとはな」
「ダヒト…?」
「だから下校の鐘は守れと言っているんだ、我々は」
白やんが剣をこちらに向けた
「う…」
「最も今までは堕人なぞ滅多に現れなかったのだがな
最近は多くはないが頻繁に現れている
なぜだかわかるか?」
「…知るかよ」
「今にも水が溢れ出しそうな入れ物から水がこぼれないようにするには蓋をすればいい」
「…?」
「この学園が入れ物で、蓋の役目を担っていたのは我らと執行部だ」
「何だと…?」
「最も我らはそれを楔と呼んでいるがな」
「楔…」
「堕人は命を求めて生者を襲い喰らう
そして奴らは日没と同時に活動を開始する
我々が一般生徒を守っていたというのは理解できたか?」
「…」
「お前が執行部を倒していくことで楔の数が減り
堕人が徐々に姿を現していくということだ」
「う…」
「だから我々はお前を倒さなくてはいけない
…堕人については執行部の奴らは知らないがな」
白やんの剣が上に振り上げられた
まずい、やられる…
だけど剣はそのまま収められた
「だが俺は今お前程度に構っている暇はないんでな
堕人殲滅が俺の目的なんでな」
「はぁ…」
「それにお前はそのうち勝手に倒れるだろうしな…」
それだけ言うと白やんはさっさとどこかに行ってしまった
俺はその場にへたりこむ
とりあえず、今日は寮に戻ろう
10/20(火)夜
部屋に帰ったものの気は重かった
生徒会の奴らはただ校則に背く奴らを気の向くままに断罪しているわけではなかった
しかし奴らのやってることは正しいのか正しくないのか…そんなのはわからない
俺はどうすればいいんだろう
少なくとも生徒会が黒人の手から一般生徒を守っているのは事実だろう
しかしだからといって…
もう俺には何がどうなのかわからない、俺だけが何も知らず、ただ戦っている
1番勝手なのは…俺じゃないか…
「随分落ち込んでるなぁ」
「!!!!」
後ろを振り向く
奴がいた、俺が今最も会いたかった奴が
「俺に会いたかったんだろぅ?」
「…なぜ、知っている?」
「クカカカ、そりゃぁねぇ…わかるからわかるんだよぉ」
「…ノスフェラトゥ、お前が知っていることを全部教えろ!!」
「ヒヒッ、全部、か」
「全部だ」
ノスフェラトゥはしばらく沈黙した
「…とりあえず、何が聞きたいんだぁ?」
「まず、黄龍鉄甲の暴走のことだ」
「ああ…」
「教えろ…!」
「…白虎の力は殲滅の力、圧倒的な攻撃によって相手の命を削り取る
殺意によって目覚める白虎は目に付く者全てが動かなくなるまで戦いを止めない」
「…つまり、あれは白虎の力が?」
「そういうことだぁ
その代わり、白虎の力は絶対的だぁ」
「…」
「他に聞きたいことはぁ?」
「…なぜお前は生徒会を消そうとしているんだ?」
「一般生徒を力を押さえつける生徒会なんて無いほうがいいと思わないかぁ?」
「それは生徒会が堕人から一般生徒を守っていることを知っての上でか?」
ノスフェラトゥが黙った
何かを考えるように爪の先で仮面をコンコンと叩く
「堕人について知ったのかぁ」
「知っていたのか!!!」
「…だが勘違いしてるぜ、堕人については原因がある」
「原因?」
「堕人は渦巻く闇に呼ばれる」
「闇?」
「自らの存在に近い者が集まっている場所に惹きつけられ姿を現すんだぁ」
「どういうことだ?」
「生徒会の力は闇、つまりは陰の力
陰の力を持つ能力者が大量にこの邪眼学園にいるんだ
そりゃぁ堕人も集まるに決まってらぁ」
「…ということは
生徒会全員を倒せば自然に堕人も現れなくなるってことか?」
「ま、そういうことだぁ
つまりどう転んでも生徒会を叩き潰せば全ては丸く収まるんだよぉ」
「…」
「余計なことは考えずに戦え
お前は正しいよぉ?たまゆらぁ?」
「俺は…自分が正しいとかそんなことは考えてない」
「そうかぁ…だが生徒会を完全に倒せば堕人の発生も収まるのは本当だぁ
奴らが勢力を増やすたびに増えてくる堕人に手を焼いて
執行部員に楔とやらの役割を持たせていたんだ、まぁつまり自分たちのためだな
奴らが一般生徒のことを考えてることはないぜぇ?」
「…」
「それでぇ?他に聞きたいことはぁ?」
「…お前が何者なのか」
「学園の闇を憂う者、ノスフェラトゥ、それだけだよぉ」
「…」
「…わかった、じゃあもう…いい…」
「そうかそうか、それじゃまたなぁ?頑張れよ?
