【2】

決して油断はしていなかった。ただ、早すぎたのだ。
静かに、そして素早く近づくと……襲撃者は腕を振り抜いた。
地盤を砕くブルドーザーのような音、続いて聞こえたのは―――骨ごと肉を切り落とした時の、重々しい音。


「…………なッ」
「え?」


血が飛ぶ。今まさに沈んだ太陽よりも、赤く、赤く燃える血。

若者らしい、健康的な康一の右腕。その二の腕から先がなくなっていた。
地下から伸びでた何者かの腕。振るわれた刃。それが、康一の右腕を―――切り飛ばしていた。

普段なら絶対に出さないような、間抜け声をティムは漏らした。
シーラEは目の前で起きた出来事が理解できなかった。
地下深くに潜航していたカーズが一閃。狙われたのは康一だった。
心臓を一閃するはずだった一撃はわずかに軌道が逸れ、しかし、康一の右腕を跳ね飛ばした。


「うあああああああああああああああああああああああああああああ!!」



絶叫がこだまする。痛みが電撃のように体を貫く。一瞬で思考がパニックに塗りつぶされる。何も考えられない。
それが合図であったかのように、通りの街灯が一斉に灯った。
夜が訪れた。長く暗い……一日の終わりを告げる光だった。





【1】

たったひとつのすすり泣きが車内に流れていた。
男たちは―――シュトロハイム、噴上、マウンテン・ティムの三人は―――黙りこくる他なかった。
エルメェスはバックミラー越しに噴上に目をやると、低い声で訪ねた。

「ユウヤ、『臭い』はどうなってる?」
「……北西に強い匂いがひとつ。あたりにも残りカスが感じられるが……これは多分散らばったカードの類だと思う。
 はっきり断言はできねェが……スタンド本体はそう遠くない位置、北西。これは間違いねェ」
「大した猟犬さんだこと」

車の脇、ティムが乗った馬が神経質そうにいなないた。
時折シートが軋む音以外は何も聞こえなかった。康一は泣き止まない。目を真っ赤にしたままうつむき、その頬を涙が伝っていく。
誰も手を貸さなかった。シーラEが眠たげな目で、助手席から窓の外を眺めている。


「仗助くん」


しゃがれた声で、康一が呻いた。噴上が、まるで突然電撃を流されたかのようにびくりと肩を震わせた。

「康一君……」

誰もが奥歯をグッと噛み締め、息を潜めていた中、マウンテン・ティムがゆっくりと口を開く。
馬を寄せると窓越しに車内を覗き込んだ。うつむいた康一とは視線が合わない。視界にちらりと入った時計が、放送から五分を過ぎたことを告げている。
ティムは口を開きかけたが、半分ほど開いたところで自分が何も言うべきことを持たないことに突然気がついた。ティムはゆっくりと唇を舐め、ぎゅっと目をつむった。

不意にゴーストライダー・イン・ザ・スカイが首を振る。ティムは車から離れて馬をなだめた。代わってシーラEが口を開いた。


「ドライブに行きましょう」


車内の視線が一斉にシーラEに向く。彼女は窓から身を乗り出したままゆっくりと髪をかき揚げると、振り向きもせずに話を続けた。

「南に下ってフィラデルフィア市街地でも散策しましょう。
 コーラとハンバーガーだけの早めの夕食をとって、それが済んだらエア・サプレーナ島をぐるりと一周して……」

地図も開かずに彼女はそう続けた。夢見心地な目とは対照的に、その口調はハキハキと歯切れがよく響いた。

「トランプのスタンド使い……カンノーロ・ムーロロと対峙するのはそのあとでもいいんじゃないかしら。
 別段急ぐこともないでしょう。ちょっと最近の私たち、あまりに急ぎすぎだったと思わない?」
「おい!」

噴上が声を上げた。車内に響くような大きな声だった。康一のすすり泣きがとまるほどの声。
シーラEはのろのろと姿勢を正すと、ようやく振り向いて真正面から噴上を見つめた。噴上は続けて放とうとしていた言葉を途端に引っ込めた。
何も言えなかった。自分に何を言う権利があるというのだろう。シーラEは怒ってるわけでもなく、嘆いてるわけでもなかった。

