0319:東京交差点~男と女~





東京にて、妖艶な溜息を吐き捨てる美女が一人。
「はぁん……なんでだぁれもいないのよぉん」
美女の名は蘇妲己。彼女は日本列島を行き来する列車の旅をここ東京で中断し、仲間を求めていた。
東京といえば日本の首都。参加者名簿から見るに、このゲームには日本人が多い。
つまり、ここを目指そうという考えを持つ者が何人かはいるはず。そう考えてこの大都市にやって来たというのに……
無人。普段人が所狭しと賑わうそこは、誰もいなかった。
「さて……これからどうしようかしらぁん」
仲間を集めたかったのに、当てが外れてしまった。
このままさらに当てなき旅を続けるか、それともいっそLか太公望と交信(コンタクト)を取るか。
先を考えれば後者の選択はない。だが、ならばどこへ向かえばいいというのか。
「う~ん、悩むわぁん……あら?」
次の行動を思案する妲己の目が、動く物体を捉えた。
屈強な肉体に強面を揃えた男。一見した印象は、『歴戦の勇士』という感じだった。
「あらあら、いたじゃな~い! イ・イ・オ・ト・コ!」
軽やかな足取りで対象に歩み寄る妲己。そこに恐れはない。

妲己が捉えた男の名はラオウ。肩書きは世紀末覇者。
誰もが恐れる拳王であり、強者であり、悪鬼。
この殺人ゲーム、中には恐れなく歩み寄ってきた変わり者もいたが、基本的に遭遇した者とは闘争が生まれていた。
それが拳王の生きる道。例えどんな傷を負っていようとも、例えどんな強力な武器を授かっていようとも、己の拳を頼りに戦い通す。
そんな男に声を掛けたのは、世界を手にすることを企んだ女狐。女性でありながら、高みを目指すその欲望は、ラオウと同種のものだった。
「ねぇねぇ、そこのあ・な・た・ぁ・ん」
「……失せろ」
声を掛けた妲己を、ラオウは一蹴した。
カズキや遊戯とはあまりに違う態度にカチンときた妲己だったが、それもそのはず。
拳王の称号を持つこの男が、たかが美女ごときに靡くはずもない。
妲己を無視したままその場を去っていこうとするラオウに、妲己はしつこく食いさがった。
「ちょっと待ってよぉん。こ~んなか弱いわらわを見捨てるのぉん? 女が夜遅くにこんなところにいたら、襲われてしまうわぁん」
妲己がやたら大げさなアクションを取りながら話しかけるも、ラオウは全く耳を貸そうとしない。
威風堂々悠々自適。ラオウの歩みは、色仕掛けなどでは止まらない。
「…………ムカ」
これには、さすがの妲己も我慢できなかった。

色仕掛けが効かないにしても、無視はないだろう。
あまりの扱いをされた妲己は、思わず戦闘態勢を取った。と言っても、取っただけ。本当の狙いはここで戦闘を起こすことではない。
妲己が一瞬だけ殺気を放つと、ラオウは僅かだがピクリと反応を見せた。やはり。

男には、二種類の人種がいる。
女好きな男と、女以上に好きなものが存在する男。
随分と偏った分け方だが、この場合はこの二通りで考えてみる。
この男、ラオウは間違いなく後者だ。
そして女より大事にしているそれは、おそらく『戦い』。先程妲己が放った殺気に反応したのが、その証拠だ。
要するに、戦闘馬鹿。この時点で妲己の仲間としては相応しくないことが明白である。
ならばどうするか。相手は一人で行動しているようだし、このまま人数減らしの一環として始末するのもいいが……
「この拳王、女を殺す拳は持たぬ」
一言そう言い捨てると、ラオウは再び歩き去ってしまった。
応戦するかと思いきや、こちらが女であるという理由だけで交戦を拒否。
女から逃げるというのはどうなのか。プライドというものはないのか。
色々言ってやりたかったが、ラオウがあまりにも堂々としていたせいだろうか。
「……なによあれ。変な奴」
妲己は、それしか口にしなかった。
そして同時に、それ以上ラオウを追おうともせず、別方向へ歩を進める。
やはり、まずは新たな仲間を探そう。


奇妙な二人の出会いは、特に何事もなく終了した。
戦果といえば、妲己の持つ交信の対象者が一人増えたくらい。もっとも、この時点では妲己はラオウの名前すら知らなかったのだが。
再び会うことがあるかどうかは、誰にも分からない。





【東京/夜中】
【ラオウ@北斗の拳】
 [状態]:胸元を負傷胸元を負傷(出血は止まったが、大きく傷跡が残る)
     右腕にダメージ、右手ただれ・薬指小指喪失
 [道具]:荷物一式、不明
 [思考]:1.新たな強者を求めていく
     2.いずれ江田島平八と決着をつける
     3.主催者を含む、すべての存在を打倒する(ケンシロウ優先)

【蘇妲己@封神演義】
 [状態]:少し精神的に消耗、満腹、上機嫌
 [装備]:打神鞭@封神演義、魔甲拳@ダイの大冒険
 [道具]:荷物一式×4(一食分消費)、黒い核鉄Ⅲ@武装錬金、ドラゴンキラー@ダイの大冒険
     黒の章&霊界テレビ@幽遊白書、千年パズル(ピース状態)、GIスペルカード『交信』@HUNTER×HUNTER
 [思考]:1.仲間と武器を集める
     2.仲間が集まったらLか太公望と連絡をとる。
     3.本性発覚を防ぎたいが、バレたとしても可能なら説得して協力を求める
     4.ゲームを脱出。可能なら太公望も脱出させるが不可能なら見捨てる

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287:掃除屋達の慕情【後編】 ラオウ 330:受け継がれる魂
299:コンタクト 蘇妲己 322:黒猫の心は黒に蝕まれ

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最終更新:2024年05月31日 03:58