0407:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷



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 黒龍波が消滅した後の光景といえば、それは正に、地獄絵図にも等しい惨状だった。
 その被害地の、ちょうど中心。
 黒龍波を正面から受け止め、街を破壊する衝撃と魔界の炎が生み出す豪熱に苦しめられながらも、星矢はまだ、生きていた。

「は、は……よく、頑張ってくれたな……」

 力ない横倒しの姿。仰向けになりながら、自身が装着しているペガサスの聖衣に語りかける。
 微かな焦げを帯び、若干輝きを弱めつつあるペガサスの聖衣。
 もしこれを身に着けていなかったら、星矢は黒龍波の衝撃に耐え切れず、間違いなく絶命していただろう。

「――感謝するぜ。お前のおかげで、俺はまた少し、強くなった」

 身体を起こしきれない星矢を見下ろすように、崩れたコンクリートの残骸から、炎の黒衣を身に纏った飛影が顔を出した。
 これまでとは比べ物にならない規模の黒龍波で星矢を追い詰め、最終的にはその炎を全て自分で喰らい、妖気を増幅させる。
 これこそが、邪王炎殺黒龍波の完成形。今の飛影の戦闘力は、以前の比ではない。

「お前も……相当強いな。流星拳を喰らいながら、あんなもん撃ってくるなんて……たまげたぜ」
「……俺はもう、誰にも負けん。ただ、それだけだ」

 力なく失笑する星矢に、飛影は無表情で近づいていく。
 一歩、二歩、着実に、止めを刺すために。


 ――肉マン、志々雄真実、ウソップマミー――以上の10名だ――


(放送……ハーデスの奴が、喋ってるのか? こいつ……本当に影薄いよな……大して喋んねーし……何考えてるか、全然……)

 薄れゆく意識の中で、放送を確認する。
 宿敵、ハーデスは相変わらず表に出てくるような存在ではなかった。
 他の二人の主催者とは、何かが違う。本当に存在しているのか分からなくなってくるような――不気味な存在感の無さを感じる。

(ハーデス……お前は、いったい……)

 力尽きる寸前、飛影が眼前まで迫る寸前、星矢は、聖闘士としての使命を忘れ去ろうとしていた。

 もう、限界だ。俺の力は、なんてちっぽけだったんだ。
 もう、限界だ。ハーデスたちはきっと、ダイがなんとかしてくれる。
 もう、限界だ。俺は所詮、青銅聖闘士。
 もう、限界だ。藍染を倒したところでもう、ガタがきてたんだ。
 もう、限界だ。一輝、サガ、デスマスク、すまん。
 もう、限界だ。アテナよ、無念です……


「…………なんだ、もう抵抗する気はないのか?」

「…………」

 飛影が問いかける。
 星矢からの答えは、ない。

 死を受け入れようとしている、倒れた少年が一人。
 少年に死を与えようとしている、立った少年が一人。

 なんてことはない。
 この世界で幾度と無く繰り返されてきた、殺し合いの1ページ。
 それがまた、刻まれるだけだ。

「なら、次はあの女を殺しに行くとするか」

 ポソリ、と飛影が呟く。

「………………あ?」

 うわ言のように、星矢が聞き返す。

「東へ向かっていった女……お前が『麗子』と呼んでいた奴だ。お前を殺したら、次はあの女を殺しに行くとしよう」

 その、他愛もない、冗談みたいな、一言が。

「……なんだって?」

 フツフツと、その場に流れる小宇宙を再び燃え上がらせ、

「おい……勘違いするなよ? 俺は、ちょっとばかし前に藍染っていうそれなりに強いヤローと戦ったばっかなんだ」

 狙い通り、飛影の狙い通りに、

「それで少しばかり体力を消耗してだな……全快の俺だったら、お前みたいなチビ秒殺なんだよ……」

 諦めかけていた星矢の闘志を、震い立たせた。

「やるのか? チビ」
「チビはお前だぁぁぁ! 聖闘士の力を嘗めるなよ――ッ!!」

 気合一声、二つの脚で見事立ち上がって見せた星矢は、再度飛影に向き直った。
 もう、仲間を失わないため。
 一輝、サガ、デスマスク――
 石崎、富樫、太公望、キルア――
 誰かが死んで、誰かが悲しむ。
 こんな腐ったループは、絶対に止めなければいけない。


 ――俺が死んだら麗子さんやまもりさんが危険になるし、それに、

 ――俺が死んだら、みんなが悲しむだろ?


