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邪眼学園黄龍譚15限目【カーニバル】後編


11/12(日) 午後

「え~、それではいよいよ
 今年の学園祭のメインイベント
 邪眼学園最強決定バトルロワイヤルを開催します!!!
 実況は私リカが担当します!解説はシャインの名物店員カナさんです!」
「よろしくお願いします~!!」

…どうしてあの2人はあんなりノリノリなんだろう

「それではまずはルールの説明です
 参加者の皆さんにはそれぞれネームプレートが配られています
 基本的にそれを奪い合ってもらうことになります、1個につき1点です
 日没と同時に集計が行われ最もポイントが高かった人が優勝です
 なお自分のネームプレートが奪われたらその場でゲームオーバーです」

なるほど
つまり自分のネームプレートを守りながら戦う必要があるってことか

「相手から奪ったネームプレートはタイムアップ時に持っていなければポイント加算はされませんが
 奪われないようにどこかにまとめて隠して置いて後で回収などはオーケーです
 最も隠し場所が見つかってほかの参加者にとられる可能性もありますが…
 つまり自分のプレート以外ならどうしようと勝手というわけですね」
「私にも説明させてよー」
「わわ、ちょっ…きゃっ…椅子…
 ガタン!…ガガッ…ジッ…ザー…」
「…ふぅ、すみません
 戦闘区域は学園校舎全体です、校舎から外に出た場合はプレートの有無に関わらずその場で失格です
 校舎内には至るところにカメラが設置され
 その映像はこのグラウンドに置かれた超大型モニターに映し出されます」
「どこのカメラを写すかはリカちゃんが決めるんだよ!」
「なるべく臨場感溢れるようになるように頑張りますね
 なおネームプレートには発信器が埋め込まれており皆さんの動きは全てこちらに伝わります
 基本的に何でもありですが故意の設備の破壊や明らかな殺意のこもった攻撃などは反則として失格にします
 …っとこんなところかな?」

一体どっからこんな機器やら集めてきたんだろう…
メインイベントっても一般の学園祭にしては…ああ、この学校普通じゃなかった

「それでは参加者の方は受付でネームプレートをもらって
 校舎の中に入ってください、事前に参加申請してない方も今なら飛び入りおkです
 30分を過ぎると校舎への立ち入りは禁じられバトルスタートになります」

覚悟を決めて受付に行くとやたら並んでいる
え、これ全員参加するの?多すぎない?

「あ、たまゆら君こっちこっち」
「ん?」

リカが手招きしている
近づくとネームプレートを渡してくれた

「けっこう予想以上に飛び入りが多いなぁ…」
「事前に参加申請してたのはどんな人がいるの?」
「えっとね、剣三郎さんとか元執行部は何人かエントリーしたかな
 あとほろにがと阿部さんとか」
「…阿部さん?」
「そ~なんですよ~」
「うわっ、カナちゃん…」
「うわって何ですかうわって!
 いやそれよりも店長ってばタダで10万円分のお食事券は勿体無いなぁ
 ここはいっちょ俺も楽しませてもらおうか、ついでに優勝すれば損無しだからな
 とか、なんとか」
「…あの人が参加するのか…
 嫌な予感しかしねぇな…」
「しかしこの飛び入りの量は予想外ですよ~」
「上手くいけば戦わずに優勝できるかもしれないから
 参加するだけ参加してみようって奴らだよ、大半がすぐに落ちる」
「あ、ゆき兄」

並んでいる人たちを指差しながらゆき兄が説明してくれた
まぁ確かに運がよければ別に戦う必要は無いんだよな…

「早く校舎に入っとけ
 今のうちにいい場所をスタート地点として陣取っとけ」
「う、うん」
「ああ、もう1つ」
「ん?」
「序盤に気をつけろ」
「え?」
「はじまりゃあわかるさ、健闘を祈るぜ」
「う、うん…わかった、それじゃ言って来る」

校舎内は割とワイワイガヤガヤしていた
協力していこうぜ!と仲間を募ってる人もいる
協力…ねぇ…マラソン大会の最初みたいだな、一緒に走ろうよのアレ…
うろうろしているとジジッと音がして校内放送用のスピーカーからリカの声がした

「それではそろそろ開始です~
 準備はいいですか~?」
「カウントダウン開始~!!」

準備といってもな…
周りを見てみたが近くには誰もいないようだ
ゆき兄が序盤に気をつけろと言っていたが…
しかし黄龍鉄甲も無い俺がどこまで渡り合えるものか
ああ、でも全員素手だから条件は一緒か

「3」「2」「1…」
「スタート!!!」


スタートの音が響いたとほぼ同時
遠くから絶叫が聞こえた

「はーはっはっはー!!!10万円分の食事券は頂くぜぇー!!!」
「久しぶりの乱交パーティーだぜ!楽しませてもらおうか!!」
「アッー!!!」
「ごぶぅぁー!!!」

まさか、あの2人、序盤から大暴れか!?
まずいな、ここでポイントが大きく突き放されたら…!


