邪眼学園黄龍譚15限目【カーニバル】前編
11/6(月) 朝
あれから1週間とちょっとが立った
アルゴルの事件は集団ヒステリーとかそういうので片付けられた
幸いだったのはアルゴルが発症している時は本人の記憶が飛ぶらしいことだった
傷ついた校舎の復旧なども終わり学園は平穏を取り戻してきた
「ふぁ~ぁ…」
「おはよ、ゆき兄」
「あぁ…はよ…」
「おっはよ~!」
「ああ、リカちゃんおはよう」
「ゆき兄もおはよう~!」
「…」
「お、は、よ、う!!!」
「だぁぁぁ!うっせーな!!寝てるんだよ!見りゃわかるだろ!」
平穏だ、最近こういうのが少なかったから懐かしく感じる
この1週間白やんのほうから襲ってくることもないし
平和そのものだった…
しかし平和の中にも戦いがあることを
俺は身を持って体験することになる
11/6(月) 昼休み
「あー、お腹いっぱいだご馳走様
リカちゃんありがとね」
「どういたしまして」
リカが作ってくれたお弁当を3人で食べ
屋上でだらだらとした時間を過ごす
すると唐突にリカが言った
「そういえばもうすぐ学園祭なんだよねぇ」
「ん、ああ…」
ゆき兄が寝っ転がりながら生返事を返す
そういえばHRなどで学園祭のことを言われたな
あと廊下とかにポスターが沢山貼ってあった
それで気になって俺は聞いた
「そういやうちのクラス出し物とか決めてないよね?」
「あ、たまゆら君は知らないか
うちの学校は出展は個人からグループ単位なんだよ」
「?」
「つまり、やりたい奴は勝手にやれってことだよ」
「ああ、なるほど」
ゆき兄がわかりやすく1発で説明してくれた
リカは続ける
「やりたいことがある人は何をするかなどどこでやりたいかを提出するの
あとはそれが審議にかけられ問題無いと判断されれば厳正なる協議の結果、場所などが割り振られるの!
あとは生徒の自由!」
「生徒の自由といえば聞こえはいいが要するに教師どもがめんどくさがりなだけだ」
「…なるほど」
「…!そだ、この3人で何か出してみない?」
と、リカが勢いよく言った
俺は次に来るであろうゆき兄のセリフは予測がついていた
「お断りだ、めんどくせぇ」
予想的中
「えー、いいじゃん、何かやろうよー」
「絶対やだ」
「えー…」
「いいか、祭りでもそうだがこういうことは楽しんだもん勝ちなんだよ
生徒は平等なはずなのに何で俺らが汗水たらして他の奴を楽しませなきゃいけねぇんだよ」
「あー、はいはいはい、わかったわかった
それじゃたまゆら君、何かやらない?」
「え?俺?」
「うん」
「…うーん…でも何やろう?」
「やめとけやめとけ、リカに意見を聞くと
最終的にはクソの役にも立たないボランティアみたいなことやらされるぞ」
「お前は黙ってろ」
「ほぶぅがっ!」
寝転がっていたゆき兄の顔面に思いっきり拳が叩きこまれた
まぁ折角だから何かやってみるのも悪くは無いが…
「うん、そうだな、やる方向で考えとくよ」
「お~、さすがたまゆら君、話がわっかるぅ~」
「しかし何をやろうかな…」
「あはは、ま、考えておいてよ、そろそろ教室もどろっか」
「ゆき兄は?」
「あー、いーよいーよ、放っておいても死にゃしないって」
ピクピクと痙攣しているゆき兄を放置して
俺たちは教室へと戻った
11/6(月) 放課後
しかしああは言ったものは一向に思いつかないな
飲食系は多く被りそうだからパスするとしても
他に思いつかないな…
「っと、今日も保健室に行かないとな」
俺は足早に保健室に向かった
「ちはーっす」
「来たか、たまゆら」
「おーう、たまゆら」
ヤチャマルとほろにがが座っていた
ほろにがついに居ついたのか…?