 だから、ここでは死ねないのだ。

「死ねェ――――ッッッ!!」

 黒龍波の妖気による衣を纏い、飛影が突進を仕掛ける。
 星矢はその場にどっしりと構え、必殺のペガサス流星拳で迎撃しようとした。
 しかし、極限を越えた疲労は黙らせられないのか、無骨な動きを見せつつ振り被る腕は、重い。
 飛影はその刹那、自身の勝利を確信的なものにした。
 目の前に立つこの男に、最早満足な攻撃は無理なのだと。
 悟って、「つまらん」と思いつつも、拳を振るう。
 なんにせよ、これで『勝ち』だ。
 今度こそ、文句なしに、『勝った』。

「――」

 ――風を切る音は、実に気持ちのいいハーモニーを奏でてくれた。
 振り被った拳が対象を捉えられなかったのは、なんの間違いか。
 飛影の拳による攻撃は、当たらなかった。
 避けられたのだ。

 その一瞬――制限を凌駕し、光速のスピードを取り戻した星矢によって。

「残像だよバカ!」

 飛影が見せた残像、そして藍染が駆使していた『瞬歩』。
 その動きから学んだ、星矢オリジナルの光速瞬間移動術が、飛影の攻撃を完璧に回避した。

 星矢は、
 気づいたら、

(――背後に――――ッ!?)

 回りこんで、
 飛影の身体を掴み、
 空へ、

(昇っていく――ッ!!?)

 そして、
 落ちていく。

 「 ペ ガ サ ス ロ ー リ ン グ ク ラ ッ シ ュ !!! 」


 ~~~~~


 ――それではまた六時間後。今度は、夜にお会いしましょう。


 放送が終わりを告げ、フリーザの言霊は空へ消えていく。
 その頃、兵庫県での激戦には終焉が訪れ、闘争者が二人、並ぶように横たわっていた。

「クソッ! あとちょっとってところで、しくじっちまった!」

 ピクリとしか動かせない身体をジタバタさせながら、星矢は悔しそうに叫んだ。
 飛影の突進に対し、最後の力を振り絞って仕掛けたペガサスローリングクラッシュのカウンター。
 限界を超えていたにも関わらず、あの技を出せたのは、正に奇跡の賜物といえよう。
 ……いや、ひょっとしたら、『また』仲間が力を貸してくれたのかもしれない。

「……何故、俺を殺さなかった」

 こちらも全てを出しつくし、黒龍波の妖気もほとんど消え失せてしまった飛影が、呟く。

「ああ? 言っただろ、しくじったって。俺が万全の状態だったら、お前今頃死んでたぞ」

 激突の寸前、ペガサスローリングクラッシュの体勢が崩れてしまったのは、その衝撃に星矢自身が耐え切れなかったからだ。
 藍染戦のダメージと疲労、そして煉獄焦や黒龍波を正面から受けた代償は、しっかりと体に残っていたのだ。
 決して、飛影に情けをかけたわけではない。

「あー、完璧に決まったと思ったんだけどなー。ここぞって時にミスしちまった。これじゃあ一輝達に笑われちまう」

 そう、決して。
 星矢は飛影という好敵手相手に、無礼のないよう全力を出し切ったのだ。
 その結果が、二人を生かしている。

「なぁ、お前。そういやさ、まだ名前聞いてなかったよな?」
「……飛影」

 横たわる二人、身体を起こそうともせず、戦意を消したまま語り合う。

「飛影、か。俺の名前は、星矢ってんだ。よろしく頼むぜ」
「フン。さっきまで殺し合いをしていたというのに、何がよろしくだ」
「ハッ、それもそうだな。でも、ま、もう終わったことじゃんか」

(何が終わったと言うんだ。俺はまだやれるぞ)
 黒龍波の反動による眠気と闘いながら、飛影は心の中で星矢に対し不服を漏らしていた。

「飛影……相談なんだけどよ、お前、俺たちの仲間にならないか?」
「…………なに?」
「お前がさっき撃った技、黒龍波だったか。
 あの炎から発せられた小宇宙はスゲー禍々しかったけどよ……でも、藍染みたいに腐っちゃいない。
 あいつの小宇宙をドブ川と例えるとだな、お前の小宇宙は洗えば綺麗になる下水道みたいなもんで……
 あれ? あんまりいい表現じゃないなこれ?」

(何を言っているんだコイツは。だいたいコスモだとかアイゼンだとか、いったい何のことを言ってるんだ)
 変な奴、と感じていた。
 同時に、幽助に似ている、とも。

「要するにだな、俺たちは脱出して、ハーデス達主催者を一網打尽にしてやろうって考えてるんだ。
 そのために、お前に力を貸して欲しいんだよ」
「バカか貴様は。俺はお前を殺そうとしていたんだぞ。今だって、余力が残っていれば瞬殺してやるところだ」
「その時は、俺も全力で抵抗させてもらうさ……でもよ、お前の小宇宙は、俺みたいな奴に無差別にぶつけるもんじゃない。
 ハーデスみたいな強大な力にぶつけてこそ、真の力を発揮すると思うんだ。その方が、お前も楽しめるだろ?」

「…………フン」

 否定はしなかった。
 主催者達の力の強大さには気づいていたし、いけ好かないとも感じていた。
 奴等の手の平の上で踊るのは、真っ平ごめんだ。だが、強い奴と戦うという欲望は無視できない。

「ハーデスは強い。バーンって奴もなかなかみたいだが、こっちにはダイもいるしな。勝算はある。
 きっと損はさせないぜ。だから、俺たちと一緒に――」

 星矢の和やかな口調を遮るかのように、飛影はむくっと立ち上がった。
 そのまま星矢の顔を見ようともせず、向かう先は明後日の方向。立ち去ろうというのか。

「おいっ、どこ行くんだよ飛影」
「貴様とつるむ気はない。俺は俺で、勝手にやらせてもらう」

 今にも睡魔で倒れそうな身体をフラフラと操作しながら、飛影は強がりじみた言葉を吐く。
 あくまでも一匹狼を貫く。たった一人で、歩くつもりなのだ。

(ったく、素直じゃない奴だな……)

 苦笑しながらも、星矢には分かっていた。
 飛影はきっと、こちら側に来てくれる。
 直に小宇宙をぶつけ合って、感じたのだ。
 こいつは、ハーデスの下でいいようにされて黙っているような器じゃない、と。
 必ず反旗を翻す。その時には、何食わぬ顔で隣に現れてくれる。

 そう、確信して。

 星矢が、去り行く飛影の背中を五メートル先に見た時、

 二人の間に、セーラー服の女性が一人、飛来した。

(え――?)「臓物を、ブチ撒けろッッッ!!!」


