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邪眼学園黄龍譚20限目【君が守った希望】前編


邪眼学園黄龍譚
20時限目 - 君が守った希望 -

??/?? 黄龍降臨の間

大爆発を起こした黄龍の口から煙が立ち昇る
仰け反り、のたうち回る黄龍
勝てる、のか?俺たち、こいつに勝てるのか?
ゆき兄のほうを見ると信じられないという顔をしていたが、微かな笑み、希望を感じる
勝てる、1人なら勝てなくても2人なら…!

『グゥゥォォォ…!!無駄な足掻きはやめろォォォ…!
 受け入れろ…!!我を受け入れろ!!』

黄龍の吹き飛んだ部分が修復されていく
ゆき兄が肘で俺を突付いてくる

「何…?」
「威勢良く啖呵切ったものの…
 ダメージは与えられてる…だけど微々たる物だ…
 …その微妙なダメージを与えるには俺らは自分の最大の技を放たないといけない」
「…」
「意味わかったよな?」
「じゃあどうすんのさ!?」
「…待て、考えてる
 不運なのは…」
『我を受け入れろォォォォォォォオオオ!!!』
「ゆっくり考えさせてくれるような相手じゃないってことかな」

ほぼ同時に俺とゆき兄は互いに左右に飛びのく
今まで自分たちが立っていた場所に黄龍が激突する
ゆき兄は着地しながらどうすべきかを必死に考えている
ゆき兄だけに任せておくわけには行かないだろうが…俺は黄龍についての情報は全く無い…
どちらにせよ一緒に攻撃しないとダメージは与えれらないんだ、今は避けて避けて避けまくるしかない

『チョロチョロとォォォォォォオオ!!!』
「パワーが増した分、動きが多少遅くなってるな…
 この分ならしばらく時間は稼げそうだな…」

??/?? 時計塔

「馬鹿な…なんだこれは…!」

白やん信じられない光景の目の当たりにしていた
血に染まった部屋、倒れているきのこさん
一体何が起こったというのか、それを考えるより早く白やんはきのこさんを抱きかかえる
しかしきのこさんに触れたその瞬間、白やんは全てを悟った
死の力を持つ白やんだからこそ、すぐに理解できた
すでに彼女が事切れていることを

「…う…ぉぉぉぉぉぉおおおおッ!!!」

激情に任せ床を叩く
最初はただ、守れと言われたから守っていただけだった
ただそれでも長く触れ合う内にいつしか白やんは命令だからじゃなく自分の意志で彼女を守ろうとするようになった
堕人を殲滅し油断していた自分を恨めしく思う
硬い床を叩き続けた白やんの手からは血が滲んでいる
その痛みで少しだけ冷静になった白やんは考え出した

「…ここまでのことをするのは…少なくとも生徒ではない…
 かといって泥棒や強盗の疑いも薄い…
 やはり…堕人か…?まだ生き残りが…?」

そこまで考えたとき、時計塔が大きく揺れた
いや、時計塔じゃない、地面が大きく揺れている
白やんは事切れたきのこさんを担いで時計塔から出る
揺れは収まらない、それどころか段々酷くなっていくように感じる
しかし突然揺れがピタリと収まる

「…これは…何が起こっているんだ」
「おー、生徒会長
 今なんか変な地震だったなー」
「!?」

振り向くとそこにいたのはほろにがだった、手に一升瓶を持っている
ほんのり赤く染まった顔が白やんが背負っているきのこさんを見た瞬間に一気に青ざめていった

「…いかん、久しぶりで飲みすぎたか…」

目頭をグリグリと押さえた後にもう1度ほろにがはきのこさんを見る
ほろにがの手がプルプル震えながら指先がきのこさんを指す

「…なんか、凄く死んでるように見えるんだけど
 気のせいだよ、な…?」

白やんは首を横に振った
そして小さく呟いた

「…残念だが…気のせいではない」
「は、ははは、嘘だろオイ、洒落キッツいぜ…」

まだ信じられない、といった具合でほろにがが白やんに近づく
そして背中に背負ったきのこさんをマジマジと見つめた後に
片手をきのこさんの首筋に当てる

「…」
「…」

2人とも一言も発しないまま無言の時が流れる
しばらくして、ほろにがが叫んだ

「ふざけんなよテメェ!!!なんでこんなことになってんだ!!」
「そんなもの俺が知りたい!!!」
「…とにかく、すぐにヤチャマルのとこに」
「無駄だ、すでに完全に事切れてる…蘇生することはない」
「なんでわかんだよ!!」
「ずっと死に触れてきた俺だからわかるんだよ!!」
「ッ…!」