ヒャーッハッハッハッハ!!」
ノスフェラトゥは一瞬でその場から消え去った
…全てを丸く収めるにはやはり生徒会、白やんを倒すしかない
奴のいうことを1から10まで信じるわけにはいかないが…
どちらにせよ今日明日に白やんを倒せるわけではない
決着がつくときまでには何が真実なのかは自分で見つけてやる
10/21(水)朝
朝になって学校へ向かった
皆テストの話をして朝からノートを広げてる奴らや
半ば諦めて馬鹿話を繰り広げてるようななんか普通の学校ぽい光景を久しぶりに見た気がした
しかしたまに耳に入ってくるノスフェラトゥについての話
やはり逃れられないってことか
確かテストは金曜からだったが…こんな状況で…うーん…
そういえば今日もゆき兄が来ていない
このままテストも完璧にサボりそうな気がしてならないな
10/21(水)昼休み
昼休みになりシャインでも行こうかなと思って教室を出た
「たまゆらさん!」
「ん?」
廊下で蝶が待っていた
「な、何?」
「あの、ちょっと…パンを買いすぎちゃって…
よかったらこれどうぞ」
そう言って蝶はカレーパンを渡してきた
「いいのか?」
「小食なんですよ…
なのにあれもこれもいいなって思うとつい買いすぎちゃって…
捨てるのも勿体無いしもらってください」
「そうか、悪いな」
「それじゃ」
蝶はとことこと戻っていった
あいつは本当に執行部に向いてないな
しかしカレーパン1個を昼食にするってのもな…
やっぱりシャインで食って、これはまたほろにがにでもやるか
シャインにつくといつもいるはずのカナさんがいなかった
代わりに阿部さんがいた
「よぉたまゆら君、なんとなく久しぶりだな」
「ああ、どうも…」
「やはりいい身体してるな、ちょっとトイレにいかないか?」
「遠慮します」
「ツれないねぇ、まぁいいか、こちらにどうぞ」
阿部さんに席に案内される
「ご注文は?」
「んー…」
「最近のお勧めは昨日作ったばかりの新作のガチムチプリンだけど」
「…カレーライスで」
「デザートにガチムチプリンは?」
「カレーライスで」
「…かしこまりました」
なんだよガチムチプリンって嫌な予感しかしないよ
「ガチムチなんだけど尻は意外とプリンッとしている
そんな男の身体の魅力を余すことなく伝えたプリンで」
「説明しなくていいですから!気が変わったりしませんから!」
「そうか…残念だ」
阿部さんは素直に引き下がった
シャインに問題があるとしたらこのように作った創作料理を食わせようとしてくることだろうか
いや、些細な問題だし確固たる意思を持って断ればいいのだが…
気の弱い奴だったら食わされるよなぁ…
とか考えてるとカレーライスがきたので食った
その後俺はまたゴミ捨て場に向かった
「おーい、ほろにがー」
「お!またパンか!!」
昨日と同じようにゴミ山の中からほろにがが飛び出した
「今日はカレーパン1個だけどな、ほら」
カレーパンを放り投げる
見事にキャッチしたほろにが
「じゅうぶん、ああ、やっぱり普通の食べ物っていいなぁ…」
袋を破りかぶりつこうとするほろにが
が、動きが止まった
「どうした?」
「クンクン…」
かぶりつかずにずっとカレーパンを匂っている
カレーの匂いが好きなんだろうか
「おい、たまゆら」
「ん?」
「これ、どこで手に入れたんだ?」
「え、友達にもらったんだけど」
「捨てとけ」
カレーパンが投げ返された
突然でキャッチできなくてカレーパンが地面に落ちた
「なんだよ勿体ないな…腐ってたのか?」
「香辛料の匂いでよくわからんかったが…
食ったら死ぬぞ、間違いなく毒入りだ」
「え…?」
「何が入ってるかはよくわからねぇが…」
「別段カレーパンの匂いしかしないけど」
「俺の鼻は特別だからな
犬にがとか呼ばれてたこともあって…」
「本当かよ」
「なんにせよ絶対毒入ってるぞそれ
だいたいそうじゃなかったら俺が食わない理由がないだろ?」
「…まぁな」
毒入りだってことは、毒を入れたのは蝶?
