風に揺られ木の葉が舞う。木が揺れ、森が揺れ、光が揺れる。虫の声もなければ都会の騒音もない。ただ風に揺られ、擦れ合う木の葉の柔らかなメロディだけが辺りを包む。静かな夜、月見には最高の夜だ。
そんな静寂の中に独りの男。ヒラヒラと舞い落ちる葉を親指と人差し指で的確に摘まむ。一枚、二枚、三枚、四枚………。人が見たらびっくりするだろう。この月明かりだけのなかどうやって?
しかし男には月明かりだろうが太陽の光だろうが関係ない。
光を必要としないその目。杖を当て、周りの情報を集める耳。
その男の名は
ンドゥール。
◇ ◆ ◇
550…いや、600メートルほど離れた位置に二人。一人は歩幅から見て身長160前後。歩幅が変わらないにも関わらず時々リズムが狂うことからケガ、またはなんらかの理由で足元がおぼつかない。踏み込みが乱れないことから年老いてはなさそうだ。
もう一人は実に奇妙。身長が170…180?同行者を気遣いスピードを合わせているが、その歩き方が奇妙。その場を舐めるように動くかと思えば跳び跳ねるように歩きまわる。若者のように力強いと思えば、弱々しい老人のようになる。
実に奇妙…。
さて、この俺はどうすべきか?このままなにもしなければこの二人は俺に気づかずそのままどこかに行ってしまうだろう。俺が音を頼りに奴らに近づけばこちらに気づかせることは可能だろう。情報がほしい俺としてはまたとないチャンスだ。
しかし奴らが「ゲームに乗った」者だったら、どうなる…?二人組の時点で可能性は低いが、絶対ではない。もしかしたら実は表面だけの協力関係にあるのかもしれない。
その上俺のスタンドは接近パワー型ではない。遠くにいるこちらに気づかない者たちを一人一人殺していく、言わば暗殺向きの遠距離型のスタンド。接近したらそれだけ危険は増す。それにどうしたって目が見えない俺には近距離の闘いが向いてない…。
こんな俺が未知の者たち、そのうち一人が“奇妙”な人物である二人組に接触してよいものか?
………………。
試しにどちらかを始末するか?同行者が死ねばもう一人もなんらかのアクションをとるだろう。それで乗っているか、否かわかるかもしれない…。しかしこちらのスタンドを明かすのは…。いや、だからこそだ。俺のスタンドを見て互いにスタンド使い同士だと勘違いすれば……。
…よし、やってみるか。このままここにいてもラチが明かない。なにより早く情報を集めなければ――――――
!
後方600メートル…いや、待て。550…540…500…なんだこのスピードはッ?!確かにこれは人間の“走り”の音。しかし本当に人間なのかッ?!時速50kmは出ているぞッ?!
450…400…マズイ、
まっすぐこちらに向かってくるッ!!この迷いのない走り、まるで俺の居場所を知ってるかのような…!なにか手を…380…我がスタンド、ゲフ神で…350…しかしこのスピードを捕らえるには…300…クソッ…250…
200…
逃げるか?いや、逃げ切れるはずがないッ!
150…
このまま身動きをせずにいれば俺に気づかず…。
100…
踏み切り音…!?