ほろにがは何かを言おうとしたが口篭り、一升瓶を投げ捨てて歩き出した
それを見た白やんがその背中に言う

「何処に行く気だ」
「仕事だ」
「…仕事?」
「そ、仕事、犯人見つけてやるよ」
「待て」

去っていこうとするほろにがを白やんが止める
ほろにがの足が止まる

「…協力しないか」
「…今回だけな…」

その瞬間、また地面が大きく揺れた
ほろにががガバッと姿勢を低くして地面に耳をつけた

「地震…じゃねぇ、地面の下で何かが暴れてる…?
 きかんぼうのモグラが頭振ってんのか?」
「何を馬鹿なことを…」

白やんがそこまで言った時、突然時計塔の入り口が勢いよく開け放たれた
まるで強い力に耐え切れなくなったかのように
そして開け放たれた入り口から轟音と共にまるで爆発するように金色の光が噴出した

「ベトナムかここはーッ!!!」

あらゆる物を吹き飛ばすような荒ぶる金色の光を咄嗟に飛びのいて避ける白やんとほろにが
光が走った地面は強い熱を帯び、煙を上げる
白やんが時計塔の中を見ながら呟く

「今のは…一体…」
「ほろにがぁッ!」
「おおっ、ヤチャマル!」

走りながら近寄って来たのはヤチャマルだった
慌てて起きてきたようで寝巻きの上にコートを羽織っていて頭は寝癖が跳ねていた

「何だこの圧倒的な気は!?
 そこらじゅうの地面から噴出してるぞ!」
「俺だってわかんねぇよ!!時計塔の扉が吹っ飛んだと思ったらいきなり何か噴出してきやがった!!」
「時計塔…!?」

全員が時計塔を見る、静かに扉を開け佇むだけの時計塔
なのに恐ろしいほどの威圧感と存在感を際立たせる
頭上から、ガチリと、音が響いた
同時に鐘の音が辺りに響いた
ゴォーン、ゴォーン、と不気味に、何度も何度も

「なぜ…時計塔が動く!?」

白やんの驚愕の声
時を刻むことなく何年もその動きを止めていた文字盤の秒針がゆっくりと動き始めたのだ
ヤチャマルが何かに気づいたように叫ぶ

「なんだ…地面の下から物凄い気が駆け上がってくる…!?」
「おいおいおいおいおい!!!やべぇんじゃねぇのか!?」

ほろにがが叫んだ直後
開け放たれた扉から見える室内の床が盛り上がり砕ける
そしてそこから金色の光が噴出する
天井を砕き、螺旋階段の中央を貫く光の柱
時計塔の頂上にまで駆け上るその光は頂点で爆散し空へと散っていく
たちまち空には暗雲が立ち込め、雷を伴う激しい土砂降りを巻き起こした
雨に打たれながらなおも立ち上る光の柱を見てほろにがが呟いた

「…なぁ、ヤチャマル、気のせいかな
 上へと登っていった光が…俺には龍に見えるんだ…」
「龍が…雨を呼んだと言うのか…!?」
「一体何が起こってるというんだ…!!」

後ろで、誰かが湿った土を蹴り上げる音がした
咄嗟にヤチャマルが振り向くと、そこには苦しそうに身体を抑えてうめき声を上げならが雨に濡れ
ドブネズミのようになっているピュアがいた

「ピュア…お前、起きたのか!?」
「…抽出量を制御する装置が無くなって…
 龍脈を塞いでいた床も大破して…溢れ出している…!」
「何を言ってる…?」
「このままじゃ…、学園は…」

??/?? 黄龍降臨の間

『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

黄龍の鳴動、その身体がさらに巨大化して行く
同時に黄龍から感じる力の波動も増していく
勝ち目は無いかもしれない、それは俺もゆき兄も充分に理解出来ていた
人がどれだけあがこうと、巻き起こった"天災"の前には為す術も無いというのを痛感させられる
それでも諦めずに俺たちは黄龍の巨体から繰り広げられる攻撃を避けながら
隙が出来た瞬間を狙いゆき兄と同じ部分に自らの最大攻撃を撃ち込む

「黄龍冥撃夢幻黒蓮破!!」
「究極黄龍破邪滅閃…!?」

力が入りきらずに俺の攻撃が止まる
放たれたゆき兄の黒い波動は黄龍の身体に吸い込まれるように消える
思わず膝を突く、黄龍の鎧からは徐々に金色の光が消えていく

「たまゆらッ!」

ゆき兄が駆け寄ってくる
荒い呼吸を整えようとするが喉に異物が詰まったように上手くいかない
心臓の鼓動は裂けるように早く、心なしズキズキと痛みが走る
余りに巨体となった黄龍は狭いこの室内では上手く動けずに天井を破壊するように暴れまわっている