仗助を失ったことは確かに悲しい。
バツの悪い思いもしている。康一を止めたのは噴上たちだけでなく、エルメェスもシーラEだって反対したのだから。
でも……言ってしまえばそれだけのことだ。

「仗助との付き合いが一番短くて、一番思い入れがないのは私」

言葉ははっきりとしていたが、言い終わらないうちから唇が震えていた。
一息つくと、唇の端をギュッと抑えて、シーラEは話を続ける。

「前に進むということが傷を癒してくれる。なにかすることがあるというのが自分を勇気づけてくれる。
 誰か言うんじゃないかと思ってたけど誰も言わないんだったら私が言うわ。
 コウイチ、あなたは何も悪いことはしていない」
「違うッ! 僕は……僕はッ!」



「だから貴方だけが復讐者になる資格がある」



風が吹いたあとの霧のように、緊張感は消え去ってしまった。あたりを包む暗闇が時間とともに濃くなっていくのが、はっきりと感じ取れた。
康一の怒鳴り声はどこに行き着くことができず、かと言って飲み干すこともできなかった。中途半端に振り上げられた腕が天井をコツン、となでた。
エルメェスは息を吐くより長い時間をかけて鼻先を撫でていたが、ポツリと「アタシもシーラEに賛成だ」と言った。
エルメェスは周りを覆っている暗闇よりも光のない、物憂げな目をしていた。

時間はのろのろと進んでいく。誰も何も言わない。シュトロハイムはバックドアの窓を睨んだまま、微動だにしなかった。
康一が出し抜けに車の扉を開いても、デイパックを担いで外に飛び降りても、何も変わらず見つめ続けていた。
噴上だけが怒りと狼狽えを半分ずつ抱えた表情で、康一の方を向いた。だが何かを口にすることはできなかった。
震える指先が顎をするりと撫でた。その指先が汗で湿った。

「僕は……僕は―――行きます」

ティムがそばに馬を寄せると、今度こそ目線を重ねた。康一とティムはしばし見つめ合い、ゆっくりと口を開く。

「トランプのスタンド使い……カンノーロ・ムーロロはティムさんたちにお任せします」
「宛があるのかい?」
「宛なんかありません。でも……僕は―――僕は、我慢ならないんです」


この理不尽さに。この閉塞感に。


我慢ならない ――― そう、我慢ならないのだッ!
強さを身につけたい。覚悟を持ちたい。後悔なんてする気もないし、戦う意思だって一向に衰えていやしない。
でもなんだって僕がそうならなきゃいけないんだ? なぜ望んでもいないのにそう『しなければならない』?
誰が好んでそう思わ『された』いんだ?

なんで誰かが涙を流し、気詰まりな思いをしなければいけない?
なぜ望まぬ戦いに巻き込まれ、こんなにも傷ついてボロボロで、致命的なまでにバラバラになっている?
なんで信頼できる仲間といがみ合い、たもとを分かち……そして―――「どうして仗助君が死ななきゃいけなかったんだッ!」



   「こんなことって間違ってるッ!」



ティムは目を細め、帽子のつばの厚さを確かめるかのようにその表面をなでた。
危うさがあるからこそ一層、その輝きは眩く思えた。
手の中で押さえつけても指の間を突き抜け、空まで届かんばかりに広がる魂の輝き。若者の生命力。
康一の真っ直ぐさはこんな世界だからこそ、なお太く、力強い。

理不尽を理不尽と受け止め、その中でベストを尽くそうとするのが『大人』だ。
そんな冷めた考えを押しのけるほどの怒りを、ティムは康一の中に感じた。


「だから出て行くのかい? あえて憎まれ口を叩くなら、仗助くんを失ったのは結果論だ。君が行ったところで結果は変わらなかったのかもしれない」
「だからこそです。
 いくら『覚悟』があったって、いざというとき何もできずにビクビク後悔するようじゃあダメなんだ。
 そう言ったのは僕だったはずです」


ティムは大きく息を吸うと、時間をかけてそれを出し切った。
康一は気がついているのだろうか。
理論で測りきれない想い。理屈抜きの魂で感じる正しさの道。
今康一が感じていること、それは仗助たちが語った血脈の問題に近しいものであるということに。


因縁! 運命への決着! 納得!