「どうだ?身体の調子は?」
「うん、全然問題ないよ」
術後経過を見るということで
あれから毎日保健室に通っていた
最も玄武の力でまるで手術など無かったかのように身体のほうは快調だった
「うん…問題無いようだな
黄龍鉄甲ってのは大したもんだ」
「なーんで、たまゆらだけそんないい物を持つかねぇ」
「俺だってわからないよ」
「ふん、ま、いいさ、配られたカードで勝負するしかないってね」
「しかし、玄武の力か…
あまり勧められる力じゃないな」
「どうして?」
ヤチャマルが神妙な顔つきになった
「恐らく傷ついた部分の細胞の分裂、増殖を異常促進させるんだろう
めんどくさいから説明を省くが要するに傷は治るが寿命を削ってると思え」
「寿命…を…」
「だいたいオメーらはいちいち傷を作り過ぎなんだよ
たまには俺みてーに無傷でエレガントに勝利してみろ」
「スイカのときはどうみてもピンチだったと思うけど」
「そんなこと忘れました~」
「クッ…」
「まぁ座れ、茶ぐらい出してやるよ」
「ああ、うん…」
ヤチャマルに促されて椅子に座った
目の前に紅茶がおかれた
一口飲んだ後、学園祭のことを聞いてみることにした
「ヤチャマルは学園祭の時も普通に保健室営業?」
「んー、そうだけど、どうしたよ」
「いや、何か出展しようかなって思っててさ」
「ふーん、いいんじゃないか?」
「それが何をしようか迷っててね…」
「俺が高校の時は何やったかな~」
「え?ほろにがに高校時代があったの?」
「突然パッと沸いたんじゃなかったのか?」
「んなわけあるかぁ!!!写真だってあるわぁ!」
ほろにがが懐から1枚の写真を取り出して机の上に置いた
「自分の高校時代の写真持ち歩いてるってどう思う?」
「ぶっちゃけキモい」
「もう見せねぇ!!!」
ほろにがが写真をシュバッ!と元に戻した
それを見たヤチャマルが後ろから首を締め出した
「気になるから見せろ」
「グゲゲゲ…すたっぷすたっぷ…!!
待て、落ち着け!!」
「見せろ」
「わかったから手を離せ!!」
パッとヤチャマルの手がほろにがから離れた
むせながら写真をまた懐から取り出したほろにが
と、思ったらそれを丸めて口の中に突っ込んだ
「!?」
「ふももふ…やっふぁりほれのほうほうじふぁい…
みふぇるふぉはふぉっはいはい」
「吐け!ギャラクティカマグナム!!!」
ヤチャマルの拳がドッゴォ!!と凄い音を立ててほろにがの腹部にめり込んだ
若干ほろにがの目玉が飛び出た気がした
「おっぶげぇ…」
「…!待て吐くな!!」
次の瞬間、ヤチャマルはほろにがの首を強烈に締め上げた
ほろにがは顔が真っ赤になって涙目になっていた
「おぶるげげげげげ…!」
「吐くなら外で吐け!ここで吐くな!!」
「いや、ヤチャマル、それ死ぬって」
「いやでも離したら出すぞ!こいつ絶対出すぞ!!!」
「首を窓の外に!」
俺が窓を開けるとヤチャマルがこっちに向かってきた
てっきと首を窓の外に出して手を離して吐かせると思ったんだが
ヤチャマルを首を掴んだまま外にほろにがを投げ飛ばした
ほろにがの身体がしなやかに宙を舞った
「おぶろろろろろろろろ…」
べちゃっびちゃっぼちゃっと音が聞こえる
外を見る気にはなれなかった
ヤチャマルは何事も無かったかのように窓を閉めてカーテンを閉めた
「…で、何だっけ」
「いやもういいや…帰る」
「おつかれさん」
俺は保健室を出た
今頃保健室の裏手には全身ゲロにまみれた可哀想な男が倒れているんだろうか
哀れな
11/6(月) 夜
ぼーっと風呂に入っていると
誰かが入ってきた
阿部さんだった、背筋が凍った
「やぁたまゆら君、奇遇だね」
「なな、なんで阿部さんが寮の風呂を使うんですか!?」
「こまかいことを気にしてちゃイチモツは大きくならないぜ」
「何を…」
「俺も湯船に浸からせてくれよ」
そういって阿部さんは風呂に浸かった
それだけならまだしも俺に密着してきた
「…」
「助けてダーリンくらくらりん♪」
「…」
「ババンバパンパンパンッ!アッー!ビバノォー!ンノォ!」
なんだこの状況は
出るに出れないじゃないか
しかしこのままのぼせて動けなくなってしまっても同じことだ
息苦しくなって段々呼吸が荒くなってくる
いや、阿部さんも呼吸が荒々しい
しかし阿部さんは得物を見つけた肉食獣のような…まずいまずいまずいまずい…!
