0163:ポップ・ウソップ冒険記◆Oz/IrSKs9w




冒険を再開しますか?


 >はい
  いいえ


ピッ


【AM5:54/鹿児島県川内(せんだい)、某日用品店内】


「なあ……ここ、本当に店なのか?なんで商品がこんなに少ないんだ?」
「表にデカい看板掲げてるじゃねぇか、間違いねえよ」

広い店内に一歩一歩奥へと足を進めながら物色している二人。
本来、所狭しと商品が陳列されているはずだったと思われる陳列棚はガランとしていて、
所々にぽつり、ぽつり、と他愛も無いガラクタ同然の日用品が寂しく配置されているだけである。

「う~ん…主催者のやつらの手下が全部盗んでったんじゃねえのか?」
「手下…ねぇ。だったらもっと荒らされてる筈じゃないのか?床とかはきれいなもんだぞ?」

ゴミ一つ落ちていない床を見渡して首を捻るポップ

「ん~…ま、いいじゃねえか!考えてる時間がもったいねえよ。ほらほら!見てみろよこれなんか!(サランラップ)」
「ん?何だそれ?」
「ウオッホンッ!…これはどんな砲弾だろうが槍の一突きだろうが…
 こうやって広げれば跳ね返すことが出来る!名付けて『ウソップ・バリ~ア』だッ!!」
「メラ」
「うっウワッ!?何すんだ!!?熱ちっ!!!燃やすな~っ!!!」



【AM6:12/鹿児島県川内、某日用品店従業員控え室】

「…最悪だ…」
「18人か、確かに最悪だな…ウソップも俺も仲間がみんな無事だったのが唯一の救いか…」

朝の放送を聞き終わるやいなや青ざめた顔でボソリとそう呟いたウソップに、ポップは眉を寄せて苛立ちを抑えているかのような低い声で返す。

「確かにそうなんだけどよ……違うんだ、違う『最悪』なんだ」
「ん?…どういう意味だ?」
「こんな短時間の内に…あのルフィと互角に戦ったって聞いてた能力者が死んじまったんだ…!」
「能力者?ウソップの言ってた例の『悪魔の実』ってやつか?」
「ああ…楽観過ぎたかもしれねえ。ルフィもロビンも簡単に死ぬ訳が無え、って…オレの勝手な思い込みだったみてぇだ…」
「……」

ポップは、鉛筆を固く握りしめて目を瞑り歯を食いしばるウソップのその様子に言葉を飲み込む。

「……」
「そうだな。俺も…そうだったかもしれない。ダイも、マァムも、俺みたいなドジとは違って簡単にやられたりしない、って…でも…」

先ほどの放送が真実であれば、自身の危惧している大きな不安であるフレイザードはまだ生きている。
過去に戦った当時の強さのままならば、フレイザードなどに現在の自分たちは負ける要素は無い。しかし…

「なあウソップ、例の材料…集まったか?」
「ん?いや、まだなんとも言えねぇよ。金属の類がいまいち集まらなかったし、
 おり……何だった?そんな聞いた事無いモンもどこにもありそうもないしなぁ…」
「そうか…」

ポップは考える。
自分たちには武器が無い。
あの名工、ロン・ベルクに作ってもらった自分の杖が無い。
最初の広間で見たダイも剣が奪われていた。
オリハルコンとまではいかなくとも、それなりに良い金属さえ手に入れば…もしかしたら武器が作れるかもしれない。
最初に集められたあれだけの人数の参加者、彼らの中にもしかしたら自分たちに合った武器を作れるほどの技量を持つ者がいるかもしれない。
ウソップには…

「……ん?何だ?」
…きっと無理だ。

「おい!ちょっと待て!何だその悲しげな目は!馬鹿にしてんのかぁッ!!」
「あ、いや、そんな事ねえよ。頼りにしてるぜ、相棒」
「ん?ガッハッハッ!おう!任せとけ任せとけぃっ!この天才の名を欲しいままにし!海の芸術家とさえ言われ!絶賛さr~~~」




絶対無理だ。


【AM7:26/鹿児島県出水(いずみ)、某一軒家】

「…よっ…と!」
「どうだった?床の下や屋根裏なんか探して、収穫あったのか?」
「まあまあ!慌てるな慌てるな!全く、この世界の家はスゲエなぁ。見た事の無い構造してやがるぜ。
 ま、大体の基本的なトコはオレの世界とおんなじみたいだけどな」
「へえ…ウソップって大工仕事もできるのか?詳しいもんだな」
「オレは狙撃手だ!ったく、みんなオレの事大工扱いしやがる!」
「違うのかよ?」

そのウソップの顔をのぞき見て笑顔を向けるポップ。
しかしウソップはどこか不満げに少し顔をしかめる。

「まあそれは置いといて…」
「ん?」
「……やっぱ変だぜこの世界。どう見たってこの家、新築って見た目じゃねえのに…屋根裏なんかきれいなもんだし」
「こまめに手入れしてたんじゃないのか?」
「ありえねえって。屋根裏だぞ?埃が溜まって汚れてるのが普通なのに…チリ一つ無かった」

汚れ一つ無い手のひらをポップに向ける。

「そうか…確かに変だな」
「…ま、そのおかげで良い材料はいろいろ手に入ったぜ。時間が惜しいからな、早速始めるとすっか」
「時間はどれくらい掛かりそうなんだよ?」
「よいしょっ…と!う~ん…そうだなぁ、何とか昼前には終わらせるよう努力はするぜ」
「昼前か、長いな…」