50…
月を背に、木の枝にものすごいスピードで捕まる男。その男、“人”ではない。例えるなら妖怪。例えるなら天狗。大地を蹴り、木を掴み風のように森を、砂漠を駆け抜けていく。背中に背負うは民族の誇り。目に宿すは純粋なまでの欲望。
その男の名は
サンドマン。
◇ ◆ ◇
二人の男の間に沈黙が流れる。互いの緊張は高まり、辺りに異様な雰囲気が漂い始める。そのまま5分はそうしていただろうか?何が合図となったか、わからないがこの沈黙を先に破ったのは木の上の男だった。
慎重に選んだ言葉をもう一人に投げ掛ける。
「お前はこのゲームに乗っているのか…?」
ンドゥールがわかったことは三つ。相手が男であること、自分からその男までの距離と方向、そして相手は今のところこのゲームに乗っていないということ。
「どっち付かず…ってとこだ。生憎俺には情報がなくてな。がっつくようだが色々と教えてくれないか?」
サンドマンがわかったことは二つ。相手が用心深い男であること、相手は盲目であるということ。
サンドマンはこの殺しあいに乗るつもりはないし、かといって積極的に荒木を倒そうともしない。なぜなら彼の最優先事項、それが脱出することだからだ。脱出して最終的には故郷を取り戻す。それが彼の目的。ただ、今は荒木が信頼できない。
だから殺し合いには乗らない。ただそれだけのこと。
従って今の彼にとってンドゥールは“どうでもいい”存在なのだが、彼はなにか感じとったのだろう、ンドゥールに情報を与えてやることにした。
何か荒木について知らないだろうか、そんな期待を持って。
ルール、首輪、デイバッグの中身、支給品、地図、現在地、そして参加者。淡々と感情を込めずにそれぞれのものについて説明していった。 サンドマンが喋り終わると、しばらくの間ンドゥールは黙ったままであった。
それまで左耳に当てていた杖を手放し、腕組みをし、考え込む。
もっとも、その杖を思わず倒してしまったのある参加者の名前が読み上げられたからなのだが流石のサンドマンもそこまで気づくことはできなかった。
頭を悩ませたンドゥールの口からひねり出された言葉は意外にもサンドマンに対する問いかけであった。
「お前の目的はなんだ?お前はこの殺し合いにおいてなにを目的に、どのように行動する?」
「…どっちつかずってとこだ。このゲームに乗る気もないし乗らない気もない。ただ目的ははっきりしている。一秒でも早く故郷に帰る。…ただそれだけだ。」
「俺に話しかけた理由は?」
「情報収集だ。特になにか荒木についてなんらかの手がかりでも、と思ったのだが…お前はなにも話さないようだな…。」
木の上でサンドマンはこの場を立ち去ろうとする。この男はもう何もしゃべらないだろう、そう思ったからだ。その物音に気づいたンドゥールはさりげなく杖を元のように左耳にあてる。
そして呟く。
「600メートルほど離れた位置に二人組…。先ほどまで歩いていたが今は立ち止まりなにかをしている。一人は身長160前後、小柄でなんらかの理由から満足に歩けなかった。もう一人は170から180。足音を消し去り、悟られないようにするほどの猛者。」
振り向きいぶかしげな表情を浮かべるサンドマンに対し、ンドゥールはなんの感情もこめずにただ自分が聴いた事実だけを教える。
「俺はある人物に尽くすことにした。先ほどお前が読んだ
参加者名簿の中にその方の名前があったからだ。もしお前が教えてくれなかったら俺はここで何も貢献できずにただ座り続けていただろう…。」
「……」
「今の情報にうそはない。お前がどう動くかは自由だが、お前は俺に情報を、俺も同じくお前に情報を。これで貸し借りはなしだ…。」
「…感謝する。」
ふたりの間に風が吹く。そのさわやかな風がサンドマンの体には心地よかった。
「最後に盲目の男よ、お前の名を教えてくれ。俺の名はサンドマン…いや、わが部族の言葉で音を奏でるもの、“サウンドマン”。」
「……ンドゥール。サウンドマンよ、いずれまた会おう」
言葉と共に木が揺れ、風は走り去っていった。舞い降りてきた木の葉をつかむンドゥールの顔には笑みが浮かんでいた…。
【I-7 リンゴォの果樹園前/一日目 黎明】
【サンドマン】
【時間軸】:ジョニィの鉄球が直撃した瞬間
【状態】:健康
【装備】:なし
【道具】:不明支給品1~3(本人確認済み)
【思考・状況】 基本行動方針:元の世界に帰る
1.ンドゥールが教えてくれた二人組みがいるであろう場所へ行き、接触する。
2.荒木は信頼できるのか?