そのとき、ガラリと扉が開いた
「あれ、たまゆらく…」
えび助が、そこまで言った瞬間にドアを閉めた
そしてドタンガタン!ドガン!と慌てているような音が聞こえた
「ウホッ!」
そう叫んだ阿部さんがザパァッ!と勢いよく立ち上がった
湯煙でよく見えなかったが阿部さんは完全に戦闘態勢のようだった
猛スピードで阿部さんは脱衣所へと向かった
「あぁぁぁあああああああああ!!!!」
えび助の悲痛な叫び声が聞こえる
俺は悪くない、俺は悪くない、俺のせいじゃない
心を閉ざして身体を洗っているとまた阿部さんが入ってきた
「汗かいちゃったからもうひとっぷろ浴びよう
えび君も洗ったほうがいいぞ、全身ヌルヌルだろ?」
阿部さんの後ろに尻を押さえて泣き腫らしたような目をしたえび助がいた
哀れすぎて声もかけられない
「呪ってやる…」
えび助の呪詛のような声が聞こえた
聞こえないフリをして俺は早々に風呂から上がった
「風呂上がりのコーヒー牛乳うまー」
「おお、たまゆら」
「あ、剣三郎…」
剣三郎はなぜかまた胴着を着ていた
普段着にも使用しているんだろうか
「…そういえば先の戦いでの礼を言ってなかったか
俺が未熟だった故に手をわずわせて申し訳ない」
「ああ、いや、いいんだ
剣三郎のおかげで助かったしな」
「…もっと強くならなくてはな」
「そういえば剣三郎は学園祭で何かやるのか?」
「学園祭…剣道部はローリングすもも祭りをやる」
「…どういうの?それ?」
「数々のトラップをくぐりぬけてすももをゲットしてゴールする」
意味が、わからない
しかし剣三郎の顔は真剣そのものだった
「…がんばってね…」
「うむ、それじゃあ俺はこれで」
「…?」
剣三郎が背中を向けて気がついたが袴の尻の部分が盛大に破れていた
袴だけならまだしもパンツも破れていた
そして尻がプリンッと顔を出していた
「…剣三郎…それ…」
「気にするな
どんなときも冷静さを失わないための訓練だ」
馬鹿なんじゃないかと思った
俺はそれ以上突っ込むことをやめて部屋に戻った
しかしローリングすもも祭りが気になって中々眠れなかった
11/7(火) 朝
夢の中で剣三郎が坂道で巨大なすももを転がしていた
気になってしょうがない、詳細を聞いておけばよかった…
学園祭はどうやら今週末の土日に2日に分けて開催されるらしい
登校するとゆき兄が珍しく起きて机に座っていた
「ゆき兄…」
「ひどいクマだな」
「ローリングすもも祭りって何だと思う?」
「…は?」
ゆき兄がコイツ何言ってんだという風に変わった
いや確かに俺だって突然こんなこと言われたら何言ってんだコイツ、とはなる
「…いや、やっぱりいい、忘れて」
「…あ、ああ…」
若干気まずくなりながら俺は自分の席についた
…忘れよう、忘れよう
「おっはよーう!!」
頭の中から記憶を消そうとがんばっていると
元気のいいリカの声で我に返る
「決めたよ!」
「何を?」
「出し物!」
リカの手には数枚の何かが書かれた紙があった
昨日の夜に書いたんだろうか
「と、いうわけでたまゆら君これ提出してきて!」
「どこに?」
「えーと、生徒会…長…」
「…」
お互い黙ってしまった
生徒会長って白やんじゃねぇか
この状況で白やんにこっちから会いに行くってどういうアレだよ
「…だ、大丈夫だよ…他にも沢山の人が生徒会長に書類渡しにいくし…
こっそり紛れ込ませてくれば…」
「いや、でも」
「そ、それじゃ後頼んだから!」
「ちょ!ま!?」
リカはそそくさと逃げていってしまった
…これ、本当に渡しにいかなきゃ行けないの?
