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邪眼学園黄龍譚16限目【決着】後編


11/14(火) 深夜

身体はバッチリ、怪我も疲労も無い
頭も眠くもなんともない
黄龍鉄甲、ちゃんとある
いつも思うが戦闘準備っていうのに俺の準備はすぐ済むな…
時刻はもうすぐ深夜0時
さて、行くか

寮の外に出るとどうも嫌な空気だ
湿っていると言うか何て言うか…
そのねばりつくような空気が余計に不安感を煽る
それでももう引き返すことは出来ない
一歩一歩、踏みしめるように時計塔の前へと向かう
時計塔に辿り着いた時
時刻は丁度深夜0時
佇んでいた影がゆっくりとこちらを向く

「…ここまで来た以上
 もう言葉はいらないだろう」
「同感だ」
「決着をつけよう
 お前の正義と俺の正義、どちらが上か」
「…ああ」
「…斬り払え、狂刃ホワイトジョーカー」

白やんの持っている剣が鎌へと形を変える
そしてそれを構える白やん
俺も黄龍鉄甲を構える
前に一緒に堕人と戦った時のことを思い出す
…あの時は鎌しか使っていなかったが必ず白やんは今までの敵と同じように特殊な能力があるはずだ
それを見極めないと…
ポツ、ポツ、と雨が降り始める
やがて雨の勢いは増す
ザァザァと降りしきる雨の中、俺と白やんは動かずに睨み合う
どれくらいの時間が過ぎたのか
一瞬とも永遠とも取れる長い時間の果てで白やんが小さく呟いた

「…行くぞ」

その言葉を放って一瞬の間を置いて
白やんが姿勢を低くしてこちらに向かってきた
手に握られている大鎌が縦に振られた
身を翻しそれを避ける
鎌の先端は地面に突き刺さる
だが勢いは止まらずガガガガガッ!と地面を削り今度は横薙ぎ
俺は後ろに跳び退き鎌のリーチから抜ける
だが1秒にも満たない跳躍なのに着地した時にはすでに次の振りが来る
四方八方、縦横無尽、白やんの鎌の刃はまるで分裂でもしたかのように高速で振りぬかれる
それを操る白やんは身体を捻り、軽く跳躍し、時には身体を回転させ
まるで舞い踊るかのようにその刃を見事に操っている

「目覚めろッ!朱雀ッ!!」

俺は朱雀の力を解放する
瞬時に分裂した黄龍鉄甲は翼となり俺に飛翔能力を与える
後ろに下がっても追い詰められるならば上だ
だが白やんの大鎌の先端がこちらに向かって高速で射出された

「何ッ!?」

咄嗟に身体を回転させてそれを避ける
ジャラジャラと身体の横で鎖が揺れている
それを理解した瞬間に鎖がこちらに寄ってくる
下では白やんが横に走っていた
巻き取られたらまずい!
慌ててさらに上へと飛ぼうとする
その時鎖が勢いよく白やんの方向へと引っ張られた
翼に強い衝撃
返ってきた刃の先端が翼に命中
空中でバランスを失い落下を始める
下には笑みを浮かべた白やん
振りぬかれる寸前の大鎌

「うぉぉぉぉっ!!!」

咄嗟に刃に向かって拳を振るう
ガキィン!と乾いた音が辺りに響く
なんとか着地するがすぐさま体勢を立て直した白やんの次が来る
避けれない、受けるしかない!
同じように辺りに響く金属音
衝撃で手がちぎれそうになる

「クッ…」

白やんが初めて顔を歪ませた
そうか、避けるのはまだしも撃ち合いなら反動の具合は鎌より鉄甲のほうが有利か
ただこっちはほぼダイレクトに身体に衝撃が伝わる
有利とは言っても長期戦には向かないか…
白やんの懐に飛び込む
鎌という武器の死角
それは完全な隣接距離
そうだ、この距離が白やんが攻撃できずに俺が攻撃できる唯一の場所
だが白やんの表情は崩れない
それが咄嗟に攻撃にブレーキをかけた
思わず飛んだ
足払い、それを避けるために
だがその隙に鎌の先端が俺を狙う
響く金属音、散る火花
白やんが後ろに下がった、俺も下がって距離を開ける
今度は遠距離、それなら…

