もう朝が迫っているのであろう。今までこうやって何十年、何百年も生きてきた彼にとって時計なんぞ気にしたことはないし、きっとこれからもそうだろう。
沈み始めた月や星を眺め、朝を知る。そうして下に広がる町を一瞥した後、エシディシはこの空間に流れる心地よい沈黙を破った。
「ところでプッチよ」
幾年もの間成熟させた赤ワインかのように深く、濃い声にプッチは視線を向けて答える。
「さっき手にいれたDISC、あれで俺がスタンドを使えるようになることはないのか?」
エシディシの期待を込めた意見に対し、プッチは心底残念そうに懐からDISCを取りだし少し高く持ち上げた。
「……いや、残念だけど君にスタンドを授けることはできそうにないよ」
「それはつまり俺にスタンドの才能がないってこと……」
「いや、そういうわけじゃないんだ…。まず大前提としてこれはスタンドDISCじゃないんだ」
まるで駄々を捏ねる子供を諭すかのようにプッチは優しい言葉でこの大きいお友達を宥めた。励ますように肩に手をおき、そのまま言葉を続けた。

「中身を確認するにも今、この状況ではあまりにも不安定なんでね…。実際のところ断言はできないんだ。まぁ、十中八九記憶DISCで間違いないな」
「MU…ならば仕方ないな…」
「そうがっかりすることもないさ。参加者の中のスタンド使いから君に相応しいものを抜き出せばいい」
実際の所、適応しなければ使えることはないのだがエシディシはその言葉に喜びと感謝をプッチに述べた。
狭い車内がエシディシが身体全体を使って喜びを表したことによりますます狭くなり、プッチは苦笑いを浮かべた。
ゆっくりと爆音を響かせ上空を移動していく二人が鉄塔にたどり着くのにそう時間はかからないであろう。



◇  ◆  ◇



「!!」
「…急いだほうがいいですね」
そう言ったわりに呟きを洩らした青年の表情は変わらなかった。実際のところ、その鋭い眼光がさらに厳しくなったのだが少なくとももう一人の青年にはそう思えた。
もっともそれは二人が目的地へ向かい、足を動かしているので仕方のないことかもしれないが。
先を行くジョルノの背中を幾らか眺めた後、堪らずディオは自分の中の疑問を彼に問いかけた。
「今起きた“あれ”はスタンド能力か?“あれ”がさっきお前が言った地響きの原因だとおもうか?」
1900年代に生きた彼からしたら流れ星など未知のもの。実態も掴んでいない、仕組みもわからない流れ星をコントロールすることが可能なスタンドという能力にディオは驚き、微かにだが恐怖した。

ジョルノは隣に並んだ彼をしばらくの間じっと見つめ、一度だけ星を眺めた後、口を開いた。
「何とも言えません。スタンド能力である可能性は極めて高いでしょう。けれどもそれだけであれがさっきの地響きの原因だと考えるのは浅はかでしょう。事実、今地響きは起こりませんでしたし。」
「………」
「ただ……」
「ただ?」
「今その場に行くのは得策ではないでしょう。あれがスタンド能力だと仮定した場合、スタンド本体はもちろんその能力を自覚しているでしょう。
この殺し合いの場でわざわざあそこまで目立つような真似を故意でするとは思えません。もちろん緊急事態や想定外の戦闘に巻き込まれたこともありえるでしょうが、この殺し合いの場であそこまで目立つような行為をするということは…」
「つまり自ら表立って参加者を引き付ける罠、だと」
「僕はそう思います。とりあえずはもう少し西に向かい、参加者がいるであろう施設を周り先程の地響きについての情報を集めたいと思います。
あの流れ星のスタンド使いについても可能ならば正体を突き止めましょう」

綺麗に整理された彼の言葉には確かな説得力があった。ディオも納得できたし、なによりジョルノの意見を覆してまで彼自身進んで自分の命を危機に晒したくは無かった。
しかしながらその説に二つ返事で賛成を示したり、その冷静な考察に賞賛を示すのは癪だった。なにより目の前のこの青年がまるで動揺しないのに対し自分が流れ星ごときに動揺したのが彼の自尊心を傷つけた。
ディオはそのことを悟られまいと、すこし足を速めジョルノの先を歩いた。