 ~~~~~


『衝突』による移動の時間は、本当にあっという間だった。
 香川のダム施設内でダイ君と戦っていた私の身は、どことも知れぬ廃墟の街に転送。
 目の前には、『衝突』の対象になったのであろう、黒髪を逆立たせた小柄な少年が立っていた。

 そのボロボロに傷ついた身体を見て、ピンときた。
 さらにスカウターで確認してみると、やはり。
 この少年の戦闘力、恐ろしく低い。
 おそらくは戦闘直後だったのだろう。
 又とないチャンスと感じた私は、瞬時にバルキリースカートを振り上げた。
 外見的な特徴から推測しても、この少年がピッコロである確率はゼロ。
 つまり、殺害してもなんら問題はない。

「臓物を、ブチ撒けろッッッ!!!」

 四つの刃が、虚を突かれた少年を襲う。
 その切っ先が届こうとした刹那、スカウターの反応が、上昇した。

(ッ! 消えた――!?)

 戦闘力の瞬間的な上昇と共に、少年は影の如き速度でバルキリースカートの一撃を回避した。
 が、その戦闘力もすぐに元に戻る。
 やはり、満身創痍の身体か。
 ならば逃す手はない。
 私はここぞとばかりに追撃を仕掛けようとするが、バルキリースカートを引き戻した後、背後にもう一つ反応があることに気づいた。
 振り向くと、そこには鎧をつけた別の少年が。
 この少年は知っている。
 放送前、私が岡山県で遭遇したグループ……その中の、星矢という少年だ。
 彼自身も相当な重傷を負っているところから見て、どうやら、黒髪の少年はこの星矢とやり合ったようだ。
 そして星矢は黒髪の少年と違い、仰向けで地に倒れている。
 その上、私という顔見知りの突然の出現に、完全に混乱しているようだ。

 状況を整理しているのだろうな。
 可哀想に。
 だが、悪く思わないでくれ。
 キミはあまりにも、
 そう、あまりにも、
 格好の、標的(マト)だ。

「げふっ」

 私は動揺を見せる星矢の腹部……鎧で覆われていない箇所を精密に狙い、バルキリースカートの刃を突き立てた。
 一刃、二刃、三刃、四刃。
 連続して突き立てた後は、二本ずつ左右に動かしていく。