3.名簿にあるツェペリ、ジョースター、ブランドーの名前に僅かながら興味
【備考】
※7部のレース参加者の顔は把握しています。
※スカーレットが大統領夫人だと知っています。
※ンドゥールに奇妙な友情を感じています。
※ふたり組みの位置は正確に把握してません。もしかしたらどこか見当違いの方向へ向かっているかもしれません。
◇ ◆ ◇
どうも皆さん、
広瀬康一です。ノストルダムスの大予言から無事に逃げ切った1999年。けれどもなにがどうしてこーなったかわからないけど、僕はノストルダムスの予言以上に奇妙な運命に巻き込まれてしまったようです。
空条承太郎さんと
東方仗助君との出会い、スタンド能力と虹村兄弟、数々の愉快なスタンド使い(別にみんながみんな愉快ってわけじゃーないんですけどね)
杜王町は僕が思っていた以上に奥深く、謎めいていて、不気味で恐くて、それでいて温かい町だったようです。
それにしても僕のこの奇妙な運命、本当に奇妙です。だってそうでしょ?僕は
吉良吉影に殺されたはず。なのにどうして僕は今こうして生きていて、重い荷物にアップアップしないといけないんだろう?
さっきから時々立ち止まったり、危うく転びかけたりしながら必死でツェペリさんの後をついて歩いています。
どこに向かってるか、ですか?目的地なんてないですよ、はっきり言って。強いて言うなら先ほどまでいた場所から離れる、ですかね。
なぜなら先ほどまでいた場所の近くに小屋があったんです。すこし古びれていたけどなかなか立派で、オシャレな感じの小屋が。
この状況で小屋があったらみんな小屋に入ってくるでしょ?これからツェペリさんと話をしなければならないのに突然違う人が入ってきたら困るでしょ?
だからこうして重たい荷物を我慢してるんだけど…それにしても重い…。
「ここらでディナーにするかね、康一君」
いっそう多い茂った場所でツェペリさんが口を開き、近くの切り株に優雅に座る。僕はそれにならい、同じように近くの切り株に腰掛け背中の荷物を降ろす。ツェペリさんはペットボトルをくるくると回し、時折ワインを見定めるかのようなうっとりとした目で眺める。
「さて、康一君。君はこのゲームにはもちろん乗っていないだろう…。それは先ほどの発言と、こうして私についてきてくれたことからもわかる。」
「はぁ…」
「ということは私たちに目標は一緒だ。荒木を打倒する、それが目的であると思ってかまわないね?」
「はい、そーいうことになりますね…」
……どうやらツェペリさんは僕が思ったよりちょっと回りくどい人だなぁ…。どことなくこの話しにくさが承太郎さんに似てなくもないかも。
そんなことを考えているととふと思い出した。そいうえば承太郎さんはあの熱爆弾に襲われた後なんだ。僕のせいで傷ついていたけど大丈夫かな…。
「…しもぉ~し、康一君、もしもぉ~し。ねぇ、わしの話し聞いてる?」
訂正。やっぱり承太郎さんには似てないや。こんなふざけた人じゃないもの。
「オホン、では本題に入ろう。正直わしたち二人で荒木に挑むのは無謀じゃ。のみが人間に挑むようなもんじゃな。無謀と勇気を履き違える、そこがポイントじゃよ。よってまず仲間と合流を目指す…といいたいことじゃがまずは、君が先ほど言った“蘇らせた”についてだ。
とりあえず君のことについて詳しく話してもらえないかね?」
「いいですけど…僕話をまとめるのが苦手何ですよねぇ…。国語の教師でもないし、長くなっちゃうかもしれないですけどいいですか?」
うなずくツェペリさんを見て僕は自分について、知り合いについて、そしてあの吉良吉影について話し始めた。
でも僕はその時ひとつのミスをしていたんだ。
ツェペリさんと一緒に小屋から離れる時間があったらすぐにでも情報交換をすればよかったんだ。どっしりと切り株に腰を置いて話している暇なんてなかったんだ…。
僕がしでかしたミス、それは“スタンド使いは惹かれあう”、この大前提を忘れてしまっていたことなんだ…。
【I-7 中央部/1日目 黎明】
【チーム・ザ・ウェーブ】
【広瀬康一】
[時間軸]:吉良に腹をぶち抜かれた直後
[状態]:健康 疲労(小)
[装備]:紫外線照射装置
[道具]:支給品一式
[思考・状況] 基本行動方針:仲間を集めてゲームから脱出する
1.とりあえずツェペリさんと情報を交換する
2.由花子さんを探さなくちゃ!
