0343:遺言『希望』





線香から立ち上る薄い煙が部屋を巡る。
放送が流れた直後。
竜吉公主はその美しい瞳を見開いたまま呼吸さえも忘れていた。
「……太公望……まさか……」
言葉がこれ以上続かない。
まさか。あやつが。まさか。
意味のない単語と太公望という名前だけが公主の心を占め――――――――涙さえも流すことも出来ず、
公主はただ、呆然と虚空を見つめ。


「……っ?!」


突然首に感じた圧迫感。
気道が狭められる。
呼吸がままならない。

誰かが私の首を絞めている。
誰が?
この部屋にいるのは二人。
私と。

自分の考えた最悪の事態になってしまったことを悟り、公主は不自由な体勢のまま、背後を睨む。
目が合った金髪の少年が薄く笑う。
視界の端に映った彼の手にある物はロープ。
今、自分の首を絞めている物。


ナルトの内に封印され――――今や体の支配権を手に入れている九尾は、この建物に入ってから辛抱強く機を待っていた。
焦りはろくな結果を生まない。
長い年月を生き、奸計に長けた九尾は慎重にナリを顰め、周囲を観察する。
“同族”と思える男は別の部屋で眠っている。
もう一人の男は唯の人間だ。何も出来はしない。
だがこの“仙人”という女は厄介な感じがした。
戦闘能力は低そうに見えるが、何か特殊な力を持っているかもしれない。
放送が流れる直前にそれとなく探りを入れてみたが、さらりと流されてしまった。
恐らくは……この女は自分を警戒しているのだろう。
だからこそあの乾とかいう小僧を、同族の男と共に別室にやった。
この女を何とかしない限り、あの男と接触することすら難しいだろう。
無邪気なナルトの仮面を被りながら九尾は静かに機を待ち――――そして得た。
女を屠る絶好の隙。
放送直後。
仲間の死に呆然となった女に生まれた隙。
幸いにして、宿主が手に入れていたロープは立派に凶器となる。
音を立てずにロープを取りだし、女の首に巻き付けるのに要した時間は3秒ほど。
首を絞めることにしたのは、仙女の声を奪うため。
万が一物音を聞きつけてあの同族の男が目を覚ましたら厄介だからだ。
それに背後からならこの女がどのような力を持っていても対応はしやすい。
最悪の場合には、逃げやすいということだ。
ギリギリと力を込めるナルトを睨む仙女の表情は、苦悶に満ちていた。


一瞬でも気を抜いたら間違いなく死んでしまう。
細い指先で首に掛かる圧力を和らげようとするが、焼け石に水の状態だ。
視界が霞む。
苦しい。苦しい。苦しい。
このままでは本当に――――――――


コンコン


ドアを外から叩く音に、九尾の力が一瞬緩んだ。
「すみません。公主さん。ちょっとお話が」
夜中だということを考慮しているのか、小さな乾の声に公主はどうにか意識を繋ぎ止める。
「……ぐっ……」
公主の伸ばした指先が青雲剣に触れるのと、ロープに再び力が加わるのは同時だった。
「……公主さん?」
答えのない室内に、トーンを落とした乾の声が再度投げかけられる。
公主の指先が青雲剣を横に滑らせる。
力無く床を移動した剣は、そのような推進力でもその切れ味を遺憾なく発揮した。
音も立てずに、床に垂直に立つ椅子の脚を輪切りにしたのだ。
バランスを失った椅子は当然のように崩れ落ち、乾にドアを開かせるには十分な音を発する。
「公主さん?!失礼します!」
勢いよく扉が開く。
三者三様に最悪な状況に、一瞬、場の空気が止まる。
一番早く体を動かしたのは九尾だった。
公主を突き飛ばし、床に転がる青雲剣を拾い上げる。
咽せ返り、今にも倒れ伏しそうな公主よりも先に乾を始末することにしたのだ。
手にした剣を振りかぶり、呆然と立ったままの乾に突進する。
が――――――――