─ 校庭 ─

「ぬぁんと序盤から大混戦!!
 飛び入り参加の皆様があっという間にネームプレートを奪われていきます!!」
「ほろにがって人は普通に強いね!
 店長…じゃなかった阿部さんも普通に強いけど何か妙な動きが多いね!
 後ろに回ったり、組み伏せたりと!」


─ 校舎2階 ─

「さて、どうすべきか…」

とりあえず巻き込まれたくないので絶叫のする方向とは
反対側に歩みを進めてみる
すると前から3人ほど…

「センパイ、こいついいんじゃないっすか」
「おうおう、ネームプレートさっさとよこしな!」
「早くよこさないと痛い目見ちゃうぜ!?」

不良なのかな…
どうやら結託して3人で狩る気らしいな
さっさと渡して逃げたいのは山々なんだが参加した以上どこまで行けるかも試してみたい
とは言っても黄龍鉄甲も無いしな

「ブー!時間切れ!!
 というわけで強制的に奪っていくぜ!!」

リーダー格の男が拳を突き出してきた
…遅い?

パッシィィィィン!!と気持ちのいい音が響く
男の拳を俺は受け止めていた

「なぬ!?」
「熊殺しのセンパイの殺人パンチを受け止めた!?」
「なんだこいつ!!」
「…」

今度はこちらからパンチを撃ってみる
様子見のつもりだったのだがあっけなく男の顔面に命中した
ボゴッ!と音が響いて男が後ろに吹っ飛んだ

「熊殺しが吹っ飛んだ!!」
「んなアホな!?」
「センパイ!冗談っすよね!?」
「…」
「駄目だ!泡吹いてるぞ!!」

こいつら、見掛け倒しにも程があるじゃないか

「おい」
「うわ、やべぇ!!ちくしょうくらえ!!!」
「ちょっと、待てよ…待てって!」

突っ込んできたので思わず拳を突き出すと向こうから辺りに来て顔面に命中した

「ぷえ…」
「もらったぁ!!」

もう1人が後ろに立っていた
考える前に身体を捻り、そのまま脇腹に蹴りを叩き込んだ

「ぷぉっ…」

バターン!と勢いよく倒れる
…どうしよう、とりあえずプレートを奪えばいいのかな


─ 校庭 ─

「たまゆらさん!!3人に襲われたもののあっというまに返り討ちです!!」
「たまゆら君すげー!かっこいいー!!」

「…ま、当然だわな
 何度も死線をくぐり抜けてきたんだ
 黄龍鉄甲があろうがなかろうがあいつの戦闘能力は並の奴じゃ相手にならんほど高まってる
 本人は気づいてないだろうが…」

「えー…もうすでに半数以上がネームプレートを奪われ敗走
 勝機が無いと悟った人たちも戦線離脱…
 大混戦はここでなくなりそうです」


─ 校舎2階 ─

何人か絡んできた奴らがいるのだが俺は順調にプレートを奪っていった
自分のと合わせてええと、今7点か…

「む」
「げ!剣三郎!」
「たまゆら…いざ尋常に勝負!!」
「いきなりかよ!!」

剣三郎がこちらに向かってくる
だが突然剣三郎の動きが止まった

「こ、これは…!?」
「楽しそうじゃないか、俺も混ぜてくれよ」
「ああ、あああ、阿部さん!?」

剣三郎の背後に阿部さんがいた
その顔は楽しくてしょうがないという顔だった

「…!この者…なんという邪悪な気…!!!」
「尻を出してるなんて誘ってるのかい!?」
「アアアアアアアアアアッー!!!!」
「剣三郎ォォォォォォォォオオオ!!!」
「待ってな、たまゆら君、すぐに君も…!何だ!!抜けない!!!!
 こいつ、ガッチリ締め付けてやがる!!」
「逃げろたまゆらぁぁぁぁぁぁ!!
 ここは俺が食い止める!!」
「クソッ!なんて締め付けだ!!うぉぉぉぉぉぉ!!離せ離せぇぇぇぇ!!」
「日々鍛錬を積んだ俺の尻をそう簡単に征服できると思うな!!
 さぁ今のうちに逃げるんだたまゆらぁぁぁ!!」
「くっ…!!」
「うぉぉぉぉぉぉお!しゃらくせぇぇぇ!!内臓まで貫いてやる!!
 マキシマムドリルバーストォォォォ!!!」
「アアアアアアッー!!!!!
 らめぇ!とんじゃう!とんじゃう!」