ゆき兄に助けを求めようとして振り向いた
すでに逃げていた
11/7(火) 昼休み
そして俺は生徒会室の前にいる
リカから渡された紙を持って
…黄龍鉄甲とか持ってきたほうがよかったかなぁ
いやでもそれじゃどう見ても殴りこみじゃないか
しかし白昼堂々俺とバトルするなんて…いやしかしもう前とは状況が違うしなぁ…
ウダウダ考えてても昼休みが終わってしまう
俺は意を決してドアを開けた
「…」
「…」
いきなり目が合った
思わず逃げ出したくなるのを堪える
「たまゆらか…何の用だ
俺を倒しにきたか?」
「い、いや、これ…」
「…出展希望か」
「うん…」
白やんが紙の束を受け取って読み始めた
俺はとてつもなく居心地が悪かった
ポツリと白やんがつぶやいた
「…お前、これ本気か?」
「え…うん…本気なんじゃ…ない?」
内容を読んでいなかったが
それほどヤベェことでも書いてあるんだろうか
「…ローリングすもも祭りといい今年はどうしてこう」
「ぶふぅっ!」
白やんの口からローリングすもも祭りという単語が出ることが予想外すぎて
俺は思わず吹いた
「…」
「ああ、いや…続けて続けて…」
「…いいだろ、許可してやる」
「…ありがとう」
「こっちの紙だけあればいい
残りは持って帰れ」
1枚だけ白やんは机の中に入れた
突き帰された残りの紙束を受け取ると足早に俺は生徒会室を後にした
「はぁー…寿命縮むかと思った
しかし白やんが本気かって…何書いてあったんだこれ?」
突きかえされた紙に書かれていることを読んで見る
読み勧めるうちに血の気が引き始めた
要約すると
『邪眼学園最強決定バトルロワイヤル!飛び入り歓迎!
学園を舞台にそれぞれのネームプレートを奪い合え!
ネームプレートは1枚1点、タイムアップ時に1番ポイントが多い人が優勝!!
なお、シャインの全面協力により優勝者にはシャインお食事券10万円分
解説リカ・カナ 現時点参加決定者たまゆら』
「リカちゃん何考えてんだぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!」
11/11(土) 午前
こうして、気がつくと学園祭1日目
バトルロワイヤルの開催は2日目なので今日は1日フリーだった
…しょうがない、とりあえず明日のことは忘れて楽しもう
学園内を見て回るとおいしそうな匂いなどが辺りに漂っていた
「あ、たまゆらさん
チョコバナナ食べません?」
「しげる…いやいいよ」
「さっきゆき兄さんが3本買っていきましたよ」
「起きてるのか…」
「それと明日はよろしくお願いします」
「何が?」
「参加するんですよね?バトルロワイヤル?」
「しげるも…?」
「ええ、お手柔らかにお願いします」
「ああ…それじゃ俺他んとこいくから」
なぜしげるはあそこまでやる気なんだろう
強制参加となった俺はあまりテンションが上がらなかった
そして俺はローリングすもも祭りが気になって剣道場に向かった
「ちがーう!それはそう使うんじゃない!!」
「木刀だ!木刀を使え!」
何か楽しそうな声が聞こえてくるので小走りで剣道場の中に入った
台に乗った剣三郎が木刀で天井から吊るされたすももを突付いていた
何をやっているんだコイツは
考えるのもめんどうになった俺は剣道場をあとにした
…しかしまぁ皆思い思いに楽しんでるな…
普段は絶対見られないような奴らま…?
