0320:死神交響曲第十一番第三楽章『王者』
「――おい! 大丈夫かあんた!」
「……君は、誰……なのだ?」
薄れゆく意識の中、
ターちゃんに話しかける声が聞こえた。
やたら尖っている金髪に、宇宙人のような耳をした目つきの悪い少年。ダイや乾ではない。自分の知らない人間……?
「んなことはどうでもいい! 早く治療しないと死ぬぞ、この糞腰みのがッ!!」
乱暴な言葉を吐きながらも、自らの衣服を破きターちゃんの止血を試みる少年。
その傷の面積と止まらない出血に四苦八苦していたが、一つ一つ冷静に対処していく。随分と大人びた少年だ。
「……名前を、教えて欲しいのだ」
「あん!? ヒル魔だ! 蛭魔妖一だ! 分かったら少し黙ってろ!!」
ターちゃんは知る由もないが、このヒル魔という少年は先程助けたナルトに同行していた人物。
四国に入ってからは離れ離れになってしまったが、所々で見つけた戦闘の跡を辿りながら、どうにかここまで来ることができた。
そしてその矢先で見つけたのが、この半裸の重傷人。
(……ックソ! ひでぇ傷だ、まったく血が止まらねぇ!! いったい誰がやった……糞ウニ頭か? それともまさか……)
ヒル魔が思い浮かべたのは、一人の少年の姿。
だがそれは最悪のパターンだ。絶対にあってはならない。
それでも、考えてしまう。試合中であっても普段であっても、"司令塔"という存在は最悪のパターンを無視することは出来ない。
――――ズドン
「――!?」
思案しながらターちゃんに止血を施すヒル魔の後方で、突如鈍く、重い轟音が鳴った。
振り返ると、そこには崩れたビルの壁の残骸が広がっていた。さらに、蔓延した埃と共に人影も。
「ファ、糞ウニ頭!?」
それは、ナルトとヒル魔を襲った死神――
更木剣八のものだった。
といっても、その姿は先程遭遇した状態からかけ離れている。
所々に骨が飛び出し、夥しい量の血を流し、剣を握っていたはずの右腕がなくなっていた。
あの化け物じみた実力を持った男が、こうも無残な姿に。いったい誰が――
ヒル魔は数秒だけ考え、すぐにその真相を知ることになる。
「ククク……死神だと? 笑わせおって」
埃が舞う中、新たに姿を現したのは――死神の右腕を口に銜えた、九尾の化け狐だった。
「な、ナルト……!?」
目を引いたのは木ノ葉マークの額当て。間違いない。木ノ葉の忍を名乗った、
うずまきナルトだ。
その雰囲気、初遭遇した時とは随分とイメージが違う。
姿形は自分と変わらぬ少年でありながら、少年では絶対に持ちえぬ狂気が滲み出ていた。
そして、これは夢か幻か。ナルトの周囲から、禍々しい光のようなものが溢れているように見える。
視覚化できるほどの膨大なチャクラは、ヒル魔に確かな"恐怖"を植えつけていた。
「ナル……ト?」
「ん……? ……おぉ、ヒル魔! いったいどこ行ってたんだってばよ!」
疑いの眼差しを向けるヒル魔に対して、ナルトは何食わぬ顔で対応した。いつもどおり、元気な"表"の顔を装って。
「いやぁ、こいつったらしつこくてしつこくて。そこの腰みののおっさんに助けてもらわなきゃ、今頃死んでるところだってばよ」
あくまでも、"表"の顔で。ここで本性を曝け出すわけにはいかない。
「……今さら何ふざけたこと言ってやがる。その糞ウニ頭……殺したのはテメーだな?」
だが、狐の化かし合いは既に猿芝居と化していた。元々ナルトを疑っていたヒル魔である。
さっきの不自然な登場を目の当たりにして、今さらこの九尾の言動を信じるほど、馬鹿でも道化でもなかった。
もちろん九尾もそれは理解している。この少年、決して馬鹿ではない。
「……ほう、やはり分かるか。まぁ、当然と言えば当然じゃがな」
馬鹿ではない。知能的には。しかし、やはり"馬鹿"だ。
「このまま知らぬ振りをしていればもう少し長生きは出来たであろうに」
「うるせぇ。俺はテメーみたいな奴に踊らされるつもりはねぇんだよ」
「ククク……なるほどのぉ」
やはり、馬鹿は馬鹿。九尾の嘲笑は、しっかりとヒル魔の耳に届いた。
(……ヤベェな)
この瞬間、ヒル魔は逃れられない危機を感じ取った。
ナルトは、自分を殺す気だ。
何か目的を持って自分達に接触したという推測が立証された今、ナルトが邪魔者になるであろう自分を生かしておく理由はない。
ただでさえこのウニ頭の死神を殺めるほどの戦闘能力を持った輩、とても一高校生の手に負えるレベルではなかった。
(逃げるか……? いや、こいつの素早さは異常、あの糞チビよりも上だ! 俺が逃げ通せるワケがねぇ。
なら戦うか……? もっと無理だ! コイツは素早さ以上に戦闘能力が化け物じみてる。
役立つ手駒がなにもねぇ今じゃ、打つ手はねぇ!)