剣三郎…すまない!!
そしてありがとう…!!

─ 校庭 ─

「なんだか物凄いことになってます
 ちなみに画像にはモザイク処理を施してます」
「店長マジになってる…」

─ 校舎3階 ─

「はぁっ…はぁっ…
 剣三郎…お前の犠牲は無駄にはしない…」
「あ!!」
「げっ…ほろにが…!!」

ああ、なんでこう次から次へと!!

「プレートよこせぇぇぇぇえ!!!」
「誰がやるかよ!!剣三郎が純潔を捨ててまで守ってくれたプレートだ!!」

突っ込んでくるほろにがの目には狂気が宿っていた
食欲、そしてそこから生み出される無尽蔵の食への執念
それが彼の人格を狂わして1匹の悲しい悪魔を…ってんなこと言ってる場合じゃねぇ!!!
変なこと考えたせいで対応が取れねぇ!!

「もらったぁぁぁぁぁあああ!」
「オッサン邪魔だぁぁぁぁ!!」

ガコーン!と音がしてどこからか飛んできた金ダライが見事にほろにがの後頭部に命中した
ほろにががバランスを崩して俺の横をすっ転んでいった

「ほげぇぇーーーー!!!」
「やっと見つけたぞたまゆらぁあああああ!!」
「え、えび助…!!」
「最初にシャインで阿部さんに…(4話参照) 
 それからことあるごとに使われてんだよ俺は!!
 風呂場で堪忍袋の緒が切れた!!復讐だ!!!」
「あれは俺のせいじゃないだろ!!」
「関係あるかァーーー!!!!」
「理不尽な!!」

飛び掛ってくるえび助
え、何で飛び掛って…!?
どしゃっ!と俺に全体重をえび助が乗せてくる
俺は後ろに倒れて仰向けになる

「このままふん縛って阿部さんに届けてやる!!」
「馬鹿それだけはやめろ!」
「知るかぁぁぁぁ!!」

必死に抵抗する
冗談じゃねぇ!!今の阿部さんの前に縛ってもっていかれたら全身酷いことになる!!

「仕留めたぁぁぁ!!!!」
「なぬっ!?ホゲェァー!!!!」
「えっ!?」

いきなりえび助が吹っ飛んでいった
壁まで吹っ飛んで叩きつけられる
生身であんな技が出せる奴っていったら…

「高橋まで参加してんのかよ!!いよいよヤベェよこれ!!」
「おいコラァ!ガキどもぉ!!」
「げ、ほろにがも復活した…」
「あ?何だオッサン?」
「おーおー、にくったらしいガキだ…
 まぁいい、プレート全部置いていきやがれ!!」
「そりゃこっちのセリフだぜ?」

あ、何かこの2人相性悪いみたいだ
となると今のうちに…!
俺はこっそりと立ち上がってそろそろと逃げ出す
その前にえび助の持ってるプレートをもらっておこう…

「クソガキがぁぁ!風穴開けたらぁぁぁ!!」
「顔面ボコボコにしてやるよオッサン!!!」

─ 校庭 ─

「弱者が淘汰され強者が生き残る…
 まさに今校舎内は太古の時代です!!」
「意味わかんないけど、言わんとすることは理解できるよ」
「カナちゃんは、誰が優勝すると思う」
「うーん、たまゆら君に賭けたいなぁ個人的に
 でもやっぱ店長…阿部さんが大本命かなぁ
 さぁ見物人の皆さんベットベット!!」
「賭博行為は駄目だよぉ!」

─ 校舎3階 ─

階段に辿り着く
降りれば2階、上がれば屋上
2階は阿部さんがいるかもしれないし、屋上は退路がない!どうすればいい!
迷っていると階段を高速で駆けあがって来る音が聞こえた