「…高橋との戦闘と俺との戦闘、そこに最大技の乱発だ
 気力、体力共にもうお前は限界だ」

確かに自分の身体が限界なのは自分が1番理解していた
しかし俺とゆき兄の2人の同時攻撃じゃないと黄龍にはダメージは与えられないんだ
倒れるわけにはいかない

「まだ…行ける…!」
「馬鹿言うな!とっくに限界なんだろ!」

俺はゆき兄の襟首を掴んで叫んだ

「俺がここでいなくなったら黄龍は倒せないじゃないか!!」
「お前が命を賭ける必要は無い!!これは俺の問題だ!!」

そう叫び返された
思わず、ゆき兄の顔面を殴りつけた
予想外の行動に避けれずに直撃して、その場に倒れこむゆき兄

「…まだ、命を賭ける必要なんて無いとか言ってんのかよ…」
「…」
「ずっと、戦ってきて、これが最後なんだ…これさえ終われば皆笑えるんだ…!
 ここまで来て自分一人の問題で片付けようするなよ!!
 俺だってもう覚悟をしてここまできたんだ!命を賭ける必要が無いとか勝手に決めるなァッ!!」

ゆき兄は黙っている、目を伏せて唇を噛んで何かを堪えるように
そして頭上で響く黄龍の咆哮が耳を劈く。
見上げると黄龍は体勢を整え終わりこちらへと向かって来ようとしていた

「まずいッ…!」
「たまゆら、もう1発だけ撃てるか」

ゆき兄が小さく呟き聞いてくる
俺は頷いた

「…チャンスは一瞬、口から体内に叩きこんで内側から吹き飛ばしてやる
 倒せはしなくても運がよければ再結集までに若干の猶予があるはずだ」
「わかった…!」

黄龍がその顎を大きく広げながらこちらへと向かってくる
鋭く、そのままでも充分武器として使えそうな牙がその存在を誇示している
伸ばした右腕にコツン、と音を立ててゆき兄の左腕が当たる
狙う場所はただ1点のみ、恐れるな、迎え撃て
この1撃だけは絶対に不発なんて格好悪いことにはさせない
今までで一番の威力の1撃にしてやるんだ、そう決意する

『ウォォォオオオオオオオオオオッ!!!』

黄龍の牙が寸前に迫る
全身を焼け焦がすような呼気、灼熱の空気
それでも決して目は背けない、決して可能性を見逃さないために!!

「今だたまゆらッ!!」

ゆき兄の声が耳に届いた瞬間に俺は掌に全ての想いを結集させる
小刻みに震える腕を押さえ込み、狙いを済ます
コンマ数秒の間を置いて、俺は叫んだ

「究極黄龍破邪滅閃双撃龍波ァァァ――――――!!!」

それに完璧に合わさったかのようなタイミングでゆき兄も叫んだ
俺と対になる最強の攻撃の名を

「黄龍冥撃夢幻黒蓮破ァァァ――――!!!」

放たれた光と闇、陰と陽
螺旋を描き、黄龍の口へと吸い込まれる
その力は圧倒的エネルギーの権化である黄龍の身体を切り裂いて行く
それを見届けると俺とゆき兄はまるで最初からそう決めてあったかのようにお互いにその場から離れた
光と闇の渾身の力の光弾は黄龍の身体の中心部で収束し爆発を巻き起こす

『オオオオオオオオオォォォォオォオオオオオオ!!!』

その雄叫びは痛みから来る絶叫なのか、それともまたしても得物に寸前で逃げられた怒りから来る絶叫か
黄龍の身体の中心がボコリと膨れ上がる
その丁度反対側もまた膨れ上がる
次から次へと黄龍の身体のあらゆる場所が膨れ上がる、それは体内で連鎖的に爆発が起こっていることを容易に連想させた
膨れあがった黄龍の皮膚はやがて伸縮の限界を越え、その一部に亀裂が走った
そこから溢れ出す金色の光、亀裂はどんどんその数を増やして行く

『器がァァァァァァアアアアアアアア!!!』

バァン!とまるで巨大な風船が爆発するような、音が周囲に響く
耳鳴りに襲われる俺の視界に映るのは辺りに吹き飛ぶ、バラバラになった黄龍の巨体
勝ったのか、俺たちは?
そう思ってゆき兄を見る、だけどゆき兄の表情は曇ったままだった

「…思った以上に爆散したな、今のうちに―――」

そこまでゆき兄が喋った時
突然、横の壁が爆発するように砕け散った
破片が黄龍の鎧に弾かれる、それよりも驚愕したのはぽっかりと壁に開いた穴からゆっくりと出てくる存在
土煙が薄れていき、俺の目に映る2度と会うはずもないと思っていた存在
究極の悪意、殺戮の王、醜悪なる者、その名

「我は、不死なる者…、ノスフェラトゥ…」

自らの目を疑った、完全に倒したはずのノスフェラトゥ、それがまたこうして目の前に佇んでいる
だがなぜかわからないが、前より数十倍の危険さを感じていた
その理由は白いはずのノスフェラトゥの仮面が誰かの返り血で真っ赤に染め上げられていたこと
黒いマントのあちこちにも血がべったりと付着して中には乾ききっていない部分まである
同様に鉤爪も深紅に染まっている
だけどそれだけではなく、雰囲気が明らかに前とは違っていた
本能が拒否している、こいつはここにいていい存在ではないのだと

