0316:ヘタレ放狼記 ~VSアビゲイル編~





「おーい!悟空、どこだー!返事しろー!」
「ちょ、ヤムチャさん!何やってるんですか!?」
「何って、悟空を捜してるんだよ」
「大声出したら危険な参加者に見つかるかもしれないじゃないですか!」
「あ、そうか、悪い悪い。何せブルマが生き返るってのがわかったからハイになっててなー」
「全くもう・・・」

ヤムチャとサクラは悟空を捜して北に向かっていた。
その間ヤムチャの気は緩みっぱなしで、スカウターを使って慎重に行動しようとしているサクラをイライラさせた。
サクラはクリリンの話を信用しておらず、ヤムチャのように楽観的にはなれなかったのである。
クリリン達と別れてからしばらくして、スカウターに二つの反応が現れた。

「ヤムチャさん、大きな反応が二つ出ました!」
「何っ!どの方角だ?」
「地図で見ると・・・一つは富山県、一つは石川県で停止していますね。石川県の反応は二人分、富山県の反応は一人分です」
「・・・フフン。サクラ、悟空の居場所がわかったぜ」
「本当ですか?」
「まあ、俺の名推理を聞いてくれ。悟空には友情マンとかいう奴がついていったんだろ?」
「なるほど、つまり悟空さんは石川県に・・・」
「チッチッチ、甘いなサクラ、それは素人考えってもんだ。ズバリ悟空は富山県にいる!」
「な、何でですか?」
「悟空がそんな怪しい奴に負けるはずないからだ!友情マンが悟空を追いかけて襲おうとしたとしても、必ず返り討ちにするだろう。
つまり、二人で仲良く一箇所に留まっている石川県の反応が悟空だということは有り得ない!」
「・・・それはちょっと安直すぎじゃ・・・」
「さあ、そうと決まれば急ぐぜサクラ!」
ヤムチャは勝手に結論付けて駆け出す。

「・・・もう・・・」
サクラのウンザリした溜息が漏れた。


数十分後、富山県にて

茂みに身を隠して、傷だらけの人物を眺めるヤムチャとサクラ。
「あの人が悟空さんですか?」
「・・・違う。何故だ、おかしい、俺の推理は完璧だった筈だ!」
「でも違うんでしょう?」
「ぐ・・・。そうだ!悟空はもっと東のほうに行ったんだ!なんだ、俺としたことがこんな初歩的なトリックに・・・」
「声が大きい!」

「そこにいるのは誰です?」
リンスレットの墓に黙祷を捧げていたその男――――――アビゲイルが茂みに向かって問いかけた。

「ほら!バレちゃったでしょーが!」
「まあ待てサクラ、これはひょっとしたらチャンスかもしれないぞ」
「ハァ!?」
「悟空といえども大勢の参加者を殺すのは骨が折れるかもしれない、計画に逆らう奴もいるだろうしな。
そんな奴らを倒すのが俺達の目的だろ?つまり俺があいつを殺せばひとつゲーム終了に近づくってわけだ!グッジョブ俺!」
「さっき『大きな反応』って言ったでしょ!?あの人強いですよ!それにまだドラゴンボールのことも話してないのに・・・」
「俺にまかせとけ!何せ俺は超神水の試練を克服した男だぜ?そこのお前!俺が相手だ!」
「待っ・・・」

茂みの中からヤムチャが飛び出し、アビゲイルに向かって叫ぶ。
「やいお前!後で復活させてやるからおとなしく死ぬんだな!」
「・・・?言っている意味がよくわかりませんが、あなたはゲームに乗っているという解釈でよろしいのでしょうか?」
「食らえ、狼牙風風拳!」

ヤムチャが狼のような動きでアビゲイルの懐に潜り込み、その胸に拳を叩き込む。
「フッ・・・決まった」
「決まってませんよ」
「な!?」
ヤムチャの拳を喰らっても微動だにしないアビゲイルが、ディオスクロイを振り上げる。
「ぐぎゃあっ!」
ヤムチャは無様な叫び声をあげて吹っ飛んだ。
アビゲイルの胸に仕込まれた排撃貝が拳撃の威力を吸収したのだ。

「く、くそ・・・狼牙風風拳が効かないなんて・・・だが、俺の技は狼牙風風拳だけじゃない!行くぜ!操気弾!」
しかし何故か操気弾をうまく作ることが出来ない。
「な、何故だ・・・俺は超神水でパワーアップしている筈なのに・・・」
サクラのツッコミが飛ぶ。
大蛇丸の五行封印でチャクラがうまく練れなくなってるでしょー!もう忘れたの!?」
「しまった!そういえばそうだった!・・・だが!それでもこんなボロボロの奴には負け」
「赤斬光波!」

アビゲイルの眼前から赤熱する光線が発射され、近くの細木を切り倒す。
焼け焦げ、切断された木の断面を見て、ヤムチャは、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フッ、悟空がいればお前なんか瞬殺だ!覚えてろよー!」
そう言って負け犬の如く逃げ出した。サクラを置いて。
「ちょっ、逃げるの!?」
(すまんサクラ、悟空とピッコロがいればこのゲームは終わるんだ。きっと生き返らせてやるからな・・・)
脳内で勝手にサクラを殺し、ヤムチャは悟空が向かったと(自分で)断定した東へと逃げ出した。

「し、信じらんない!私を置いて一人で逃げ出すなんて!」
「さて・・・お嬢さん」
「ま、待ってください!私は別にゲームに乗っているわけじゃ・・・」
「それは茂みの中のあなたがたの会話を聞いていれば大体察しはつきましたが・・・
一体何故彼がああなったのか、詳しく話を聞かせてはもらえないでしょうか?」
「え、あ、はい、わかりました。実は・・・」