ティムは僅かな間、目をつぶって祈った。
康一は強い男だ。頼りになる。まだまだ底知れない成長の可能性を大きく感じさせる。
ティムから見て康一にはそうなれるだけの大きさも、強さもある少年だった。
けど彼はまだ、たったの15歳の少年なのだ……。まだ何者にもなり遂げていない、ただの日本の高校生だというのに……!
ここで彼にがんじがらめの鎖を背負わせることは、果たして正しい決断なのだろうか?

誰にもわからない。だからこそ祈る。ティムは神に祈る。それが正解だったと康一が胸を張って思えるようになってくれと、願いながら。


「シュトロハイム!」

ティムはカウボーイハットをかぶり直すと、後ろも振り返らずにそう叫ぶ。呼ばれた方は微動だにしなかった。

「『そっち』は君に任せても?」
「問題ない」

シュトロハイムが頷く気配を感じ、康一に向きなおる。

「君が何をしようと自由なように、俺が何をしようと自由なはずだ。余計なおせっかいだが。
 康一君、君は俺たちを過大評価しているのかもしれない。
 俺もシュトロハイムも君と何も変わらない、ただの人間だ。強いて言うなら君より欲張りな人間さ」

康一が何か言いかけるがティムは手を挙げ、話を続ける。

「だから思い出して欲しい。そして改めて伝えよう。
 きみに『戦う意思』があるのなら、きみひとりで挑むのではなくオレたちも頼りにしてほしい……。
 『ひとりきり』で事に当たってはいけないんだ」

ティムはもう若くはない。
少なくとも康一のように内なる情熱に突き動かされ、理想を貫こうとするほどの『若さ』は失ってしまった。

「俺は君についていくとしよう。
 君が納得のため、ひとりきりで戦いたいというのであれば、俺も『たまたま』同じ方向に向かうことにしよう」

だが同時に希望を諦めるほどに老け込んでもいない。
なんせティムはいつだって高嶺の花を追い求める、西部一の伊達男なのだから。


「コウイチ!」

運転席から身を乗り出したエルメェスが何かを放り投げた。
反射的に手を伸ばした康一が掴んだのはシールが貼られた『舌』。

「決めたんならさっさと行っちまいな。アンタの気持ちが変わらないうちによォ」

二枚舌のエルメェス。つっけんどんな態度は嫉妬と優しさが入り混じった彼女なりの別れの挨拶だった。
窓越しにシーラEがひらひらと手を振るのが見えた。シュトロハイムは、噴上は、それぞれ康一と目が合うと……少しだけ頷いた。

「さぁ、行こう」

マウンテン・ティムがそっと手綱を引き、ゴーストライダー・イン・ザ・スカイが首を北に向ける。
なにが正しくて、何が間違っているかなんてわからない。
それでも前に進むしかない。それぞれが選んだラインをただ、前に。



康一が一歩前に進み出る。ティムのもとへ向かおうと足をすすめる。



         その時…………―――



噴上は鼻を鳴らした。指先が汗で湿った顎をなでた。



「下だッ!」



だが噴上の叫びより早く、岩盤を貫いて一本の刃が襲いかかっていた。
康一の右腕が切り飛ばされた。血が舞った。光が灯り、夜が落ちる。
康一の絶叫が当たりにこだまする。


「うあああああああああああああああああああああああああああああ!!」





【3】

   「カアアアアアああああああああああAAAAA――――」


点いたばかりの街灯が次々と砕かれていった。
ガラスが粉々に飛び散っていく。民家の窓、車の窓、街灯のガラス、軒先のテーブル。季節はずれの雪のようにキラキラと宙を舞う。