「…なぜ生きているんだ…」
「恐れてなどいなぃ、憧れてなどいなぃ…
 誰が、誰がお前らなど恐れるか…」
「質問に答え―――」
「恐れてなどいない!!憧れてなどいない!!
 我は不死なる者!最も完全に近い存在!なぜ恐れなければいけない!なぜ憧れなければいけない!!
 完全になるんだ!完全に!誰にも何も言わせない!ヒャーハッハッハッハァ!!!」

こちらの質問に答えず、意味のわからない言葉を叫び、笑い狂うノスフェラトゥ
戦慄、あまりにも異質なその存在
そして理解する、ノスフェラトゥは今や完全に壊れていると
何があったのかはわからない、だが以前のノスフェラトゥから感じられていた余裕や人を食った雰囲気はもう微塵も感じられない
小刻みに震えながら自らの身をその鉤爪で掻き毟る、いや、削り取る

「俺はぁ…死なない…どれだけ血を流しても…どれだけ…身を削っても…
 なぜだ…なぜ死は俺に安息を与えない…!安息を永遠に奪われ…!
 なぜ闇の中で1人孤独に生きていかなければいけない…!?
 俺に教えてくれよ、教えてくれよ…なぁ!?」

ノスフェラトゥはこちらにその仮面を向ける
赤く血に染まった仮面、それは完全なる恐怖の具現
思わず唾を飲み込んだ、ノスフェラトゥは動かない、まるでビデオの一時停止のように微動だにしない
全く動いていないのに、声だけは響く

「あの小娘は言ったことなど…違う、違う、違う、違う、違う!!
 恐れるものか!俺は完全なんだ!!
 だから最終封印は俺の手で解けたんだ!俺が選ばれるべきなんだ!!
 この血は俺を馬鹿にした報いだ、報いだァァァァア!!!」

俺の横から、ゆき兄がノスフェラトゥに向かって飛び出した
一瞬だけ見えたその顔は怒りに満ち溢れていた

「きのこさんに何をした貴様ァァァァァァアアアアア!!!!」

怒号と共に、その拳とノスフェラトゥに向かって振りぬくゆき兄
避ける素振りも、受ける素振りも見せずに、ただノスフェラトゥはその拳を受け入れた
直撃した拳の威力がノスフェラトゥを激しく吹き飛ばし轟音と共に壁に叩きつける
壁が砕け、ノスフェラトゥの仮面の目の部分から血が流れ出す、まるでそれは涙のよう

「死ななぃんだ…これでも俺は…死ななぃんだ…!」
「なら死ぬまで殺してやらァァァァァァアアアア!!」

ゆき兄の追撃、壁に叩きつけられたノスフェラトゥへと向かう
ノスフェラトゥは動かない、だが呟いた

「ダクテュロス…」
「何ッ!?」

ノスフェラトゥの右腕が服を裂き、ほどけた
ゆき兄に向かい、鉤爪をつけた右手が物凄い勢いで飛来した
その爪は黄龍の鎧を貫き、ゆき兄の腹部に突き刺さった
信じられないといった顔でゆき兄は腹部に刺された鉤爪を掴み、顔を上げてノスフェラトゥを睨んだ

「…この技はッ…お前…スイカかッ…!?」

確かにあの技は自ら作り出した虫を体内に寄生させていたスイカだけが使える能力
だけど、なんでスイカが…

「小川と、ピュアだけだと思ってたんだが…な…
 いつの間に、スイカにまで…」
「お前は、俺の不死の秘密を解いているのかぁ…?」

不死の秘密…?
その言葉に疑問を抱いているとゆき兄は不適に笑っていた

「…お前は特定の身体を持たない…いわば人に取りつく意識生命体なんだろ…
 そのために対象には仮面を被らす必要があるんだろ…」
「よく気づいたな…そうだ…それ故に俺は死なない…死ぬことが出来ない…」
「なら…話は簡単だ…」

それだけ言うとゆき兄は自らの拳で腹部に突き刺さっていた鉤爪を上から叩きつけた
鋼の砕ける音がして砕けた鉤爪がバラバラと散る

「何度でもその仮面を砕いてやる!」
「ダクテュロス…」

ノスフェラトゥの両腕がほどけた
駄目だ、いくら黄龍の力を発動してるゆき兄といえどあの量は…!
助けに行こうとしたが身体に上手く力が入らない
膝が笑い、その場から動けない、俺の身体は思った以上に限界を通り越していたのかもしれない
それを自覚した時、足から力が抜けてその場にへたり込む
同時に黄龍の鎧がただの黄龍鉄甲へと戻って行く
無数の触手がゆき兄に襲いかかる
ゆき兄は後ろに飛び退き距離を取って両手を構えた