あの常にビクビクしてる奴が?
しかし確かに毒でも入ってなきゃほろにがが食わない理由は無い
「ほろにが、悪かったな、とりあえずこのカレーパン渡した奴を問い詰めてくるわ」
「おうおう、まぁ何かの間違いってこともあるだろうしな」
「じゃあいってくら」
「はいはいいってらっしゃいよ…
あーまたしおれたリンゴ食うのか…」
校舎に戻り走り回って蝶を探す
何組かどうかを聞いておけばよかった
走り回って疲れてそろそろ昼休みが終わるぐらいにさしかかったとき
「あれ?たまゆらさん?」
後ろから蝶の声が聞こえ
振り向くとビクッとした感じで蝶が後ずさった
「うわぁ!僕何かしました!?ごめんなさい!!」
「あ…いや…」
いざ相対してみるとなかなか言い辛いことに気がついた
まさか面と向かってカレーパンに毒を入れたか?などとは聞けないし
かと言ってここまできて聞かないのも…
「あの…もしかしてカレーパン…嫌いだったんですか?」
「う…そう…じゃなくて」
「ごめんなさい…」
なんだか聞ける雰囲気じゃなくなってしまった
「…あー、と…いや、あの、あのカレーパンどこで買ったの?」
「え?購買ですけど…」
「あ、あーそうなんだ…実はなんか腐っててさ…」
「本当ですか!?腐ったカレーパンとか…会長に行ったほうがいいのかぁ…」
「あー、や…まぁ、たまにはそういうこともあるだろうしさ
今回はほら、別にいい…みたいな」
「…そうですかぁ?わかりました…」
そこでチャイムが鳴ってしまった
「あの…それじゃ僕戻りますんで…」
「あ、ああ、俺も戻る」
「その…ごめんなさいでした…」
「いや、いいんだ」
蝶は自分の教室のほうへと戻って行った
結局聞けなかった…
とはいえしょうがないか…と、自分を無理やり納得させて俺は教室に戻った
10/21(水)放課後
放課後になり特にやることも無くぼーっとしていた
蝶のことも気になるが堕人というあの黒い人の形をした奴らのことも気になる
もし堕人すらも俺が倒せるなら…
そんなわけで今日は黄龍鉄甲を持ってきていた
とりあえず鐘が鳴るまではじっとしていることにした
しばらく時間が立って、鐘が鳴った
同時に行動を開始した
特に目的も無いまま、廊下を歩く
誰もいない校舎はなんだかとても恐怖を感じさせる
しかしどれだけうろついても堕人に出会う気配は全く無い
昨日感じた冷たい気配すらも微塵も感じない
「うーん…」
しばらく考えた
やはり出やすい場所とかあるのだろうか?
となるとやはり昨日の時計塔の場所か?