「ウォォォォォー!!!たまゆらはどこだーーーー!!!」

獣の咆哮、間違いなく阿部さんだった
駄目だ!下には行けない!屋上に上がるしかない!!
階段を駆け上がり、屋上のドアを蹴りあける

「飛んで火にいる夏の虫っと」
「げっ!!透過!!」

開けた瞬間、少し前に透過の姿が見えた
まずい、こいつ待ち伏せ戦法してたのか!!
透過は銃を構えた

「エアガンだから安心していいよ
 そら!そら!そらぁ!!!!」

パパパパパァン!と音が響く
慌ててその場から飛びのく

「逃がさないって」

やべぇ!当たる!
と、思った瞬間ドアが吹っ飛んだ
吹っ飛んだドアは透過に命中しドアごと吹っ飛んでいく

「ハンゲバブッ!?」
「誰だ!!」
「ぜぇっ…ぜぇっ…」
「た、高橋!?」
「たまゆら…、いや今はいい!!とにかく手伝え!ここを塞げ!!」
「どうしたんだよ、ほろにがと戦ってたんじゃ…」
「ガタイのいい下半身裸の男が乱入してきてそれどころじゃなくなったんだよ!!」
「阿部さんかよ!!もうなんか暴走してるなあの人!!」

とにかくドアを塞ごうと吹っ飛んだドアをはめ直して
とりあえず気絶した透過で抑えることにした

「よし、これで…」

同時にドアがガタンガタンガタンガタン!と大きく揺れた

「ききき、きたぁぁぁぁ」
「クソ、俺としたことが自ら退路を断っちまうなんて…」

そして魔界と現実を隔てていたドアがついにガターン!と落下した
その先には天を貫くパンデモニウムを携えた悪鬼がいた

「ギャアアアアアアアアアア!!!」
「さぁ、たまゆら…おいで…」
「やだやだやだやだやだぁぁぁぁ!!」
「クソッ…万事休すか…!!」
「…!何だ…!!」
「掘られる気分は…どうだ?」
「雷雲!!」
「貴様…さっき掘ってやったはず…!!」
「…ああ…掘られた…
 たまゆら…俺の能力覚えてるよな?」
「!」
「倍返しだ!くらえ!」
「ウォォォォオォォォオォォ!!」

阿部さんがヨダレを垂らしながら絶叫した
逃げるなら今しかない!!

俺は雷雲と阿部さんの横をすり抜けた
同じように高橋も屋上から脱出する

「ウォォォォォォ!!待てぇぇぇえ!!」
「お前の相手は俺だろう!!」
「アァァァアアアアッー!!!」

─ 校庭 ─

「屋上は酷いことになってますねぇ
 正直あんまりモニターしたくありません」
「一部の人は喜んでると思うよ~」
「ちょっとキャラが濃すぎると思うけど…」

─ 校舎3階 ─

3階に降りる

「見つけたぜ!!」
「ほろにがっ!しつけぇなお前!!」
「たまゆら、あいつの脅威も無くなったし共同戦線も終わりだ」
「ケリつけようぜ」

クソ、逃げれないか…
ほろにがと高橋と俺の三つ巴か…
勝機があるとするならお互いが潰しあってくれるぐらいか

「そらぁっ!!」
「うおらぁっ!!」

と思っているとほろにがと高橋が打ち合いを始めた
よっしゃ!狙い通りと思っていると軌道を逸れた高橋の蹴りがこっちにまで飛んできた

「うわっうわっ!」
「2人ともボコボコにしてやるよ!!」
「おいおい!!おい!おい!待て待て!!」
「たまゆら吹っ飛べぇぇぇ!!」

絶叫と共にほろにがの拳が向かってきた
高橋の蹴りのせいで体勢が揺らいでいるので直撃した

「がっは…!」
「もらったぁぁぁぁ!!」

立て続けに高橋の蹴りがこっちに向かってくる
まずい!直撃する!!

「必殺千年殺し!!!」

と、声が聞こえたと思ったら高橋の動きが止まった
そのままぶっ倒れた

「かはっ…」
「ふふふ、僕の浣腸は緻密な計算の上で確実に直腸にまで届く…
 しばらく動けないはずですよ」
「しげる!!」
「おっと、勘違いしないでください
 助けたのではなく彼を倒すチャンスを逃したくなかっただけです」
「後ろだ!」
「ぬっ!」

ほろにがが姿勢を低くしてしげるの後ろにいた
しげるは気づいているようだが動かない

「その手、その動き…浣腸か!
 だが無理だ!読まれた以上、ケツ筋を閉めることで回避できる!!」

しげるの尻がキュッ!と引き締まったようだった
しかしほろにがは動かなかった

「…あれ?」

その瞬間、ほろにががニタリと悪意に満ちた笑顔になった
まずい!

