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邪眼学園黄龍譚13限目【ドリームスナッチャー】後編


10/25(水) 夕方

「たまゆら!おい!起きろ!!!」

声が聞こえる

「ええい!とっとと目を覚ませ!!」

パァン!!と顔面に強い衝撃
思わず目を開けた
ぼんやりとした視界の真ん中にゆき兄がいた

「たまゆら…?おい…」
「…ん…何…?」
「めちゃくちゃうなされてたぞ…」
「…?」

服は寝汗でびっしょりだった
酷い夢を見た気がする…
でも…思い出せない…
すごく、重要な夢だったような…

「…悪夢を…見た気がするんだ」
「悪夢…それであんなにうなされてたのか?」
「わからない…
 でも…とにかく酷い夢だった気がする…」
「おい、何騒いでんだー?」

ヤチャマルが顔をのぞかせた
そして俺を見るなり表情が険しくなった

「…たまゆら…何をした?」
「え?」
「さっき直した気の流れがもう歪みまくってるぞ…
 ありえない…」
「え、でも…寝てただけだよ…
 酷い夢でうなされてたらしいけど…」
「夢…?」

ヤチャマルは何かを考え出した
ゆき兄のほうを見るとゆき兄も神妙な顔つきだった

「寝ると気が乱れる、か…」
「外部的な要因が入り込むことによって
 気が乱れ結果的に悪夢を見ているとか」
「しかし誰も来なかったんだろ?
 寝ている者の意識に特別な機材などを用意しないで干渉できるとか…」
「…忘れたかヤチャマル?
 この学園には不可能ができちまう奴らがひしめいてんだぜ?」
「なら、それが前提だとしてどうやって回避する?」
「本体を叩くべきだろうな
 重要なのは本体の位置だが」
「だが守りは…それに…で…だから」
「いや…に…なって…で」

何だか俺を放っておいて2人で話し込みだした
どうしよう、何か声をかけたほうがいいのか?

「ああ、悪い悪い」

ゆき兄が振り返った

「とりあえず寝るな」
「は?」
「対抗策がそれぐらいしか思いつかねぇんだよ
 だから本体を叩くまで寝るなっつってんだよ」
「待ってよ、別に生徒会のせいって決まったわけじゃ…
 普通に悪夢を見ているだけかもしれないし」
「そりゃそっちのが何倍も楽だけどな
 生徒会の仕業だったらどうすんだ?
 色々と楽観的に見る俺だが今回は事情が違う」
「…」
「それにどっちにしろ奴らとはやりあうハメになるんだ
 こっちが先手を打てればそれに越したことはない」
「そう…だね、わかった」

とは言ったものの…

「放送室のときと同じで本体が誰かわかんないだろ?」
「さっき考えてたんだがよく考えれば見当はついたぞ」
「え?」
「白やんの隠し玉がこれ以上無ければ
 執行部はもう全滅してるんだ
 ってことは書記の舞姫か、会計のスイカどっちかだな」
「あ、そうか…
 なんで放送室のときに気づかなかったんだ」
「まぁテンパってたしな」
「とりあえず、その2人を探し出せばいいわけ?」
「そういうわけが…
 生徒会って普段はどこで何をしているかわからないからな」
「ちょっとちょっと」
「ん?」

後ろからヤチャマルが話に口を挟んだ

「生徒会の人間なら生徒会室にいけば
 いなかったとしても行き場所ぐらいはわかるんじゃないか?」
「…いや…それは」
「敵陣にノコノコ出向くなんて無謀すぎるぞ…」
「虎穴に入らずんば虎子を得ずっていうだろ」

確かにとんでもなく危険だろうが
現状それ以外に方法も無い気がする
それに寝れないのも困る
堕人モノザネとの共闘のこともあるし
なんとか戦闘に持ち込まずに白やんと話だけでも出来ないだろうか
舞姫の居場所を教えてくれるかどうかは別として…

「…行ってみる」
「おいおい!たまゆら、正気か!?」
「他にアテも無いだろ?
 …戦闘にはならないように努力する
 なったら逃げる」
「…どうしても行くのかよ」
「ああ…」
「チッ、わかったよどうせ止めても行くんだろうな
 ここで待ってるから早く行って来い」
「わかった」

