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そのお金はどこから出した?

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  かれんだーというものをこうも凝視するなどということ、おそらく初めてでしょう。最近やっと読めるようになったこの数字、左から右に月日が進んでいるようですが……わたくしが気になっているのは24の数字。確か日曜日というところにある数字で、わたくしにとってとてつもなく重要な日。
  ……くりすます、でしたか。その前祝いの日。
「……んー?」
  わたくしの隣で、電気石が首をかしげる。今のわたくしよりくりすますについて詳しいこの子なら、よい相談役になるかもしれません。
「電気石、貴女はくりすますの贈り物はどうするのですか?」
プレゼント……サンタさん、持ってくるよ♪」
  ……この子らしいですね。
殺生石ー、お姉様と何してるの?」
蛋白石ですか。貴女はくりすますの贈り物、用意しているのですか?」
「え? ちゃーんと、ご主人様に渡すプレゼントは用意してあるよ」
  迂闊。まさかこの子がそんなに早く対応していたとは。しかも相手はだんな様……むぅ。
「その、何を用意されたのですか?」
「包丁ー♪ ご主人様、包丁古くなったって言ってたから。これでまたいっぱい美味しいご飯作ってもらうんだぁ」
  それはだんな様より自分へのプレゼントのような気もしますが……まぁ、彼女なりの考えなのでしょう。
「お姉様はいいなぁ、サンタさんがちゃんと持ってきてくれるから」
「うん……サンタさん♪」
  本当はだんな様がこの子の枕元に用意するというのは、事前に聞いていること。つまりだんな様はさんた代行人ということですか。まぁお一人で世界を回られてるご老人ですから、こういうことも必要なのですね。わたくしでもできるかどうか……いえ、それよりだんな様への贈り物です。どうしましょうか……。
「殺生石はご主人様のプレゼントを考えているの?」
「え、ええ」
「それならご主人様の欲しがってる物、教えてあげるよっ」
「よろしいのですか?」
「うんっ。殺生石にはいつもご飯とかお世話になってるもん、持ちつ持たれつだよー」
「……殺生石も、ご飯……美味しい♪」
  まったく、この子たちったら……。
「では、お言葉に甘えて教えてもらいましょうか」
「うんっ」
「……ないしょ話」

  幼子の姿で外に出るのも、これで何度目でしょうか。まだ完全でないわたくしの力ゆえ、耳と尾はどうしても隠せぬものですが、それもこの姿だと微笑ましく見えるのでしょう。周りの人間の目も、どこか柔らかです。
  ですが、何よりこの姿でしか着用することのできない、だんな様に買っていただいた洋服もありますから、ふふふ。
  はぁ……だんな様ぁ。これを身にまとうだけでも、だんな様とのでーとというものを思い出します……ぽっ。
「ママー、あの子のしっぽ動いてるー」
「まぁ……」
  ん、少し気が緩んでしまいましたか。引き締めて行かねば……。
  さて、だんな様が欲しいと言っていた物。確かこのお店にあると聞きましたが。とりあえず店内へ……。
「いらっしゃい。お嬢ちゃん」
  店主は小柄なご老人。子供に優しそうな、好感の持てる方に見えますね。
「兄様に贈り物が欲しいのですが……これ、ありますか?」
  蛋白石に描いてもらったメモをご老人に渡す。ご老人は眼鏡をかけてそのメモに目を通し……。
「……んー、あるにはあるけど、ちょっと高いなぁ。お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
「兄様のためならいくらでも払いますよ」
「ずいぶんとお兄さんが好きなんだねぇ」
「生涯のだんな様です」
  そう、生涯のだんな様。わたくしが全てを捧げるにふさわしいと思う、唯一無二の殿方。そんな方への贈り物なのに、全身全霊を注がないとは何事ですか。例えどんな高い物であっても、入手するのが妻としての勤め。
「ですからお金の心配は無用です。さぁ、物を見せて下さい」
「そこまで言うなら……しかし、ずいぶんとしっかりした喋り方だねぇ」
  子供らしい喋り方は出来ない性分ですから……などとはさすがに言えませんけど。
「とりあえず、目的の物はこれだよ」
  店主の手にある『それ』を見せてもらいました。
  ……だんな様ったら、どうしてこのような物を欲しがっているのでしょうか。正直、わたくしには分かりかねます。
  でもそれはとても綺麗な色で……必要ではないのに、美しいと感じてしまいます。
「お兄さんはこういう物を集めているのかな?」
「いえ、偶然見かけて欲しいと言っていたのを聞いただけです」
「そうかぁ。これを期に常連になってくれると嬉しかったりするんだけどなぁ。はっはっは」
  それは無理でしょう。だんな様はいつも金欠ですし。
「さて、それじゃあこれでいいんだね。なるべくいい箱に入れておくよ、プレゼントだから」
「ありがとうございます」
「あぁ、あと少しだけだけどまけてあげるよ。えーと、こんな物だけど大丈夫?」
  ふむ……店主の言う通り、やはり結構な値打ち物のようですね。
「ではこれで」
「はい。えー……ちょうど、だね」
  幼子がこのような大金を持っているのか不安だったのでしょう。お金を確認するや、安堵の顔を浮かべています。
「そうだ、おまけでこれをあげよう」
  そう言ってわたくしに小さな、確かぺんだんとという装飾品を手渡してくれました。それはだんな様への贈り物ほどではありませんが、綺麗に輝いています。
「綺麗……」
「作った人が一緒でね、お兄さんのプレゼントと同時期に作られたんだ。元々ペアではないけど、持っていくといいよ。つがいみたいなものだからね」
「まぁ……ありがとうございます。では、また何かあったらよろしくお願いします」
  だんな様への贈り物を胸に抱く。これは、わたくしが初めて自分の意志で行った買い物。それがこのような素晴らしい贈り物になるのはとても光栄です。
  そしてわたくしの胸で輝くぺんだんと。この贈り物と、つがいのような関係だと店主は言っていました。
  ……つがい、ですか。これがあれば、いずれ永遠に別れるときが来たとしても、だんな様と繋がっていられるのでしょうか。この贈り物に、わたくしの想いの全てを乗せることができれば、絆は永遠に切れないのでしょうか。
「……綺麗」
  夕日。こうして空を見上げるのも、当たり前になってしまった日常。こんな日が永遠に続けばよいのに、そう考えるとなおさら別れの事実が頭に響く。
  ……わたくしが胸に抱く物。それは事実が刻一刻と近づいてくる事を、わたくしに伝えてくる。
  ……そう、わたくしは、これが嫌い。


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