「高橋?」
「ん」
目の前から綿菓子の袋をぶら下げた高橋が歩いてきた
なんだこの予想外の姿は
ちなみに袋にはプリキュアが印刷されていた
「…」
「何だよ」
「い、意外と庶民的…だよね」
「うるせぇ蹴るぞ」
「やめてくれ…内臓が破れる」
「…あいつどこいったんかなー」
高橋はふらふらと言ってしまった
うーむ、意外な一面を見れた気がする
ちょっと楽しくなってきた
その後もプラプラとあちこちを見て歩いた
丁度少し小腹が空いてきたところにおいしそうなソースの匂いが漂ってきた
「いらっしゃいませ、いらっしゃいませー」
「あ、桃花だ…焼きそば屋やってんだ」
「あ、たまゆら君焼きそば食べる?大盛りにしとくよ?」
「それじゃひとつ…」
「おっとたまゆら君、焼きそばよりタコ焼きはどう?」
「透過!?」
「営業妨害する気!?」
「いや、そんなつもりは無いけどね
それよりタコ焼きどう?」
「やめときなよ、そいつの作ったタコ焼きなんて
タコの代わりに銃弾が入っててもおかしくないって」
「まだ根に持ってんのかよ!(5話参照)
そんなんいったらその焼きそばカミソリでも入ってんじゃねーのか?」
「はぁ!?てめぇ音楽室来いよ!」
「音楽室でしか力を発揮できないんですね~
雑魚能力ですよね~」
「透過…おい、挑発はそのへんで…」
「ぶっころす!!」
「うおいっ!ヘラ!!ヘラ危ないッ!!」
「ちょ!おい!桃花!熱いッ!このヘラ熱い!!」
俺はあわてて逃げ出した
透過を置き去りにして
「悪い透過!あと任せた!」
「しょんな!!」
全く…余計腹が空いた…
それにしてもあの2人は相性が悪いな
どうしよう、どっか適当に食べる物…
「たまゆらさん!」
「…」
「え…何この組み合わせ」
蝶と雷雲の組み合わせは何か凄い違和感を感じた
…蝶は笑顔なのだが、雷雲の顔は不機嫌というかこの場にいることを嫌がってるような…
「…なに?」
「一緒に巡りません?」
「…2人で?」
「いえ、雷雲君も…」
「…俺は…」
「不満そうだけど雷雲君もたまゆらさんに負けたんだろ?」
「俺は負けてねぇ!」
「…」
蝶が黙った
うーん、雷雲だけは白虎の暴走で一気に仕留めたからな…
多少…あれだな…
とりあえず何か言ったほうがいいかな…?
「あのさぁ、雷雲」
「んがっ!?」
「!?」
蝶の右手が雷雲の顔面を掴んだ
「なら俺にも勝てるんだな?
能力にかまけて正面からぶつかるようなお前が俺に勝てるんだな?」
え、何コレ?
蝶怖い、凄く怖い
「…う…」
「このままお前の頭蓋骨の"目"を突いて砕いてやってもいいんだぞ?
痛みを反射させることが出来ても即死には効果無しだろ?」
「すいません、すいません、すいません…」
手を離して振り向いた蝶は笑顔だった
「というわけで納得してくれたみたいです!
それじゃ一緒に行きま…あれ、どこ行くんですか!?おーい!たまゆらさぁぁぁん!!」
冗談じゃない!
あんな重い空気の場所に混ざれるかよ!
つーか蝶って執行部の隠し玉だったけどどういう位置にいやがったんだよ!!
ああもう!落ち着けない!
どっかで普通に何か食べてぇ…
11/11(土) 午後
だいぶ時間が立ってしまい
ウロウロしてると体育館についてしまった
コスプレショーが開催されてるらしい、何でもありだな
ちょっと覗いてみるか…って何かステージ上にいる奴は見覚えがあるような
「次は飛び入り!なんと謎のヒーローノスフェラトゥのコスプレです!!」
「ははは、おまえらぁ、会いたかったかぁ?」
「おおー!なりきってますねぇ!」
「そりゃぁ本物だからなぁ」
「しかし本物のノスフェラトゥはそんな格好なんですかね?」
「当たり前だぁ、だって俺が本物だからなぁ」
…色々と突っ込みたいことはあるんだが…
俺はそっと体育館を後にした
しばらく戻っていると反対側からゆき兄が歩いてきた
「何やってんだ、たまゆら」
「いや…ちょっと…色々ウロウロしてて」
「そうか」
ゆき兄は体育館側に歩いていこうとしていた
待てよ、ゆき兄とノスフェラトゥは…
いやいや、まずい!!
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待って!」
「何だよ」
「腹減ったから何か食べにいこうぜ!」
「さっき適当に食ったよ、1人でいけよ」
「いやいやいや!もっと食べたほうがいい!」
「コスプレショーみたいんだよ、面白そうだから」
やめろ!あんなギャラリーの前で突発的に殺し合いが始まったら阿鼻叫喚の地獄絵図だぞ!!