保健室を出る
一応、部屋から黄龍鉄甲を持っていくことにした
そして生徒会室の前まで来た
…黄龍鉄甲をはめてると殴りこみに来たかと思われるような…
とりあえず手に持つだけに留めておこう

深呼吸をして気持ちを落ち着かせる
心臓はさっきからバクバクと今にも止まりそうだ
震える手でドアをノックする
返答は無い
もう1度ノックする
やっぱり返答は無い
俺はドアに手をかけた
カギは…かかってないようだった
ドアの隙間から中を覗く
誰もいないみたいだった
思い切って室内に入って見る

…まるで校長室みたいだな
革張りのソファやらなんやらと…
いったいどこの世界にこんな高級感漂う生徒会室があるんだよって話だ
薄暗く、夕日の赤い光が窓から差し込み、静寂に包まれたこの部屋はとにかく不気味だった
なんとなく不安が広がる
…保健室に戻ろう

「珍しい客人だな」
「!?」

真後ろに、白やんがいた
いつの間にここまで近づかれたんだ!?

「…直接俺を倒しに来たか?」
「違う!」
「なら、なぜここに来た?」
「…舞姫のことを知りたくて」
「フン」

白やんはゆっくりと歩き
椅子に座った、夕日を背に椅子に佇む白やんの姿からは
異様なほどの威圧感
押しつぶされそうなほどのプレッシャーを全身に感じる

「…俺が、自らの部下である舞姫のことを教えると思うか?」
「…」
「どうせ彼女の技に囚われて打開策を見出せず苦肉の策でここに来たのだろう」
「じゃあやっぱり…寝てる時に何か…!?」
「…知ったところで逃れられはしない」
「舞姫はどこだ…!」
「さっきも言ったが…俺が教えると思っているのか?」
「クッ!」

思わず黄龍鉄甲に手が伸びる

「力ずくでも…と、言った所か?
 構いはしないがな…」
「…」

いや、駄目だ
ここで戦うわけにはいかない
勝てる気も全くしない
俺は手を戻す

「…賢明な判断だな」
「クソッ…」
「わかったら、出て行け
 もうじき下校の鐘が鳴る…」

白やんの威圧感が一段と増した
骨の髄まで震えるような恐怖
駄目だ、まだこいつには程遠い
俺は無言でドアを開けた
白やんは何も言わない、それがまた悔しかった
ドアを叩きつけるように閉め、俺は保健室に戻ることにした
圧倒的な壁を感じた、今の俺では決して越えることの出来ない壁のようなものを
初めて白やんと出会って時に比べて俺は確かに成長してる
だけどそれでもまだあいつには届かない
そんな現実をたった一瞬の邂逅で嫌と見せ付けられた気分だ…

「ん?」

廊下の奥に、誰かが立っていた
ただ何だかシルエットがおかしい
そいつはゆっくりとこちらへと向かってきた
窓から差し込む夕日に照らし出されたその姿は

「困ってるようだなぁ、同士よ」
「…ノスフェラトゥ」
「…生徒会の奴の居場所を探してるんだろぉ?」
「ああ…」
「キシシシ…」

耳につく笑い声を出しながら
ノスフェラトゥの鋭い爪がゆらゆらと遊ぶ

「やつはこの校舎内のどこかに、いる」
「…詳しい場所は?」
「それは…チッ…邪魔が」
「え?」

バサッ!と音がしたと同時に突風
突然起こった突風に思わず目を瞑ってしまう
目を開けるともうノスフェラトゥの姿はなかった
どこに行ったんだ…?