そうしてどのぐらいか歩いた二人の周りは徐々に住宅や建物が消え始め、田園などの自然が目に付くようになった。周りの緑が漂わせる朝の匂いが二人の鼻腔をつく。
どちらとともなく口を開こうとしたまさにその瞬間、二人の耳に遠くから響く機械音が聞こえた。反射的に音源の方向を確かめる二人の視界に上空を駆けていく人工物が写った。
「…おい」
「ええ」
顔を見合わせることもなく、二人はそれだけで意思の疎通を交わした。互いの考えがこのときばかりは完全に一致した。
あの乗り物に乗った参加者も自分達と同じように地響きの元凶を突き止めに来たのであろう、と。
走る。二人はその乗り物を追うため、走った。
なんとか振り切られることなく、それを追い続けることが出来た二人の視界に天を突くように伸びた建物が見えた。あそこが終点なのだろうか、そう思った二人だったがそれについて深く考えることはできなかった。
なぜなら奇妙な銃撃音とともに数え切れないほどの銃弾が襲い掛かってきたからである。



◇  ◆  ◇



「こいつはひでぇな……」
映画やコミックで見たゴジラとかガメラでもいるんじゃねえか、とFFは無残にも折れ曲がった鉄塔を眺めながら能天気につぶやいた。
リゾットとの交戦で、この場ではもっと注意したほうがいい、と知った彼女が警戒を強めていたためか、鉄塔にたどり着いたときには結構な時間を費やしていた。
移動の途中に流れ星が二つ流れたことでまたどこかで戦闘が起きたことがFFにもわかった。かといって、今更そこにいっても間に合わないだろうし、もしかしたら鉄塔には自分の仲間がいるかもしれない。
そう思った彼女の足は自然と予定通り当初の目的地へと向かった。
そして無事鉄塔にたどり着いた直後の感想がこれである。
ちょっとした衝撃で崩壊しかねない鉄塔に振動を与えぬよう抜き足さし足でFFは周りを調べた。だが時間をかけたわりに見つかったものは壊れた懐中電灯だけと、がっかりするものだった。
ため息をひとつ吐くと手ごろなサイズの石ころに腰掛け、頬杖をつく。
事態は急を要するというのに仲間は見つからない、気持ちは焦るばかりで空回り。今の自分に冷静になれと言い聞かせクールダウンしたFFが考えたことは次に何をすべきか、であった。

(リゾットん所に戻る……のはなしだな。あいつの荒木をぶっ殺すって意志とその頭の良さには確かに頼りがいはある。
けどよぉ、頭がいいからこそこのあたしのことなんかもう見切りをつけてるかもしれねぇ…。きっともう違う目的地に向かってるだろ。
じゃここで待って誰か来るのを待つか?…いや、それは柄に合わねぇ。それになによりそんなのは弱気だ。やっぱり自分自身の力でどーにかしねーと…。
そーするとやっぱり隕石が落ちた場所にでも行ってみっか。徐倫もあいつのスタンドだって気づくだろうし、きっとこっちにもう向かってるだろう。もしかしたらアナスイの奴も来てるかもしんねーな。
ま、とにかく行動するのみだ。)

仲間がいるかもしれない、その前向きな考えが彼女を行動させた。
導き出した結論を胸にデイパックを担ぎ直したFFは早速隕石の落下地点へと歩きだした。
(…ってこの音は……ヘリコプターッ?!)
だが闇夜に響く爆音が彼女の動きを止める。街の光もなく微かな星の光を頼りに夜空に目を凝らすと確かにそこにはヘリコプターらしきものがあった。
プロペラの回転音が段々と大きくなってくることは即ちそれはヘリコプターが近づいて来ているということ。彼女はとりあえず誰が乗ってるかわからないことだし様子を見ようかと思った。
ヘリコプターを追いかけて地上を走ってきた二人組を見るまでは。
(…!!あの男はリゾットが………ッ!!)
特徴的な髪型、細身の長身で華奢な身体、鋭い目付き。自分の仲間の脅威となりうる人物、ジョルノ・ジョバァーナに向けFFは一切の躊躇いもなく引き金をひいた。