なんとかしても止めなくては!!
「一緒に食べに行ってくれぇぇぇ…」
「何か今日気持ち悪いなお前!!」
「あーいたぞー!発射!!」
「!?…たまゆら盾になれ!」
「うえ!?」
状況を理解する前に顔に何かがベチャリと当たる
呼吸が止まり、視界が真っ白に染まる
「あ!人柱使いやがった!」
「頭を使ったと言え」
ゴシゴシと目の周りを拭う
これは…よくあるパイ投げのパイ…なのか?
視界が開けると女子生徒…どっかで見たな、どこだっけ
「お祭り気分ではしゃぐのはいいけど
やる気の無い人間を参加させるのは反対だぞ」
「ベーだ、ゆき兄が相手してくれないから悪い」
「ゆき兄…」
俺はゆき兄に近づいた
ゆき兄は俺の顔を見ると笑いを堪えだした
「パイまみれでひっでぇ顔だな、ははは」
「いや、謝れよ!」
「そんなん投げたほうに言え」
「あっはー、ごめんなさーい」
「…ねぇ、ゆき兄この子誰?」
「あー…」
明らかにめんどくさいという顔をしている
顔を近づけてきてこっそりと耳打ちしてきた
「…前にほら、リカの弁当のときに一波乱起こした…」
「ああ!通りで見覚えがあると思ったよ!」
「名前はミギーってな」
「で、このパイ投げはなんなんだよ」
「俺が知るかよ」
とりあえずゆき兄の興味は体育館から逸れたらしい
パイを顔面にくらったけどまぁ…もっとめんどくさいことにならなくてよかった
しかしまだ油断ならない、ゆき兄が体育館にいこうとしたら止めなくては…
よくわからない言い合いを続けるミギーとゆき兄
するとまた誰かが近づいてきた
「ミギー、そろそろ戻ってよー」
「あ、キリン…もうそんな時間かー、ちぇー」
「ああ、戻れ戻れ」
「ねぇゆき兄また遊んでよ」
「暇ならな」
「わかった、それじゃあね!…と、見せかけて!」
「んな!?」
新しくきたキリンも合わせて、2人が同時に大量のパイを乱射した
今度はゆき兄も予想できず俺も手に届く範囲にはいなかった
見事にパイの1発がゆき兄の顔面を捉えた
しかしそれだけでは飽き足らずパイは延々と乱射される
頭のてっぺんから足の先までゆき兄が真っ白になっていく
「キリン!あれ出して!アレ!!」
シャーっと廊下の奥から何だか物凄いものが台車に乗って
多数の生徒に押されて現れた
「自動パイ連射式ガトリング砲!うちらのクラスが3日3晩かけて作った目玉だい!」
「目標補足!撃てー!!!!」
目の前を、無数のパイの弾丸が横切った
バシッバシッ!などではない
ドガガガガガガガガガガガ!!!言った具合に物凄い量のパイがゆき兄に叩きつけられている
さすがに答えたのだろうか、ゆき兄はフラフラと逃げだそうとした
「甘い!銃座は360度回転するんだい!」
すげー、手が込みすぎだろうと思っていると目の前に大きな白い塊が現れ…
え、ちょっと待てよ、この位置って
「道連れだ」
「おまっ!!!」
それ以上言葉を発する前に身体中に凄い衝撃が走った
あっという間に視界が白に覆われていく
ちょっ…これ…パイ投げの威力じゃない…!
逃げ出そうにも命中するパイの衝撃が強すぎて逃げれない
痛ッ…ちょっ…
もうなんか自分がパイの材料になった気がしてきた
つーか、息が…
っと、そこでピタッと衝撃が止んだ
…?
「駄目だ、機関部が焼けついちゃったみてぇ…」
「冷却が上手くいってねぇんだよ、急ごしらえだったからな」
「まぁとりあえず直しておこうぜ」
「はい、撤収撤収」
ガラガラと台車を押していく音が遠ざかる
ちなみに視界は真っ白で何も見えない
「あー、面白かった!それじゃねゆき兄!」
どうやらミギーも去ったらしい
パイの塊となった俺とゆき兄だけが取り残された
お互い大量の衝撃を受けたせいかしばらくぼーっとしていた
「何これ…?」
「どこの出し物…?てか何なのコレ?」
あれ、この声、リカとカナだ!!
