ノエル・アルギュスト
「あの戦争が僕達に何をもたらした!!
数多の血を大地に流し屍を積み上げてまで得ようとした世界は
こんな世界などではない!!!」
「それが人の性質だ!!
人が人であり個が我を持つ限り決してこの世界から争いは無くならぬ!!」
「ふざけるなぁぁぁぁぁああ!!!!!」
鍔迫り合い
「エリゴール…!!貴様は全てわかっていて戦争を起こしたと言うのか!!」
「アルギュスト、貴様は本当に強き者だ
私の全てを正義と信じて疑わず偽りの和平にも目もくれずただ己の信じる私という正義を貫き
希望へとひたすらに走り続ける、それこそが貴様の強さだ」
「ならば貴様を打ち倒し理想の世界を創る!!!」
「だがしかし貴様の信じた正義はすでに根底から覆された!!
ほぅら、剣に迷いが出ておるぞ!!」
「黙れぇええええええええええ!!」
アルギュストの剣が、弾けた
世界が反転して赤く染まった
「哀れだなぁ、アルギュストよ
勇者と謳われた貴様の結末がこんなものだとはな」
「がっ…」
「所詮貴様は私の道化に過ぎなかったということだな」
「エリゴ…ル…貴様…だけ…は…絶対に…」
アルギュストの時は止まる
そして世界は偽りの平和で彩られた暗き籠に囚われる
5年後
「母さん…」
「ノエル…私はもう助からないわ…だから貴方に伝えることがあるわ」
「母さん…死なないで!!」
「貴方の父親は戦争で死んだわけじゃない
戦争が終わっても止まらない争いに終止符を打つために
全ての原因となった者を止めるために旅立ち…そして…」
「父さんのことなんてどうでもいい!!それよりも!!」
「…」
「母さん!?母さぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!」
さらに13年後
スラムと化した街の片隅のボロボロの酒場にその男はいた
全てを壊すような憎悪を宿した目をして
「ジジイ、金もってそうだなぁ?」
後ろのテーブルで酒を飲んでいた老人が3人の品の無さそうな男に絡まれていた
「いえ、私は1人で安酒を飲む程度の金しか持ち合わせておらぬので…」
「んなの関係ねぇんだよ、だったらその金を出せって言ってんだよ!!」
「なーに、支払いなら心配すんな
そのボロい服でもいくらかにはなるぜ?
万一凍え死んでも野犬のエサになって無駄なことなんか無いぜ?」
下卑た笑い声が酒場に響く
男はポツリと言った
「五月蝿いぞ、下衆が」
その言葉に男たちは反応した
「なんだ兄ちゃん、そりゃ俺らに言ったのか?」
たちまち男は取り囲まれた
「お前ら以外に誰がいる」
クックックと笑いながら取り囲んだうちの1人が言った
「兄ちゃん、俺らはなぁ?
この辺じゃ有名な盗賊団の一味だ、度胸は認めてやるが相手は見極めるもんだぜ?」
「…つまり?」
「有り金と持ってる物全部置いてとっとと失せな!!!!!」
男はフッと笑った
同時に目の前の男が吹っ飛んだ
「…お前らが失せろ」
「テメェ!!!」
残り2人の男がナイフを取り出した
「…刺そうとする者は同時に刺される覚悟をしなければいけない
だから相手に刃を相手に向ける時は必ず覚悟しなければいけない
そう、母さんが言っていた」
「そりゃどういう意味…」
言い終わる前に男の腹に剣が刺さっていた
「…がはっ」
「テ、テメェ俺らに手を出すってことは…!?
わ、わかってんだろうなぁ!?」
「知るか」
アッと言う間に3人の盗賊は床に倒れた
剣の血を拭いて佇む男に老人が話しかけた
「お強いですな」
「…」
「ふむ、貴方からはとても強い力を感じる
しかしそれはとても濁っておる…余程数奇な人生を歩んできたのでしょうな」
「カウンセリングなら間に合ってるぞ」
「…お名前を伺ってもよろしいですかな」
「…ノエル」
「ノエル…だけですか?」
「ノエル・アルギュスト」
「アルギュスト…ほう、かつての英雄と同じ名を…」
その言葉を聞いた瞬間にノエルはテーブルに金貨を叩き付けた
そして無言で酒場を出ようとする
背中に老人の声が響く
「…貴方の為そうとすることが何なのかは知りませんが…
それが希望につながることを祈りましょう」
為すべきこと、為さねばならぬこと
己の信じる道、己の信じた道
軽蔑する父の軌跡、敬愛する母の願い
そして灯された小さな火は業火へと燃え上がるだろう
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最終更新:2009年11月01日 01:19