                 「――――AAAAAああああああアアアズゥウウウウウウウウ!!」


ばらまかれた凶弾はシュトロハイムの雄叫びを受け、まっすぐそれることなく、標的へと向かう。
弾丸が飛ぶ。弾丸が穿つ。標的の足元で煙をあげ、標的の背後の民家を蜂の巣にし、波のように絶えることなく襲い続ける。
だがカーズは腕を振るい、弾丸を弾き続けた。一切の漏れなく、一発も避けることなく。

そう! シュトロハイムの狙いは正確だった!
カーズの中心軸、左右1メートルから外れたものは一発だって存在しない!
跳弾は全てカーズが弾いたもの! 規格外だったのはやはり―――柱の男だ!

一瞬遅れて、人間たちが動く。
馬にムチを振るう。スタンドが動く。車を飛び出し単身迫る。
シュトロハイムが弾を込めなおす僅かな間、代わりに飛び出たのは青色のスタンド。
時速60キロの体当たりをカーズにぶちかますッ! 網目状のスタンドがカーズの首もとめがけ手刀を振るう!

「NUUU!?」
「切り裂かれて結構! バラバラになるのはハイウェイ・スターの十八番だからなッ」

カーズの振るった刃を喰らう直前、スタンドは既にバラけ切っていた。
虚を突かれたカーズだが、素早く体制を立て直した。後方に下がりながら、追いかかるスタンドを跳ね除けていく。
上から切り伏せ、下からかち上げ、右から弾き飛ばし、左からいなし……視界いっぱいに広がったスタンドを工場のライン工のように丁寧にさばいていく。
無駄なく、隙なく、油断なく。柱の男とパワー勝負を挑むなど愚の骨頂。
だからこそ何かある……攻撃の陰に隠れた、何か意図を持った『狙い』が!


「『ヴードゥー・チャイルド』ッ!」


ハイウェイ・スターと入れ替わるよう、『ヴードゥー・チャイルド』が突撃する!
ハイウェイ・スターを隠れ蓑にして、既にシーラEはカーズの間合いに忍び込んでいたッ!
速く、鋭い突きの波状攻撃ッ! カーズは驚く。あまりの早さに柱の男の目にはスタンドの腕が『四本』あるように見えた!
柱の男の皮膚に触れようとも、切れ味抜群の刃物を振りかざされようとも……シーラEはひるまない。
その四本の腕を振り回し、さらに一歩踏み込み、カーズを圧倒する! カーズの表情から少しだけ、余裕の色が失われた。

拮抗する両者。アスファルトが砕ける音が聞こえる。体中の力を振り絞ろうと、短く息を吐き出す音が響く。

カーズが左腕を振り上げる。素早く身をかわし、シーラEはこれを当てさせない。
右の拳でラッシュを見舞い、対応したところを左でぶちかますッ!
カーズはこれをバックステップでかわす。更なる進入を警戒し、素早く斬撃を飛ばし、牽制する。

カーズの反応は早い。シーラEが少しでも踏み込んでくるとすぐにバックステップ。
決して刃を大きく振り抜かない。闇雲に腕を振り回さず、必要最低限の攻撃を放ち、自分の制空圏内に踏み込ませない。

シーラEは大きく息を吐き、足元に力を込めた。
『ヴードゥー・チャイルド』が遠間から一気に踏み込んだ。躱された拳がカーズの足元に叩き込まれると、カーズの足元に『唇』が生まれた。

「MUUU?!」
「何も考えず大振りを繰り返すほど、私はマヌケじゃあないわ」

カーズのバランスがほんの一瞬だけ崩れる。シーラEは既にスタンド能力を発動していた。
その足元に蠢くのは『唇』。床一面引き締めたように、アスファルトの上は『唇』だらけだった。
そして、まるでカーズに向かって呪詛の言葉を吐く怨念たちのように、一斉に歯をガチガチと鳴らす。
靴を噛み、マントの端をついばむ。辺りを覆うような「人間たち」の言葉の一斉砲撃に、カーズは空間感覚を失う。