◇  ◆  ◇



ジョルノ・ジョバァーナは極めて優れたスタンド使いである。大抵のスタンド使いとの一対一ならばまず負けないであろうし、多人数相手でもうまく立ち回ることは可能だろう。
しかし今のこの状況はあまりに特別すぎた。人影が見えたと思ったその瞬間に幾つかもわからない程の銃弾が襲いかかって来る、その上隣には守るべき同行者。彼が辛うじてながらもなんとか二人の頭部や心臓などの致命的な器官を守ったのは素晴らしいことであろう。
「ぐあっ……!」
ジョルノが未だ収まらない銃弾の嵐をスタンド、ゴールド・エクスペリエンスで弾きながら同行者の前に立ちはだかると、彼が右手を抑えその場に座り込んでしまった。状況はヘビー。相手の人数、明確な目的、説得可能か否か。それら全てがいまだ不明。暗闇のため動いてる相手の顔も武器もはっきりとはわからない。
明らかに自分達は不利な状況に追い込まれてしまった。


(くそ、忌々しい…なんてザマだ……ッ!)
ディオは悪態をつきたくなるのをなんとか堪えて目の前にいるジョルノと名も知らぬ襲撃者を睨み付けた。
今の状況を冷静に分析するとまさしく防戦一方。襲撃者は自分の有利を最大限利用し距離を変えることもなく、手を休めることもなくまるで隙を作ろうとしない。その様から戦闘慣れしてるのであろうとディオは苦虫を潰したような顔をしながら思った。

一方それに対するジョルノは迫り来る弾丸を全て弾き防ごうと必死であった。
いや、正確に言うとジョルノには幾らか余裕が生まれつつあった。相手の一定の速さで飛んでくる銃弾に慣れたのであろうか、きっとやろうと思えば相手に向かって走り距離を詰めることも充分可能であろう。
しかしながらそれができないのは…
(ほかでもない、このディオのせいで……ッ!)
屈辱的だった。そしてそれを認めたくはなかった。けれどもそれ以外に方法はないように思えた。
自分が今一番になすことが逃走であること、それが屈辱的だった。なによりもジョルノに自分が無力であると思われるのがディオには堪らなく嫌だった。しかしながら背に腹は変えられない。右腕に負った傷痕を庇いながらも自分の分のデイバックをなんとか拾い上げた。
そんな時だった、ジョルノが彼に話しかけたのは。
「僕の声は聞こえますか…?」






惨めな気分だった。こんなにも惨めな気持ちになったのはいつ以来だろうか、母が死んだ時以来だろうか。
出血が止まらない撃ち抜かれた右腕の痛みも、全力で走ったために酸素を送ろうとする心臓の素早い動悸も気にならなかった。立ち止まってからの時間と比例するように自分の中の憎しみという感情が膨れ上がっていくのがわかった。
『助けを呼んできてくれませんか?このままではジリ貧です。状況を打破するためにも助けを呼んできて下さい。もしも間に合わないと思ったら僕のことは見捨ててもらって結構ですから。ただ第二回放送の時にもう一度合流しましょう。最初に会った館に第二回放送の時に……。いいですね?』
背を向けていたため表情はわからなかったがジョルノ・ジョバァーナの言葉は淡々と述べられ、感情をなるべくこめないようにしてるかのように思えた。
結果的にそれは好都合だったかもしれない。

