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邪眼探偵ゆき兄捜査1【何でも屋】


※この話は一種のパラレルワールド的な物です。
 ありえねーだろこれはという部分があっても深く考えずに読みましょう。


「ああ、もうこんな遅くなるとは思わなかった…」
バイトが長引いてしまい、すっかりと深夜になった道を歩く男が1人いた。
男の名前はショックといった。
誰もいない深夜の道は考え事をするのには丁度いい。
しかし我に返り自身を覆う闇を認識した時に恐怖感が生まれる。
ショックも最初は明日の予定などを考えていたがふと考え事が止まった時に闇を認識した。
「…」
自然と早足になり、家までの道のりを歩く。
こういう時、人間は不安が不安を呼び、ネガティブなイメージを沸き立たせる。
振り向いて後ろに幽霊がいたりしたら?ナイフをもった男がいたら?
「馬鹿馬鹿しい」
そんなこと普通に考えればあるはずはない、可能性が無いとは言い切れないがそれは宝くじに当たるぐらいの確立なんじゃないだろうか
そうは思うものの1度気になってしまうとどうしても振り切れないのが人間の性だ。
ショックは振り返って見る。
何も無い、ただ今まで歩いていた道がポツポツと街灯に照らされてるだけだった。
「そりゃそうだよな…」
再び前に向かい歩き出した時に後ろからコツ、と足音が聞こえた。
驚いてまた振り返る。何も無い。それでも不安は無くならない。
聞き間違いじゃなく、確かに聞こえたのだ。
しかし振り向いても誰もいない、まるで怪談のようだ。
ショックは走り出した。この角を曲がれば大通りに出る。そこまで行けば安心だと自分に言い聞かせて。

だけど彼は大通りに出ることは出来なかった…










翌日、大通りから少し離れた場所にある雑木林の中に沢山の人間がいた。
「これで2件目か…」
「ぼろにがざぁん…」
「…吐くなら現場検証の邪魔にならないところに吐けよ」
「ずびばぜん…」
「気持ちはわかるがな…全くどういう奴がこんな事件起こしてんだろうな…」

目の前には右腕が付け根からバッサリ切断されたショックの死体。
口には土が詰め込まれ、目は恐怖で開ききっていた。

「ほろにがさーん」
「おう、目撃証言あったか?」
「いえ、大通りならともかくこの辺りは深夜になると人通りが全く無くなるそうで…」
「つまり、特に情報は無し…と」
「あ、でも近くの家の方が深夜2時頃にゴッとかガッて感じの鈍い音を聞いたと」
「ふむ…」
「しかしこれ、前の事件と同一犯ですかねぇ」
「可能性は高いな、前回の右足で今度は右腕が切断されて持ち去られてる」
「なんのためにでしょうか…」
「さぁな…」

1週間前、少し離れた場所で右足を切断された男の死体が見つかった。
死後5日ぐらい立っていたその死体は明らかに誰かの手によって殺害されたものだった。
警察の捜査が始まったが、これといった目撃情報も手掛かりになりそうな物も何一つ出てこず。
唯一わかったのは殺された男の名前が外道ということ。
怨根の線で捜査は進められたが、捜査はいきなり暗礁に乗り上げ始めていた。
そうしてるうちにこうして新たな犠牲者が出来てしまった。

「連続四肢切断殺傷事件ってところか…」

ほろにが刑事は煙草を吸いながらそう呟いた。




同日、近辺某学校
「ねぇ聞いた?」
「聞いた聞いた、また出たんだって、怪人ディスメンバー」
「マジ怖くね?」
「今度は右腕だって」
「じゃあ次は左足?」

あちこちで事件についての噂が立っていた。
いくら警察が隠そうとしても情報というものは多かれ少なかれ確実に漏れるものだ。

「おい、聞いたかよ蝶」
「うん、また出たんだよな」
「こええよなぁ、先生たちも遅くならないうちに帰れってうるさいしな」
「死ぬよりかはマシだけど…」
「いっそ、何でも屋にディスメンバーを捕まえてもらうように頼むか?w」
「何でも屋?」
「あれ?お前しらねぇの?」
「初耳」
「この近くにな、何でも屋がいるらしいんだ、でもただの何でも屋じゃない
 頼めば迷子のペット探しから殺人まで本当に何でもしてくれるらしい」
「噂だろ?」
「俺もそう思ってたんだけど…なんか他の学校の奴が実際に会ったとか」
「どこで?」
「間岸市の駅前のマックに日曜の夕方に橋渡し役が現れるらしいぜ」
「それ見たの?」
「見に行ったけど誰かわかんなかったさ」
「そりゃそうだw」

その話はそれで終わった。
学校が終わり、蝶は家に帰り自分の部屋の机から1冊のスクラップ帳を取り出した。
スクラップ帳の中身は、今や連続四肢切断殺傷事件と呼ばれる猟奇殺人に関する物だった。
「…もしも何でも屋が…本当なら…僕のこの望みも叶えてくれるんだろうか…」
蝶はそう呟いた。


翌日、晴れた土曜日の朝、警察署内。
煙草を吸いながら険しい顔で書類を読むほろにが刑事。
「…最初の犠牲者の外道と次の犠牲者のショックに接点はない…
 怨根の線で調べていたが…無差別なのか…?それとも何か共通点が…?」

情報が余りにも少ない、このままでは何も掴めない。
ほろにが刑事はそんな焦りを感じていた。
この町の夜の闇は深い、切断した四肢を持ち去るという異常な犯行。
なのに目撃証言はまるで出てこない。
そしてほろにが刑事にはある確信があった。