「……っ!」

崩れ落ちそうになった膝をどうにか持ち直し、九尾は剣を放り投げた。
「チャクラを吸い取る剣か……厄介な物を……!」
忌々しげに公主を睨み付け、舌打ちをする。
「……乾!鵺野を連れて逃げよ!」
「で、ですが……」
「……早くっ!ここから離れるのだ……!」
口元を流れる鮮血を拭うこともせずに、公主は床を這いずりながらナルトと乾の間に移動する。
「……行け!!」
公主の声に、弾かれたように乾は走り出す。
「逃がすか!――――何っ?!」
すかさず追いかけようとした九尾の足首を、公主が掴んでいる。
公主の左手には青雲剣。
それを支えに立ち上がった公主は、九尾の前に立ちふさがる。
「おぬしを行かすわけにはいかん……!!」
「死に損ないがごちゃごちゃうるせーってばよ」
「斎藤も、沖田も、富樫も……ターちゃんも……太公望すら逝った……これ以上は……!!」
争いを知らない、平和な日常を過ごしていた乾。
すでに3人もの仲間を失ってしまった鵺野。
何としてもこの場で死なすわけにはいかない。
それに四国を出た両津とダイがいる。
特にダイは、公主にとってこの世界における唯一の希望なのだ。
今ここでこの少年を行かせてしまえば……ダイにまで危機が及ぶかもしれない。
それだけは。それだけは――――――――!!
「殺生は好まぬ。だが……」

公主の瞳が九尾を射抜く。
その瞳に宿るのは希望。
ダイという光の中に見た、希望。
気圧された九尾が唇を噛む。

「おぬしを行かせる訳にはいかん――――――――!!」

残り僅かとなった命を全て懸けた公主の叫びが、線香の消えた部屋に響き渡った。



月に見られている。
たかが夜空に月が浮かんでいるだけでそんな風に思えてしまうことに、乾は改めて自分が現状に恐怖していることを自覚する。
ダム施設を飛び出した乾は、未だ眠り続ける鵺野を背負い走り続けていた。
大の大人と2人分の荷物は相当な重量となり乾にのし掛かるが、何があっても足を止めるわけにはいかない。
今、この足には鵺野と自分と、2人分の命が懸かっているのだ。
重さと疲労に浅くなっていく呼吸を感じながらも、乾の脳内は先程の出来事を何度も反芻する。
(あの状況は……どう見てもナルトが公主さんを殺そうとしていた)
公主のあの言葉といい、それは間違いないだろう。
(公主さんは……どうなったのだろうか)
自問の答えはかなり高い確率を持ってはじき出されている。
無事であるはずがない。
ただ腰掛けている状態でも線香の中でないと辛そうだったのに……戦うなんて出来るわけがない。
(だが……俺は)
鵺野先生がいる。
深い悲しみと怒りの果てに眠り続けるこの人を、少しでも安全な所へ連れて行くのが自分のすべき事だ。
だが――――――――

「……考えろ!考えろ……!」

自分は今、何をすべきか。
最も望ましい事態は、公主さんも鵺野先生も自分も無事で、尚かつナルトを拘束できること。
最も避けたい事態は、3人全員がナルトに殺されること。
後者の事態を避けるためには、今、自分は何をすべきか。
めまぐるしく回転する思考はいくつもの答えを出し、答えを消し、さらに答えを重ねていく。
その時、わずかに鵺野が身じろきをした。
目が覚めたのか、と思い様子を窺うがやはり未だ眠っている様だ。
視線を前に戻した乾の視界に、数時間前に3人で人を待ち伏せたあのビルが入ってくる。
その後ろはもう瀬戸大橋だ。
あの橋を渡って本州へ行ければ、両津さんとダイに追いつくことが出来るかもしれない。
そうすれば……
(俺は何を考えてるんだ!)
ナルトをダム施設まで連れて行ったのは自分だ。
このような事態を招いたのも自分の責任だ。
なのに事態の収拾を他人に押しつけるなど……
「……こんな時」
手塚だったら。
不二だったら。
大石だったら。
英二だったら。
タカさんだったら。
桃だったら。
海堂だったら。
越前だったら。
――――――――――――自分だったら。
各々の個性が強すぎてまとまりのない青学テニス部だが……きっと、この答えは全員同じはずだ。
自分が戻った所で何ができるかわからない。
かえって足手まといになるかもしれない。
それに、自分が死んでしまうかもしれない。
それでも……自分を助けてくれた人をこのまま見殺しにすることなど出来るはずがない。
辿り着いた瀬戸大橋の橋桁の陰に鵺野を降ろし、その横に2人分の荷物を置く。
自分の手帳を1ページ破り、鵺野に宛てた手紙を綴る。
そしてその紙を手帳と共に鵺野の左手に握らせた乾は、今度は逆に道を走り始めた。