(このディオに対して同情のつもりかッ?!情けでもかけたのかッ?!)
なぜならそれがプライドの高いディオの精神を逆撫でする結果になってしまったから。
(このディオが過程や結果など度外視して生き残ることだけを優先しているとでも思ったのか……ッ?!二度もだ、二度もッ!!このディオが一度ならず、二度も、それも同じ人間にッ!!)
膝に置かれていた手のひらを持ち上げ目の前で握りしめる。辺りに響く静寂、その中になにか聞こえやしないかと耳をすませる。
そうしてゆっくりと鉄塔があるであろう場所へ顔を向けてみたがなにも見えなかった。しかし見えないだけであってそこではまだ命がけの戦いがまだ続いているのだろう。
(だめだ…やはりこのオレがここで逃げるわけにはいかないッ!!『誇り』が消える……、ここであそこから完全に退いたら!)
呼吸を整え、彼はその場でスッと背筋を伸ばしひと呼吸をを置く。『行ってなにができるというのだ?』と心の中の呟きを無視する。『死ぬかもしれない…』という微かな不安を強くかき消す。
(誰の言葉だったか…人間の偉大さは恐怖に耐える誇り高き姿にある!このおれの新しい姿を!その目に確と焼き付けろ、ジョルノ・ジョバァーナッ!)
そうしてディオが一歩を踏み出した時だった。
「そこの男、止まりなッ!」
声に振り向いた先にいるこの男はもしかしたら殺人鬼かもしれない。自分の勇気が試されてるのかもしれない、そう思ったディオはいたって平然とした表情を作りながらも速まる心臓の鼓動を抑え、男と向かい合った。



【D-3南部/1日目 早朝】
ディオ・ブランドー
[時間軸]:大学卒業を目前にしたラグビーの試合の終了後(1巻)
[状態]:右腕負傷、体力消耗(小)、プライドがズタズタ(悪化)、スタンド使いへの激しい嫉妬、ジョルノ(と荒木)への憎しみ、自分に対する無力感、ストレス
[装備]:なし
[道具]:チャーイ(残量1.5㍑)、基本支給品 不明支給品1~2
[思考・状況]
基本行動方針:なんとしても生き残る。スタンド使いに馬鹿にされたくない。
1.目の前の男に対処。ゲームに乗ってるようなら“自らの力”でどうにかする。
2.鉄塔に向かい“自らの力”であの場をどうにかする。
3.ジョルノが憎いが、借りを返すまではジョルノと行動を共にする。返した後は不明(現在は腹を立てているので借りについては保留)
4.勿論ジョルノとの行動の途中でジョナサン、エリナ、ジョージを見つけたら彼らとも合流、利用する
5.なるべくジョージを死なせない、ジョナサンには最終的には死んでほしい(現時点ではジョルノにジョナサンを殺させたい)
6.ジョルノに変な違和感
7.自分もスタンドが欲しい……
8.ジョルノと合流できなかった場合、第二回放送時に「DIOの館」で合流

[備考]
1.見せしめの際、周囲の人間の顔を見渡し、危険そうな人物と安全(利用でき)そうな人物の顔を覚えています
2.チャーイは冷めません
3.着替えは済んでいます
4.ジョルノからスタンドの基本的なこと(「一人能力」「精神エネルギー(のビジョン)であること」など)を教わりました。
  ジョルノの仲間や敵のスタンド能力について聞いたかは不明です。(ジョルノの仲間の名前は聞きました)
5.ジョナサン、ジョージの名前をジョルノに教えました。
  エリナは9割方死んでいるだろうと考えているので教えていません。(万が一見つけたら合流するつもりではいます)

シーザー・アントニオ・ツェペリ
[時間軸]:ワムウから解毒剤入りピアスを奪った直後。
[状態]:首に若干の痛み(戦闘には支障無し)
[装備]:スピードワゴンの帽子。
[道具]:支給品一式、エリナの人形、中性洗剤。
[思考・状況] 基本行動方針:ゲームには乗らない。リサリサ先生やJOJOと合流し、 エシディシ、ワムウ、カーズを殺害する。
1.目の前の男に対処。
2.荒木やホル・ホースの能力について知っている人物を探す。
3.スピードワゴン、スージーQの保護。
4.ストレイツォは出来れば殺したくない。
5.女の子がいれば助ける。



◇  ◆  ◇



「無駄ァ!」
走っていく彼に向けられた銃弾を何度弾いたことだろう。然り気無く、相手への注意をはらったまま後ろを確認するともう相当の距離があり、ディオを撃ち抜くのは困難だろうとジョルノは判断した。そうしてやっとこさ目の前の相手に完全に集中できるようになったジョルノは手始めに“口撃”を開始した。
「貴方の名前はなんですか?なぜ見も知らずの僕を、僕らを襲撃したのですか?」
返答がわりの相手からの銃弾を軽くいなし、じっと相手を観察する。未だ距離が縮まず、相手の表情も読めない現状を打破するためジョルノは大胆にも相手へと歩を進めた。自分の考えを、推測を展開しながら、口撃を休めず。