その知略で泥門デビルバッツの危機を幾度なく救ってきた策士も、今回ばかりはお手上げだった。
せめて愛用のマシンガンがあれば少しはマシなのだが……今この場には武器はもちろん、頼りになるチームメイトも存在しない。
どうする? どうする? どうする――
「あ――」
思考を廻らす間も、時は進む。
その一瞬、何が起こったのかはすぐに理解できなかったが……次に訪れた一瞬で、自分は攻撃されたのだということに気づいた。
右肩に、フォークが一本。九尾がクナイの要領で投げたそれが、ヒル魔の右肩に深々と突き刺さっていた。
「グ――!?」
気づいた時にはもう遅い。忍の技は、アメフトの試合展開などよりも高速で展開する。
右肩に続き、左肩、右膝、左膝、ちょうど人間の四肢を狙って、計三本のフォークが投げ込まれた。
その全ては、九尾の狙った箇所に命中する。
四肢より鮮血を噴出しながら倒れるヒル魔。
そのあっという間の出来事に、一般的な身体能力しか持ち合わせていない少年は、何もすることが出来なかった。
感じるのは、痛みと怒り。嘲笑いながら近づいてくる九尾を睨みつけながら、その眼に怒りの炎を宿す。
そして、決して苦悶の表情は見せない。
どんな危機的状況でも、弱みを見せたら終わりだ。それを心得ていたヒル魔は、まだ勝負を捨てていなかった。
「……ふん。まだ何か言いたそうな顔をしておるの。こんな状況に陥ってなお諦めぬとは。真性の馬鹿か貴様は?」
ナルトの声で発せられる九尾の挑発にも、今は耐える。勝負を捨てなければ、必ずあるはずだ。
どこかに――逆転の一手が。
「……俺は死なねぇ」
「なに?」
眼前に迫った九尾を前にしても、ヒル魔の表情は崩れない。
その眼には、怒りと共に希望が宿っていた。
(――希望?)
彼は今もなお、勝機を模索している。
(――勝機?)
どこかに、どこかに逆転の一手が――
(――逆転の一手?)
あるはず――
(……ねぇよそんなもん)
ヒル魔という少年は、決して馬鹿ではない。それどころか、天才と呼べるほどの知能を誇っている。
そんなヒル魔が冷静に戦況を分析して、判断したのだ。
ここに逆転の一手は存在しない。どう考えても、この先の展開は自分の敗北、ナルトの勝利で終わる。
もし本当に逆転の一手が存在するというならば……それはここには存在しない、別の要因だろう。
「……もう一度言うぜ、俺は死なねぇ」
例えば、アイシールド21のような救世主――
「死ぬのはテメーだ。この糞ギツネ」
例えば、常人離れした剣技を持つ剣客――
「テメーは五体バラバラにされて、テメーの腕と足と胴体を見つめながら無残に死ぬ」
もちろん、今現れる確率はゼロに等しい。
「もしくは、地獄みてぇに熱い劫火に焼かれて熱さに悶えながら無様に死ぬ」
だが、この九尾が生き残ることは不可能。その時こそが、ヒル魔の逆転の時。
「もしくは、極寒の水中に投げ込まれて寒さに凍え苦しみながら死ぬ」
これは、その時の想像話。もしくは予言の言葉。
「……それ以上このわしを愚弄することは許さん!!」
九尾も黙って聞いているほど温厚ではなかった。残った一本のフォークを握り締め、ヒル魔の眼前に突きつける。
「ハッ、なんなら俺様が今すぐ呪殺してやろうか? ケケケ」
小悪魔の笑いは、九尾の怒りを頂点へと押し上げた。
フォークが、振り下ろされる。その切っ先を、死と直結している脳へと向けて。
(ケッ、どうやら俺もここまでか……)
心中ではそんな諦めを見せつつも、実際の言動では最後の"負け惜しみ"をやめない。
せめて舌戦では、この九尾に勝りたかったから。
「俺は死なねぇ……死ぬのはテメーだ」
最後まで黙らず、ヒル魔は九尾を睨み続けた。
「YAーーーーーーーーーーーHAーーーーーーーーーーー!!!」
目の前で、少年が死んだ。
だというのに、自分はいったい何をしていたのか。
自問自答してみるも、答えは一つ、初めから分かりきっていたこと。
