暗闇の道を一台の車が駆け抜けていく。この車の行き先は地獄でも天国でもない。
人生という標識を清く正しく守り続ける現実という名のロードだ。
右へ左へ後ろへ前へ。今も車は走っている。現在の方角は北だ。
「ずっとだ………さっきからずっとだなあ…なぁ?シーラE」
「ええ。もうずっと」
「さっきからずっと尾行なんかする者もなく、もう一時間近くは走り続けている。
ひょっとしてあたしたちは、あたしたちはひょっとして」
エルメェスはバックミラーを確認しながら、シーラEに返答を求める。
この車に乗り合わせている人物は三人。残るは、右腕を切断され気絶している広瀬康一。
「逃げ切ったのかよォーッ!!このままだと、あと数分でGDS刑務所に着けるぜッ! 」
エルメェスはハンドルをガンと叩きながら、怒気をこめて叫んだ。
無理もない。彼女たちはつい一時間前ほどに、仲間を"見捨てて"きたのだから。
自分の無力さを忌々しく呪った。それだけこの瞬間に貯まっていた何かを吐き出したかった。
「大きな回り道だったけれど、これが最短だった」
エルメェス達が自動車で通ったルートはこうだ。
まずジョースター家の牧草地を横断し、エリアG-1へ東征。
次にG-1からF-1、E-1へと縦に伸びる大きな道を北上。
禁止エリアになっているF-2とD-1を避けるようにグルリと時計回りに移動した。
そして彼女たちのひとまずの目的地はE-2のグリーン・ドルフィン・ストリート刑務所。
ここはエルメェスにとって縁の地。刑務所には医務室もある。
「見えてきたぞッ! これであんたらの手当が出来ればいいが……」
目的はシーラEと広瀬康一の治療に他ならない。
あの
カーズの追跡から逃れられたのならば、次の行動はこれがベスト。
エルメェスはハンドルを右に切り、車を進める。
彼女は、かつて自分が収容されていた古巣へ戻ろうとしていた。
★ ★ ★
「――で、来たはいいけど、どうやって入ればよかったっけな……」
月明かりの下、エルメェスは独り言をつぶやいた。
康一は怪我の具合が酷いため、シーラEに護衛をまかせて車に置いてきた。
「刑務所に入った時は護送車のバスだったからなぁ」
入口の横にある守衛室のドアを開けて、手当たり次第に物色する。
エルメェスは守衛室に置いてある鍵という鍵をかき集めて、刑務所を探検するつもりだった。
「ん? 」
この時、エルメェスは不思議なことに気がつく。
この守衛室の異様な雰囲気。異様な光景。これではまるで……。
「どうやら先客がこの部屋に入ったみてーだな」
どこかの誰かもわからない存在が、一足お先に守衛室を漁っていたらしい。
そういえばこの外と守衛室をつなぐ扉もそもそも鍵が開いていた。これは冷静に考えるとおかしい。
エルメェスは、外と守衛室をつなぐ扉とは別の扉に手をかける。
つまり、守衛室から刑務所につながる方の扉の鍵を開けようとした。
――そのときだった。
「うおお!? 」
ドアノブがガチャリと周り、扉がひとりでに開いたのだ。
まさかの展開にエルメェスは大袈裟にバックステップをし、スタンドを発現させて、臨戦態勢をとった。
この先に待つものは知人か、味方か、まだ見ぬ人物か、それとも敵か。
「……エルメェス? 」
それは、二人の男だった。
しかしエルメェスにはその男たちに見覚えがあった。
ナルシソ・アナスイと
空条承太郎であった。
そう、エルメェスよりも先に守衛室を探索したのは承太郎。
そして彼らは、まさに刑務所から退出しようとしていたのだ。
行きと同じ道を辿って帰ることは何も不思議なことではない。
「なんだよ畜生……生きてたのか……」
「おい、そんな言い草は無いだろう」
「畜生……畜生……畜生……」
エルメェスのただならぬ様子に、アナスイと承太郎は顔を見合わせるしかなかった。
彼らはエルメェスの気持ちなど知る由もなかったが、なんとなく察することはできた。
おそらく誰かが死んだのだろう。おそらく誰かを助けられなかったのだろう、と。
「何があった? 」
承太郎は、この出会いを『運命』と確信した。
片や刑務所を侵入しようとしたもの、片や刑務所を出ようとしたもの。
侵入の経路は偶然一緒だったとはいえ、このタイミングでの遭遇は偶然ではないと。
だからこそ承太郎はこの瞬間を大事にしようとした。
「カーズに……みんなやられた……ティムも、噴上も、シュトロハイムも……」
エルメェスはゆっくりと一部始終を語り始めた。
★ ★ ★
「帰ってきた……っと、あれは……」
車を降り車体にもたれて時間を潰していたシーラEは、エルメェスの帰還に気がついた。
ぽっかりと明るく月が出ているからこそだったが、今はそんなことはどうでもいい。
それよりも、彼女が大の男を二人もつれて帰ってきたことの方が気になった。
「エルメェス、そちらは? 」
「ナルシソ・アナスイだ。話はエルメェスから全て聞いた」
「康一の容体はどうだ? 」
「今は……眠っているわ」
シーラEは車の後部座席に視線をチラリと映した。車の中では康一が横たわっている。
それを見たアナスイは、後部座席の扉を開けて康一の治療を始めた。
フー・ファイターズと融合した今の彼には、よりちゃんとした止血が可能だった。
「"俺の"F・F弾……プランクトンを傷口に埋め込むことで傷口を塞ぐことができる。
さらにダイバーダウンで傷口を変形させて形成すれば……傷口を隠すことも可能だ。
今はこれぐらいしか出来ないが……失血死する恐れは無くなったとみていいだろう」
シーラEには、心なしか康一の表情が和らいでいるように見えた。
それほどまでに、アナスイの治療は一時的とはいえこれ以上の無い応急処置であった。
「ヘイッ、シーラE、あんたの怪我も後でアナスイに直してもらうからな」
「ありがとうエルメェス。承太郎も、無事で良かった」
「とりあえず情報交換をもう少ししたい。カーズとやらのことも含めて、な」
「そうね。私も話がしたい。この破れたトランプのハートの4……ムーロロのこともね」
そしてアナスイが会話に割って入るように身を乗り出した。
彼は口元に人差し指を当ててしーっの合図をとりながら、自分の首輪に指をさした。
エルメェスとシーラEは思わず声が出そうになったが、なんとか我慢しとおせた。
★ ★ ★
満天の星空の下に、車が走る。
運転手はエルメェス。
助手席にはシーラE。
後部座席には承太郎、アナスイ、そして未だ気絶中の康一。
彼らの次の目的地は、いずこへ。
【E-2 /1日目 夜中】
【チーム名:AVENGERS】
【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → 『エコーズ act2』 → 『???』
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:右二の腕から先切断(止血完了)、極度の貧血、気絶
[装備]:エルメェスの舌
[道具]:
基本支給品×2(食料1、パン1、水1消費)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.???