「まとめて焼き尽くしてやるッ!!
 黄龍冥撃夢幻こッ…くッ…!?」

ゆき兄の膝がガクンと地面についた
同時に身体を覆っている黄龍の鎧がパラパラと宙に消えて行く
俺と同じだった、ゆき兄の身体もとっくに限界を通り越していたんだ
完全に無防備になってしまったゆき兄にノスフェラトゥの触手が一斉に襲いかかった
1本が身体に巻きつき、右腕、左腕、左足、右足、そして首と順に次々と触手が身体に巻きついていく
そのままゆき兄の足が地面から離れ宙に浮く

「グゥッ…!くそッ…離せッ…!!」
「お前を殺せば、俺は、完全に近づけるのか?
 なぁ教えてくれ、教えてくれよぉぉぉ…」
「がっ…あぁぁ…!!」

ゆき兄の表情が苦悶に満ちる
金魚のように口をぱくぱくさせているのはきっと上手く呼吸が出来ないから
触手によって全身を締め上げられてるようで、身体全体が痙攣している

「ゆき兄ッ…ぐっ…」

立ち上がろうとする足に痛みが走り、その場に倒れこむ
このままじゃ…ゆき兄が…!

??/?? 時計塔

「時計塔をぶっ壊せって正気か!?」

ほろにがは驚愕の表情でピュアにそう問うた

「正気だ」

問いに対し、ピュアは迷い無く答えた
時計塔を破壊するというとんでもないことをさも当然と言うように
あまりにもさらりと言い放つもんだから反論しようとしたほろにがは何もいえなくなる
そこにヤチャマルが意見する

「…確かに異常な事態だが、壊すとなると…」
「いや、壊すといっても地下の穴を塞げばいいんだ、それだけである程度は抑制が効く
 とにかく時間が無い、暴走した力がここまで溢れ―――」

背後から爆音、無数のガラスが一斉に割れていく
幸いガラスがほろにが達に降り注ぐことは無かったが
それだけで少なくとも時間が無いということだけはその場にいた全員が理解した
白やんがきのこさんをそっと地面に降ろし、つぶやく

「信じよう、時計塔地下の穴を塞げばいいんだな?」

それを聞いたほろにがが腕をぐるぐると回し始めた

「しゃーねぇ、どうせこの学園からもそろそろおさらばだ
 最後のサービスだぜ」
「これほどの量の気を放置してたら何が起こるかわからんからな
 ただ問題は力の噴出を続ける穴をどうやって塞ぐか…」

口元に手をあて考え込むヤチャマル、それをほろにがはニヤニヤと下から覗き込んで笑う。

「らしくねぇなぁ?悩むなんて…
 俺らなら噴火してる火山の火口を塞ぐぐらい楽勝だって」
「一体その自信はどこから…」
「まぁとにかく行こうぜ、行って考えよう
 …って、あれ?生徒会長は?」

ほろにがが辺りを見渡すと白やんはさっさと時計塔の中に入って行こうとしていた
一瞬だけ振り返りほろにがとヤチャマルに向かって喋りかける

「置いてくぞ」
「おい、待てよォ!」

慌てて後を追うほろにが
1人残ったヤチャマルはピュアに向き直った

「お前はここで待っていろ」
「しかし…」
「大丈夫だ」

ただそれだけ行ってピュアの肩を叩いてヤチャマルも時計塔へと飛び込んだ
目指すは時計塔地下の大穴
龍脈の気を吸い上げるための、どこまでも深い穴を塞ぐために
時計塔の中に飛び込んだ3人がまず感じたのは空へと昇りきらずに残留している爆発的な龍脈の気

「うおっ…んだこりゃ…何もねぇのに…
 気を抜いたら押し潰されちまいそうだ…!」

それを感じているのはほろにがだけじゃあなかった、返事こそしないものの白やんもヤチャマルも同じ状態だった
足を1歩踏み出すのですら何百という重りをくくりつけているかのような鈍さ
少しでも気を緩めた瞬間、外に叩き出されてしまいそうな空気
辺りのコンクリートは真っ黒に焦げついている

「それで…どっから地下にいけるんだ…!?」

白やんが指差した場所、壁際の地面に人一人がやっと入れそうな穴があった
鉄で出来た梯子が地下へと続いている
穴には蓋がかぶせてあったような感じだが下からの強い衝撃で蓋はどこかに吹き飛んでいる

「先に行くぞ…」

白やんが呟いて穴へと向かい、梯子を使わずにそのまま身体を滑り込ませて飛び降りる
続いてヤチャマルも同じように穴へと飛び降りる

「待てよ、俺も…っギャァァァァァァアア!!」

ほろにがも飛び降りたが2人より体格が良かったせいで
穴の淵に思いっきり背中をこすり叫び声を上げながら盛大に落下した
見事に尻から落下し、これ以上ないぐらいに口を大きく開けて声にならない声を漏らす