開け放たれたドアから湿った風が流れ込む。
剣を構え、ナルトと向かい合う竜吉公主の心には、自身の体のことなど考える余地はない。
『この少年を行かせるわけにはいかない』
この決意だけが公主の心を占め、真っ直ぐに立つ力を与えている。
「おぬし……名はなんという?」
うずまきナルトってもう言ったってばよ」
「……私が聞いておるのは……おぬしの名、だ。その少年の名ではない」
仙女の瞳の強さに口先だけの誤魔化しは聞かぬ、と悟った九尾は、肩をすくめてみせた。
「……九尾、とでも名乗っておこうか」
口元だけで薄く笑った少年を更に睨み、公主は「九尾」という言葉から連想する人物を思い出す。
蘇妲己
太公望と深い因縁を持ち、公主とも浅からぬ因縁を持つあの女と同じ系統の妖怪なのか。
「……狐か」
公主の確認の言葉に、九尾は口元の笑みを深くしただけだった。
それを肯定と受け取った公主は、この状況が考え得る限り最悪なものとなったことを知る。
この……うずまきナルトという少年は、すでに九尾という妖怪に乗っ取られている。
つい数十分前に自分が危惧したことが現実となり、公主は歯噛みをせずにはいられなかった。
「オマエが何らかの力を持っているやもと警戒していたが……どうやら取り越し苦労だったようだな」
何か特別な力を持っているのなら、先程自分に殺されかけた時に使ってみせているだろう。
そう言外に指摘され、公主は九尾と同じく沈黙のみを返す。
こうなってしまっては誤魔化しは利かない。
太公望ならばこのような状況でも妙案を思いつくのであろうが、生憎と自分はそこまで機転は利かない。
自分に出来ることはただ一つ。
この少年を一秒でも長くここに留め、乾と鵺野が逃げる時間を稼ぐこと。

「……何が目的じゃ。優勝か?」
「今から死にゆく者にそのようなことを語るほど、儂はお人好しではないわ」

公主の意図を悟ったのか、九尾は会話には乗らない。
にぃ……っと口角をあげ、一歩足を踏み出す。
退かぬ公主との距離が少し縮まる。

「おぬしはどうやってその少年に取り憑いた?」
「取り憑いたわけではない。儂が望んだことではないわ」

また一歩、距離が縮まる。

「なぜ……人を殺す?」
「さぁ。何故だろうな」

薄く笑ったまま、九尾がまた一歩。

「…………そのような狐に負けるでない…………!!」

ナルトへと向けた公主の叫びを、九尾が鼻先で笑う。
「放っておいても死にそうだが……」
また、一歩。

「希望をなくさぬその瞳……自分を善と信じる輩は揃ってそのような目をするな……」
最後の、一歩。


「――――――――胸糞悪いわ――――――――!!」


怒号と共に九尾が床を蹴る。
青雲剣が横薙ぎに空を切る。
現れた切っ先の一つが九尾の金髪を数本散らす。
床を跳ねた九尾が、拳を公主の腹に打ち込もうとする。
剣を振り下ろしそれを防いだ公主は、次の瞬間、九尾の姿を見失っていた。