「たまゆら君、何やってるの?」
「ほえ?」

今度は後ろにピュアがいた

「あ、いや…何でもピュアこそ何を…?」
「図書室を閉めて今から帰るところさ」
「ふーん…
 そういえばあれ、どうなったの?」
「あれって?」
「この学園に隠されたどうとかこうとかさ」
「……何のこと?」
「え…前にあれだけ言ってただろ」
「覚えてない」
「冗談だろ?」
「……本当に覚えてないな
 何かの勘違いじゃないか?」
「え…でも…」

ピュアの目は真剣だった
勘違い…いや、そんなはずはない
しかしこれ以上しつこく聞くのもちょっとな

「…まぁ勘違いなら勘違いでいいや」
「たまゆら君ボケてるねぇ
 それじゃ僕は帰るから、たまゆら君も早く帰ったほうがいい」
「ああ、じゃあなピュア」

ピュアは行ってしまった
俺も保健室に戻ることにした
何だか頭が重い…

10/25(水) 夜

「ただいま」
「おかえり、どうだった?」
「校舎内にいるってことぐらいは突き止めた」
「…おいおい、すげぇな
 てっきり追い返されるだけと思ってたが」

本当はノスフェラトゥに教えられたというのは黙っておこう

「校舎内か…
 さてどうするか」
「一緒に探し出すしかないんじゃない?」
「まぁそれもそうだな」
「それじゃ行こ…う…?」

視界がグニャリと歪む
頭が、重い…

「たまゆら…?おい!?」

ゆき兄の声が、遠ざかっていく
まずい…な…
寝たら…いけない…
床が、近い












「…!!!!」

気がつくと、周りは荒野だった
枯れ果てた大地がどこまでも続いている、起伏も何も無い大地が
延々と続き地平線が見えていた
ってこれ3回目じゃねぇかよ…!!
思い出した…まずい、この世界じゃ舞姫には絶対に勝てないのに…!!

「今度は逃がさない」
「!!」

後ろに舞姫が立っていた

「今度は強制的にこの世界に連れ込んだ
 もう現実で誰が何をしようが目覚めることはないよ」
「…そんな」
「終わりね」
「クソッ…!!!」
「ゲヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」
「うわっ!?」

上空から落下してきたピエロが俺の身体に絡みついた

「さぁさぁ戻って参りました我らがスター!
 次こそ華麗なる人体切断マジックが成功するのか!
 もう逃しません!モウ、ニガサナイ…」
「離せ…よせ…やめろ!!」
「キャハハハハハハ!!
 悪あがき!悪あがき!ワルアガキ!!ブザマ!!ミジメ!!ミットモナイ!!!」

周囲には目の無い子供達
おびただしい数の子供たちが俺を指差して笑っていた
気がつくと、俺は台のような物に仰向けに磔にされていた

「よせ!やめろ!!」
「それでは切り裂き人の登場です!」

ギュオオオオオオオン!と遠くからチェーンソーの音が聞こえてくる
空には大量の風船が飛んで
花火がパン!パン!と音を立てている
周りはまるでサーカスのようになっていた

「よ、よせ…やめてくれ…!」

身体が動かない
チェーンソーの音が徐々に大きくなり
視界にあのテディベアが見えた

「さぁこのチェーンソーの切れ味は抜群!
 触れれば肉を抉り骨すら粉々!!
 切断というより粉砕です!試してみましょう!!」

チェーンソーが振りぬかれる音と風を感じた
そして凄まじい叫び声
顔に何かがピチャッと散った
奥歯がガチガチ震え出す
夢なんだこれは、だけど今の俺には現実だ
どうしたらいいんだよ、逃げられない

「さぁ!今度こそ正真正銘の終幕です!!」

テディベアが台の横に立った
無機質で、虚ろなその瞳が、俺をじっと見つめている

「やめろ!やめろぉぉぉぉぉぉおおお!!」

無我夢中で手足を暴れさせる
だけど拘束は外れない
動けば動くほど肉に食い込みキツくなる

「それではカウントダウンです!!」
「ふざけんなぁあああああああああああああ!!」
「3!」
「よせ!!!」
「2!!」
「待て!待ってくれ!!」

テディベアが、チェーンソーを振り上げた

「1!」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「0!!!」

無情にも、チェーンソーが振り下ろされる
間違いなく、首を切り落とす軌道
切り落とす、いや違う
首が、粉砕される

「ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!」

死ぬのか?俺は?
死ぬ…まだ、死ぬわけにはいかないんだ
俺は、死んでも死ぬわけにはいかないんだ
まだ、約束を果たしてないんだ
ここで、死ぬわけにはいかないんだ!!!!