そして……その言葉の中を切り裂くように轟く ――― 一発の銃声。


「NUO!?」


生まれた隙は一瞬。しかし充分すぎる一瞬だった。
既に『オー! ロンサム・ミー』を発動、負傷した康一を抱えて戦線を離れたカウボーイ。彼がもう一方の腕に抱くのは一本のライフル銃。
そしてその先から立ちのぼる硝煙。カーズの脳天を貫く弾痕。柱の男の体制が完全に崩れた。

山猫のような身のこなしでシーラEがその隙をつく。カーズが振るった刀がシーラEの腕を切り飛ばす。
それでもひるまない。それでも下がらない。切り残された『二本』の腕を大きくしならせ、飛びかかる……ッ!


「エリエリエリエリ…………!」


一瞬で懐に潜り込んだシーラE。全力を超えたヴードゥー・チャイルドの拳が、カーズの体の中で爆発した。


「エリエリエリエリエリエリエリエリエリエリエリエリ………………ッ!」
「RUUUOOOOOHHHHH!!」


手応えはあった。最後の交戦で『両腕』を切り落とされたシーラEは、肘から血を滝のように流しながら、確信する。
その傷は重症でありながら、軽傷であった。シーラEの腕は現実問題、『四本』あったのだから。
『キッス』! シールを張ったシーラEの腕はそれぞれが二つに分裂していた。
カーズが吹き飛んだ先、半壊した家の瓦礫を見つめながら、シーラEはシールをはがすと痛む腕をゆっくりと撫でた。

誰も口を開かない。暴れる馬の荒い呼吸音、ティムが馬を落ち着けようと手綱を弾く音。
それ以外はなにも聞こえなかった。ゆっくりと闇が濃くなっていくのに合わせるように沈黙も深まっていく。



  『俺とお前は、もうダチだろ。離してなんかやんねーよ』
                            『駄目だ、康一君ッ! 行っちゃ駄目だ……!』
  【やつが存在するのは危険だ!】


         ―――声が聞こえてきた。

                   ―――カーズにかけられた幾つもの罵倒。これまでの遍歴。


   『実験台にしない……? どの口がそれを言う………ッ!』
    『――バルバルバルバルバルバルバルバルッ!!』    【やつを殺してしまわなくては!】

 【あいつをこの地球から消してしまわなくてはならない……!】
                   『三人同時は「少しだけ」骨が折れそうだな……やれやれだぜ』


それもゆっくりと途切れ、あたりは完全な沈黙が降りる。
シュトロハイムは車から降り、シーラEに下がるよう合図を送った。自身はカーズに対し左に回り込み、噴上に対しては右に回るよう指で指示をする。
パラパラ……と壊れかけの民家から木片が落ちる音が聞こえた。シュトロハイムはひっそりと、着実にカーズが吹き飛んだ場所へと近づいていく。
砂埃が舞い、カーズの様子は伺えない。戦いの余波で壊れた電灯が突然思いついたように点滅を繰り返していた。

弱々しくうめいたと思えば、昼間の太陽のように一瞬だけ輝く。その輝きが、半壊した瓦礫に影を落とした。


影がむくりと体を起こした。きっちりと、決まりきったように上半身だけを起こす。
そのままの姿勢でしばらくうずくまっていた影が、やがて思い直したように立ち上がった。
カーズの体には傷が見当たらなかった。あれだけ放った銃弾も……! 身を切るように叩き込んだ拳も……!
柱の男の前では無力ッ! そこに見えたのは崩壊した屋根を押しのけ、ガラスをバリバリと踏み割る影!

