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殺生石、クリスマスを考える

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  ……さっきから殺生石がテレビに釘づけだ。こんな夕食の場面も珍しいせいで、僕の箸は進まない。
「殺生石、なんか珍しい物でもあった?」
「? そういえば全然食べてないー。もらっていいっ?」
「駄目です」
「ぶぅ……でもご飯食べるときはちゃんと食べなきゃー。テレビばかり見てちゃダメっ!」
  まぁ、蛋白石の言うことも一理あるけど。
「……そうですね、そうしましょうか」
  テレビから目を離し、黙々と箸を進め始める殺生石。んー、やっぱり気になるなぁ。どうしたんだろう?
「もしかして、何か悩んでる?」
  とりあえず話を切り出してみたけれど、悩みごとだったら殺生石のこと、華麗にごまかされそうだ……。
「え? あぁ……少し気になることがありまして」
「気になること?」
「はい、最近世間ではくりすますなるものが話題に上がっているようですね。てれびもほとんどその話題でした」
  意外だ、殺生石がこんな素直に話を始めるなんて。でもクリスマス……あぁ、もう1ヶ月切ってるんだったっけ。そろそろケーキのこととか考えないとなぁ、みんながいるし。
「それで、そのくりすますとは何なのでしょうか?」
「……え?」
  突然の質問に、僕はいったい自分がどんな顔をしたかも分からなかった。ただ、殺生石が睨みつけてきているあたり、あまりいい表情は浮かべなかったみたいで……。
「えっ、殺生石クリスマス知らないの? そんなもったいなっ」
  うわっ、目にも止まらぬ手刀が蛋白石の首を……あーあ、目回しちゃったよ。
「ひどいことを言いますね。妾はまだ現代の常識に疎いというのに」
「ご、ごめん……ただ、ふだん聞くような質問じゃなくてね」
「それはそうですけど……主様、一言多いですよ」
  う……殺生石の視線が痛い。
「今宵は寝かせて差し上げませんから」
「そこ、何小声で危ないこと言ってるのさ……」
「気のせいですよ。それで一体何なのですか、くりすますというのは?」
  クリスマス……ねぇ。僕も詳しいことはよく知らないんだけどね。
「サンタさんとトナカイさん」
  と、黙っていた電気石が突然口を開く。
「それはどんな方々なのですか?」
プレゼント、いっぱい……ケーキもおいしい」
「……主様、電気石には悪いのですが、分かりやすく説明していただけますか?」
「大丈夫、僕もよく分からなかった」
  あ、電気石がしょんぼりしてる。あとでちゃんと謝らないと。
「ケーキ……」
「ちゃ、ちゃんとクリスマスの時に用意するから、ね?」
「……うん、約束」
「もちろん約束するよ。で、クリスマスって言うのはね、簡単に言えば宗教の祭事なんだよ、外国の」
  ……で、いいんだよね?
「祭事、ですか。それでけーきやさんたを食べるわけですか?」

「サンタさんは食べないよ……この日はね、サンタクロースって赤い服を着たひげ面のおじいさんが、トナカイっていう生き物にそりを引かせて、子供に玩具とかお菓子とかあげにくるんだよ」
「赤い? もしかして長寿の祝いみたいなものなのですか?」
  ……いや、そんな還暦じゃないんだから。あれ、赤い半纏着るのっていつだっけ?
「……主様、妾がおかしなことを言ったからといって、またそんなお顔を……」
「えっ? あ、ごめん……」
「今宵の閨は燃え上がりそうですね」
  うぅ、そういう話を電気石の前でしないでよ……。
「いい子じゃないと、だめ……マスター、プレゼント来る?」
「え? そりゃあ電気石はいい子だもん。ちゃんとプレゼントもらえるよ」
「……えへへ」
  なんかさっきから話が脱線を……まぁ、電気石が笑ってくれるからいいけど。プレゼントどうしようかなぁ……。
「なるほど、主に子供のための行事なのですね。妾もそのご老人に出会ってみたいものです」
「そ、そうだね。でも最近は単なるお祭り行事みたいなもので……まぁ、その、デートとかいろいろしたり、ね」
  ダメだ、やっぱり殺生石を前にこんな話は切り出しにくい……って、今度は殺生石が眉をしかめてる?
「……なんと、公の逢い引きをする行事……うかつでした、妾がこのようなものを見逃していたなんて……」
  な、なんだ? 小言でぶつぶつと……嫌な予感がするのは確かだけど。
「うぅ……殺生石ひどいよぉ、いきなりチョップだなんて」
「黙りなさい、今は取り込み中です」
「は、はいっ」
  すごい剣幕……というかわびの一言でもあげればいいのに。
「くりすますには主様と気兼ねなく……くりすますとはいつあるのですか?」
「え? 12月25日だよ。でもパーティとかするのは24日だよー」
「つまり24日の夜から25日の……ふふ、ふふふふふ」
  殺生石の不気味な笑み……あー、何考えてるのかは分かったけど、なんか僕の想像を遙かに上回っていそうで怖いよ。
「……また一つ、現世で生きる楽しみが出来ました。主様、くりすます……楽しみですね」
「そ、そうだね……あ、あははは」
「んー?」
「私も楽しみですよーっ、ご馳走いっぱい……えへへー」
  ……それぞれ考える事は違えど、クリスマスは楽しみなようだ。いや、僕は楽しみにしてるのか? どうも自信がないよ、いろいろと。
  まぁ、どうあがこうと逃げられないよね。そうだよね、うん。はははははは……はぁ。

「くりすますの為に今宵は休んでおきましょうね、だんな様」
「そう言って布団の中に潜り込むのはいいけど、それ以上はなしだからね」

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