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2章1節【透過、黒殺】


~白燐の森~
透「どこだ…」
透過は、森を彷徨っていた
あれから、ちゅるやさんを近くの街の医者まで送り届けた
大事には至らず、安心したのも束の間

透過は傷の手当てをしてもらってすぐに病院を抜け出した
狙いは、仮面の男。
透「あの野郎…絶対に許さねぇ…」
木々をかきわけ、探す。
冷静に考えれば、いつまでも森に留まるわけが無い。
だが、透過はそんな事は考えていなかった。
仮面を、この手で葬り去る。
それだけが透過の頭を支配していた。

そして、透過は見つけた。
透「いた…!」
仮「…んー?」

森の奥、少し開けた場所。
天然の決闘場。

仮「お前…」
透「見つけたぞ…!ちゅるやさんの痛みをその身に受けろよ…!」
金属バットを取り出す透過
仮「…ク…ハハハハハ!」
透「何がおかしいんだ…!この野郎!」
仮「いいね!随分早かった!!」
透「何を言ってやがる…!」
仮「…いいよ!相手になってやる!来いよ!」

仮面が、黒い剣を取り出した
透過も、金属バットを構えた

透「行くぞオラァ!!」
仮「さぁ!楽しませろ!!」

透過が踏み込む
仮面も踏み込む

剣と金属バットがぶつかり
金属音が辺りに響く
木々から、驚いた鳥達が飛び上がる
透過のバットは振り回される
仮面は剣を回すように、それを受け流す

仮「いいね!いいね!
  前よりよっぽど面白い!!」
透「ああああッ!!」

バットが、急停止
そのまま上に抜け、剣の防御範囲から抜ける
透「あああッ!!」
上からの振り下ろし
仮「ははははははッ!」
頭に叩き込まれる瞬間に、逆手に返した剣の柄を使い
バットを弾く
透「うああッ!」
弾かれた反応を無理矢理に力で抑え込み
また、振り下ろす
仮「楽しいな!」
振り下ろされるバットを直前で避ける
バットは地面に命中、跳ね上がる
透「がぁッ!」
跳ね上がった反動を利用しての、横撃ち
透過は、完全に力の方向性を見抜いていた
それを完全にコントロールする集中力と力の入れ方はもはや人間の技では無かった
仮「はっ!」
問題は、仮面の技も人間を遥かに超越していた
透過の渾身の連続攻撃を全て弾き返す
そして、後ろに飛び退く
地面を擦りながら、着地
仮「ククッ!怪我の痛みすら忘れるほどの憎しみか!」
透「ああああああああああ!!」

大気が震える
透過の怒りが、大気を揺らしている

仮「やっぱり、あのガキンチョを刺したのは正解だった!
  お前がここまで楽しい相手になるとは予想外だった!
  楽しいぜぇ!透過!」
透「死んでしまぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」
仮「アッハハハハ!じゃあそろそろこっちも攻撃するか!!」

仮面は剣を横薙ぎに振るった
仮「黒衝波」
透「!?」
咄嗟に高く飛び上がる透過
飛び上がった透過の足元スレスレを何かが突き抜けていく感覚
そして透過の遥か後方の木々が音を立てて倒れた
仮「へぇ、今のを避けれるんだ」
透「斬撃を飛ばしたのか…」

着地と同時に透過は走り出す
目指す場所は仮面の懐
仮「~♪」
剣をゆらゆらと遊ばせながら
仮面は透過を見ている
透「遊んでんじゃねぇよ!!」
仮「柔よく剛を制す」
透「ああ、そうですかっ!!!」

バットが勢いよく振り上げられる
剣を叩き落そうと、バットが振り下ろされる
仮「ン~~…♪」

キチキチキチキチと金属が擦れ合う音が響いた
透「…え?」

透過は何が起こったかわからなかった
気がつくと透過は仮面とは全く正反対の方向を向いていた
まるで、身体を勝手に動かされたかのように
自然に、まるで自覚しないまま。
透「くっそぉぉぉぉぉぉ!!」
振り向き様にバットで薙ぎ払う
しかし、そこに仮面はいない
透「どこに行ったッ!?」
仮「楽しかったよ」
仮面は、透過の後ろにいた。
完全な隣接距離。
そこは、死の射程距離。
透「バカな…」
仮「黒き痛みに燃え盛れ。
  受けろ、黒神掌波撃衝」

スッと、仮面の掌が透過の背中に触れた
押し当てられた掌、透過にとってそれは死神の誘い
仮「つまらない人生の終幕に…せめてひと時の慰めを…」
ドゥンッ!!と一際大きな音が響いた
透過は、その場に崩れ落ちた
服は破れ、背中の肉もブスブスと黒い煙をあげている
辺りには黒い霧のようなものが立ち込めていた
仮「いいねー、楽しかったよ」
透「な…んで…何だ…」
透過は、つぶやいた
透「何で勝てない…!憎いのに…本気で殺してやりたいのに…何で!」
仮「さぁねー?」
透「ちくしょう…ちくしょお…」
仮「さて、それじゃあアレを返してもらおうかな」

仮面の腕が黒い煙のようにおぼろげになっていく
その手を透過の背中に押し当てると
手はズブズブと透過の身体に入っていった

透「あ…ぁがあ…」
仮「ん~…」

ズルリと手が引き抜かれた
引き抜かれた手には、結晶。
だが、その結晶は黒く染まり、禍々しく変貌していた。
仮面は、その結晶を自分の胸に当てる
結晶は、スルリと胸の中に入っていった
仮「…あ~…」
透「なん…だ…?」
仮「さーて…」
仮面が、透過のこめかみに指をあてた
透「やめ…ろ…何を…」
仮「楽しませてもらったお礼をしようと思ってね」
透「な…やめ…」
仮「黒い夢に溺れ狂え…
  黒神夢幻調和…」

透過の身体大きくビクンと跳ね上がる
そして、瞳から生気が消え、動かなくなる
仮「おやすみ、ゆっくり眠りなよ」

仮面はそう言うと
楽しそうにその場を離れた

~黒き夢・透過~
透「…ここは…どこだ…」
り「こんにちは」
透「…誰?」
り「りーちゃん」
透「りー…」
り「うん」
透「俺…行かなくちゃ…」
り「どこに?」
透「どこ…だっけ…」
り「誰のために行くの?」
透「誰…誰のため…」
り「わからないのに行くの?」
透「わから…ない…わからな…い…」
り「ずっと、ここにいればいいよ」
透「行かなくちゃ…」
り「本当にそう思ってる?」
透過の足に、黒い何かがまとわりつく
黒い何かは、腕をも抑え付ける
透「…離せッ!離せ!」
り「私は何もしてないよ」
透「やめろッ!離せッ!離せよッ!」
り「よく見て、あなたの手足を抑えつけてる物を…」
透「あ…あ…あああ…」

透過の手足にまとわりつくもの
それは、透過自身だった

り「嫌だよね?もう痛い事したくないんだよね?」
透「あっ…あっ…」
り「ここは、痛い事も、苦しい事も、辛い事も無い」
透「ひっ…あっ…」

足が、地面に埋まっていく
闇に飲まれていく。

り「さぁ…一緒に…」
透「あ…ぁぁ…あぁ…うあああああ…」

透過は、闇に飲み込まれた



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最終更新:2009年11月01日 02:07