「貴方の目的が見えません。優勝を狙っているというならばこんなにも簡単に“彼”を、明らかに力を持たない僕の同行者を見逃すとは思えません。
もっと執拗に狙えばもっと優位に事を運べたはずです。…だがあえてしなかった。つまりそれは“僕”が狙いだと、そうですね?」
僅かだが確かに攻撃の手に躊躇いがはしった。今まで息つく暇もなく撃ちっぱなしだった相手に確かな変化が起こったのである。
「僕も色々とやってきたので知らず知らずのうちに他人から怨みを買っていたのかもしれません。しかしながら貴方はその類いではない。
僕と面識がないようなら善人面して油断を誘えばいい。付け加えると動機が怨恨の場合、問答無用で相手を殺しにかかるのは少し不自然ですし。」
もはや戦いの主導権は完全にジョルノにあった。殺意のない迷った攻撃では彼を仕留めることは不可能に近い。例え二人の距離が先ほどより短かろうが。

「怨恨でもない、優勝を狙ってるわけでもない。あくまで僕個人を狙う。…この結果からわかることは

―――誰かが貴方に嘘の情報を吹き込んだ。僕が危険人物であるとガセの噂を掴まされた。

違いますか?」

ジョルノの考えから言うと見事にビンゴしたといった所だ。正直、今言ったことには色々と不自然な所があるだろう。ただの偶然で済ますことが可能な部分は多いだろう。
しかしながらジョルノのブラフに相手は反応した。二人の間に流れる沈黙は相手の肯定を示しているだろう。見事な口撃だったのである。
だがどちらかが何らかの行動を移す前にその沈黙は破られた。それは口を閉ざしていたジョルノでもなく、迷いながらも口を開きかけたもう一人でもなかった。空から落ちてきた第三の人物の叫びが夜に木霊した。
「ポフェーイヒイヒイヒイヒイヒイヒヒヒヒヒーーーーーーーーーーーーーッ!!」



◇  ◆  ◇



「どうだい、エシディシ」
「FUMU…どうもヘマしちまったみたいだ。落とした場所が見事にへこんで低い場所になっちまった。鉄塔の脇に投げたつもりだったんだがなぁ…」
「なに、そんな悲観することもないさ。下の二人は間違いなく何が落ちてきたか調べるだろう。誰だってそーする、私だってそーする。その後はもう感染の連続だ。」
「…どうだかな。お前を見てるとどうも人間というものがイマイチ掴み所の無いものに思えてくる。」
「買い被り過ぎだよ、エシディシ…」
「フッ………」

―――バババババババババ………

「………プッチ、どうやら俺たちの目論見は失敗に終わりそうだぞ」
「…何があったんだい?君たち柱の男と違って人間は視力も夜目も効かないんでね。下で何が……?」
「二人人間がいる。一人はカビ爆弾が落ちたへこみの傍にいる。もう一人は近くにいるが爆弾のことは見ずにこちらを明らかに見ている。」
「……」
「問題は爆弾の近くにいる人間だ。ヤツもお前と一緒、スタンド使いだ」
「…それで?」
「そのスタンドの能力が問題だ…!ヤツが殴った近くの石が形を変える…手だ、手になったッ!もう一個は…足ッ!
不味いぞ、プッチ。ヤツは爆弾を治療する気だ!ヤツのスタンド能力は体の部品を作るスタンドだッ!」
「おい、エシディシ!何処に行くんだッ!?」
「下に降りて始末してくる。たかが人間二人だ、そう時間はとらせない。すぐに終わらせてくるからプッチ、待っていてくれ。
ああ、先に言っとくが一応俺は朝日を浴びても死にはしないから安心してくれ。」
「おい、エシディシッ!おいッ!……やれやれ敵は“一人”じゃないってのに」