【
エルメェス・コステロ】
[スタンド]:『キッス』
[時間軸]:
スポーツ・マックス戦直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.車でどこかへ移動する。
1.運命への決着は誰も邪魔することはできない……。
2.ジョジョ一族とDIOの因縁に水を差すトランプ使いはアタシたちが倒す?
【
シーラE】
[スタンド]:『ヴードゥー・チャイルド』
[時間軸]:開始前、ボスとしてのジョルノと対面後
[状態]:両腕に裂傷(治療済)、貧血、身体ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:トンプソン機関銃(残弾数70%)
[道具]:基本支給品一式×6(食料1、水ボトル少し消費)破れたハートの4
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノ様の仇を討つ。
0.車でどこかへ移動する。
1.ジョースター家とDIOの因縁に水を差すムーロロ、アタシが落とし前をつける?
【備考】
※参加者の中で直接の面識があるのは、暗殺チーム、ミスタ、ムーロロです
※元親衛隊所属なので、フーゴ含む護衛チームや他の5部メンバーの知識はあるかもしれません
※車内に放置されていたティム、噴上、シュトロハイムの基本支給品とトンプソン機関銃と破れたハートの4を回収しました。
【空条承太郎】
[時間軸]:六部。面会室にて徐倫と対面する直前。
[スタンド]:『星の白金(スタープラチナ)』(現在時止め使用不可能)
[状態]:右腕骨折(添え木有り)、内出血等による全身ダメージ(大:回復中)、疲労(中:回復中)、精神疲労(中)
[装備]:ライター、カイロ警察の拳銃の予備弾薬6発、 ミスタの拳銃(6/6:予備弾薬12発)
[道具]:基本支給品、
スティーリー・ダンの首輪、肉の芽入りペットボトル、ナイフ三本
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルの破壊。危険人物の一掃排除。
0.車でどこかへ移動する。
1.状況を知り、殺し合い打破に向けて行動する。
[備考]
※肉体、精神共にかなりヤバイ状態です。
※度重なる精神ダメージのせいで時が止められなくなりました。回復するかどうかは不明です。
※前話、承太郎の付近にあったナイフ×3、ミスタの拳銃(6/6:予備弾薬12発)を回収しました。それ以外は現場に放置されています。
【ナルシソ・アナスイ plus
F・F】
[スタンド]:『ダイバー・ダウン・フー・ファイターズ』
[時間軸]:SO17巻 空条承太郎に徐倫との結婚の許しを乞う直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:徐倫、フー・ファイターズ、F・Fの意志を受け継ぎ、殺し合いを止める。
1.エルメェスたちと共に行動する
[備考]
※アナスイと『フー・ファイターズ』は融合しました。
※F・F弾や肉体再生など、原作でF・Fがエートロの身体を借りてできていたことは大概可能です。
※『ダイバー・ダウン・フー・ファイターズ』は二人の『ダイバー・ダウン』に『フー・ファイターズ』のパワーが上乗せされた物です。
基本的な能力や姿は『ダイバー・ダウン』と同様ですが、パワーやスピードが格段に成長しています。
普通に『ダイバー・ダウン』と表記してもかまいません。
※アナスイ本体自身も、スタンド『フー・ファイターズ』の同等のパワーやスピードを持ちました。
※その他、アナスイとF・Fがどのようなコンボが可能かは後の作者様にお任せします。
※首輪は装着されたままですが、活動を示す電灯が消えています。承太郎の『予測』では『どうやら』首輪は活動を停止しているようです。詳細は次以降の方におまかせします。
【チーム全体の備考】
※全員が
カンノーロ・ムーロロについての知識をシーラから聞き、情報を共有しました。
(参戦時期の都合上シーラも全てを知っているわけではないので、外見と名前、トランプを使うらしい情報チーム、という程度です)
※全員がカーズという危険人物の存在を把握しました。
【禁止エリアについて】
時刻は夜中ですが、エルメェスらが通った、G-2、G-1、F-1、E-1、E-2は21時における禁止エリアでは無かったようです。
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最終更新:2016年10月10日 18:39