人間たちは理解した。目の前の相手は、決して手を出してはならない相手だった。自分たちが敵う相手ではなかったのだ。


「「車を出せッ!!」」


噴上とシュトロハイムの怒号が轟く中、シーラEは聞いた。
仲間たちの声がどこか遠くに飛び去っていく中、シーラEはその胸糞悪くなる、ねっとりとした粘着性のある音を聞いた。

体中の皮膚という皮膚が、ものすごい力で引っ張られたような感覚。圧迫感と緊張感。

カーズは体を起こすと、高々と『康一の腕だった』ものを掲げた。そして、それをおもちゃのように簡単に、握りつぶした。
その時の音と言ったら! 骨が砕ける音でもなく、血がほとばしる音でもない!
肉体を喰らう音……! 消化され、柱の男の血肉に変わる音!
シュトロハイムに無理やり引っ張られ、車の中に押し込まれる中、シ―ラEの耳には『その音』が繰り返し鳴り響いた。
カーズの足がシーラEの切り飛ばした腕を踏みにじった。それも一瞬で体内に取り込まれ、あとには何も残らなかった。


「ゴーストライダー・イン・ザ・スカイ」が高く、長く、嘶いた。


エルメェスの右手がシフトレバーに伸びる。タイヤがきしみをあげて回転する。
バックミラーの中でカーズとティムたちがぐんぐん小さくなっていく。
エルメェスはさらにアクセルを強く踏んだ。車のギアを一段、二段と上げていく。


「南へ向かえッ 北は街だ、曲がりで手こずれば追いつかれるぞ!」
「シュトロハイム、康一は!? ティムは!?」
「ティムを信じろ、シーラE!」


シュトロハイムが座席の間から首を突き出し指示を出す。後ろで噴上とシーラEの叫びが聞こえた。
エルメェスには振り返る余裕も、反論する時間もない。シュトロハイムの指す方向ままに、どんどん車線を変え、市街地を猛スピードで駆けていく。
バックミラーにほんの少しだけ視線を移す。カーズの姿も、ティムの影も見えなかった。
見えたのは慣れない様子でシーラEの止血をする噴上。そしてその額に浮かぶ大粒の汗。

「次を左、そして駐車場を突っ切って真っ直ぐだ!」

ブレーキ、シフトダウン、急ハンドル。四人の体が左に押し流された。縁石に乗り上げた車が嫌なバウンドを繰り返し、無理矢理にスピードを落とす。
険しい顔つきのままシュトロハイムが首を引っ込めた。
後ろを振り返ると、バックドア越しに車外を鋭く睨む。暗闇の先にカーズの姿を見透かすように強く、長く見つめる。

追っ手が来ないことを確認すると、シュトロハイムは鼻息荒く、呼吸を繰り返した。
そして後部座席に座り込む二人の顔を、時間をかけて見つめる。噴上もシーラEも血だけのまま、シュトロハイムを見上げた。
シュトロハイムは口を開いて……だが何かを言いかけた途中で思い直す。かわりに噴上の肩に手をやった。
言葉とは裏腹に厳しげな口調で言った。

「無理はするな、ユウヤ。一人で相手するには荷が重かろう」
「……戻れ、『ハイウェイ・スター』」

噴上の両腕は必要以上に血塗られていた。カーズが遅れている理由は『そういうこと』だったのだ。
仲間の中で遠距離型のスタンドを持つのは噴上だけだ。車と違い、柱の男は道路に従う理由がない。
彼らの身体能力を持ってすれば家を飛び越え、坂を蹴り、最短距離でエルメェスたちに迫れるはずだ。誰も、何の妨害もしなければ。

街灯は飛ぶように後ろに消え、住宅の数が少なくなり始めた。それに伴い、車内の沈黙も深まっていく。苦しげな車のエンジン音だけが轟いていた。

シュトロハイムが時折ルートを確認する。エルメェスは短く、丁寧に返事をした。
噴上とシーラEが互いに容態を確認する。包帯や止血のための布を探す、ゴソゴソとしたさざめきが沈黙を遮った。

随分と時間が経った気がして、エルメェスは車の時計に目をやった。
だがほとんど時間は経っていなかった。時計が壊れてるのでは、と一瞬疑ったが、それは正しかった。
やがて車内の空調が、カタンと音を立てて空気を送り込むのをやめた。それが合図だったかのように、噴上はエルメェスの肩を叩いた。