「恥骨がッ…恥骨が複雑骨折ッ…」

のたうち回るほろにがを意にも介さず白やんとヤチャマルは金色の光を吹き上げる穴へと近づく
弱まり、強まり、また弱まり、また強まる、そのサイクルを繰り返す金色の光の噴出
しかし決して止まることはなく永続的に空へ向かい続ける光の柱
圧倒的エネルギー量、止める方法を2人は考えていた
これほどの噴出力だ、適当に塞いだとしてもすぐに破壊されてしまうだろう

「…気というのは専門外だな…
 ヤチャマル、どうすればいい?」
「どうすればいいと言われても…」

考え込む2人をよそにほろにがは辺りを見渡しながら尻をさする
相手にしてもらえずスネたようにポケットからタバコを取り出し口に加えて火をつける
煙を吐いていると不意に身体がぶるっと震えた
困ったように視線をあちこちに向けてタバコを加えたまま大きな機械の物陰にこっそりと移動する
そこでしばらくゴソゴソと動いた後に機械に向かって静止する

…じょろじょろじょろ…ちゃぱぱぱぱぱ…

「ふぅっ…」

斜め上を向いて恍惚とした表情でタバコをふかすほろにが
足元には黄金河が出現していた
そこに、パチリと火花が散った

「あん?っと…」

疑問を口にした瞬間、ポロリとタバコが落ちた
ゆっくりと落下するタバコが自らの排出したものに触れた瞬間
目の前の機械に青白い電撃がバチリという音と共に走り、炸裂した

「ほげェェェェェエ!!!!あだっ、んぎゃっ、ぐげっ、だぉぅッ!!」

後ろにぶっ飛び、地面に叩きつけられ、叫び声を上げながら転がるほろにが
爆発音とほろにがの叫び声に驚いたヤチャマルと白やんが振り向くと
下半身丸出しでうつぶせに倒れているほろにが、その頭の先に激しく鳴動しながらバチバチとスパークしている機械があった

「お前何やったんだよ!?」
「ななななな、何もしてねぇよ!?」

そう言いながら必死にパンツとズボンを上げるほろにが
ほろにがは思っていた「この役回りは明らかに剣三郎なのに」と
まるでほろにがには興味がないようにガタガタと動く機械を見ていた白やんが呟く

「…嫌な予感がするぞ…!」

??/?? 黄龍降臨の間

「ゲホッ…ガハッ…」

地面に四つんばいになったゆき兄が喉を抑えて咳をする、首元には締め付けられた後が痣となって残っている
ノスフェラトゥがゆき兄を完全に絞め殺そうとした時、部屋の中心に巨大な金色の光が集合した
それは咆哮と共に、龍を象る
爆散した黄龍の力がその意志によって姿を取り戻した
それを見たノスフェラトゥは突然ゆき兄から全ての触手を離した、それでゆき兄は落下し床に叩きつけられた

「大いなる物…俺に…完全なる…
 俺を、完全に…」
『器はどこだァァァァァァァァァアアアア!!』
「俺を完全なるものにィィィィィィィイイイ!!!」

黄龍と、ノスフェラトゥの互いの絶叫が入り混じる
互いの声が聞こえてないようにただ叫び続ける獣が2匹
やがて黄龍が、動けなくなっているゆき兄を視認したようだった

『そぉこぉかァァァァァァアアアアアアアアア!!!!』
「ゆき兄ッ…避けろッ!!!」

俺が叫び、ゆき兄が動くよりも早く
ノスフェラトゥが先に動き出した、繰り出されたノスフェラトゥの足がゆき兄を真横に吹き飛ばし壁に叩きつける
黄龍の直線状に、ノスフェラトゥが舞い上がった

「ヒャーハッハッハッハッハッハッハッハァァァアアア!!!!!」
『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

ノスフェラトゥの身体に、黄龍が直撃した
黄龍はまるで吸い込まれるようにノスフェラトゥに吸収されていく
爆発的なエネルギーが、ノスフェラトゥの身体の中に入り込んでいく
もう黄龍の咆哮は聞こえない、ただノスフェラトゥの笑い声だけが響き渡る
やがて黄龍の巨大な身体がノスフェラトゥの身体に完全に吸収される
バキバキと、異音を響かせながらノスフェラトゥの仮面に亀裂が走り始めた
仮面が、割れる

「ヒャーッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!
 取り戻した!俺は取り戻したんだぁぁァぁぁぁあああああああああああああああ!!!!
 あぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

呼応するかのように、仮面が砕け散る
その下から出てきた顔、創造主の力を与えられし生徒会が1人

「スイカァァァァァアアアア!!」

スイカは俺の声など聞こえていないように腕を震わせながら自らの顔にその手で触れる
そのまま頭を抑えてうずくまる

「何を、俺は、何をしていた…
 あの仮面の男は、俺に何をした…!あの仮面は…俺自身…?
 グブッ…!?」

うずくまったスイカの身体がビクンと大きく跳ねた
大きく反り返るその上半身、えび反りになった身体がビクビクと震えている
何だ、何が起こっているんだ?