放送があってから、仲間の身を案じる不安の気持ちはどんどん重なる一方である。
ウソップの提案であるとはいえ、移動の時間を大きく削られてしまう事にポップは不安を隠せず…
マァムたちを探したい気持ちが膨らむ今、その『昼前まで』との宣告を受けて深いため息を吐く。

「…なあ、やっぱやめにして…出発しないか?」
「えっ?」
「別に俺は武器なんて無くても戦えるし、こんな事してる間にも…」
「信じろ」
「………え?」

不意に言葉を挟まれ、ポップは目をキョトンとさせて、キッチンテーブルの上に座って作業の準備を続けているままのウソップに視線を向ける。

「オレは会った事無えからポップの仲間の事詳しくは知らねえ。でも、仲間なんだろ?お前の」
「…ああ」
「その…ダイとマァムってのは、すげぇ強いんだろ?」
「ああ」
「だったら信じろ。自分の仲間の強さを。オレはルフィとロビンの事を信じてる。
 あいつらに会えた時のために、今のオレに出来る事全てを完璧にやっておくだけだ」
「……」

ポップの方には顔を向けず、淡々と言葉を続ける。

「…じゃなきゃ、あいつらに合わせる顔がねえよ」
「………」
「それが……仲間ってもんだろ?」

そこで初めてポップの顔を見る。
その表情は…自信に満ちた笑顔。

「…そうだな…分かった。悪かったな」
「ま、力を蓄えとくんだな。ゆっくり飯食えるのも今の内だけかもしれねぇからな」


ポップは正直、驚いていた。
この頼りなさげな相棒からまさかこのような言葉を受けるとは全く思っていなかった。
迷いや焦りは瞬時に吹き飛んだ。

(俺、どうにかしてたな。もしアバン先生だったとしても、同じような事言われちまったかもしれないな)


(…勘弁してくれよ!能力者が簡単にやられちまうような所なんだぞ!
 せっかく人が近寄り辛い禁止エリアの近くにいるんだ、急いで離れるこたない。ルフィもロビンもきっとしっかりやってるさ!)

あさっての方を向いて作業を続けているウソップがそんな事を考えているとは、今のポップには気付けるはずも無かったわけで。


【AM10:43/鹿児島県出水、某一軒家のキッチン】

「よぉ~し!完成っ!!」
「お、やっと終わったか!」

窓の外をぼんやりと眺めていたポップの顔がパッと明るくなり、ウソップの元へ歩み寄る。

「どれどれ……へぇぇ、お前凄いな」
「ようやく気付いたのかねポップ君。ほら、これがお前のだ」

ポイッと木製の棒のような物を投げられ、慌てた手つきで受け取る。

「取り外せる先端の中にナイフの刃を仕込んである杖だ。名付けて『仕込み杖(ナイフロッド)』!!」
「まんまじゃねえか…へへ、ありがとよ。ありがたく使わせてもらうぜ」
「他にもいろいろ作れたが…ま、俺たちには必要無い物がほとんどだ。俺にはこいつがあるしな!」
「なんだそりゃ?えらくイビツな形だなぁ」
「じゃ~ん!パチンコだ!この世界にもウソップ輪ゴームが有るとは思わなかったぜ!」

その手に収まっている物は、ナイフで削って作られた胴体に軽く捻った輪ゴムの束をくくり付けられている…
見た目はいびつではあったが、それは確かにパチンコそのものであった。

「そんな物、武器になるのか?オモチャじゃねえか」
「ぬっふっふっふっ…甘いな。こいつこそ世界最強の武器!新作の弾も作れたし、これでもう俺様に恐れる物は無ぁ~いッ!!」
「本当かよ…」

その新作、ガラスを小さく砕いて詰めた『特製チクチク星』と手頃な大きさの石ころ数個をポケットに詰め込み、残りの完成品をホイポイカプセルの中へと収める。

「よし、じゃあそろそろ出発しようぜ。だいぶ時間も食っちまったし」
「ち、ちょっと待て。俺が長年苦しめられている持病の『家の外に出てはいけない病』が…」

腹を押さえて苦しげにうめくウソップ。

「……おい、そんな病気聞いた事無いぞ。ほら!行くぞウソップ!」
「待て待てポップ!イテッ!ひ、引っ張るなって!イテテテッッ!!!」


はてさてこの楽しげなコンビ、一体これからどんな出会いや出来事が待っているのやら。




ここまでの冒険を記録しますか?

 >はい
  いいえ



【鹿児島県、出水/昼】

【ウソップ@ONE PIECE】
[状態]健康
[装備]:賢者のアクアマリン@HUNTER×HUNTER
    いびつなパチンコ(特製チクチク星×5、石数個)
    大量の輪ゴム
[道具]:荷物一式(食料・水、残り3/4)
    死者への往復葉書@HUNTER×HUNTER
    手作りの作品や集めたガラクタなどの数々
[思考]1:アイテムを信じて仲間を探す
   2:ルフィ・ロビン・ポップの仲間との合流

【ポップ@ダイの大冒険】
[状態]健康
[装備]:魔封環@幽遊白書
    ウソップ作の仕込み杖(投げナイフを使用)
[道具]荷物一式(食料・水、残り3/4)
[思考]1:ダイ・マァム・ウソップの仲間との合流
   2:フレイザードを早めに倒す


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093:似た者同士の行進 ウソップ 230:大賢者ウソップ?
093:似た者同士の行進 ポップ 230:大賢者ウソップ?

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最終更新:2024年01月15日 20:57