「エルメェス、車を左に寄せろ! 右から合流するぞ!」


橋の手前、サン・マルコ広場の出口で噴上が言った。同時に固いヒヅメの音と、荒い息遣いが聞こえてきた。
気合を入れた掛け声とともに、マウンテン・ティムが家と家の間のわずかな隙間を乗り越え、車に並び立った。
その腕にはぐったりとした様子の康一が抱えられている。ティム自身にも披露が色濃く、漂っている。


「康一君を!」


抜群のコントロールで投げ縄が車内に伸びる。
『オー! ロンサム・ミー』を発動、ロープを伝って康一の体が引き渡されていく。
ちぎり飛ばされた左腕を残して、残った康一の体が車内の安全な場所に横たえられた。


「ヤツはわざと追いつかせたんだ」

車と併走しながら、エルメェスを除く三人に向かってティムは言う。
前置きも抜きに、小さく短く、そう伝えた。風きり音に消されることなく三人の耳にはその言葉が確かに届いていた。
シュトロハイムは顎にぐっと力を込めて、車の後方を仰ぎ見る。目を凝らさなければ気づかないほどの距離に、着実に近づくひとつの影があった。

「車が疲れることはない。だが私の『ゴーストライダー・イン・ザ・スカイ』は違う。
 馬が疲れた時、私は確実に追いつかれるだろう」


    それはつまり……。


        ―――つまり、私はここで『お終い』だ。


誰も何も言わなかった。だがティムと三人の間には無言の内にやりとりが済んでいた。
話はお終いだ、と言わんばかりにティムは帽子をかぶり直した。そしてそのまま車から離れようと手綱を強く握りなおす。
その手を掴んだのは噴上だった。ほとんど車から落ちんばかりに、窓から上半身を伸ばすと、ティムの手首を強く握る。
噴上は言う。決して大きく、叫ぶようには言わなかった。離れかけていこうとするティムに向かって、ただ真っ直ぐに言った。


「きみに『戦う意思』があるのなら、きみひとりで挑むのではなくオレたちも頼りにしてほしい。『ひとりきり』で事に当たってはいけないんだ」


手綱を引くティムの手が止まった。窓から身を乗り出した噴上とティムは互いにその目の中を覗き込み、黙り込む。
沈黙を遮るようにシュトロハイムの銃口が火を噴いた。静かに、気配を感じさせず忍び寄っていたカーズを牽制する銃弾。
こうしている間にも、脅威は確実に近づいている。じりじりと死は近づいている。手をこまねいて、引きずり出さんと執拗に迫る。
シーラEは黙って康一の介抱に専念する。手馴れた様子で服の切れ端を縦に切り裂き、肩口あたりで強く縛る。

二人の男が睨み合ったまま、車と馬は走り続ける。時々鳴り響く銃声が沈黙を一層引き立たせた。
噴上は怒りを口の中で噛み殺し、続けた。


「違うか? マウンテン・ティム?」


ティムはしばらくの間、噴上の顔を眺めていた。そして、それでも返事はせず、しかしそのまま離れることもせず、前を向くとほんの少しだけ小さく頷いた。噴上が手を離した。
愛馬に掛け声を掛け、手綱を引く。車を風よけのように使いながらピタリと後ろについて走り始めるマウンテン・ティム。
口元には中途半端にねじれた笑顔が浮かんでいた。頼もしさと寂しさを同時に表現しようとして、うまくいかなかったような笑顔だった。


「橋を越えてからが勝負だ」
「西に向かうぞ。東は袋小路だ」
「牧草地帯……隠れるところもなければ、追手を巻くような場所もない、か」

車内では男たちが戦いの準備を整え始めた。
噴上が息巻き、シュトロハイムが指示を出す。シーラEは眉をしかめて付け加えた。

シュトロハイムは後部座席に陣取り、カーズとティムの様子に目を配る。
二人を援護するように噴上はスタンドを駆使し、時折エルメェスに前方の様子を伝えた。
シーラEは自らも傷を負いながら、康一の怪我を治療する。