サクラはクリリンのこととドラゴンボールのことをアビゲイルに話した。
話が終わった後、アビゲイルの顔は難しく歪んでいた。

「クリリンに、ドラゴンボールですか・・・」
「どうかしたんですか?」
「実はクリリンという男は、私の仲間を殺した殺人者なんですよ」
「え!?」
「それだけならいいのですが・・・いえ、よくはないのですが、まだマシでしたね。
クリリンが殺した私の仲間の、ブルマという女性はクリリンの昔からの知り合いだったのですよ」
「ちょ、ちょっと待ってください!ブルマって・・・ヤムチャの恋人ですよ!その女性を殺した!?」
「ええ、つまり知り合いでも殺すほど危険な存在であるわけです」
「そんな・・・」
「もう一つ、彼の計画の要であるドラゴンボールですが・・・使えない可能性があります」
「なんで!?」
「私の支給品はドラゴンレーダーという、ドラゴンボールを感知するレーダーだったのですが、私が改造する前は全くの役立たずのハズレアイテムでした。
この世界にドラゴンボールがないということがわかっただけです。主催者は何故こんなアイテムを支給品に混ぜたと思いますか?
私は『ドラゴンボールなど使えないから、それに縋るのは無駄だ』という皮肉だと推測します。
ブルマさんによると、主催者の一人のフリーザという男はドラゴンボールの存在を知っている。
そんな男が、自分達が開催したゲームを『なかったこと』にできる存在を見逃すはずがありません。
何らかの対策を打っていると考えるのが自然でしょう。私はそう思います」
「じゃあ・・・ドラゴンボールは・・・?」
「封じられている可能性がありますね。このことは、ある程度鋭い人物には容易に想像できることです。
そうでなくても、そんなご都合主義的なものに疑問を持つ者も出てくるでしょう。あなたもそうなのではないですか?」
「・・・」
「ここで問題になるのはクリリンの存在です。もし彼がドラゴンボールのことを信じようとしない人と出会ったら?
元の世界の知り合いでも躊躇なく殺すような人物です。その場合・・・」
「両津さんや乾君が危ない!」
0時になると、クリリンは両津達に会いに四国へ行くことになっている。
乾は、このアビゲイルのように長々と薀蓄を垂れるのが好きな人種だ。
クリリンに反論した場合・・・その先は想像に難くない。


「でも、その点ではヤムチャも危ないんじゃ・・・」
「まあ大丈夫でしょう。思い込みで突き進む点では同じですが、彼に脅威は感じません。
正直言って今の私はとても戦える状態ではないのですが、それすら判らず脅しただけで逃げるようなら問題ありません」
「でもアイツ、実力はありますし・・・」
「注意力や観察力も含めて実力ですよ」
そこまで会話が進んだところで、サクラはアビゲイルのケガに気付いた。

「そのケガは・・・」
「ああ、今の戦いでついたケガではないですよ」
「ちょっと動かないでください」
サクラは手にチャクラを集中させ、治癒の術を発動させる。
「・・・これで痛みは引いたはずです」
「なぜ私に治療を・・・?」
「こちらのバカのせいで迷惑をかけたんですから当然です、本当にすみませんでした。私はこれで失礼します」
そう言ってサクラはクリリンを止めるために名古屋城へと向かう。


「フフ・・・面白い、いいでしょう。今度は見捨てるわけにはいきませんね」
アビゲイルは名古屋城へと向かうサクラに並走する。
「このアビゲイル、協力させてもらいますよ!」





【富山県/1日目・真夜中】

【アビゲイル@BASTARD!! -暗黒の破壊神-】
状態:精神力・体力・疲労大、左肩貫通、全身・特に右半身に排撃貝の反動大、無数の裂傷(傷はサクラによって治療済み)
装備:雷神剣@BASTARD!! -暗黒の破壊神-、ディオスクロイ@BLACK CAT、排撃貝@ONE PIECE、ベレッタM92(残弾数、予備含め31発)
道具:荷物一式、ブルマの荷物一式、クリリンの荷物一式(食料・水、四日分)、海坊主の荷物一式(食料・水、九日分)
   ドラゴンレーダー@DRAGON BALL、首輪、ヒル魔のマシンガン@アイシールド21(残弾数は不明)
   超神水@DRAGON BALL、衝突・漂流 各一枚@HUNTER×HUNTER、マルス@BLACK CAT、無限刃@るろうに剣心
思考:1.サクラを護り、協力する
   2.体力回復しつつ、レーダーを使ってアイテム回収
   3.首輪を手に入れ、更に調べる
   4.ヨーコ達、協力者を探す
   5.ゲームを脱出

【春野サクラ@NARUTO】
[状態]:若干の疲労、チャクラ小消費
[装備]:スカウター@DRAGON BALL
[道具]:荷物一式(一食分の食料を消費、半日分をヤムチャに譲る)
[思考]:1.スカウターを使って隠密行動をしながら、名古屋城に向かいクリリンを止める
    2.四国で両津達と合流
    3.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖
    4.ナルトと合流する


【長野県/1日目・真夜中】

【ヤムチャ@DRAGON BALL】
状態:右小指喪失、左耳喪失、左脇腹に創傷(全て治療済み)
   超神水克服(力が限界まで引き出される)、五行封印(気が上手く引き出せない)
装備:無し
道具:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
思考:1.何としても悟空を探す
   2.クリリンの計画に協力、人数を減らす
   3.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)

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306:静夜のシ者~アビゲイルvs飛影~【下】 アビゲイル 332:悲しい戦士のギャンブル
291:あかるいゲーム終了計画 春野サクラ 332:悲しい戦士のギャンブル
291:あかるいゲーム終了計画 ヤムチャ 331:ヘタレ放狼記~籠球の罠~

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最終更新:2024年06月17日 12:17