「はらわたをぶちまけろ」

 綺麗に割腹された星矢の腹は、ピンク色の臓物をブチ撒け、赤い鮮血を吹き散らす。
 すまないな。
 いきなりのことで、何がなんだか分からなかったことだろう。
 だが、何も考えなくていいんだ。
 キミは、もう間もなく死ぬ。
 両津やダイに起こった悲劇も、キミが知る余地はない。
 せめてもの情け、今、楽にしてあげよう。

「邪王――」

 おっと、もう一人の死に損ないを忘れるところだったな。
 振り向いた先には、その辺の残骸から拾い上げたのであろう、先端が尖った鉄パイプを手に構える黒髪の少年がいた。

「炎殺剣!」

 これは驚いた。
 少年の手から放たれた鉄パイプの先端は突如として炎を帯び、信じられないスピードでこちらに迫ってくる。
 窮鼠猫を噛む、か――冷静に対処すれば防げぬ攻撃ではない、が、完全に虚を突かれたな。
 バルキリースカートで弾き落とそうとした鉄パイプは予想外の加速を見せ、私の顔面を狙ってきた。
 どうにか避けることには成功したが、頬を掠めてしまった。
 ダメージはないが、ボンッ、という小さな破裂音が。
 くそっ、スカウターがやられたか?
 まあ、今はそれよりも目の前の獲物だ。
 どうやら今のが精一杯の抵抗の様子。
 これ以上の攻撃はないだろう――ならば、今度こそ仕留める。

 ガッ

 黒髪の少年に襲い掛かろうとした私を止めたのは、臓物をブチ撒けたはずの星矢だった。
 人間の生命力とは、本当にしぶといものだな。
 死人同然のくせして、相当な力で私の足首を掴んでいる。

「逃げ、ろ……ひえ、い…………」

 ほう、あの少年は飛影というのか。
 しかし妙だな。てっきり、星矢と飛影の二人は敵対しているかと思ったのだが。
 まぁ、あまり考える必要もないか。
 どうせ、二人ともここで死ぬ。
 私は、私の足首を掴んで離さぬ星矢の腕に再度刃を突き立てた。
 一刃、二刃、三刃、四刃。ガシャンガシャンと可動音が鳴る。
 五刃、六刃、七刃、八刃。ガシャンガシャンと可動音が鳴る。
 八度ほど刃を動かしたところで、星矢の腕は肘の辺りから切断された。
 これで、私の足を縛るものは何もない。

 さて、飛影とやらを追うか。
 私が改めて振り返ったそこには、飛影は既にいなかった。
 幾らか先を見渡してみると、瓦礫の山を駆け上る猫か鴉のような影が一つ、死に掛けとは思えないスピードで蠢いている。
 もうあんなところまで逃げられたか。
 スカウターで索敵を試みるが、起動しない。
 くっ、やはり壊れたか。
 私は、仕方なくスカウターをその場に放棄し、飛影を追おうとした。
 彼のスピードはかなりのもののようだが、攻めるなら疲弊しきった今をおいて他にない。
 と、足を動かしたところで思わぬ盲点に気づいた。
 星矢の仲間、秋本麗子に姉崎まもりの存在だ。
 星矢は、大阪に向かっていった彼女等を追って行ったはずだ。
 だとすれば、時間からしてここは兵庫か京都の辺りか。
 幸か不幸か、距離的にはそれほど移動していないようだ。
 そして、近くに二人がいない、加えて先ほどの放送でも名前を呼ばれていないあたり、まだ大阪へ向けて移動しているものと考えられる。
 このまま東へ歩を進めれば、あの二人を視野に捕らえることが出来るんじゃないか?
 あの二人の戦闘力は低かった。
 殺すことは容易だ。
 行方が掴めず、見失う可能性のある飛影を狙うより、彼女等を追う方が確実か。

 私は進路を東に取り、大阪を目指した。
 私が、今度こそ確実に殺したであろう少年には、目もくれず。
 いいぞ。
 これでいい。
 私の決心は揺ぎ無い。
 それを、今度こそ証明することが出来た。

 さて、また殺しに行くか――


 ~~~~~


 絶望  (あれ、なんだこれ?)
 臓物  (ちょ……中身、全部出ちまってるんだけど)
 憤慨  (ふざけんなよ、なんでこんなとこで)
 途方  (夢……じゃ、ないよな)
 悔恨  (マジかよ……いや、いやいやいや)
 願望  (きっと悪い冗談なんだよな、これ)
 使命  (だって、聖闘士だぜ俺? 俺が死んだら、誰が)
 虚無  (……………………)
 否定  (嫌だ…………)
 抵抗  (死ねない。仲間のためにも、生きてハーデスを倒さなくちゃ)
 苦痛  (でも……痛い)
 記憶  (ああ……)
 錯綜  (麗子さん……両津さん……ダイ……)
 希望  (そうだ……ペガサス……せめて、お前、だけでも……)
 譲渡  (あいつの……ダイの、元へ……あいつなら……)
 女神  (…………ア、テ、ナ…………)
 祝福  (ひか、りが)
 確定  (  ) 
 死亡  ()
 ――


 なんで彼女があんなことをしたのか、分からなかった。
 なんで自分の臓物が表に出てるのか、分からなかった。
 死ぬってことだけは、分かった。

 ………………………………………………………………うん。死ぬ。

 これが、逃れられないこのゲームの『ルール』なんだな。