「遅いわ」

にやりと笑った九尾が公主の右腕を掴み、そのまま後ろにねじ上げる。

「――――――――っ……あああああああああああああああああああああああああああああ!!」

皮膚が裂ける音。
肉が千切れる音。
血が噴き出す音。
そして。
ねじ切られた腕から、血を啜る音。

「たいした補給にはならんな」
「…………」
痛みに絶叫しそうになる唇を噛みしめ、倒れ伏した公主は瞳だけで九尾を睨みあげる。
例え血にまみれようと、血に臥そうと、生粋の仙女としての誇りだけは失わぬ。
苦痛に顔を歪ませながらも、公主は真っ直ぐに九尾を睨み付ける。
半身を血で染め、ねじ切った公主の右腕を一舐めした少年は薄く笑ったままそれを見下ろしている。
潔癖である仙女の衣服は血で染まり、急速に命が流れ出していく。
「……諦めては、ならぬ……」
「……何?」
公主の口から零れた言葉は、九尾にとって予想外のものであった。
「そのような妖怪などに……負けてはならぬ……」
ぬちゃりとした血を吐きながらも、公主は言葉を紡ぐ。
それは九尾の内に眠る少年へと向けた言葉。
出来ることなら救ってやりたかった。
でももう、自分にはそれは叶わない。
だが、まだ。

「希望は……まだ……」

鵺野が生きてさえいれば、妖怪を少年から引き離すことが出来るかもしれない。
ダイが生きてさえいれば、このゲームを壊せるかもしれない。
だから。
だからどうか。

「希望を……捨て……る……な……」

それは、少年への、ダイへの、生き残っている善なる者達への遺言。

そして希望を見続けた仙女の頭に、十分な力を持った拳が振り下ろされ――――――――――――



血溜まりの中心に立つ九尾は、苦々しげに唇を噛んだ。
女は死んだ。
メガネの小僧など取るに足りぬ。
後は同族の男と接触し、できれば利用してやるだけだ。
利用できぬなら殺すまで。
多少の誤差はあったのものの、目的は一つずつ達せられているはずだ。
なのに。
先程の、仙女が最期に吐いた戯れ言。
奥底で閉じこもっていたはずの宿主がそれにほんの少し……反応を示したのだ。
今はもう何の音沙汰もないが……
「オマエはそのまま眠っておればよいのだ……!!」
舌打ちをし、自身の胸を強く叩く。
忌々しげに仙女の骸を蹴り付け、九尾は荷物を拾う。
そしてそのまま、九尾は音も立てずに宿直室を後にした。

その部屋からは、線香の香りはもうしない。
香るのは――――――――血の匂いのみ。





背負う物の何もない足は、疲労してはいるがだいぶ軽い。
薄い明かりを放つ月が、相も変わらず地上を見下ろしている。
ダム施設とビルの中間当たりまで戻った乾は、走る速度を徐々に落とす。
あまり視力がよくない乾の目にも、向こうから歩いてくる人物が視認できたのだ。
「よお」
「……やあ」
楽しげに手を上げ挨拶をよこした九尾に、乾はメガネの位置を直し、挨拶を返す。
乏しい光でもここまで近づけばわかる。
口元から左胸、太ももの辺りまで少年が血に染まっている。
(彼が怪我をしている様子はない……だとするとこの血は……)
状況からはじき出された答えは、あまり考えたくないモノだ。
だが、窮地からの脱出も状況を変える策も、全ては現状を正しく把握することから始まる。
意を決し、乾は口を開いた。
「公主さんはどうしたんだい?」
「ああ。死んじまった」
あっさりと、楽しげに九尾が笑う。
87%という高い確率で予想していたはずの答えなのに、乾の心は衝撃に揺さぶられる。
(公主さん……間に合わなくてすみません……でも、後悔するのは後回しにさせてもらいます)
「念のため確認するが……君が殺したのか?」
「もっちろん、だってばよ!」
誇らしげに胸を張り、また九尾が笑う。
公主を殺したことを肯定した。
それはつまり、自分を生かすつもりがないということか。
(……望むところだ)
決意と策を胸に、乾は無意識にまたメガネをズリあげる。