「目覚めろッ!青龍ッ!!」

黄龍鉄甲は分離し2個のビットが浮かぶ
そして青い光弾がビットから乱射される
白やんは迫り来る光弾を鎌で切り裂く
小さな爆発、しかし白やんには届かない
1振りで2つ、3つの光弾を切り裂く白やんの見切り能力の高さ
時に刃を高速で振るい、時に刃を止め迅速かつ正確に光弾を切り捨てていく
そこから生まれる圧倒的防御力
そして迫り来る光弾をものともせずにこちらに向かって迫り来る

「…ッ!絡め取れ!!」

青い光の帯でビット同士が連結する
ビットは不規則に揺れながら白やんを絡め取ろうと動く
すっと、白やんが右手を鎌から離し前へと突き出した
その手のひらに、青い光の帯が触れた時
まるで弾けるように青白く光る残滓だけを漂わせ、光が消滅した

「なッ!?」

ビットは白やんの両脇を抜けあらぬ方向へ
俺の目の前には鎌を構えなおした白やん
完全な鎌のリーチ、そこは死の距離
青龍形態じゃあ殴って刃を弾くことも出来ない
避けることしか出来ない、だが避けれるのか?
だけど避けようとしない限りは100%避けれない
無我夢中と言ってもいいかもしれない
追撃、回避後の体勢、激突、それらを何も考えないまま俺は力任せに横に飛んだ
縦に振られた鎌が、風になびいた髪をハラリと斬り落とす
避けたものの受身は取れず、雨でドロドロになった地面に肩から落下する
全身が泥まみれになったとしても白やんの怒涛の攻撃は続く
俺が手足をついて、ただ無様に、情けなく逃げ続けることしか出来ない
だがさすがに限界があった
白やんの鎌が大きく振り上げられた
まずい、やられる
だが後ろから飛来した光弾が刃に命中し小さな爆発
刃の方向が僅かにズレる
頭へと振り下ろされた刃の先端は頭を通り過ぎ右肩を貫いた

「ぐぅっ…!!目覚めろッ!!玄武ッ!!」

悲鳴と雄叫びが入り混じったかのような声で俺は叫ぶ
同時に左手で突き刺さった刃を弾いた
刃が肩から抜けると瞬時に傷が塞がった
それを見ていた白やんが言った

「…細胞の異常活性…
 そんな能力まで…」
「ふん…まだまだこれからだ…」
「…」

白やんが鎌を横薙ぎに振るう
俺の両手が刃を受け止めた
手のひらに刃が食い込み、切り裂かれる皮膚の痛み
肉を切らせて骨を断つ、玄武の超回復があってこそ為せる技
白やんの表情が歪む

「…貴様!」

俺は鎌の刃を下から膝で蹴り上げた
刃が上に跳ねる
その隙を逃さずに俺は懐に飛び込むと同時に拳を叩き込もうとした
この状況なら足払いも間に合わないだろう!
だが白やんは鎌から手を離していた
あの一瞬でそこまでの判断を?だけどガードも間に合わないだろう!
間に合ったとしてもこの1撃は生身でのガードなんて突き破る!!
だが予想とは裏腹に白やんは右手をただ前に出しただけだった
拳が、右手に触れたその瞬間、俺の身体から勢いが消えた

「…え?」

理解が出来ぬまま
俺の身体は止まっていた
そして振りぬかれた白やんの左拳が頬を打ち抜く
状況把握出来ぬまま強烈な衝撃で俺は吹っ飛び地面に叩きつけられる
血の味がする、口の中が切れたようだ
クラリとしながらも強引に立ち上がる
青龍の時といい…今といい…白やんの右手には何かがある…

「その右手…どういう能力だ…」
「俺の右手は俺の意思によりあらゆる力に死を与える
 右手に触れた力は如何なる力であろうとも死を迎える
 死ぬとは勢いを失い、威力を失い、力の塊は霧散する」
「なるほど…確かに…滅茶苦茶強いわ…それ…」
「正直、死の右手を使う必要は無いと思ったが…」
「…」

使うしかない、あの力を
今の俺の体技じゃあ白やんに勝つことは出来ない
…正直、使いたくはなかった、制御不能の殺意の力
だけど、勝つにはこれしかない
死神に勝つには…血に飢えた虎になるしかない!!

