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時編み


彼女は時を編んでいた。
彼女の足元には今まで編んできた沢山の時があった。
沢山の血が流れた歴史は赤く編まれ。
時代の改変に伴い、あらゆる色に時は編まれてきた。

ある日、彼女は編むのを止めた。
彼女の手元は赤く編まれた時で止まっていた。

その頃、地上では大きな戦争があった。
幾多の血が流れ、幾多の命が失われようと、戦乱は終わらなかった。
彼女が時をそこで止めてしまったのだから…

彼女が時を止めたのは理由が合った。
彼女の恋人は重い病にかかり、床に伏せていた。
もういつ死んでもおかしくはなかった。
彼女は紡ぎ続けた時を止める事で恋人の死を止めた。

恋人は、彼女に時を編むんだ、戦争を終わらせるんだと言った。
彼女はそれでも時を編まなかった。
恋人は、動かない体で、己のせいで戦争が続く事を嘆き続けた。

戦乱はそれ以上大きくはならない。
かといって小さくもならず。
ただ、永遠と続いていく。

永遠と続くのはそれだけでは無かった。
恋人の、自分のために多くの命が失われてるという
自責の念。後悔の心。彼女を恨めしく思う心。
そして、時折訪れる耐え難い体の痛み。
それすらも永遠に続く。

「頼む…もう…僕を…楽にしてくれ…」
「…」
「君は…時編みなんだ…!
 それがどんなに辛い事かは僕は誰よりも理解している…!」
「永遠に生きて…
 時を編むなんて…辛いだけよ…
 それならいっそ…このままずっと貴方と…」
「君の痛みや…辛さは…僕は誰よりも理解してる…
 多くの人の死を見たくもないのに見せられて…
 それでも…君が見てきたのは…辛い時だけだったはずじゃ…
 ないはずだ…」
「あ…」
「今こそ…編んでくれ…
 長い長い…戦争を終わらせる…喜びの時を…」
「…私は…貴方がいれば…」
「まだ僕を苦しめる気なのかッ!?」
「!?」
「編むんだ…編んでくれ…」

彼女は泣きながら、立ち上がり。
いつもの、時を編む場所へと歩き出す。
そして、時をゆっくりと編み出す

しかし…

彼女は糸の切れた人形のように倒れこむ。
そのまま彼女は動かなくなる。

彼女は時を編む存在。
その時を編まなくなった瞬間に彼女の意味は無くなった。
彼女の不死はその瞬間に解かれていた。
そして、時を動かした瞬間に、彼女の命の灯火は消えたのだ…

男は、動かない体を必死に動かし。
涙を流しながら、時を編む。
彼女が編めなかった喜びの歴史を、自らの死を願って。

彼は今も、世界のどこかでゆっくりゆっくりと編み続けている。

今も世界のどこかで行われている。戦争や虐殺は。
彼が赤い時を編み終わるまで続くんだろう。

いつか、彼は編み終わり。
世界を喜びの時で止め。
自身の命に幕を降ろし。
彼女と、悠久を過ごすだろう。

男は、今日も、震える手で、ゆっくりと、だけど確実に。
時を編み続けている。



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最終更新:2009年11月01日 01:14