~ゆき兄キャッスル1階玄関ホール~
民「…酷いな」
民「えび助…天君…神楽君…腹筋…ちゅるやさん…」
民「ゆき兄は…?」
民「探すんだ」
~ゆき兄キャッスル3階玉座~
キ「ゆき兄…」
民「キノコさん!おい!皆、キノコさんが生きてるぞ!」
キ「え?」
民「ゆき兄は…?」
キ「消えちゃったよ…」
??「リベラ・メを発動させおったか…」
民「誰だッ!?」
??「消え去った、馬鹿者はワシの孫だよ」
キ「え?」
爺「人の上に立つ者にしかわからぬ苦悩を知って
ようやく、あいつも自分の見ていた夢から覚めたか…」
民「だけど…ゆき兄はもう…」
爺「諦めるのはまだ、早い。
皆の思いを束ね、馬鹿者をリベラ・メより解き放て」
民「できるんですか?」
爺「どんな時代も何かを変えるのは、良い悪いに関わらず
人の想いだ、想いが強ければ、必ず奇跡は起こる」
民「…」
全員が床に膝をつき
祈りを捧げる
爺「リベラ・メよ…想いを宿し黄泉路へと旅立つ命を今一度現世へ!」
リベラ・メがガタガタと震えだす
民「ゆき兄…」
民「ゆき兄…戻って来い…!」
キ「ゆき兄!」
ピシリ…とリベラ・メの刀身に亀裂が走る
その瞬間、リベラ・メの周りの空間が歪み、裂け
まるで異物をが吐き出されるかのように
そこから光の粒子が噴出する
爺「よし!抜けた!」
粒子は集まり、人の形を為す
俺「か…はっ…」
キ「ゆき兄!」
民「やった!ゆき兄が復活したぞ!」
民「やったあああ!」
満面の笑みを浮かべる全員に反して
たった1人だけ、暗い顔をしていた
俺「爺ちゃん…」
爺「あの世はどうだった?」
俺「この…馬鹿野郎ッ!!」
俺は渾身の力を込めて
自分の祖父の顔面を殴った
爺「ぬおっ!」
民「落ち着け!ゆき兄!どうしたんだよ!」
皆に取り押さえられても
俺の怒りは収まらなかった
俺「何で俺なんだよ!俺だけじゃ意味ねぇだろ!!
リベラ・メを使えば他の奴等を生き返らす事だってできただろうが!!」
爺「この馬鹿がッ!」
爺ちゃんの蹴りは取り押さえられていた
俺の顔面に容赦無く炸裂する
俺「げはっ…」
キ「ちょ…こんなときに喧嘩なんか…」
俺「駄目なんだ…リベラ・メで復活させる事ができる死人は…
1人だけなんだ…」
民「え?」
俺「何でこいつらにそれを言わなかったんだよ!!
答えろ!クソジジイ!!!!」
爺「…言えば、誰を復活させるかで皆の意見が分かたれたろう…
全ての想いを束ねなければ死人の復活は成功しない…」
俺「皆を騙してまで、何で俺を生き返らせた!!」
爺「…どんなに嫌われようと…お前はワシの孫なんだよ…」
俺「…」
沈黙が、玉座を包む
長い沈黙を破って、放たれた言葉。
俺「…誰か…死んだ奴らをここに…」
民「え?」
俺「頼む…」
民「あ、ああ…」
数分後、玉座の間に
高橋、腹筋、黒翼天、ピュアハート、ゆき、ちゅるやさん、
えび助、天下、神楽…そして、外道、小川、剣三郎、トンカツが並べられた
俺「…リベラ・メを…こっちに…」
爺「何をする気だ…?」
俺「…頼む…一生のお願いだよ…爺ちゃん…」
爺「…馬鹿者が…」
俺はリベラ・メを構え全員の前に立つ
俺「最後の俺の心からのお願いだ」
俺「ここにいる全ての奴等の復活を」
俺「心から願ってくれ」
俺「お願いします。」
俺は、深く頭を垂れて皆にそう言った
民「ゆき兄…」
キ「ゆき…兄…」
民「トンカツ達も復活させる気か?」
俺「誰も悪くないんだ…結局全ての元凶は俺なんだ…
だから…皆お願いします…」
キ「わかった…」
民「わかったよ、ゆき兄」
民「願うよ、皆の復活を…」
俺「ありがとう…」
俺は皆の前に立ち
リベラ・メを掲げ、静かに歌いだした。
俺「神の子羊、世の罪を除いて下さる主よ、」
俺「彼らに安息を与えてください。」
俺「神の子羊、世の罪を除いて下さる主よ、」
俺「彼らに永遠の安息を与えてください。」
俺「永遠の光が、主よ、彼らの上を照らしますように。」
俺「あなたの聖徒たちとともに永遠にあらしめてください。」
俺「主は慈しみ深い方でいらっしゃいますので。」
俺「永遠の安息を彼らに与えてください、主よ。」
俺「そして絶えざる光が彼らの上を照らしますように。」
爺「…!!お前まさか!」
リベラ・メに亀裂が走って行く
ビシ、ビシと音が響く、亀裂から神々しいまでの光が溢れ出す。
俺「何かを得ようとする時には…必ず何かを失う必要がある…」
俺「それは…絶対に変える事はできない…」
俺「1を捨て、10を生かす…」
俺「絶対に捨てなきゃならない1なら俺が補ってやる!!!」
俺「リベラ・メよ!!黄泉路へと旅立つ13の魂を今一度現世に呼び起こせ!!」
俺「タダとはいわねぇ!!お前の力がたっぷりと入ってるこの命を…!
使いやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええ!!!!」
爺「止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!」
キ「!? ゆき兄ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいい!!」
民「ゆき兄ぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいい!!」
リベラ・メの剣先を
深く、深く、胸に突き立てる
俺「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
リベラ・メから溢れる光はその量を増していく
流れ落ちる血はリベラ・メを奮い立たせる
しかし…
俺「な…!?」
リベラ・メから放たれる光は少しずつその強さを弱まらせていく
俺「…駄目なのか…!?俺の命じゃ…足りないのか!!」
爺「やれやれ…やっぱりお前にはまかせておけんの…」
俺「爺ちゃん…!?」
キ「私も…!」
俺「キノコさん…!?」
民「俺もやる!」
民「私もやる!!」
民「俺だってやるぞ!!」
民「ゆき兄だけに任せてられるかよ!!」
爺「皆、リベラ・メに血を!生きる者の証を!」
各々が、指や、腕に、小さな切り傷を作り
リベラ・メの刀身に血を垂らす
呼応するかのようにリベラ・メの光は激しさを増す
俺「リベラ・メェェェェェ!!
生けとし者の証を受けて!!今一度魂の輝きを呼び覚ませ!!
今こそ黄泉路に旅立つ13の魂を再び現世に呼び戻せぇぇぇぇぇぇ!!」
全てを覆い隠すほどの閃光が起こり
宝剣リベラ・メはその光と共に粉々に砕け散る
全員がその衝撃に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる
俺「がっは…!」
爺「ぬうっ…」
キ「きゃ…」
民「うお…」
衝撃が過ぎ去り
最初に動いたのは…
え「…あれ…?」
え「…あれ?あれ?俺…何で…?」
次に動いたのは…
黒「え…?」
黒「あれ…俺…胸に傷が…無い…」
次々に起き上がる
神「…何で生きてんだろ…」
天「地獄の王に嫌われちまったのか?」
ゆ「何かよくわからんけど助かった…」
腹「…傷が…無い」
ち「にょろ?」
ピ「う…!高橋!?高橋は?」
高「ちゃんといるって…」
皆、何が起きたかわからない感じでゆっくりと起き上がる
キ「皆!ゆき兄が…」
全員「ゆき兄!?」
俺は、胸から大量の血を流しながら
壁に背を預けて倒れこんでいた
高「ゆき兄…!」
神「何で…」
爺「お前達を復活させるために…自らの命を使いおった…」
ち「ゆき兄…勝手にそんな…ひどいっさ…」
え「かっこつけすぎだろ!!何やってんだよ!!」
腹「起きろよ!!なぁ!!」
爺「もう…リベラ・メも消え去った…ゆき兄の復活は…無い…」
ゆ「…」
黒「ちくしょおおおおおおお!!
何で最後の最後で自分1人が犠牲になるんだよ!!」
天「なんで…ゆき兄1人…死ななきゃなんねーんだよ…」
ピ「自己犠牲が美しいなんて…後に残された奴の事を考えてみろよ!」
高「お前のようなチェリーボーイはまだこっちで勉強しなきゃいけねーんだよ!
勝手にリタイアしてるんじゃねぇよ!!」
民「…ゆき兄…」
小「お前等ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
全員「!?」
小「全員ゆき兄の後を追わせてやるぁぁぁぁぁぁ!!」
ピ「てめぇ!!もう1度あの世に送られてぇのかぁぁぁ!!」
小川を止めたのは、ピュアハートじゃ無かった
小「!?」
ピ「!?」
トンカツだった
ト「…もう…いい…小川…」
小「どうして…」
剣「…」
外「ゆき兄…」
ト「彼は…私の全て赦すと言った…」
剣「憎むことは簡単にできても…赦す事はとても難しい…」
ト「…最後の1撃よりも…今まで受けたどんな攻撃よりも…
あの言葉が…私の身を切り裂いた…」
小「…」
ト「そして今…彼は…己の命を使ってまで…
敵である…私達をも…救った…」
剣「…強いな…ゆき兄は…」
ト「私の…負け…ね…」
え「勝手な事を抜かすな!結局ゆき兄は死んじまったじゃねぇか!!」
ト「…まだ…手が無いわけじゃないわ…」
高「何?」
ト「リベラ・メは想いを形にする神具…
例えそれが砕け散っても…想いが奇跡を起こす事に変わりは…」
剣「願え!ゆき兄の復活を!」
外「そうだ!まだ間に合う…!諦めるな!!」
え「死に行く運命に身を委ねてるだけじゃ駄目なんだ!!