動けなかったのだ。動かなかったのではなく。
剣戟による裂傷と出血。落下による骨折と脳震盪。
意識を保っているのもやっとなこの現状、身体を動かすことなど不可能だった。
それでも、意識だけは動かせたのだ。少年を救いたい、と。
しかし、身体がついてこれなかった。鍛え上げられて肉体も、人間の限界を超えることはできなかった。
「さて、先程は世話になったな。一応感謝はしておくぞ」
少年を殺した少年が何か喋っている。何かはどうでもいい。考えたくもない。
頭の中は殺人への怒りと動かない身体への憤りで溢れていた。
「礼は……そうだな、せめて苦しまぬよう、わしの手で楽にしてやろう」
少年が迫る。今度は自分の身が危機だ。
だというのに、やはり身体は動かなかった。それどころか、瞼も閉じかけてきている。
「……家族、を…………」
守る。
その意思だけは、死んでも捨てない。
いや、その意思を全うするためにも、ジャングルの王者に死は許されないのだ。
なのに、
「では、さらばだ――」
身体は、動かなかった。
ターちゃんの帰りが遅い。
数時間前、近隣で起こった戦闘音を聞きつけたターちゃんは、様子を見てくると言って出て行ってしまった。今はそれっきり、連絡もない。
戦闘音が起こったということは、そこで誰かが戦っていたということだ。ゲームに乗った者か、はたまた脱出派同士のいざこざか。
どう考えても前者の方が可能性が高い。ならば、ターちゃんもその戦いに巻き込まれたと考えるのが普通か。
最悪、死亡という可能性も考えられる。考えたくはないが、否定できない可能性なのだ。
ターちゃんは強いが、その実力がこの世界でトップという保証はどこにもない。だからこそ、不安が拭えない。
ここに来るまで、数々の戦闘跡を見かけてきた。壊れた民家、拉げた電柱、割れた道路。
香川からここ愛媛まで、戦渦を広げながら移動してきたのだろう。進めば進むほど、辺りの被害は大きくなっていった。
「!」
そして、乾はついに見つけた。
戦禍の終着点を。
数多のコンクリート片に、鼻が壊れそうなほどの血の臭い。
乾は戦場などというものを直視したことはなかったが、ここが明らかに戦闘跡だということだけは分かった。
そして、それをさらに決定付ける存在に触れることになる。
「…………!!?」
声も出なかった。
乾が見つけたのは、一人の少年の死体。
四肢から赤い液体を垂れ流し、頭部からはピンク色の異物がはみ出ている――
「うっ……」
この世に生を受けて十数年、初めて見る生の脳漿だった。
それは人体模型や医学の本で見るものよりもリアルで生々しく、問答無用で吐き気を誘うとんでもない代物である。
普通の男子中学生にとってはあまりにも大きな衝撃――口元を押さえても、込み上げてくる衝動は抑えられそうにない。
「……おぇ」
一頻り胃液を吐き捨て、再び周囲を捜索する乾。なるべくさっきの死体を目にしないように、気をつけながら視線を回すと、
「…………ター、ちゃん?」
今度は、ターちゃんを見つけてしまった。
脳漿をぶちまけている訳ではなかったが、胸元に裂傷を刻み、心臓の辺りが潰されている……死体だった。
まさか、ターちゃんが死ぬなんて。
数時間前に仲間になったばかりの頼りがいのある人物、そんなターちゃんが、もう死んでしまった。
これが、殺し合いの世界。乾は、今立たされている現実というものを思い知らされる。
「……あ……うぁ……」
少年とターちゃんの死体を発見後、今度は呻き声が聞こえた。
それは紛れもない生者の声。乾は急いでその声の発信源を探し回り、やがて倒れ伏した少年を発見した。
「助けて……くれってばよ……」
少年はそれだけ言い、気を失ってしまった。
無数の裂傷に疲弊しきった顔、まさかこの少年が殺害犯であるということはないだろう。
それに、どうやら生存者はこの少年だけのようである。