「確か……君の夢は火影になること、じゃなかったか?」


――――――――――――ドク……ン……

投げつけられた予想外の言葉が、九尾の奥をざわつかせる。
ほんのわずかに――――また、宿主が身動きをしたのがわかる。
「よく知ってんな」
宿主が再び動かなくなったことを確認し、笑みの種類を変えた九尾は乾を見上げた。
「春野さんから聞いたんだ。君はそのためにこのゲームに乗ったのか?」
今更だが、乾はただの中学生だ。
だから公主の様に、ナルトに潜むよからぬモノには気付くことができない。
彼なりにナルトの行動を推察した結果のこの言葉に、九尾はただ笑う。
あの同族の男と共に捜していた同里の娘の手がかりが、こんなところに転がっていたとは。
捜していた二人の人物へと繋がる道を一気に見つけ、九尾は声を上げて笑いたい気分になった。
まずはこの小僧を捕獲。
そして娘と男の居場所を吐かせる。
行動方針を決めた九尾は、緩やかに足を引き、駆け出せる体勢を取る。
「そうだってばよ♪俺は優勝して火影になんなくちゃいけないんだってばよ!……だから」
無邪気な笑顔の仮面を被り、九尾が告げる。
「そのために死んでくれってばよ!」

ダンッ

足を踏み出そうとしたその瞬間、聞いたことのある音が足下に響いた。
乾の手の内には、コルトローマンがある。
「……俺にも夢があってね」
引き金を引いた反動で痺れた手を心中で笑い、乾は真っ直ぐに九尾を見つめる。
「……いや、夢という言葉があてはまるかどうかは微妙だな。だがどうしても成し遂げたいことがあるんだ」
回りくどい乾の言葉を聞きながら、九尾は目前の武器についてナルトの記憶から引っ張り出していた。
今朝方右腕に喰らった、急所に当たれば即死、という厄介な武器。
忍者であるナルトにとって、ただの中学生である乾を素手で殺すことなどたやすい。
現にチャクラの温存のために、あの仙女もわざわざ素手で殺したのだ。
だが今回は、この小僧があの武器を持っている限りそう簡単にはいきそうもない。
口元だけで笑い黙す九尾には構わず、乾が再度口を開いた。
「俺は……6%の希望に命を懸けようと思う」
「わけわかんねぇってばよ」
「……俺を欠いた青学が全国制覇を成す確率は29%……
 そして越前を欠いた青学が全国制覇を成す確率は23%……6%というのはその差だ」
一瞬毎に張りつめていく空気とは裏腹に、二人の口元には笑みが浮かぶ。
緩やかな風が吹き、汗で滲んだ二人の額をやんわりと冷やす。
「……やっぱわけわかんねーってば」
「俺の“夢”の話だよ」
「ふーん……」
興味のなさそうな返事をする九尾の心は、徐々に苛立ち始めていた。
薄明かりに透けるメガネの奥からこちらを見つめる少年の目は、状況を諦めてはいない。
あの、最期まで戯れ言をはき続けた蛭魔の瞳。
あの、最期まで戯れ言をはき続けた仙女の瞳。
この少年はアイツらとよく似た瞳の色を宿している。
呆れるほどに諦めの悪い…………希望の光。



(最悪なのは、3人全員が彼に殺されること。しかもそのことを誰にも知られずに、だ)
走り続けている間考えていた“今、自分がすべき事”。
それは、彼に殺されることによって、彼が危険だと周囲に伝えること。
発砲音で鵺野先生が目覚める可能性が高いことも計算済みだ。
鵺野先生が生き残り、このことを周囲に伝えてくれればそれだけナルト絡みの危険は減るだろう。
戦う力のない、ただの中学生である自分に出来る最後の策。
もちろん、最後まで生き残る望みを捨てるつもりはない。
だが、覚悟はもう決めた。