金属音が周囲に響き渡った

「ゲヒャヒャ…あ、あれぇ!?」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

チェーンソーの刃を、俺の右手が押し留めていた
いや、正確には右手についている黄龍鉄甲が押しとどめていた
チェーンソーが振り下ろされた瞬間に
右手の拘束具がちぎれた、そのまま何も考えずに本能的に右手でチェーンソーを止めようとした
右手ごと首を吹っ飛ばされて終わりのはずだったが
俺の右手には黄龍鉄甲があった
そして凄まじい火花を散らしながら、チェーンソーを止めている
手に伝わる振動もまた凄まじく気を抜けば手が千切れるんじゃないかと思うほどだ

「グッ…くっ…そぉぉぉ!!」

ピエロが驚愕の声をあげる

「夢が逆に飲み込まれて…!
 誰だ…本体の眠りを妨げるのは…!?」

本体の眠りを妨げる…
ゆき兄…!?
やってくれたのか!?

「おおおおおお…らぁあああああああああああああああ!!!」

ガキィーン!!と金属が弾ける音
渾身の力で振りぬいた黄龍鉄甲によって
チェーンソーの刃が砕け散った
バランスを崩したテディベアが後ろに倒れこんだ
同時に、全ての拘束具が自然に引きちぎれた
どういうことかはわからないがチャンスだ
俺は立ち上がった
なんだか、力が沸いてくる
ピエロが叫んだ

「マジックショーの主役がどこに行くつもりだい!!?
 まだこの夢は終わっていないんだ!!」
「キャハハハハハハハハハ!!!」

おびただしい数の目の無い子供たち
自由になったが…どう切り抜ける!?
その瞬間、頭に言葉が走り抜ける

『死を知り、さりてと死を退けたお前に
 黄龍鉄甲はさらなる力を目覚めさせる』

いいぜ、来い…!

『ならば聞け、新たなる力の名は――…』

新たなる力の名は…!



ピエロが叫んだ
そして同時に目の無い子供の集団が俺に飛びかかってくる

「…ッ!!!目覚めろ!!青龍ゥゥゥゥゥゥゥウウ!!!!」

辺りに衝撃波が走った
飛びかかってきていた目の無い子供達は吹き飛んでいく
黄龍鉄甲が2つに分離した
2つは青い龍の頭を模して、俺の左右にふわふわと浮いている
使い方は頭に流れ込んで来る
起き上がり始めた目の無い子供達がこちらの様子をうかがっている
俺は手を前にかざした

「…其は我、其は龍、司るは青き力
 我が敵を滅せよ…!!」

キィィィンと高い音がする
同時に目の無い子供たちがまた一斉にこちらに飛びかかってきた
そして龍の頭を模した物から四方八方に青く光る光弾が発射された
命中した場所で小型の爆発を起こすその光弾は的確にこちらに飛びかかる敵を仕留めていく
2つの龍の頭はいわゆるビットだ
攻撃範囲は抜群に広いし、俺の意思で自由自在に動かせるから360度をカバーできる
その変わり俺の防御力はかなり落ちるみたいだが…
しばらくすると目の無い子供たちは飛びかかってくるのをやめた
そして1ヶ所に集まり、1つの塊のようにこちらに向かって突っ込んできた

「一気に決めてやる!」

龍のビットが互いに放った青いビームのようなもので繋がれる

「行け!!絡め取れ!!」

高速で放たれたビット
まるでゴールテープのように目の無い子供達の集団はビームを力で引きちぎろうとする
だがビットは高速で周囲を回転する
そして塊は青いビームのようなロープでグルグル巻きにされて拘束されていく
1人残らず、絡め取る

「爆ぜろ!!!」

青いビームのロープが白く輝き出す
そして、凄まじい大爆発を起こした
断末魔の叫びをあげる時間さえ与えないほどの
ビットが俺の周りに戻ってくる
爆発した場所には大穴が開いていた