「目覚めろ…白虎…」

降りしきる雨の動きがゆっくりとなり
地面に当たり広がる水の冠までもが視認できる
俺は前に駆け出した
鎌の動きがよくわかる
自分以外の時間が遅くなったような世界で
いとも容易く刃を抜ける
そして白やんに向かい爪を振りぬいた
先端が服を裂き、肉を擦り取る
雨に混じって、血が宙を舞う

「がっ…」

初めて、俺の攻撃がすんなりと命中する
それを喜ぶと同時に胸の奥から湧き上がる黒い衝動
殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ
圧倒的かつ無尽蔵の強い飢餓感
食らえ、食らえ、食らえ、食らえ、食らえ
脳髄を駆け巡る白い閃光、殺意、血への渇望

「ウオオオォォォォォォォォ!!!」

この咆哮の主は俺であって俺ではない
白虎の咆哮、殺戮の主の宣戦布告
衝動が、足を、手を、身体を突き動かす
超加速の勢いを乗せた白虎の爪が振りぬかれる
そして、休む間を与えない四方八方からの連続攻撃

「ぐぅっ…」

初めて白やんの表情に焦りが見えた
圧倒的防御力を上回る絶対的攻撃速度
このまま一気に仕留める!!
ズザァァッ!と湿った土と靴がこすれる
俺が動きを止めると白やんはフラリと崩れ落ちそうになった
俺は構えた

「…噛み砕け…白虎断極烈殺斬!!」

全てを飲み込む白虎の速度
そして全てを噛み砕く白虎の牙
だがその時、俺の目に飛び込んできたのは光輝く白やんの大鎌
流れるように振りぬかれる鎌、しかしあまりにもリーチが遠すぎて俺に刃は届かない
ヤケになって偶然あたることを願って振ったのか?
どちらにせよこれで俺の勝ちだ
そう確信した時、白やんが呟いた

「ブレット・オブ・デス」

振りぬかれた刃から、光が離れた
そして光の塊はこちらへと飛来する

「なっ!?」

予想外の攻撃
対応することが出来ずに光が俺に直撃する
光が炸裂し焼けるような痛み、空が下に、地が上に
ドバシャッ!と水溜りに頭から落下する
同時に白虎の力が失せていく
両腕が酷い火傷をしたみたいになって激痛が走る

「遠距離攻撃まで…持ってんのかよ…
 直線的に攻撃するんじゃなかったな…」
「…死のイメージ、狂刃ホワイトジョーカー、死の右手、ブレット・オブ・デス
 この4つの力の前には如何なる力も死する…
 …だがしかし俺に4つ全てを使わせる程とは…」

雨が強くなる
空が光り、雷鳴が轟く
土砂降りの雨が降りしきる中で
俺と白やんは互いに肩で息をする
荒れた呼吸は静まらず、心臓の鼓動は張り裂けるように早い

「最初に会った時とは…
 まるで別人のような強さだな…
 この短期間で…何が貴様を強くした…」
「俺は…!」

ビシャと、足元の水溜りの水が跳ねた
踏み出した足が塗れた地面を蹴り出し、湿った土を蹴り上げる
白やんの持つ鎌が怪しく揺らめく
それが合図。
堰を切ったように刃が煌き、刃に産み落とされる白い輝き
白やんが駆け出しても光は動かない、ただ刃を白く光らせ続ける

「終わりだ、最後の楔は必ず俺が守り抜く」

白やんが鎌を振るった。
無数の輝きが、一斉に風を裂いて飛ぶ。
その先には俺、飛来する輝きは死の化身。
視界が、真っ白に染まっていく
駆け巡る戦いの記憶
何が俺を強くした?
ここまで傷つきボロボロになるほどの戦いで何を得た?

