街に向かったはずのシーザーはティベレ川に沿って北上していた。
何故か?時間は少々遡る……


 ■   ■


    …………ドドドドドドドド

物音と言うには物騒な音が聞こえてきたのはシーザーが川に背を向けて数分もしないうちだった。

「……何の音だ?」

周囲に生物がいないことは波紋で確認していた。
手にしているペットボトルを見ても波紋の乱れは見られない。
生物が起こしたものではないと半ばわかっていても、気になってしまったものは仕方がないと振り返って音の正体を確かめ――立ち止まる。

「コイツはッ……!」

透明だったはずの川の水が茶色に変色していた。
それだけではない、水嵩も明らかに増している。
形兆も狙っていたわけではないだろう。
この後川が氾濫するとわかっていたならば投げ込まずに川岸に放置するだけで済ませたはずだ。
つまり、シーザーが濁流に巻き込まれずに済んだのは『偶然』。
無論シーザーとて厳しい修行を積んだ波紋戦士の一人、たかが濁流ごときに遅れを取ることはないが、もしも川岸に上がるのが遅れていたならば……そう思わずにはいられなかった。
雲一つ無い空の下、どうしてこのような事態になっているのか疑問には思ったがそれよりも誰かに会うことの方が先決だと再び街に向かおうとし――

        ……ドッバアアアアァァァァン!!

なかった。
さっきまでの濁流がまるで小川のせせらぎに感じられるような激流。
鉄砲水という表現ですら生温いと思ってしまうような奔流。
シーザーは絶句する。
つう、と冷や汗が頬を伝う。
ふいに聞こえたゴクリという音が生唾を飲み込んだということに気付くのに時間がかかった。
思わず駆け戻り、上流を見遣る。
轟々と渦巻く流れは視界の端まで絶えず、始まりを悟らせない。
シーザーは知る由もなかったが、これはウェザー・リポートが降らせた雨がカイロ市内地下水道を通ってティベレ川に流れ込んだものだ。

(形兆のスタンドは軍隊、ヴァニラのスタンドは消滅……だったか?スタンドは一人一能力、裏を返せば『一つのことしかできないが誰がどんな能力を持っているかわからねー』って事でもある。
 もっと言い換えれば『何でもアリ』ってわけだ。水を操る、いや、水量を増やすスタンドがあってもおかしくねーが……となると何故こんな目立つことをしたのかだが、大規模な戦闘があって下流への影響を気にしていられなかった、とかか?
 クソッ、考えても埒が明かねえ、上流に向かって張本人を探した方が手っ取り早いか……ん?あれは何だ……レコードか?)

依然泳ぐには危険であることには変わりないがいつしか流れは比較的緩やかになり、シーザーの目にとまったのはぷかぷかと浮かぶ光る4つの物体。
それを目にしたのが近代的な人間だったならばそれをCDだと言うのだろうが、生憎シーザーは1940年代の人間なので知識として持っていない。
このまま見逃すのも勿体ないしもう流れがこれ以上は激しくならないと判断し(第二波が来たところで跳べばいいだけの話だ)水面に立ち、波紋を応用して水面の一部を固定、物体が流れていかないようにキープする。
師匠のリサリサならば水を操って自分のところまで引き寄せるのもお茶の子さいさいなのだろうなと考えつつそれを拾う。

「やっぱりレコードじゃあねえな……小さいし鈍い光沢を放ちはしないし、何よりこんなにグニャグニャとはならねーはずだ。
 それに表面に浮かんでいるのは顔に馬に……筒、か?川の氾濫とも関係あるかもしれねーし持っておいて損はねーだろう」

再び川岸に戻ると北へ向かって歩き出す。
このまま行けば川の濁りから流れ込んだ場所を突き止め、記憶を失ったグイード・ミスタと遭遇できるかもしれない。
しかし、すぐ近くにあるサン・ジョルジョ・マジョーレ教会での戦闘や生命反応を探知するかもしれない。
シーザーがこの後どのような運命に巻き込まれるかを知る者は誰もいない。


【D-2 南部 ティベレ川岸/ 1日目 昼】
シーザー・アントニオ・ツェペリ
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:サン・モリッツ廃ホテル突入前、ジョセフと喧嘩別れした直後
[状態]:胸に銃創二発、体力消耗(小)、全身ダメージ(小)
[装備]:トニオさんの石鹸、メリケンサック、シルバー・バレットの記憶DISC、ミスタの記憶DISC
   クリーム・スターターのスタンドDISC、ホット・パンツの記憶DISC
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:主催者、柱の男、吸血鬼の打倒。
0.ティベレ川を北上、氾濫の原因を突き止める。
1.ジョセフ、リサリサ、シュトロハイムを探し柱の男を倒す。
2.DIOの秘密を解き明かし、そして倒す。
3.形兆に借りを返す。
4.DISCについて調べる。そのためにも他人と接触。


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最終更新:2014年06月09日 01:35