その瞬間身体が動いた
「もがーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
絶叫、それに反応してゆき兄も動いたらしい
「ぬがーーーーーーーーーーーー!!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「化け物がいる!!化け物がいる!!!」
「白い化け物がいる!!」
いや、違う違う!
俺だって俺!!
なんでこのパイ取れないんだよ!!
「もががってもがー!!!」
「ふごごんがががばふけろ!!」
「捕まったら襲われる!!」
「ふがげろ!!!」
「おいおい、なんの騒ぎだよ」
「ヤチャマルさぁぁぁん、助けてぇぇぇえ!!」
ヤチャマル…だと…
間違いなく逃げたほうがいいと本能が告げた
ゆき兄も同じだったのかドタドタと慌てだす音が聞こえた
「はしゃぎすぎだな、お仕置きだ」
「ほがーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「ぷげーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
11/11(土) 夕方
俺とゆき兄は2人でゴミ捨て場で横たわっていた
いや、お互い意識はあるんだが今日という日の不幸を噛み締めていた
ただ無言の時間が流れていく
そういえば…結局何も食べてない…腹減ったな…
「お前ら何やってんだ?」
「ほろにが…」
目をやるとほろにががゴミ捨て場の前に立っていた
両手に大量の食べ物を抱えている
「そ、それどうしたんだ?」
「余り物を貰ってきたりした、皆わりとくれたからな」
「…ゴクリ」
「んだよ、その目は…あげないぞ…」
俺の考えてることを読み取ったのかほろにがは食料を後ろに隠した
「ちょっとだけ…朝から何も食べてなくて…」
「俺なんか2日間、しなびたバナナの皮しか食ってないわ!!」
「ぬ…」
「食料は自分でゲットするもんだぜ」
「…はぁ、やっぱりくれないか」
「おい、たまゆら」
「なにー?わっと…」
ゆき兄から振り向きざまに何かが投げられる
キャッチすると紙袋の中に冷え切ってはいたがイカ焼きが入っていた
「後食おうと思ってたけど忘れてた
冷えたの食う気にはならないからそれでいいならやるよ」
「いいのか!?ありがとう!」
俺は冷えたイカ焼きを早速口に含んだ
確かに冷えてるが空腹も手伝って充分にうまい
しばらく夢中で食らいつく
確かにこれだけじゃ少なすぎるがとりあえずの空腹は満たされた
「ごちそうさま」
「おう」
「…」
そのまま動こうとせずにぼーっとする
ほろにががバクバクいろんなものを食う音だけが響き渡る
「今日はもう終わりみたいだな」
「…そうか」
「明日出るんだろ?バトルロワイヤル」
「…みたい…ね」
「俺は出ないからな、まぁ頑張れよ」
「おい、たまゆらぁ、俺は出るからな!」
そう言ってほろにがは
たこ焼きをスナック菓子のように放り投げて口でキャッチした
「え?」
「シャインお食事券10万円分とか最高じゃねぇか…!」
「ああ、なるほど…」
「さってと…帰って寝るかな」
「寝るの早いな!!」
「起きててもやることねぇからな…ふぁ」
ゆき兄はあくびをしながら行ってしまった
グラウンドではがやがやと言う声が響いている
…皆が帰り出してるらしい
俺も帰ろう、色々あって疲れたし明日はよくわからないバトルロワイヤルだ…
11/11(土) 深夜
「う…ぐっ…」
「オオオオ…」
「まだ…やれる…!!斬り払え…!!!」
「ウォォォオ…」
「…ハァッ…ハァッ…」
「…苦労をかけるな」
「…!?
…いつからそこに…いらしていたんですか?」
「…数分前とでも」
「お恥ずかしい所を…」
「…いや、わかっている
このところずっと夜な夜な1人で堕人を切っていたんだろう?」
「…」
「…従来通りなら、夜祭もやるつもりだった…と」
「今…夜の学園はまさに堕人の巣のような状況です…」
「3日間」
「え?」
「俺が止めてやる、だから休め」
「…」
「もうすぐ…決着がつくはずだからな…
この学園に渦巻く全ての…」
.
最終更新:2009年11月01日 03:05