「…馬鹿なっ…夢が…夢が…!」

大穴の向こうにピエロが立っていた
どうやらもう援軍は無いみたいだな

「セット…」

俺はピエロを指差した
ビットが俺の正面に移動した

「く、くそぉ…ここはひとまず撤退して…!!
 次の夢で…!」

ピエロが逃げ出す

「ゲヒャヒャヒャ!さすがにこの距離で俺に決定打は与えられまい!!」

決定打が与えられない?
馬鹿言ってんじゃねぇ
ビットが青く輝き出す

「青龍のアギトからは逃れられない」

俺は腕を構えた
ビットの輝きは最高潮
受けて見ろ、これは青龍が力

「貫き通せ…!」

俺は全力で
ビットを殴り飛ばした
白い光弾と化したビットは絡まりあいながら青い光の尾を引いてピエロへと高速で向かう

「殴り飛ばしただけでそう簡単に当たるかよぉ!」

ピエロは右へ左へと高速でステップする
だけどムダだ
2つのビットも右へ左と動きながら確実に距離を詰めていく

「自動追尾!?」
「逃れられない、そう言ったはずだ」

ビットの速度がさらに上がる
青い光の尾が更に伸びる
それは、伝承に伝わる青龍そのもの

「うっ、あっ、ひっ、あああっ…!」
「夢の終わりだ!!!
 青龍爆雷貫通撃!!!」

青龍の雄叫びが聞こえた気がした
さらに加速をつけたビットがピエロの背中に直撃した

「がふっ…!」

それでも勢いは弱まらない
ピエロの足が地面から離れる
そして今度は空へと向かって打ち上げられる

「がぁぁぁああああああああああ!!!」

超高度、そこまで上がり
ビットは2つに分かれた
空中で身動きできないピエロは何が起こったのかを理解できていない
1つのビットはさらに上昇し、超々高度からピエロへと高速落下を開始する
もう1つのビットは下からピエロに向かい高速で上昇する

「噛み砕け!!!!」

2つのビットが、ピエロに食らいついた
そして巻き起こる、大爆発

「あっ…がっ…ぎぃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

枯れ果てた夢の世界の空に
青い大輪の花が咲き誇った
同時に、周囲の景色が消えていく
気がつくと、真っ白な、何も無い空間に立っていた

「…ここは」
「夢の…終わり…」

振り向くと、ピエロが立っていた

「まだやるのか?」

ピエロは静かに首を振った
そして、ピエロの背中がモゾモゾ動いた
ピエロの中から出てきたのは、女子
抜け殻となったピエロの皮は、地面にべちゃりと落ちた

「…舞姫…か?」
「ええ…」
「…夢の終わりってことは?」
「もうすぐ…元に戻るよ…
 まさか夢の世界で…私が敗れるなんて…」
「俺だけの力じゃないんだろ?」
「干渉が無ければ、私が勝ってたと思うんだけどね」

辺りに声が響いた

「起きろよ!このくそ女!!
 くそ!どんだけ深い眠りなんだよコイツは!!!」

ゆき兄の声だった
…やっぱり、ゆき兄だったのか

「あの子に眠りの邪魔をされなければ…ね」
「…」
「でもいいの…長い長い夢はもう終わる…」
「…夢?」
「会長を…止めてあげて…
 あの人は…縛られてる」
「どういう意味だ?」

辺りがゆっくりと闇に包まれていく

「今度は、現実で会おうね」
「待て!縛られてるってどういう意味だ!?」
「君なら…必ず…」

辺りは完全な闇に包まれた
もう声は聞こえない…
そして、俺の意識も急速に消えていった…







10/25(水) 深夜

「こいつは…俺が必死に走り回ったってのに…
 幸せそうに眠りやがった」
「まぁゆき兄のお陰だろ
 ほら、労いのコーラでもやるよ」
「おー、ヤチャマル悪いね、あはあは」
「それで夢の世界に引きずりこんだ犯人は?」
「ああ…なんか、やる気なくしたから…
 放っておいて戻ってきたわ」
「なんだそりゃ」
「女は殴らん」
「説得力が無いな」
「…ま、黒い煙も確認したしな
 もう大丈夫だろうよ
 それより今のうちにたまゆらにイタズラしとこうぜ
 この寝顔見てたら腹立ってきた」
「筆ペンならあるぞ」
「額に肉だな」



13限目 - ドリームスナッチャー -




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最終更新:2009年11月01日 02:57