「あぁぁ…望んでいない…そんなの望んでいない…
 俺はただ…ただ…自らが理想とする幸せを…求めていただけなのに…!
 届かない、どれだけ手を伸ばしても…!心を殺し…人を蔑み…それでも届かない…!
 俺は踏み台なんかじゃ…」

スイカが震える腕を宙に伸ばす、その指は何かを掴もうとするように、決して届かない物を求めるように
その目から、一筋の涙が流れた

「踏み台なんかじゃないんだァァァアアアアアアアアアアア!!!!!」

叫び声と同時に、スイカの胸が大きく縦に裂けた
首元から下腹部まで大きく、とてつもない量の鮮血をぶちまけながら
大きく見開かれたスイカの瞳に自らの血が降り注ぐ

「嫌だ、あぁぁぁぁあぁぁ…!」

グジュリと嫌な音を立て大きく裂けたスイカの傷口が盛り上がった
そこから何かが飛び出すように生えてくる
それは鮮血を滴らし、ドクドクと脈動する赤い肉の塊のような…
肉の塊が物凄い勢いで傷口から噴出し、さながらそれは塔のように聳え立つ
塔、違う、これは…
グジュグジュと水気を含む音を立てながらその頂上が8方向に裂けていく
まるで、花のように、蕾がゆっくりと開くかのごとく
その中心に胎児のように丸まっていた何かがゆっくりと立ち上がる
何かは、開かれた花弁より飛び降りた

「ククッ…俺は…これで完全だ…!!
 身まで手に入った…もはや何者も俺を止めることは出来ない…!
 人が一生とかけても得られぬ叡智と、力を!俺は手に入れた!手に入れたぞォォォォォオオ!!!」
「お前は…ノスフェラトゥなのか!?」
「んん?」

振り返ったノスフェラトゥ、その顔に仮面は無い、その身体にはボロ布が巻きつけられていた
ジッと俺を見つめたノスフェラトゥが言う

「思い出したよ、たまゆら…
 俺とお前は会っていた…60年前…あの全ての始まりの日に…!
 なんという因縁だ…」
「60年前…?」
「わからないか…?
 完全なる者と迎合した私は本来より著しく若返ったから無理も無いが…
 なら、これでどうだ?」

ノスフェラトゥの顔がグニャリと歪んだ
そしてその顔が、いつかどこかで見た、顔となる

「お前はッ…!?」

記憶の中にあるその顔、今より60年前の時で見た顔
必死に記憶を手繰りよせ、思い出すコイツの言葉

「君がここに来るのはわかっていた
 だから少し罠を貼らせてもらった」
「私は悲しいよ、風太君
 優秀な研究員であった君ならばこの計画の素晴らしさが理解できたはずだがね」
「生きた人間を使った実験などは道徳的には禁じられるべきものだ
 だが本音は医者だって科学者だって果ては軍隊までそういった実験を行いたいんだ
 ここはそんな欲望を代わって叶える場所だ」
「我々がいなくともいがみ合いは続く、それが人の業だ
 それにお前がここに至るまでに殺した研究員にも家族がいる者はいたのだぞ?」
「馬鹿が…もう止められんぞ…
 完全なる不死の人間になる予定だった者たちはもう自我も何も無い
 肉を喰らい、血を啜るのみのただの闇に堕ちた人に成り下がるぞ!!!」


思い出した言葉と、風太がコイツに向かっていった所長と言う言葉
まさか、こいつは…?
ノスフェラトゥの顔がまた歪み、元の若い顔と化す

「思い出したか?」
「お前は…まさか」
「俺は、七三一部隊隊長、外道…
 龍脈の気を使い不老不死の兵を生み出そうとした我らは風太の裏切りによって
 暴走し逆流した機械に巻き込まれ…不完全な不老不死、闇に生きる堕人と化した
 全ての七三一部隊は堕人となり大半の記憶すら失い、永遠の闇の中でもがき続けることになった…
 黄龍が目覚めるまではな…」
「堕人は…七三一部隊だった奴ら…?」
「だがまぁ…俺は最早堕人ではない…
 黄龍と迎合を果たした…完全なる存在だ、あまねく大地を血に染める…
 のうのうと我らの苦しみの上で生き続けた全ての命を滅ぼす!!」
「…ッ!ただの逆恨みじゃねぇか!!」
「ヒャハッ!ヒャァハッハッハッハッハ!!」

笑い出すノスフェラトゥ、否、外道
ひとしきり笑った後にこちらに歩み寄ってくる
目の前まで来た時、顔を近づけて呟く

「恨みとは全ての人間が抱えて生きる物
 恨みに正当な理由が必要だと誰が決めた?所詮この世界は不条理…
 人は皆不可避の罪を抱える、そして逆恨みだとしても身を焼け焦がす憎悪の念は止まる事は無い
 なぜだかわかるか?たまゆらよ?」