―――バババババババババ………

「……いつから俺に気づいてやがったんよォ~!まったくお前らのせいで安心して昼寝もできねェぜ。どォーしてくれんだよ、お前ッ!?」
「彼は反対側の扉から下を覗いてたんでね、気づかなかったようだがな……」
「…」
「“物を固定する”…なんとも薄っぺらい能力だ。人の空間に自分勝手に入ってくる貴様のようなチンピラには相応しいスタンド能力だな」
「おぅおぅ…よく話す口だぜ、その俺の眠りを邪魔したうるさいヘリと同じくらいな」
「…」
「でもよォ、実をいうとお前らが来てくれたのは嬉しいことだぜ。お前らが俺の睡眠を邪魔したことを忘れてやってもいいほどな…」
「……」
「だってよ、こんないいもんわざわざ俺に献上してくれんだろ?ヘリコプター、いいもんじゃねーか、ええ?!最高じゃねえか、この殺し合いに対してやる気と希望がムクムク湧いてくるってもんだぜッ!おいッ!」
「…一つ言っとこう。王には王の、料理人には料理人の、聖職者には聖職者の各々の器という物がある。その点で貴様にはこの舞台で優勝できるはずがないッ!貴様のその安っぽい器では到底なッ!
そしてその王の器を脅かす貴様の行為ッ!その上私と彼の深淵の仲に踏み込んだ罪、ここで償わせるッ!」


【D-2 鉄塔の脇の上空 ヘリコプター内部/1日目 早朝】
エンリコ・プッチ
[時間軸]:JC6(69)巻、ヤドクガエルに“破裂する命令”をした直後
[状態]:健康 腕の辺りの服がちょっと燃えてる
[装備]:ヘリコプターで運転中 ※燃料には限りがあるが、C-10からD-2、D-3あたりまで飛ぶ量は充分にある。
[道具]:支給品一式、ヘリコの鍵(ヘリコプターはコミックス60巻でチョコラータが乗ってたもの)、ウェザーの記憶DISC
    不明支給品0~2(確認はしてます)
[思考・状況]
基本行動方針:ディオ&ジョルノのもとへ、天国へ
1.下にいる男の処理。その後エシディシと再合流。
2.こいつ(エシディシ)は良い奴のようだ。しばらく一緒にいてみよう。もっと情報交換をしたい。
3.ディオとジョルノに会いたいが、時代が違いそうで不安。
4.ジョースター一族はチャンスがあれば抹殺(無理はしない)。
5.DISCの確認
6.エシディシに相応しいスタンド探し

備考
※二人ともお互い「気が合う、面白い」といった理由で手を組んでいるので利用する等の発想は現段階ではありません。
※時代を越えて参加者が集められていると考えています。
※日光から逃れれるのなら付近に建物、及びアヴドゥルの隠れ家に戻ってもいいと考えてます。
※C-10、特に隠れ家の周りはダービーの手足と周りの植物を基に繁殖したカビが広がってます(大体はエシディシに焼かれました)。
※スタンドが誰にでも見えると言う制限に気付きました
 彼らはその制限の秘密が首輪か会場そのものにあると推測しています
※未だ朝日が昇ってないため音は聞こえますが、下の様子がわかりません。
※『ジョースター家とそのルーツ』リストには顔写真は載ってません。

サーレー
[スタンド]:クラフトワーク
[時間軸]:ミスタ戦直後
[状態]:背中に軽い火傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(懐中電灯以外)、『ピンクダークの少年』3部までセット、高級シャンパン(空瓶)
[思考・状況] 基本行動方針:優勝してポルポの遺産を奪う
1.男を殺してヘリコプターを奪う。
2. 出来ればブチャラティ達を探して遺産の隠し場所を吐かせたい
[備考]
※幽霊部屋の中にも荒木の放送は聞こえてきます。
※D-2が禁止エリアになった時は、幽霊部屋もその例外ではありません。
※ピンクダークの少年の1部を読破しました。
※ベットは幽霊部屋に放置されてます。
※サーレーはヘリコプターの10メートルほど下、漫画の頁を破り捨て固定しながらヘリコプターへと向かってます。