思いついた俺は早速行ってみることにした
時計塔の近くまで来たとき、空気が変わったのを感じた
間違いなく、いる
この先を曲がると時計塔が見える
全身に絡みつく冷たく、しかしねっとりまとわりつくような蒸し暑い空気
黄龍鉄甲を構え、意を決して時計塔の前まで歩く
時計塔の入り口に3体ほどの黒い影
「オォォオオ…」
「アァァアア…」
「ゴァアアア…」
何をしているのかわからないが
時計塔の入り口の壁をガリガリ削っているようにも見える
俺の足元でコツンと、石が跳ねた
同時に3体の影がこちらを振り向いた
「…オォォォオオオオ!!」
途端に3体全てが俺に襲い掛かってきた
だけど意表を突かれた昨日とは違う
身体をひねりカウンター気味の1撃を1体に当てる
「オォォォォォオオオ!!」
雄叫びの後、ボフゥッ!とした感じで堕人の身体が煙のようになり消滅した
どうやら黄龍鉄甲でこいつらを倒すことは可能なようだ
さらによく見ると堕人の動きは比較的遅い
一般人より少し遅い程度のスピードで全く問題なく残りの2体も同じように消滅させることが出来た
倒せる、ていうかこいつら弱いじゃないか
「何をしている!!」
後ろから怒号が聞こえた
振り向くと白やんが立っていた
「白やん、俺でも堕人は倒せる」
「そういうことじゃない!!無闇に堕人を倒すんじゃない!!」
「何…!?」
『オォォォオォオオオオオオオオ!!!!!!』
突然辺りにとても大きな大音量が響いた
まるで何十体もの堕人が同時に叫んでいるようなそんな大声
「馬鹿が…!」
「ど、どういうことなんだ…?」
「下級堕人は確かにそう強い相手でもない…!
だが下級が3体以上集まっている場所には下級堕人を遥かに凌ぐ上級堕人がいる可能性がある!
上級堕人は普段は実体化しないが下級堕人の残滓を媒介にすることによって実体化するんだ!
何も知らないくせに独断で勝手に倒しやがって!転校生!!やはりお前はこの学園の災厄だ!!」
「そんな…!止められないのか!?」
「もう遅い!!実体化するぞ!!」
辺りに突風が吹き荒れた
同時に地面のある一点より黒い水がゴボゴボと湧き出した
そこからゆっくりと、何かの手が出てきた
続いて顔、身体とゆっくりと何かが姿を現した
それは両腕が剣と化した額に第3の眼を持つ骸骨
さっきまでのおぼろげな黒い奴らと違い
そいつは完全に物質として感じられる
「…我は死…モノザネ…」
「喋った!?」
「上級堕人の中には人語を理解するほど知能が高い奴らもいる」
「どうするんだ?」
「…やるしかない、貴様にも手伝ってもらうぞ」
白やんの剣が変形する
何だあれ…鎌?
「斬り払え、狂刃ホワイトジョーカー…」
白やんが鎌を振りかざし上級堕人モノザネに飛びかかる
「哀れな、人、ども、我は死、モノザネ」
モノザネが飛んだ
正確には飛び上がり空中で回転しながらそのまま白やんを斬り裂こうとした
「クッ!」
キィン!と鎌の刃でモノザネの剣を弾く白やん
砂煙をあげながら地面をこすり、滑るように鎌を持ったまま体制を整える白やん
モノザネもくるくると回転しながら地面に着地する
「転校生!挟み撃ちだ!」
「わかったよ!!」
俺も黄龍鉄甲を構えてモノザネに向かって走り出す
同時に白やんもモノザネへと走り出していた
「我は死、我は死、命を、奪う」
「ブツブツとうるせぇ野郎だな!!」
黄龍鉄甲を振りかざし渾身の力でモノザネを殴りつける
だがモノザネの手の剣が黄龍鉄甲の1撃を止める
この剣、細いのに何て硬さだ…!!