※広瀬康一は自分が一度死んで荒木のスタンドで復活したと思っています。
※康一の叫び声がどこまで届いたかは後の作者様にお任せします
【
ウィル・A・ツェペリ】
[時間軸]:ブラフォード戦直前
[状態]:健康
[装備]:飲料水
[道具]:支給品一式、不明支給品1~3
[思考・状況]基本行動方針: 仲間を集めてゲームから脱出する
1.とりあえず康一君と情報を交換する
2.屍生人なのに正気を失ってない康一君に興味有り
3.ディオとその手下に警戒
※広瀬康一は屍生人であり荒木は吸血鬼だと思い込んでいます
※参加時期上、当然ブラフォードも敵として認識しています
※ジョージも康一のように正気を保ったまま屍生人化したのではと疑っています
◇ ◆ ◇
ンドゥールは考える。そして耳をすませる。口元に醜い笑みを浮かべながら。
なぜか?それは彼が今実感しているからだ。あのDIO様のために今時分は役立っていると、実感しているからだ。
なにがDIOのためになるのか?今、彼はなにをやっていて実感しているのか?
彼の考え、それは先ほどの男をふたり組みに接触させてそこをゲブ神で襲う。そして三人に殺しあってもらう。
(いくらDIO様でも80人ほどの者たちを相手するのは苦労するだろう…。自分が協力するのはもちろんだが、こんなくだらないことにあの方の手を煩わせてはならないだろう…。
ならばどうする?勝手に殺しあってもらえばいい…。なにも自分は動く必要はない、殺し合いをする人物をどんどん増やせばいいだけだ。)
サンドマンとの間に友情など彼にはない。いや、仮にあったとしてもその小さな友情と愛しのDIO様への奉仕、どちらが大きいだろう?どちらを優先すべきか?答える必要はないだろう。
ンドゥールは待つ。サンドマンが到着するのを、そしてそこで惨劇が起きることを。
舞い降りてきた木の葉をつかむンドゥールの顔には笑みが浮かんでいた…。
【I-7 リンゴォの果樹園前/一日目 黎明】
【ンドゥール】
【時間軸】:ジョースター一行と戦う直前
【状態】 :健康(目は見えないが、聴覚は常人以上)
【装備】 :聴覚補助に用いる杖
【道具】 :不明支給品1~3
【思考・状況】 基本行動方針:DIO様のために行動する。
1.現在地で待機し、サンドマンがふたり組みと接触したら襲撃する。
2.DIO様に会いたい。
3.身の安全と有力な情報の確保。
4.なるべく参加者の数を減らす。
【備考】
※目はスタンドで治療可能です。
※支給品は他の書き手さんにおまかせします。
※ジョースター一行の情報は一通り理解しています。
※
イギーについては何も分かりません。
※サンドマンからこのゲームについて基本的なことを聞きました。どれぐらい聞いたかは後々の書き手さんにお任せします。
※現在地を把握してます。
※参加者については
ディオ・ブランドーの名前が出るまではしっかりと聞いていました。その後の参加者についてどれぐらい覚えているかは後々の書き手さんにお任せします。
※ディオ・ブランドーをDIOと勘違いしてます。
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最終更新:2009年01月25日 15:56