「……残念だが、俺は君を殺そうと思う」
「やってみろ、ってばよ!」

対峙する少年の歳は共に15。
運命に踊らされる二人の少年を、月だけが見ている。



『鵺野先生へ

この手紙を読んだら、すぐに本州に渡り両津さんとダイ君と合流してください。
ターちゃんも、公主さんも殺されました。俺も殺されました。
俺を殺したのは“うずまきナルト”という少年です。
身長およそ160cm、金髪の、俺と同じ歳くらいの忍者です。
四国に留まってはいけません。
どんな音が聞こえても、何があってもすぐに出てください。
そして生き残ってください。

俺の手帳を先生に渡します。
中には俺なりの首輪に関する考察が書いてあります。
どうか脱出に役立ててください。
そして、できれば……この手帳の後ろ5ページを越前に届けてください。
俺が考えた青学テニス部レギュラーの練習メニューが書いてあります。
そして越前に会えたら、伝言をお願いします。

「オマエは青学全国制覇の希望の光だ」
「オマエはもう、立派に青学の柱だよ」          …………と。

                                乾貞治





【香川県/瀬戸大橋の橋桁の陰/深夜】

【鵺野鳴介@地獄先生ぬ~べ~】
【状態】気絶 
【装備】御鬼輪@地獄先生ぬ~べ~
【道具】支給品一式×2(一つの支給品は水を7分の1消費、もう一つの支給品は一食分の水、食料を消費 )、乾の手帳
【思考】1、気絶


【香川県/瀬戸大橋近く/深夜】

【乾貞治@テニスの王子様】
【状態】公主の死によるショック大、だが冷静
【装備】コルトローマンMKⅢ@CITY HUNTER(ただし照準はメチャクチャ)(残弾29)
【道具】弾丸各種(マグナムリボルバーの分は両津に渡してある)
【思考】1、ナルトを殺す。
    2、ナルトを殺せなかった場合、彼に殺されることによって鵺野や周囲に危険を伝える。      
    3、ナルト殺害に成功した場合、先に本州に渡っているはずの鵺野を追いかけて両津、ダイ、越前と合流し脱出を目指す。 

【うずまきナルト@NARUTO】
 [状態]:九尾の意思、重度の疲労、全身に軽度の裂傷、チャクラ消費・中
 [装備]:無し
 [道具]:支給品一式×2(一つは食料と水を消費済み、ヒル魔から奪取)
     ゴールドフェザー&シルバーフェザー(各5本ずつ)@ダイの大冒険
     ソーイングセット、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
 [思考]1、乾から鵺野とサクラの情報を得る。得た後は殺す。
    2、鵺野と接触し、可能なら利用。不可能なら殺害後捕食。
    3、剣心、セナとの接触は避けたい。
    4、サクラを探し、可能なら利用。不可能なら殺害
    5、術者に能力制限を解かせる
    6、優勝後、主催者を殺害する
[備考] (ナルトの精神は九尾の部屋で眠っています。
    肉体的に瀕死、またはナルトが外部から精神的に最大級の衝撃を受けると一時的に九尾と人格が入れ替わります)

※玉藻の封印は、玉藻の死亡と、九尾のチャクラの一部によって解除されたという見解です。
 そのため、今のナルト(九尾)はナルトのチャクラ+九尾のチャクラ15%程度のチャクラが上限です。
 ただし、九尾のチャクラも使いこなせます。
 あと、九尾は基本的にナルトの口調で喋ります。

※更木剣八、ターちゃんの荷物一式は愛媛県の市街地に放置されています。


【竜吉公主@封神演義 死亡確認】
【残り55人】

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320:死神交響曲第十一番第三楽章『王者』 うずまきナルト 351:役者三対、開幕舞台
320:死神交響曲第十一番第三楽章『王者』 乾貞治 351:役者三対、開幕舞台
320:死神交響曲第十一番第三楽章『王者』 鵺野鳴介 345:鵺野鳴介、復活ッッ
320:死神交響曲第十一番第三楽章『王者』 竜吉公主 死亡

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最終更新:2024年06月23日 17:26