◇  ◆  ◇



FFは思わず頭を抱えたくなった。あまりにも一度に同時のことが起きすぎたし、同時に判断に迷うことが起きすぎた。
ジョルノ・ジョバァーナは本当に悪なのか、この空から降ってきた男はなにものか、ヘリコプターには誰が乗っているのか、そしてそのヘリコプターから突如飛び降りて来て平然としてる目の前の“これ”はなんなのか。
「FUN…俺を目の前にしても汗一つかかん。呼吸も乱れん、体温の変化も見られん。これは面白い戦いになりそうだ…」
人間じゃない自分を棚に上げていうのもなんだが、どうやらこいつは人外らしい。それはあの高さから降りてきたのに生きていることや、衝撃で開いた傷口が瞬く間に修復されていくのでわかった。しかもどうやらヤル気満々ときたもんだから更に面倒なことになっている。
「おいおい、黙っときゃ言いたい放題しやがってッ!とりあえずあの男はなにもんなのか、それとてめぇ自身もなにもんなのか説明しやがれッ!」
だがそんな言葉はどこ吹く風。いつの間にか男とジョルノ・ジョバァーナの間には明らかな緊張関係が築かれていた。

「お前はその男をどうする気だ?」
「治療します。何が起きたか、誰にこんな目に合わされたか、情報を聞き出します。」
「それを俺が許さないと言ったら?」
「…止めるようなら止めてみてください」
「FUMU…ならばやってみようか」
自分がこの場に馴染めていないのは明らかだった。当たり前のように自分の言葉が無視されたことにFFの中で怒りよりも、自分の空回りの虚しさが込み上げた。
「一つ聞かせてください…。このカビのようなスタンドはあなたのものですか?」
「それも戦えばわかることだ」
今にも戦闘始めそうな二人。だが定まらない自分の心。
(ジョルノ・ジョバァーナも本当に信頼できるのかイマイチわかんねぇ。かと言って目の前のこいつに協力するのもナンセンスだ…。一体どうすりゃいいんだ…?)
空中でも地上でも闘争という名のパーティーが始まろうとするなか迷うFF。
地上では柱の男とスタンド使い屈指の実力者同士の戦い。 空中ではホワイトスネイク、その本体である因縁の相手、エンリコ・プッチ。
この鉄塔という火薬庫に火がつくか否か、それは彼女の肩にかかっていることは間違いないだろう。


【D-2 鉄塔の脇/1日目 早朝】
F・F
[スタンド]:フー・ファイターズ
[時間軸]:DアンG抹殺後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:加湿器、メローネのマスク、支給品一式、壊れた懐中電灯
[思考]:基本行動方針: 徐倫達に会ってホワイトスネイクの正体を教え、共に承太郎のDISCを奪還する。勿論荒木は倒す
1.目の前の二人に対処。
2.あとでリゾットと組んで行動し、リゾットを信用していいかその時に見極める
3.ブチャラティチームとプッチの一味は敵と判断
[備考]
※リゾットの能力を物質の透明化だと思いこんでいます
※承太郎はDISCを抜き取られ廃人化した状態だと思いこんでいます
※リゾットの知るブチャラティチームの情報を聞きましたが、暗殺チームの仲間の話は聞いてません
※隕石を落としたのはウエストウッドじゃあない別のスタンド使いだと思っています。
※ジョルノに対しては未だ完全に信頼していません。

【エシディシ】
[時間軸]:JC9巻、ジョセフの“糸の結界”を切断した瞬間
[状態]:右手の手の甲が粉砕骨折(回復中)、ちょっとハイな気分。落下の際に脚部に軽いダメージ(戦闘に支障なし)
[装備]:ヘリコプターに搭乗中
[道具]:支給品一式、『ジョースター家とそのルーツ』リスト(JOJO3部~6部コミックスの最初に載ってるあれ)
    不明支給品0~2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る(乗る乗らないは現段階では不明)
1.ダービーをカビ爆弾として使うためにも目の前のスタンド使いを殺す。
2.こいつ(プッチ)はなかなか面白い。しばらく一緒にいてみよう。もっと情報交換をしたい
3.太陽に弱いという意味で無理に出歩く必要はない。
4.自分のスタンドを探す

