(呼吸が……)
殺し合いの舞台の一部であるD-4、そのエリアのど真ん中でシーザーは首を押さえながら荒々しい呼吸をしていた。
先程のホル・ホースとの戦いで首を負傷し、呼吸困難に陥ってしまったからだ。
一息一息に苦痛が伴う、それは波紋使いであるシーザーにとって致命的であった。
ここで付近に殺し合いに乗った参加者が来ていたならばそれはシーザーの最後を意味していただろう。しかし幸か不幸か、シーザーの近くにはゲームに乗った参加者どころか人一人来なかった。
苦しみに包まれながらシーザーは考える。
(仕方ねえ……これ以上苦しくなるのは嫌だが……波紋で負傷箇所を治す…… 
一時的に呼吸は更に苦しくなるだろうが……しばらくすれ治まるはずだ……)
覚悟を決めてシーザーは呼吸を始める。
「コォォォォォォォォォォ…………」
その呼吸は闇夜の化け物を倒す呼吸、全治の三ヶ月の怪我を一瞬で治療してしまう呼吸。
「うっ……」
 予想以上の苦痛がシーザーを襲う、しかし波紋を錬り出すことには成功した。
(これを……指先に集中させ……)
シーザーの指に山吹き色の光が宿る。
(負傷箇所を突く! )
そしてその光を首目掛けて放つ。首の負傷が和らいでいく。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
それと引き替えにシーザーの呼吸の間隔が短くなる。少量とはいえ波紋の呼吸はやはりきつかった様だ。そして……
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
時が経つにつれて呼吸の感覚もだんだん長くなっていき……
「ハァ…………ハァ…………ハァ…………ふう……」
平常時のそれに戻る、こうしてシーザーは窮地を脱することに成功したのである。




一段落ついた所で俺はもう一度デイバックを開けていた、さっきの紙切れを調べるためだ。
恐らくは荒木の言っていた支給品という奴だろう、折り畳まれた紙切れの中身なんてたかが知れてるがな。
デイバックの中身は食料、水、余計や地図、ここまではさっきと一緒だ。そして折り畳まれた紙が2つ、他にはないようだな。
中身はメモか何かだろうな、荒木飛呂彦直伝48の人の殺し方とか書いてそうだな。さっそく一枚目の紙を開く。中からは……
明らかに紙の大きさを超えた物体が出てくるという現象に俺はそこまで驚きはしなかった。
波紋や柱の男といった存在が日常にあったからかもしれない、これもまた荒木の力だろうと納得してしまった。
中から出てきたのは何の変哲もないダセー帽子だった、使えないと思い紙の中に戻そうとしたのだがどうやら無理らしい。仕方なくデイバックの中にしまおうとしたのだが……
「ん? へりが外れて……」
その帽子には刃物が仕込まれていた、仕込み杖ってのは聞いたことあるが仕込み帽子とはな……
こんな所に武器があるとは誰も思わねえ、この帽子の持ち主は自分の身に常に危険が迫ってる奴か、ただ喧嘩の為に作ったチンピラかもな、丁度昔の俺みたいに。
どうやら外れたへりは取り外しが出来るらしい、外す度に縫ってちゃ世話ねーしな。
どうやら投げてブーメランみたいに使うようだ、波紋を込めて投げれば使えるな。
取りあえず刃の部分に石鹸水をほんの少し流し込む、これで普通に投げるよりはましだろう。
刃が錆びちまったら持ち主に悪いかな、かといって謝る気はねーが。
取りあえず刃を出したままだと警戒されるのでへりを戻して頭に被っておくことにする。
2つ目は……女の子が持ってそうな人形だ、俺のストライクゾーンよりは低いがね。
見たところ何の変哲もなさそうだ、そっちの趣味だと思われるのが嫌なのでディバックに仕舞っておこう。持ち主が現れない限り永遠に……な。
支給品の確認が終わったのでもう一度名簿の確認をする、気になる名前が幾つかあったからな。

ジョナサン・ジョースター、ウィル・A・ツェペリ。
何故か俺とJOJOのじいさんの名前が載っている、50年も前に死んだはずなのに。
ロバート・E・O・スピードワゴン。
俺やJOJOの祖父のかつての友人、スピードワゴン財団の創立者だが殺し合いの場ではただのじいさんだ、無事だといいが……
スージーQ。
リアリサ先生のもとで働いてるとはいえ彼女自身はただの女の子だ、一刻も早く見つけてやらないとな、それに……どういうわけだかJOJOの事が好きらしいからな……
ストレイツォ
リサリサ先生の育ての親、JOJOの話によれば波紋の呼吸で自らの命を絶ったはずだが……
吸血鬼の再生力ならば生きていてもおかしくはない、リサリサ先生の育て親だからなるべく殺したくはないがゲームに乗っていたらやるしかないだろうな。
エシディシ。
これはおかしい、エシディシは確実に倒した、太陽の光で欠片も残さす消滅したはずだ。
しかし生きているなら倒すしかない、死人が出る前に。
ワムウ、カーズ。
怒りがこみ上げてくる。とうさんの敵、マルクの敵、必ず倒さねばならない。
奴らにシャボンランチャーを叩き込むまでは絶対に死ねない。死ぬわけにはいかない。
知っている名前は他にはないようだった。デイバックに名簿をしまい、どちらへ向かうか考える。
北、巨大な館が遠巻きから見え、破壊音がした。
西、高い塔が見える。轟音と光と共に何かが落ちてきた。
この2つは柱の男の仕業だろうか、或いは超能力かなにか……どちらにせよさっきまで戦闘が起こっていたことには間違いない。
南、繁華街があり、人が集まる事は間違いない。
東、近くに目立った建物は存在しないが、何故か端の方にイタリアが関係する建物が密集している。
俺はどこへ向かえばいいのだろうか……


【D-4/1日目 黎明】

【シーザー・アントニオ・ツェペリ】
[時間軸]:ワムウから解毒剤入りピアスを奪った直後。
[状態]:首に若干の痛み(戦闘には支障無し)
[装備]:スピードワゴンの帽子。
[道具]:支給品一式、エリナの人形、中性洗剤。
[思考・状況]
1.荒木やホル・ホースの能力について知っている人物を探す。
2.ゲームには乗らない。
3.リサリサ先生やJOJOと合流する。
4.スピードワゴン、スージーQの保護。
5.エシディシ、ワムウ、カーズの殺害。
6.ストレイツォは出来れば殺したくない。
7.女の子がいれば助ける。

【支給品紹介】

【スピードワゴンの帽子】
スピードワゴンが被っていた帽子。
鋭利な刃物が仕込まれている。

【エリナの人形】
エリナが幼少の時に持っていた人形。
"あそこ"は本物と一緒じゃありません。


投下順で読む


時系列順で読む


キャラを追って読む

16:銃はシャボンよりも強し シーザー・アントニオ・ツェペリ 80:Let`s have a party

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年11月03日 16:23