その問いには答えずに俺は顔を背ける
血のように赤いその口を見たくはなかったら

「野心、憎悪、憤怒、狂気、欲望、そして絶望…
 それもまた、人を動かす心の力だからだよ…
 恨みを支えに生きている人間もまた数は少ないが確実に存在するそれは決して覆せない
 生まれ持った人の弱さ、そして同時に強さでもある」
「何が言いたいんだお前は!?」
「俺を動かすのは、全てに対する恨み、憎悪だ
 もう否定もしない、俺はお前達がうらやましく、そしてどうしようもなく憎らしかった
 だからこそ、壊す、お前達を、いや、世の命を全て、俺の手で血に染める
 ヒャハッ…ヒャハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

また、笑い出す、けたたましい笑い声が耳元で響き渡る
その時気づく、僅かだが俺の身体が回復してることに
だが究極黄龍破邪滅閃双撃龍波を撃てるとなると…1回…
黄龍には効かなかったがコイツになら…
外せばいよいよ撃つ手が無い、ゆき兄ももう動けるような状態ではない
それでもうなだれているだけじゃ、確立は限りなく0に等しい
やるしかない…やるしかないんだッ!
笑い続ける外道、今なら黄龍発動と同時に放てばほぼ零距離で全て叩き込むことが出来る
チャンスは今しかないッ!!

「目覚めろッ――!黄龍ッ!!!!
 究極黄龍破邪滅閃双撃龍波ァァァ――――――!!!」
「おっ…!?」

一瞬だけ聞こえた外道の驚く声
その声はすぐに射出されるエネルギーが巻き起こす爆音に飲まれた
ゆき兄の時のように弾かれてる感じも黄龍に攻撃した時のように力を飲み込まれている感覚も無い
完全なる直撃、いけるか!?

「ヒャーッハッハッハッハッハッハッハ!!!!
 効かねぇ効かねぇ効かねぇッ!全ッ然効かねぇよッ!
 そんなものかたまゆらぁッ!?」
「そんな…!?」

間違いない俺の放つ攻撃は外道の身体に直撃し、身体を焼け焦がし、駆け巡るエネルギーが全身を噛み砕いているはずなのに
それなのに外道は笑い声を上げながらその場に立ち尽くしている

「うぉぉぉおおおおおおお!
 黄龍冥撃夢幻黒蓮破ァァァ――――!!!」

外道の右から向かってきた、黒いエネルギーの奔流が外道に直撃する
ゆき兄、もう回復したのかよ、さすがじゃん!!

「ヒャーッハッハッハッハッハ!どうした!?
 アリに噛みつかれてるぐらいだぜ!?こそばゆいぜぇ!?」
「うぉぉぉぉぉぉおおお!」
「ぐぅぅううううううううう!」

放つエネルギーが更に増大する、ゆき兄の放つ黒いエネルギーも恐ろしく出力を上げている
常人ならば触れた瞬間に骨も残さず蒸発するんじゃないかと思えるほどのエネルギー
それが2つ分直撃しているにも関わらず平然と笑い声を上げ続ける外道
やがて外道がエネルギーに晒されながらもゆっくりと動き出す

「闇の中で、記憶を失い、彷徨い続ける地獄…
 ただ募るのは生者に対する憎しみのみ…
 お前らの力がどんなに強くても、俺の憎悪は止められない、絶やすことなど決して不可能だ!!」

外道の右手が、俺の射出しているエネルギーを掴んだ
そして左手がゆき兄の射出しているエネルギーを掴んだ
それとほぼ同時に身体から黄龍の力が抜けていく
ゆき兄の身体から立ち上る黒い炎もすでに無くなりかけている
若干のラグはあったものの俺とゆき兄はほぼ同時に黄龍の力を失った

「くはっ…!」
「くっそぉ…!」

外道の笑い声が更に大きくなる
その両の掌、右手には金色のエネルギーの塊、左手には黒色のエネルギーの塊

「消えろ!!消えろ!!消えてしまえ!!!
 俺以外の生命は皆消えてしまェェェェェェエエエエエエエ!!!!」

2つのエネルギーが、発射された
目の前を、埋め尽くしていく金色の光
それに飲み込まれた時、発狂するかのような痛みすらも軽く凌駕する痛み
叫び声をあげているのかいないのか、生きているのか死んでいるのかすらもわからない
肉が焼け焦げ、引き裂ける、内臓が潰れていく、骨が粉々に砕かれていく、あらゆる痛みが断続的に全身にくまなく襲いかかる
だがそれもすぐに終わった
視界が真っ暗になり、激痛が遠のいていく
それは嬉しいことなんだが、どうしようもなく、寒い…

「そうだ!!命の終わりこそ俺がずっと憧れて!!憎悪した!!
 俺が望んでいたのは、終わりだ、終わりなんだ、終わりだぁァァァァァアアアアアア!!!」



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最終更新:2009年12月03日 09:07