ターちゃんの死亡。乾はこの最悪の情報と傷ついた少年を土産に、公主の元へ舞い戻ることにした。
その胸中を、早くこの場から離れたいという思いで一杯にしながら。
「うう……すまねぇってばよ」
「今は礼はいい。それよりも、辛いだろうが早く気持ちを落ち着かせてくれ。俺はあの惨状の真相が知りたいんだ……」
乾が助けた少年、ナルトが目を覚ましたのは、ベースにしている施設内に入ってからだった。
が、あの惨劇の舞台に立ち会った上にこの怪我。
すぐには会話することなどできないだろうと踏んだ乾は、ナルトの名前を聞くだけでその場はとどまった。
本当は逸早くターちゃん死亡の真相が知りたい……そう思いながらも、この少年を無視することは出来ない。
なにせ、自分自身も計り知れない精神的ショックを負っているのだから。
(近い……近いぞ!)
乾は知らない。ナルトの実態を、その本性を。
乾がまずナルトを連れて来たのは、『会議室』というプレートが掛かった一室。
中に入ると、一人の男が魘されているような寝顔で眠っていた。
「公主さんは……宿直室かな? すまないが、少しここで待っていてくれないか。もう一人の仲間を呼んでくる」
「その前に……この男の人は誰なんだってばよ?」
「ああ、この人は
鵺野鳴介先生。詳しいことは後で説明するが……どうかこのまま眠らせてあげて欲しい」
「……ん、分かったってばよ」
そう言うと、ナルトは再び視線を横たわる男――鵺野に促す。
(この妖気……見つけたぞ、我が同族!)
乾に気づかれぬよう、九尾はそっと微笑む。いや、もう気づかれても問題はないか。
標的を発見した以上、あとは喰らうだけ。
見たところこの少年は自分に対抗できるような手段は持ち合わせてはいないようだ。邪魔者は、いない。
「乾、戻ったのか? その者は……」
あとは行動あるのみ――そう思い立った矢先、室内に新たな声が。
「公主さん……ただ今戻りました」
(チッ、邪魔が入ったか)
現れたのは、見事な黒髪と美貌を兼ね揃えた仙道、
竜吉公主。
おそらくは寝ないでターちゃんと乾の帰りを待っていたのだろう。それを察した乾は、現実を伝えていいものかと少々戸惑った。
だが、沈み気味の乾の声に公主は薄々気づいてしまったようである。乾が何を見てきたのかを。
「そんな……ターちゃんが……!?」
公主が身を休める宿直室。
そこでは、乾が愛媛で見てきた惨劇を語っていた。一部始終包み隠さず、ターちゃんが死んだということまで全て。
「公主さん……辛いのはわかりますが、今は気を確かに持ってください。
あなたまで倒れてしまっては、両津さんやダイ君にあわせる顔がない」
愕然とする公主に、乾はそんな言葉しかかけてやれなかった。
自分だって辛い。この悲しみを和らげられる者がいるなら、参考までにぜひ会ってみたいものだ。
太公望の計画、四国死守の要たる存在だったターちゃんの死――太公望やダイになんと言えばいいのか。
公主と乾は、ただただ悲しみにくれた。今なら鵺野の気持ちが良く理解できる。仲間を亡くすというのは、こんな感情を生むのか。
その後、竜吉公主と乾の二人はなんとか気持ちを落ち着かせ、ナルトの話を聞くことにした。
ターちゃんと金髪の少年を殺したのは、ウニ頭をした名前知らずの剣客らしい。
剣客は少年を殺害後、ターちゃんと交戦。結果は、相打ちだったそうだ。
「俺はそのウニ頭に殺された、ヒル魔って奴の仲間だったんだ。俺、頑張って戦ったんだけど……まったく歯が立たなかった。
あの腰みのおっさんが助けてくれなかったら、俺も今頃……」
悲しげに物語るナルトを見て、二人は居た堪れない気持ちになる。この少年も仲間を失い、辛い目をしたのだ。
「最初に襲われたのは俺らだったんだ……! 俺らがここにこなけりゃ……あのおっさんも死ななかったのに……!!」
ナルトは話しながら畳を殴りつけ、怒りをあらわにする。