 ~~~~~


 若き聖闘士の亡骸の傍で、元の形態を取り戻していた聖衣が一つ、悲しそうに佇んでいた。
 天馬星座の聖衣は、生涯最高の主の最期を前に、何を思ったのか。
 誰にも分からぬまま、翼が現れる。
 蜃気楼のような、見間違いの産物かもしれない。
 聖衣が宿した純白の翼は、正しく天馬のそれで。
 新たな主の元へ、旅立っていくようで。

 儚く、

 短く、

 虹のように、

 星のように、

 空へ、

 消えていった。


 ~~~~~


 ついに訪れた最大級の睡魔に、飛影は屈服しつつあった。

「くそ……」

 自らが廃墟にした街、その静かな片隅で、今は穏やかに眠るとしよう。
 あの女への逆襲も、星矢との決着も、それからだ。

(星矢……まさか、俺を逃がしておきながら死んではいないだろうな……)

 崩れたコンクリートの山を仮宿とし、その隙間から僅かに見える空を覗く。
 綺麗、というよりは煌びやかな、光が一閃、曇った空を駆け抜けていった。
 それが、星矢と同じペガサスの輝きに見えて。

(……そういやいつの間にか、雨は、止んだんだ、な)

 瞼が落ちて、今度は夢の中で。
 廻り合えた強敵と、再戦したい、と願うのだった。





【兵庫県/二日目/日中】
【秋元・カトリーヌ・麗子@こち亀】
[状態]:中度の疲労
[装備]:滅茶苦茶に歪んだサブマシンガン(鈍器代わり)
[道具]:支給品一式、食料二日分プラス二食分
[思考]1:まもりを追い、なんとしても守り通す。
   2:琵琶湖にいると推測したリョーマも保護したい。
   3:沖縄へと向かう。
   4:主催者を倒す。


【兵庫県・廃墟化した市街地/二日目/日中】

【津村斗貴子@武装練金】
 [状態]:軽度疲労、右拳が深く削れている、顔面に新たな傷
     核鉄により常時ヒーリング、絶対に迷わない覚悟
 [装備]:核鉄C@武装練金、リーダーバッヂ@世紀末リーダー伝たけし!
 [道具]:荷物一式(食料と水を四人分、一食分消費)、子供用の下着
 [思考]1:大阪方面へ向かい、麗子、まもり、飛影を見つけ次第、抹殺。
    2:クリリンを信じ、信念を貫く。後を継ぎ、参加者を減らす。
    3:ドラゴンボールを使った計画を実行。主催者が対策を打っていた場合、攻略する。
    4:ドラゴンボールの情報はもう漏らさない。
    5:ダイを倒す策を練る。

【飛影@幽遊白書】
 [状態]全身に無数の裂傷、全身各所に打撲、重傷、重度の疲労、黒龍波使用による眠気
 [装備]なし
 [道具]荷物一式
 [思考]1:寝る。
    2:セーラー服の女(斗貴子)を殺す。
    3:星矢と決着をつける。
    4:強いやつを倒す。
    5:桑原(の仲間)を探す。
    6:氷泪石を探す(まず見つかるまいし、無くても構わない)。
    7:ピッコロ、アビゲイルを探す。
    8:弱い奴等とつるむ気はないが、ハーデス等に喧嘩を売るのも悪くはないと考えている。

※故障したスカウター@DRAGON BALL、星矢の支給品一式、食料二日分プラス二食分はその場に放置。
※ペガサスの聖衣@聖闘士星矢は、ダイの元へ。


【星矢@聖闘士星矢 死亡確認】
【残り30人】

時系列順で読む


投下順で読む


402:Vain dog(in rain drop) 斗貴子 409:血塗れの死天使たちへ
395:善でも、悪でも 星矢 死亡
395:善でも、悪でも 秋本麗子 409:血塗れの死天使たちへ
397:Rain of passing each other 飛影 424:見えない未来へ

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最終更新:2024年08月04日 12:06