抗って逆らって泥だらけになっても!ゆき兄を生かすんだ!」
民「生きろ!ゆき兄!!」
全員「生き返れ!!ゆき兄!!!!!」
~虚空の果て~
俺「………」
俺「本当は死にたくなかったんだろ?」
俺「…俺だけが生き残るよりかは…マシだ…」
俺「周りは真っ暗だろう?その闇が永久に続くんだ…」
俺「…」
俺「普通の死に方じゃない、お前はリベラ・メに魂を捧げた
リベラ・メが砕け散り、お前の魂は永久に此処を彷徨う」
俺「…」
俺「自己犠牲は、裏を返せば只の自己陶酔だ…」
俺「何も自分だけが犠牲になることは無い…」
俺「他人の食べる物より自分の食べる物の方が大切なんだよ…誰だって…」
俺「何が…違う?」
俺「自分の食べる物と…他人の食べる物…そこに何の違いがある?」
俺「…」
俺「自己犠牲が只の自己陶酔だったとしても…
それで救われる人がいるなら…意味はあるんじゃないのか…」
俺「なぜ、お前だけが、貧乏くじを引かなくてはならない?」
俺「…それは…」
俺「それは?」
俺「あ…」
俺「答えろ!!」
俺「…こういう事じゃないかな」
闇に光が射す
光は次の光を呼び、闇は光で満たされる
「戻って来い!」「俺達を追いて逝くなよ!!」
「お願いだよ…」「ゆき兄ぃぃぃぃ!!」
俺「な…」
俺「例え、全てが偽善で、只の自己陶酔に過ぎないとしても
それで誰かが救われたのなら、必ず想いは届くッ!」
俺「…それが…お前の答えか…」
俺「俺だけじゃ出せなかった答えだ」
俺「…お前はこれからもそれを続けるのか…?」
俺「俺は弱い人間だからな、助けを求める人間を…放って先に進むなんてできないよ…」
俺「その甘さは…いずれお前の身を蝕み…滅ぼすぞ…」
俺「誰かを見捨てて、ずっと後悔の念に囚われて生きるよりかはマシだ
俺はそれに耐えられるほど強くはない…」
俺「後悔…するなよ…」
俺「人生に絶対に後悔しない道なんて無い」
俺「…お前はトンカツを本当に赦せるのか…?」
俺「赦す赦さないじゃない、誰もが自身の夢を掴もうと必死なんだ…
夢や希望、不安や絶望の種類は千差万別で、そこに善悪を求める事自体が間違いだ」
俺「俺がトンカツをも救ったのは…
そうすることで奪い合い、傷つけ合うようなくだらない世界は変わる可能性を見出したから…」
俺「そうか…」
俺「誰かを憎んだり恨んだりするのは…別に恥じる事じゃない
生きてりゃ必ず…起こるさ…どんな聖人でも」
俺「…」
俺「俺は…ずっと自分の汚い部分から目を背けてたよ」
俺「今さら…」
俺「ごめんな…」
俺「…!」
俺「お前も…俺なんだ…お前無しじゃ…俺は俺じゃないんだ…」
俺「絶対的な正義、絶対的な悪…そのどちらも行き着く先は…滅びだ…」
俺「2人なら、大丈夫だと。思わないか?」
一瞬、果てしなく広がる草原を見た気がした。
~ゆき兄キャッスル3階玉座~
キ「ゆき兄が…光ってる…」
爺「己の闇を…退けた時…魂は光り輝く…」
高「もう1度…願うんだ…今度こそゆき兄に届くはずだ…」
全員「ゆき兄…!」
想いは、奇跡を起こす
砕け散ったリベラ・メの欠片はなおも光り輝き
街の明かりに掻き消された本当の星空の美しさを呼び覚ますッ!
星の数ほどの人の想いが集まり、惑星と成り世界を作るッ!
奇跡を起こすは、いつの時代も奇跡を信じた人が起こすッ!
光は収束し、傷を満たし、抜け殻に命を与えるッ!
高「今!奇跡は起こる!!」
全員「戻れ!ゆき兄ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
パシンッ!と光が弾け飛ぶ
粉雪のように、散り、空に溶ける。
黒「駄目なのかッ!?」
爺「…」
キ「ゆき兄…」
民「…くそぉ…」
絶望が玉座を覆い、誰もが言葉を詰まらせる
静寂を切り裂いたのは
誰もが待ち望んだ、言葉
俺「…ただ…いま」
この後も、あらゆる絶望や、困難が待ち受けるだろう
人生の最良の選択肢は存在せず
どんな道を選ぼうと、そこには後悔の念が圧し掛かる
弱者が自らの弱さを誇示し、救われた気でいるのは
強者と同じ世界観を共有しているから
だけど、もう俺は弱者として生きる事は許されない
…いや、弱者だとしても…
百の力を持つ強者に立ち向かう事があっても…
…俺は…一人じゃないじゃないか…
そして、迎えてくれる優しい言葉
俺が、待ち望んでいた言葉が
全員「おかえり!」
~fin~
最終更新:2009年10月31日 18:38