仲間を失った悲しみ、関係のない人を巻き込んでしまった自分への怒り、全てが見事な"演技"だった。
「……事情は理解した。ナルト、おぬしは何も悪くない。今宵ばかりは全て忘れて……どうかゆっくり休んでくれ」
この少年の悲しみは計り知れない。だからこそ、公主はそれ以上ナルトを咎めようとはしなかった。元凶は、全てその剣客にある。
「では、ナルト君は会議室へ……」
「待て乾」
ナルトを連れて自室へ帰ろうとした乾を、公主が呼び止めた。
「乾には、鵺野先生の看病に尽くしてほしい。ナルトはこの部屋で休めばよかろう」
「公主さん? いや、しかし……」
「分かってくれ乾。鵺野先生がいつ目覚めるかも分からぬ。それに、私も辛いのだ……できることなら一人にはなりたくない」
「公主さん……」
公主は、第三放送でも数人の知り合いを亡くしたと聞く。それに加えてダイ、両津離脱直後に訪れたターちゃんの死。
外見的な気高さは保っているが、内心は想像以上に疲弊しているのだろう。それを察した乾は、それ以上口にしようとは思わなかった。
「分かりました。ナルト君、すまないが公主さんをよろしく頼む」
「オッケーだってばよ!」
かくして乾は鵺野の待つ会議室へ。ナルトと竜吉公主はこのまま宿直室で就寝となった。
乾去りし後、快く公主との相部屋を承諾したはずのナルトの胸中では、どす黒い感情が渦巻いていた。
(ええい、おのれ! あのままあわよくば食事に取り掛かれると思ったところを……仙人だかなんだか知らんが、忌々しい女め!)
それは、思わぬ女の言動により計画を狂わされた、九尾の憤慨だった。
(あの乾とかいう小僧だけならともかく……この女からは何か計り知れない力を感じる。うかつに手を出すのは危険じゃな。
それに、あの同族が目を覚ますのも厄介じゃ)
今はまだ眠ったままの、鵺野鳴介とかいう名の男。正体は分からないが、その妖気は昼に喰らった妖狐以上のものだ。
利用できるものならしたいが……チャクラの少ない今では、返り討ちに遭う可能性すらある。
(それに、あのヒル魔とかいういけ好かん小僧の仲間二人……
集合時間はとっくに過ぎているが、やつらと顔を合わせるのマズイ。それまでにはなんとか食事を済ませたいが……)
それにはこの女、竜吉公主が邪魔だ。始末してもいいが、チャクラと体力を消耗した現状、底の見えない相手に手を出すのは危険か。
(食事は可能な限り迅速に。今は出ているという他の仲間が戻ってくる前に済ませたい。どうにかして隙を作らねば……)
休息を取りながらも、九尾は企みをやめない。邪魔者を殺し、同族を喰らう。その目的のために。
化け狐の企みは、仙人の裏をかけるかどうか――
企む九尾と同室に置かれながら、竜吉公主は一人先のことを思案していた。
ターちゃん死亡による脱出計画への支障、早急に取らなければいけないダイ達との連絡。
そして何より、この新たな仲間への対処。
(うずまきナルト……か)
歳はダイや乾とそう変わりない少年だ。しかしながら、その奥底から感じる脅威は、明らかに異質なもの。
(要らぬ不安を与えぬため、乾には黙っていたが……この少年、内に何かを潜めておる。
鵺野先生の『鬼』に似たような……妖気のようなものを感じる)
公主は、鵺野と接触した時にも逸早くその正体に気づいていた。
そしてこの少年、ナルトと対面した時にも、同じような気配を感じた。
(よもやとは思うが……もしもこの少年が、何かに憑かれているのだとしたら。
悪霊や妖怪の類には、子供の身体を利用する輩がごまんといる)
それを考えれば、この不審な気配の理由もつく。そして最悪の場合、
(もしくは、この少年が既に乗っ取られている場合。
私達に見せた自我は全て仮初のもので、本性は別にあるのだとしたら。とんだ役者じゃな)
それは最悪のケースだ。その場合、公主はもっとも危険な輩と寝床を共有していることになる。
(確証もなしに少年を疑うことなどしたくはないが……あのターちゃんが死んだのじゃ。
