0294:フレイザードの世界~いつか勝利の旗の下で~




 日は落ちて、フレイザードは山麓に開いた小さな洞窟の中で傷ついた躰を横たえていた。
 この中に居る限り、まず発見される事は無いだろう。
 入り口には、背丈ほどもある雑草が覆い茂っている。

 如何にしてこの洞窟に辿り着いたのか。
 記憶に在るのは、ただ放送だけだった。まだピッコロはくたばっていないらしい。
 今は合流を急ぐ気は無かった。『お互いが逸れた時』の『集合場所』は事前に決めてある。

 意識を取り戻して半刻程になるか。
 フレイザードは何かに取り憑かれた様に、同じ試みを繰り返していた。

「クソッ!うまくいかねえ!」

 悪態をつくフレイザード。これは宿命なのか。
 再三に渡り挑戦しているが、どうしても炎と冷気を同時に出す事が出来ない。

(チッ、もう一度だ・・・今度はゆっくりと・・・!)

 明らかな過信。そして完膚なきまでの敗北。お陰で目が覚めた。
 ここは極限の修羅場であり、容易く勝利の栄光が掴み取れる様な甘い世界ではなかった。
 弱気になりかけた精神を、もう一度奮い立たせる。甘えを捨てろ。弱点を克服するんだ。

「メラッ・・・」

 小さな炎が左手に灯る。これで何回目だ。ぼんやりと炎を眺めてフレイザードは思う。
 傷ついた躰が照らし出される。溢れんばかりに吹き出ていた凍気と魔炎気は見る影も無く、
 今は本来の姿である、ごつごつとした醜い岩石が剥き出しになっている。

 嘲笑が聞こえる。
 眼球だけになって、命乞いする自分を踏み潰したミストバーン。
 勝ち誇る麦わら帽子のガキ。無様なこの姿を酒の肴にでもしているのだろう我が主。
 屈辱感に、敗北感に身が震えそうになる。

(クソッ・・・今に見てやがれ!・・・・今度こそ・・・)

 いつの間に炎に見入っていたのか。我に返りフレイザードは特訓を再開した。

「・・・ヒャドッ!」

 右手から徐々に湧き上がる冷気。
 するとその冷気に反比例する様に、左手の炎は揺らめいて消えそうになる。

(消えるな・・・!
   燃え上がれ・・・!)

 力が欲しいと、フレイザードはただ願った。

(オレは何の為に生まれた。氷と炎。相反する属性を持つこのボディも、
 片方ずつしか機能しないのなら、そこらの魔法使いと大差ねえじゃねえか。
 オレの存在価値は何だ。見る者全てが恐れ、蔑むこの醜い異形は一体何の為に存在する。
 ハドラー様の気紛れで造り出された欠陥品だったのか。違う。
 地獄の業火と血も凍るような冷気で、世界を破壊し尽くす為に生み出されたんじゃねえのか)

 願い続けた。そしてどれ程の時が流れたのか。
 両手からは炎と冷気が小さく、それでも確かにそれぞれの手の上に立ち昇っていた。

―――出来た。

 沸々と喜びが込み上げてきた。

(・・・ク、クカカカカカ・・・今はこれでいい。最後に笑うのはこのオレ様だからな・・・)

 冷気と炎の同時攻撃。
 ただ単に戦術の幅が広がる、というだけではない。
 更に大きな何かに着実に近付いている。そんな気がしていた。
 そして、次の課題はよりスムーズに放出が出来るようになる事。
 後は単純に魔法力の大小の問題だが、それはもう少し回復してからでも遅くはない。


「成長しろフレイザード。成長しなきゃあ栄光を掴めねえ・・・ククク」


 生き残るのはただ一人。
 この様な修羅場に放り込んでくれた主に対して、理不尽だという思いは既に無い。
 戦いが全て。いや、勝つ事が全てだった。失うものなど何も無い。
 吹き込む風。零れる忍び笑い。暗闇に揺らめく炎を、フレイザードは握り潰した。






【山形県南部・山のふもとの洞窟(東側)夜中】

【フレイザード@ダイの大冒険】
 [状態]腹部を中心に身体全体にダメージ大、重度の疲労、成長期、傷は核鉄で常時ヒーリング
    とりあえず氷炎魔法を両立させることには成功。しかし実戦で使うにはまだ経験値不足。
 [装備]霧露乾坤網@封神演義、火竜鏢@封神演義、核鉄LXI@武装錬金、パンツァーファウスト(100mm弾×4)@DRAGON BALL
 [道具]支給品一式、遊戯王カード1枚(詳細は不明)@遊戯王 
 [思考]1、体力を回復させる。
    2、氷炎同時攻撃を完全に自分の物にする。
    3、その後にピッコロと集合場所にて合流
    4、優勝してバーン様から勝利の栄光を

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254:崖っぷちの正義と悪〈後半〉 フレイザード 340:大型殲滅兵器“ジーニアス”による被害報告

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最終更新:2024年06月21日 00:51