「このままではきっとまた誰か殺される…」
「ほろにがさん」
「ん、どうした?」
「第2の被害者のことですが、死因は右腕切断による失血死で間違いないそうです。」
「ふむ」
「あと、頭部に裂傷があったようです。恐らく道端でまず頭部に打撃を加えられ意識を混濁させた後に
 林の中に連れ込み、そこで右腕を切断されたというのが検死の結果出ました。」
「道具の特定は?」
「頭部の傷は固い棒状の物で殴られたとしか。
 右腕の切断に使われた物は力任せに引きちぎったような切断面から鉈やその類のものではないかと推測されてます。」
「わかった、最近鉈などを購入した客がいないか近辺の店をしらみつぶしに当たってくれ」
「わかりました」

しかしほろにが刑事はきっと有力な手掛かりは一つも出てこないだろうと思っていた。
この犯人は異常だが、非常に狡猾で頭が切れる。
そう簡単に尻尾を掴ませてはくれないだろうと…



その頃、蝶はある女学生と合っていた。
「うん、何でも屋にあったの私だよ」
「本当にいるんだ…詳しく聞かせて欲しいんだけど」
「いいよ、間岸市の駅前のマックに日曜の夕方5時から6時の間の1時間だけ2階の窓際の1番右端の席に
 橋渡し役がいるの、かなりのイケメンなんだよ」
「ふんふん」
「その人にあったらこう言うの……………ってね」
「わかった」
「あと、やっぱりお金取られるからちゃんと持っていったほうがいいよ」
「いくらぐらい?」
「私は5万円ほど払ったよ」
「5万!?高すぎないか!?」
「でも…あんなこと頼めるのは…他に誰もいなかったから」
「君は…何を頼んだの?」
「…秘密」

蝶は女学生と別れ、家に帰ることにした。
明日は日曜、そう、橋渡し役が現れる日。




同日、深夜。
「痛みは…苦輪の海泳ぎ…」
血と腐臭が漂う場所で誰かが呟いていた。

「怖がるなかれ…其は新たな生を何れ受ける…」

「まだ足りない…まだまだ…足りない…」





翌日、日曜、夕方5時10分
「2階の…窓際の1番右端の席…」
蝶はマックにいた。そう、橋渡し役が現れるという場所に。
だけど、その席には誰もいなかった。
「…担がれたのかな…俺」
曜日と時間と場所も間違えてない、橋渡し役がいない時もあるなんて話も聞いてない。
これはやはりあの女学生に一杯食わされたと考えるべきなのか。
噂を信じてノコノコやってきた僕を騙してやろうとかそういうことだったのだろうか。
何にせよ、ここにいる意味はもうない。
帰ろうとして歩き出した時に、階段を上がってきたイケメンとすれ違った。
咄嗟に振り向くと、そのイケメンは窓際の1番右端の席に座った。
しばらく迷った、だけど蝶は意を決して話しかけた。

「あの…」
「はい?」
「ここに来れば…何でも屋に会えるって聞いたんですけど…」
「…」

無言。
おいおい、もし違ったら大恥じゃないか。
コイツ何言ってんだって思われてるんじゃないのか。
しかし返ってきた言葉は予想外のものだった。

「符丁は聞いたのかい?」
「え…っと…確か…」


【リベラ・メ・ドミネ・デ・モルテ・エテルナ】



それから、付いて来いと言われて歩き出した。
建物と建物の隙間を通り抜けてややこしい道をあちこち通って
到着したのはボロボロのアパートだった、人住んでるのかここ。っていうか人が住めるのか。
「おーい、入るぞー」
言うが早いか、橋渡し役はドアを開けた。
途端に大量のゴミが部屋の中から雪崩のように飛び出してきた。

「うわぁ!…おい!!ゴミぐらい捨てろ!!入るぞ!!!」
ゴミを飛び越えて中に入るので続いて僕も入った。
「おい!!ゆき兄!!」

ゴミの上に置かれたソファの上で漫画を読んでる人が視界に入った。
これが噂の何でも屋?
簡単に折れそうなほどに細い体に、あまり生気を感じられない。
ダルそうに漫画を投げるとその人は言った。

「いらっしゃいませ…か?」
「ああ、客だ」
「あ、あの…僕は」
「ストップ!!!」
「う…?」
「ルールがある、1つ目は依頼前に金を出す
 2つ目は内容を聞いたらそれがどんな依頼だろうが俺は絶対に引き受ける
 3つ目はそれがどんな依頼であろうとも達成する、だ」

そう言われて僕はなけなしの貯金から出した5万円を差し出した。

「…いいよ、ただし依頼達成後に5万じゃ割に合わないと思ったらまた請求する」
「それじゃ話が…」
「なら帰れば?
 ここに来たってことは、ここじゃないと取り合ってもらえないような依頼なんだろ?」

見透かしている、こいつは何もかも見透かしている。
そう、僕の依頼は恐らく誰も聞いてくれない。それほど異常なんだ。
だけど僕はこの願いを、どうしても叶えたい。

「…わかりました」
「…約束だぜ?
 それじゃ聞かせてくれよ、俺に何を依頼する?」
「連続四肢切断殺傷事件…ご存知ですか?」
「しらねぇ」

知らないって本気かこの人。
あれほど毎日ニュースや新聞で取り上げられてるのに。
そう思ってると橋渡し役のイケメンがそっと耳打ちしていた。

「…なるほど、ああ、わかったわかった、で、その事件がどうした?」
「犯人を見つけて欲しいんです」
「…見つける、だけでいいのか?」
「いえ、会いたいんです」
「なぜ?」
「会って頼むんです」
「何を?」






「僕の足を切り落としてくれって」





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最終更新:2009年11月01日 00:50