その場にたった一人生き残った生存者に、奥底から感じる禍々しい気配。どう考えても不自然)
これこそさらに最悪なのだが――もしもターちゃんを殺したのが、話に出てきた剣客ではなく、ナルトの中に潜む何かだとしたら。
(鵺野先生は確か霊能力者だとか。目が覚めたら、一度見てもらったほうがいいかもしれぬ。
……もしも既に乗っ取られているのであれば、その前に一騒動起こすかもしれぬが)
その場合、唯一異変に気づいている自分がなんとかせねば。
公主は疲れた身体に鞭を入れ、ナルトを見張り続ける。
せめて鵺野先生が目覚めるまで――この怪しい気を感じる少年から、目を放すことはできない。
(ターちゃん……おぬしの守りたかった家族は、きっと私が守り通す。だから、安心して逝ってくれ――)
既に亡き仲間への手向けは、こんな言葉一つじゃ収まらない。
それでも、せめてもう少し気が休まる時までは――供養も何もないことを許して欲しい。
【香川県/ダム施設内・会議室/真夜中】
【乾貞治@テニスの王子様】
【状態】ターちゃんの死・ヒル魔の死体直視による精神的ショック大
【装備】コルトローマンMKⅢ@CITY HUNTER(ただし照準はメチャクチャ)(残弾30)
【道具】支給品一式(ただし一食分の水、食料を消費。半日分をヤムチャに譲る。)手帳
弾丸各種(マグナムリボルバーの分は両津に渡してある)
【思考】1、しばらく休息、鵺野の看病。
2、越前と合流し、脱出を目指す。
3、脱出、首輪について考察中。
【鵺野鳴介@地獄先生ぬ~べ~】
【状態】気絶
【装備】御鬼輪@地獄先生ぬ~べ~
【道具】支給品一式(水を7分の1消費)
【思考】1、気絶
【香川県/ダム施設内・宿直室/真夜中】
【竜吉公主@封神演義】
[状態]:疲労進行中、お香焚きこめ中
[装備]:青雲剣@封神演義
[道具]:荷物一式(2食分消費)、アバンの書@ダイの大冒険、お香(残り5回)
[思考]:1.ナルトを警戒。正体には薄々気づいている。
2.太公望の心配。
3.鵺野の看病。
4.四国を死守。
5.呪文の習得(『フバーハ』か『マホカンタ』が候補)
[備考]:キアリーを習得
【うずまきナルト@NARUTO】
[状態]:九尾の意思、重度の疲労、全身に軽度の裂傷、チャクラ消費大
[装備]:無し
[道具]:支給品一式×2(一つは食料と水を消費済み、ヒル魔から奪取)、 ゴールドフェザー&シルバーフェザー(各5本ずつ)@ダイの大冒険
ソーイングセット、ロープ、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
[思考]1、鵺野と接触し、可能なら利用。不可能なら殺害後捕食。
2、隙を見て竜吉公主を殺す。
3、しばらく休息。
4、剣心、セナとの接触は避けたい。
5、サクラを探し、可能なら利用。不可能なら殺害
6、術者に能力制限を解かせる
7、優勝後、主催者を殺害する
[備考] (ナルトの精神は九尾の部屋で眠っています。
肉体的に瀕死、またはナルトが外部から精神的に最大級の衝撃を受けると一時的に九尾と人格が入れ替わります)
※玉藻の封印は、玉藻の死亡と、九尾のチャクラの一部によって解除されたという見解です。
そのため、今のナルト(九尾)はナルトのチャクラ+九尾のチャクラ15%程度のチャクラが上限です。
ただし、九尾のチャクラも使いこなせます。
あと、九尾は基本的にナルトの口調で喋ります。
※更木剣八、ターちゃんの荷物一式は愛媛県の市街地に放置されています。
【更木剣八@BLEACH 死亡確認】
【蛭魔妖一@アイシールド21 死亡確認】
【ターちゃん@ジャングルの王者ターちゃん 死亡確認】
【残り64人】
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最終更新:2024年06月19日 22:16