「時間差万年殺し!!!!」

ドッスゥ!!と音がした気がした
しげるが白目を剥いてその場にぶっ倒れた
ケツ筋が緩んだ瞬間を的確に狙って無防備になった所を強烈な1撃で仕留める
ほろにが…こいつ…プロだ

「クク、年季が違うんだよ…
 俺は親指を使うこでその威力を数倍にまで跳ね上げている」
「クソッ…」
「さて、これでもう生き残りは俺らぐらいじゃねぇか?
 腹も減ったしここいらで終わろうぜ…」
「…クッ」
「ほら、どっちにしろもうすぐ日没でタイムアップだしな」
「ひとーつ、人の世蔓延るガチムチを」
「!?」
「ふたーつ、ふらりと現れ後ろを取って」
「げ…こいつまた…」
「みっつ、見事に突き貫く」

ゆらーっと現れたのは阿部さんだった
こ、こいつ…まだ…

「また邪魔するのか変態ヤロー」
「それはこっちのセリフだな」
「上等だ…」

三つ巴になった…
どうやらもう覚悟を決めるしかなさそうだ


─ 校庭 ─

「いよいよクライマックスですねぇ」
「優勝候補同士のガチバトル…
 こりゃあ勝負の行方が見えないねぇ」

─ 校舎3階 ─

阿部さんに後ろを見せるわけにはいかない
しかしほろにがから目を離すことも出来ない
後ろを守りつつもほろにがから目を逸らさない
こうなると必然的に壁を背にして戦うことになる
しかし動けない
不用意に動けば手があいているほうから襲撃される
それは2人も同じのようで誰一人動かない膠着状態のまま時間が過ぎる
しかし阿部さんはもう我慢できなかったようだった

「ウォォォォー!!!」
「んなっ!?俺かよ!!」

絶叫しながらほろにがに突っ込む阿部さん
掘られたくないのだろう、物凄い勢いでそれを回避するほろにが
だがそのせいで体勢が崩れる
阿部さんの追撃はなおも続き二人はもみ合いになる
今がチャンスか…!?
俺は横からとりあえず仕留められるほうを仕留めようと近づいた
そして、阿部さんに向かって拳を振りぬいた

「おっと、せっかちだなたまゆら君」
「うおっ!」

阿部さんは咄嗟に飛びのき俺の拳は空を切る
くそっ!一旦体勢を直さないと!

「仕切りなおしなんかさせないよ」

間を置かずに阿部さんがこちらに突っ込んできた
やばい!と思ったとき腕を利用して仰向けの状態のままほろにがが阿部さんのほうへ滑っていった

「くらえ、変態」
「何!?ハォォォウッ!!!!」

メシャ、という音が聞こえた気がした
ほろにがの爪先が、完璧に阿部さんの股間
詳しく言うなら、玉を捕らえていた

「オォォォォォォー…」

変な声をあげてドサリと倒れる阿部さん
どうやら…悪魔は倒れたようだ…
と、なると後はほろにがか…
それなら今の隙を逃すわけには!!
俺は座り状態になったほろにがに走って近づくと同時に拳を繰り出した

「もらったぁ!!」
「あめぇんだよ!!」

拳と拳が、チッ!とこすれあった
そして互いの拳は互いの顔に命中した

「がぱっ!」
「うばっ!」

お互いが後ろにすっ飛ぶ
衝撃でポケットにいれていた今まで集めたネームプレートが当たりに散った

「グッ…くそっ…」
「くそっ…たまゆらやりやがる…
 そういや俺とお前はマジで戦ったことはあんまり無かったよな…」
「ああ、そういやそうだったな…」
「丁度いい、どっちが格上か決めようぜ!」
「…フン!望む所だ!!」

立ち上がってお互いに構える
恐らく、これが最後
お互いにこの1撃に全力を乗せるに違いない
だとすれば後はどうやって相手の攻撃を避け1撃をクリーンヒットさせられるか…
裏の読みあい…
そして少しの間の後、お互い示し合わせたかのように同時に相手に向かって走り出した
ただぶつかり合えば恐らく俺が読み負ける
だから俺は、飛んだ

「奇抜だがタイミングを誤ったな!空中じゃ避けれねぇぞ!!」
「承知の上さ」

ほろにがの拳をよく見る
一瞬たりとも目を離さず
どんな些細も動きも見逃すな!!