衝撃、激痛、焼けつくような痛み
…耐え難い激痛
発狂するかのような痛みの中で記憶の渦が螺旋を描く
笑顔、笑顔、笑顔…笑いあって…
何でもないような…楽しい日々…
無数の記憶が走馬灯のように巡る


――初めまして、たまゆらっていいます――


            ――お礼には忠告してやるよ、校則は守れよ――


     ――人が誰かを心配するのは人がそれだけ心に余裕を持ってるからなんだって――


――人は誰しも真実を見たがるが…――

                          ――俺は絶対にお前らを正義と認めない!!――

     ――全部嘘だった、どんなに楽かな――

                      ――だったら止めてみろ!お前の力で!!――

 ――守りたいんだ、ただそれだけ――

                                ――俺が、救ってやる!!――

         ――…この力で…お前を殺してやる――

                                    ――願わくば、全てを終わらせて――

    ――希望を見出した、それだけで充分だ――

              ――さぁ早く行け、後ろは俺が守ってやる――

                          ――丁度いい、どっちが上かはっきりさせようぜ――

――ここまで来た以上、絶対に――



巡る記憶の果て
思い描く1枚の写真、笑ってる、俺達
俺は、戻るんだ
白やんを倒して、必ず戻るんだ
だから、倒れるわけにはいかないんだ!!

意識が覚醒する
インパルスが脳を駆け抜ける
痛みで引きつる身体に力を込める
漂う肉の焼け焦げる匂い
降りしきる冷たい雨すら心地いい

「…全弾直撃だぞ…なのに死なないどころか倒れないだと…!?」
「…白やん…」
「!?」

俺は、右手を天に掲げた
空が荒れ、雨は激しく降りしきり、雷鳴は絶えず鳴り響く

「…お前は強い…とても…強くて…本来俺が敵う相手じゃないのかもしれない…
 それでも俺は…負けるわけにはいかないんだ
 見えていなかった物が、やっとわかった
 俺は帰らないといけないんだ、お前を倒して、あの日常に帰るんだ…」
「…戯言を…」
「互いに笑い合える日常に、誰一人欠けてはいけないんだ…
 俺の正義、皆が幸せな世界に…」
「…夢物語だ、誰かの幸せの裏には必ず誰かの不幸が存在する」
「そうさ…わかってる…
 でも正義なんてそんなもんだろ…理想を掲げ…どこまで理想に走り続けられるか
 いつか俺も力尽きてしまうのかもしれない
 夢見た世界なんてどこにも存在しないことを知ってしまうのかもしれない…
 それでも今は…走り続けるだけだ」
「…なら、越えて見せろ…!!
 死という強すぎる力によって縛り付けられた俺の運命という力を!!」
「終わりにしよう、正義と正義がぶつかり合う、こんな悲しい戦いは…」

白やんの鎌の刃が輝き出す
そしてそのままこちらに走り出す
俺も走り出す
まるで止まったような時間
振り下ろされる、死の刃
振りぬかれる俺の拳
刃にぶつかる鉄甲、刹那、弾ける閃光
響く、爆発音、遅れてくる、ビシリと言う音
散らばる金属片
黄龍鉄甲、今こそ全ての力を
この戦いに決着をつける最後の1撃を
黄龍鉄甲から金色の光りが溢れ出す
全てを包み込む暖かな光が周囲の景色を掻き消していく
驚愕の表情を浮かべる白やんの顔が見える
砕け、黄龍

バキィィン!と、響き渡る音
それは白い道化師の断末魔
周囲に飛散する鋭い金属が礫のように俺の身体を穿つ
だけど止まらない、止まるわけにはいかない
金色の光を放つ黄龍鉄甲が、白やんの顔を捉えた
白やんは目を閉じた
その顔は、微かに微笑んでいたようだった
酷くスローモーション
振りぬかれた拳が白やんの顔を打ち抜いた
刃を失った大鎌が手から離れ回転しながら地面を跳ねる
そして白やんは宙を舞い、ぬかるんだ地面をえぐり、衝撃の痕跡を地面に残した後
その動きを止めた

「…はぁ…はぁっ…」

絶え絶えの呼吸
同時にジワジワと感じる全身の痛み
思わず地面に膝をつく
白やんは動かない

「…強いな…たまゆら…本当に…」
「なっ…」

まだ動けるのか!?
もう俺に戦える力は残ってない…
万事休すか…?
だが、白やんが次に紡いだ言葉は意外なものだった

「…武器も失った、俺の負けだ」
「は、ははっ…」
「負けたというのに…清々しい…」

終わった…!
俺はやっと…!!

喜びに身を任せようとしたその時だった
周囲がドゴォン!と揺れた
これは…!?

『ウォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

響き渡る咆哮
これは…また…!?
似たようなことが何度もあった…これは一体…
だがいつもと違うのは揺れが収まらないこと
まるで長い地震のように延々と揺れ続ける地面
焦りと不安が胸中に渦巻く
そのときパチパチパチと拍手の音が響く

「お疲れ様ぁ…やっとこの時が来た…」

拍手の主
仮面、長い鉤爪、黒いマント
白やんが叫ぶ

「なぜ貴様がここにいる!?
 お前は完全拘束して監視下においたはずだ!?」
「クックック…俺はノスフェラトゥ…その名の意味するは不死なる者…」

ノスフェラトゥは押し殺したような笑い声を仮面の下から響かせる
長い鉤爪が早く鋭く揺れ動く
いや、それよりも俺が目を疑ったのはノスフェラトゥの後ろ
おびただしいほどの数の堕人
周囲を埋め尽くす程の闇、闇、闇

「なんで…生徒会を倒せば…
 堕人は消滅するんじゃ…」
「実に…実にお前はよく働いてくれた!!
 俺の思惑通りお前は生徒会を撃ち倒し見事に全ての封印を解いた!!
 いよいよ大いなる者が蘇る!!
 我らは融合を果たし忌まわしきこの闇の肉体より解き放たれる!!」
「…そんな…」
「だが…まだ姑息な手を使って復活を邪魔しているらしいな…
 ここまで来た以上、遠慮はいらない
 同胞よ!全てを食らい尽くせ!!可能性のある者は殺せ!可能性のある物は砕け!!」
「たまゆらぁっ!!」

白やんが叫び声をあげこちらに何かを投げてきた
慌ててそれをキャッチする
投げられたそれは…鍵…?
時計塔、と刻印がされた鍵

「行け!行けばわかる!!」
「…わ、わかった」

俺は慌てて時計塔の扉を開けようとする

「シャァァァァア!」

不気味な、喉笛から空気の漏れるような音を出しながら
堕人が後ろから俺に飛びかかってくる
だが飛び出してきた影に掴まれ地面に叩きつけられる

「白やん…!?」
「行け!」
「…あ、ありがとう」
「礼はいい!早く行け!!」

俺はドアを半ば蹴り破る勢いで開けた
ボロボロのコンクリートの狭い部屋、時計を動かす機械があちこちに剥き出しになっている
前方に鉄製の梯子が見える、あれを昇ればいいのか!?
背後からは無数の堕人の叫び声
耳障りなノスフェラトゥの笑い声

不意に頭にある言葉が思い浮かぶ
『お前が為すこと、そしてそれによって起こる事実を決して否定はするな』

くそっ…くそッ!!!
梯子を昇りきると長い長い螺旋階段
俺はひたすらに階段を駆け上がる
やがて頂上辺りで見えた小さな鉄製の扉
開けようとするもあかない、鍵がかかっているようだった
白やんから受け取った鍵を指してみるとガチャリと鍵の外れる音がして扉が開く
中に飛び込み、驚く
ベッドや机、人の生活観が滲み出る小さな小部屋
なぜ時計塔にこんな部屋が?
辺りを見回すと部屋の隅に小さな影

「…君は…」
「…目覚める…あれが目覚める…」

ガタガタと震えてる"彼女"は顔面蒼白
俺は、この子を知っている
屋上、ハンカチ、記憶が蘇る

「どうして…ここに…」
「…たまゆら君…」
「…いや、とにかくここは危険だ!
 とりあえず逃げよう」

俺はきのこさんの手を取って部屋から飛び出した
螺旋階段を半ば転がり落ちるように降りていく
状況が全くわからないがとにかく今はこの子を安全なところに
だが螺旋階段の中腹まで来たところで足が止まる
前方に奴がいた
仮面の男、ノスフェラトゥ

「…なるほど、それが最後の…」
「お前…」
「それの命、頂くぞ」

ノスフェラトゥが鉤爪を前にしてまるで滑るように飛び込んできた
避けれない、無理に避けてもきのこさんが貫かれる
いや、それよりも周りが狭すぎる

「ちくしょぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!」
「終わりだぁ!!!」


16時限目 - 決着 -




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最終更新:2009年11月01日 03:12