備考
※二人ともお互い「気が合う、面白い」といった理由で手を組んでいるので利用する等の発想は現段階ではありません。
※時代を越えて参加者が集められていると考えています。
※日光から逃れれるのなら付近に建物、及びアヴドゥルの隠れ家に戻ってもいいと考えてます。
※C-10、特に隠れ家の周りはダービーの手足と周りの植物を基に繁殖したカビが広がってます(大体はエシディシに焼かれました)。
※スタンドが誰にでも見えると言う制限に気付きました
 彼らはその制限の秘密が首輪か会場そのものにあると推測しています
※『ジョースター家とそのルーツ』リストには顔写真は載ってません。よってジョルノに気づいてません。

【ダニエル・J・ダービー】
[時間軸]:本編初登場前
[状態]:満身創痍。手足が無い。カビ侵食中。落下による全身へのダメージ(大)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:これは夢なんだッ!バンザーイッ!
1.イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ
2.痛みでまともな思考ができない

※ダービーの傷は後6時間程放置されたら死ぬ程度のものです
※自分以外の参加者はみんな死ねばいいのに、と考えてます。
※どうせ死ぬんだから誰かが死ぬためならなんだっていいと考えています。
※他の参加者がヘリコプターの通ったルートの真下を歩いてもカビに感染するとは限りません。
 これはグリーン・ディのカビと地面の距離が充分離れている、つまりカビの媒介物であるダービーが空にいるからです。
 逆に言うとダービーが地面に落とされた地点の周辺に誰かが近づいたらそいつは(ry
※声は出るようになりました。これはプッチとエシディが声で他の参加者が近づいてくれると判断したためです。
※ダービーが落とされた場所は凹んで低い場所です。ジョルノやFF、エシディシが彼を抱えあげるようなことをしない限り感染は広がらないようです。
 逆に言うとダービーが穴から這い上がるようなことがあれば……?
※ヘリコプターより落とされた影響で全身にダメージを受けています。治療まで時間がかかるようであれば出血や内臓へのダメージで死ぬかもしれません。

【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:メローネ戦直後
[状態]:健康(ゴールド・エクスペリエンスで治療済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0~3
[思考・状況]
1.目の前の男に対処。
2.仲間を捜す
3.ディオに変な違和感
4.ジョナサンの名前が引っ掛かる
5.安全な場所でカビの男(ダービー)を治療、情報を入手する
6.ディオと合流できなかった場合、第二回放送時に「DIOの館」で合流

[備考]
1.ギアッチョ以降の暗殺チーム、トリッシュがスタンド使いであること、ボスの正体、レクイエム等は知りません。
2.このディオは自分の父親とは同姓同名の他人だと今のところ思っています。
3.ディオにスタンドの基本的なこと(「一人能力」「精神エネルギー(のビジョン)であること」など)を教えました。
 仲間や敵のスタンド能力について話したかは不明です。(仲間の名前は教えました)
4.彼が感じた地響きとは、スペースシャトルが転がった衝撃と、鉄塔が倒れた衝撃によるものです。
  方角は分かりますが、正確な場所は分かりません。
5.ジョナサン、ジョージの名前をディオから聞きました。ジョナサンを警戒する必要がある人間と認識しました。




投下順で読む


時系列順で読む


キャラを追って読む

63:僕の父の左肩に星痣 ディオ・ブランドー 88:名に棲む鬼
62:品定め シーザー・アントニオ・ツェペリ 88:名に棲む鬼
70:過去への遺産、暗黒の遺産 ① エシディシ 88:名に棲む鬼
70:過去への遺産、暗黒の遺産 ① ダニエル・J・ダービー 88:名に棲む鬼
63:僕の父の左肩に星痣 ジョルノ・ジョバァーナ 88:名に棲む鬼
54:鉄塔から出たら負けかなと思ってる サーレー 88:ヤツは空にいる
77:ほんのすこしの話 F・F 88:名に棲む鬼
70:過去への遺産、暗黒の遺産 ① エンリコ・プッチ 88:ヤツは空にいる

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最終更新:2016年07月03日 10:18