「ぶっとべぇ!!!」
「おおおおお!!」

足の裏に、とても強い衝撃
だが何とか押さえ込み、俺は拳をほろにがの顔面に向けた

「こいつっ!足で…!
 だがまだ左手があるんだよ!!」

俺の拳はほろにがの顔面を打ち据えた
だが1テンポ遅れて腹部に衝撃
ほろにがの左拳がみぞおちに深く突き刺さっていた

「ぐぇ…」
「がはっ…」

もつれ合うように2人で吹っ飛んで倒れる
その瞬間、静かだった校舎内にリカの声が響いた

「ターイムアーップ!!タイムアップです!!
 これにてバトルロワイヤルは終了です!お疲れ様です!!!」
「…終わったみたいだぜ」
「…んだなぁ…」
「…まぁでも…ほら、あれだよ…」
「…いい勝負だったってか?」
「…うん」
「へっ、ガキがいっちょまえに…
 だがまぁ」

ほろにががスッと右手を差し出してきた

「いい勝負だった」
「へへっ」

俺達は固い握手を交わし…
その瞬間右手に激痛が走った

「だぁああああああああああ!!!」
「油断大敵火がぼーぼー、必殺画鋲地獄」
「て、てめぇ…!」
「お、おい待て待て待て!もうタイムアップだってば!!
 よせ!消火器はまずいって!!おおおおい!!」

11/12(日) 夜

校庭でヤチャマル達に善戦を称えられながら
集計結果を待つ
ほろにがと俺…どっちが勝ったのか…

「集計終わりました!
 優勝者は1-Aの蝶!!!」
「なぬ!?」
「何だと!?」

ほろにがが納得いかねぇ!と行った具合で文句を言い出す

「なんでだ!明らかに俺かたまゆらだろ!
 だいたい蝶なんか見なかったぞ!?」
「えーっとですね…カナ、説明を」
「解説しまーす
 ほろにがとたまゆら君はですね~
 クロスカウンターの時に集めたネームプレートをブチまけちゃったじゃないっすか
 あれ拾ってないからタイムアップ時にポイントに加算されてないんですよ
 だから2人は最終的には1点です」
「なお、優勝者の蝶はこそこそ隠れながら皆さんが倒して気絶やらしてた参加者のプレートを
 こっそりと集めまくってたら勝っちゃったとコメントしてます」
「何じゃそりゃぁぁああああああああああああああああああああああ!!!」

あんだけがんばってこの結末かよ…
皆掘られたりして得た物は無くて失った物は多いなぁ…

「ははは、散々だなたまゆら」
「ゆき兄…」
「ま、いいじゃねぇか、割と楽しかったんだろ?」
「う、うん…」
「もう祭りも終わりだ、ほら見とけ」
「え?」

ヒューン!という音が聞こえたと思ったら
ドーン!と大きな音が辺りに響いた
おいおい、これってまさか…

「たまやー…ってな」
「花火までやんのか…この学園すげーなぁ…」
「お!いたいた!おーい!皆で花火バックに写真撮ろうよ!」
「めんどくさい」
「いいからいいから!ほらたまゆら君も!!」



「…」
「ここは花火を見るには特等席だな」
「そうね」
「…ずっと閉じ込めてしまってすまないな
 だけどもうすぐ終わる…許してくれ」
「責めるつもりはないは
 いつかこうなるのは予想していたから…」
「辛い使命も、己を縛る枷も…
 せめて花火の間だけは忘れるといい」
「…うん」




「クックック、綺麗だなぁ」
「ウウ…ウウウウ…」
「…」
「闇に光り輝き一瞬で消える…かぁ
 …まるで未来を暗示してるのかのようだなぁ…」
「…成る程」
「ま…今宵ぐらいは夢を見させてやろうかぁ…
 我らも、たまには過去を想いを馳せるのも…悪くはない…」
「同感ですね」
「ウゥゥゥ…」


その花火は、戦いに生きる者、そうでない者
全てに平等に降り注いだ
祭りは終わる、またいつもの日々が戻ってくる
だけど僕らは決して、今日の花火を忘れないだろう
ただ純粋に、打算も何も無く舞い踊るように戦えた今日を


15限目 - カーニバル -




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最終更新:2009年11月01日 03:08