反対側からもキィン!という音が響いた
どうやら白やんの鎌も止められたらしい
「くそっ!!」
一旦後ろに飛びのいて距離を取ろうとする
その瞬間だった
白やんを弾き飛ばしてモノザネがこっちへ滑るように向かってきた
「なッ!?」
「死すべき」
モノザネの剣が突き出される
まずい、避けられない、突き刺さる!!
「堕人風情が俺を舐めるなよ」
ガキィン!!と音がした
モノザネの剣がギリギリで止まった
白やんの鎌の刃がモノザネの身体にひっかけられいた
あれで止めたっていうのか?
「チッ…こいつ全身が恐ろしく硬いのか…
となると…」
白やんが鎌をひっかけたモノザネを弾き飛ばした
遠くに吹っ飛んだモノザネはまるで曲芸のように空中で回転し見事に着地した
「転校生」
「なんだよ!」
「10秒でいい、奴の動きを止めろ」
「10秒?」
「できるか?」
「…ああ!やってやるよ!!」
できるか?なんて聞かれてここで出来ないなんて言えるわけがない
なんとしてでも奴の動きを止めてやる
「我は…死…」
「うおおおおお!!」
俺は黄龍鉄甲を構えてモノザネに全速力で走りよった
モノザネの両手の剣が不規則に振られる
片方の刃を黄龍鉄甲で受け止め、もう片方をギリギリで避ける
髪の毛がパラリと落ちた
そのまま身体を滑らすように俺はモノザネの背後を取った
そして後ろから羽交い絞めにする
これで…
「哀しいな、人よ」
モノザネが自らの剣と化した手を自分に向けた
何をしているんだこいつは…いや!?まずい!!
咄嗟に羽交い絞めを解き、後ろに飛びのく
モノザネの剣は肋骨の隙間を抜け、今まで俺がいた場所を貫いた
もう少し逃げるのが遅かったら貫かれていた
そう思ったのも束の間、モノザネが振り向きざまにもう1つの手を振るった
ガキィン!!と、黄龍鉄甲にその剣が命中する
「うわっ…!!」
少し後ろにずり下がり体勢が崩れる
前を見るとモノザネが高速でこちらに向かってきていた
対応できない!
「10秒ではないが、このチャンスを待っていた」
「え?」
後ろから白やんが俺を飛び越えた
その手には鎌が握られていた
「消えろ、堕人」
白やんの鎌が振り子のように揺れる
刃の先端は高速で突っ込んできたモノザネの額にある眼に突き刺さった
その瞬間、モノザネはバランスを崩し俺の手前の地面に転がるようりに倒れた
白やんが着地する
「やはりそこが弱点か」
「…哀れ…なり…人…よ…」
「闇に帰るがいい」
「オォォォォオオオオオオ!!!!」
モノザネの身体が黒い煙になっていく
断末魔の叫びにも似た雄叫びを上げながら
ゆっくりとモノザネの身体は消えていった
「はぁ…はぁ…」
「…」
「倒した…のか…」
「転校生」
「何だ…」
「今回だけは上級堕人を倒すのに協力したということで見逃してやる」
「あ?」
「だが、やはりお前はこの学園にとっては災厄だとしか思えない
次に会ったときは問答無用だ」
「…」
「わかったら早く行け、気が変わらないうちにな」
「…」
今回は何も言い返せない
俺の勝手な行動があんな化け物を呼び寄せてしまったのだ
白やんが来なければ間違いなくやられていただろう
歯痒さと、苛立ちを抑えるように拳を握り締め
俺は逃げるようにその場を後にした
10/21(水)同時刻
「ぐっう…」
「大丈夫か?」
「…大丈夫だと思うか?」
「全く思わないな」
「はは…正直けっこうキツいわ…」
「…」
「たまゆらには言うなよ…
あいつまた押しつぶされちまう」
「しかし」
「大丈夫さ…このぐらい…
贖罪には…ほど遠い」
「贖罪?」
「…なんでもないさ」
9時限 - 堕人 -
終
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最終更新:2009年11月01日 02:50