   ―――車は間もなくエア・サプレーナ島に入ろうとしていた。





【4】

F-3牧草地帯。足跡一つない美しい芝。
次の瞬間、その芝を真っ二つに切り裂くように二組のタイヤが猛スピードで駆けていった。
泥を巻き上げ、車が揺れた。シーラEの怒鳴り声が飛び去っていった。

「ダメッ 追いつかれるッ!」

エルメェスは振り切れたスピードメーターに目をやり、呻いた。
背後から死が迫ってくる―――その死は冷たく一切の容赦をしなかった。黒色の死。
丘を越え、車が宙を舞う。バウンドを繰り返しながらなんとか車体を立て直そうと夢中でハンドルを切った。
また少し追いつかれた。追走は執拗だ。柱の男は執念深い。

 ――メめキャァア!

車体がひしゃげた音についに追いつかれたかと思った。
だがそれはシュトロハイムが強引にバックドアをあけた音だった。
時速100キロ近い速さで走る車の中を、風が通り抜けていく。

「エルメェスッ! なぜ俺たちはジョジョとDIOの戦いに手を出さなかった?」
「ああ?!」

振り返る暇もなくバックミラー越しに怒鳴る。シュトロハイムはマシンガンをカーズに向けたまま仁王立ちだ。

「なんでもいいから、あのクソ野郎をどうにかしやがれ!」
「忘れたとは言わせんぞッ いいから、答えろ、エルメェス!」
「『長く深い因縁』とやらのせいだろ、このくそったれが! クソッ!」

ハンドルを乱暴に殴りつける。シュトロハイムは一人頷き、笑った。その言葉が聞きたかったのだ。
次の瞬間、シュトロハイムは時速数十キロの宙へと蹴り出した。
風の音に負けないぐらいうるさく喚きながら、シュトロハイムはマシンガンを撒き散らし、カーズに向かって突っ込んでいった!

「我がナチス軍と柱の男たちの間にも……決して断ち切れない因ィィイイ縁があアぁあ―――るッ!
 今ここでッ! 貴様を細切れに吹き飛ばしッ! 因縁に決着ゥゥつけてくれよう、カーズ―――ッ!」

車の時速 プラス 柱の男の全力疾走ッ! そこに飛び出てきた誇り高きナチス軍人!
さすがの柱の男もこれには対応できない。二つの巨体は人がぶつかったとは思えぬ轟音をたてながら、芝生でもみくちゃになる。
あっけにとられるシーラE。それを尻目に、バックドアからまた一人の男が飛び出ようとしていた。
噴上が静かに言う。

「別にカッコつけるわけで言ってんじゃないけどよォ~、念のため……念のため伝えとくぜ」

うつむき加減の噴上が見つめる先には青い顔をした彼の同級生。ぐったりとしまま、シーラEの膝の上で寝そべる康一。
汗をぬぐい、あご先をいじる。口には最後まで踏ん切りがつかない、男の弱さが滲んでいる。

「考えてみたんだ……もしこの車に俺の女たちが乗ってたらどうなるんだってな。
 もしもこの車を運転するのがお前じゃなくて……あの馬鹿でうるさい、俺が好きなあの女どもだったらって考えたらよォ~~」

噴上裕也は『勇気』あるものだった。
噴上はノミと違い、自分が相手をするのは人間をはるかに超越したものだと理解している。
だがそれでも彼は自らを奮い立たせた。噴上はバックドアを蹴り開けた。

「ここでガタガタ震えているのはカッコ悪いことだぜッ! 『ハイウェイ・スター』!」

マシンガンが鳴り響く音にまぎれ、鉄が捻れ、ちぎれ飛ぶ音が聞こえた。
火花が散り、高笑いが聞こえる。死がシュトロハイム捉えた。鈍い爆発音。
そして噴上はッ! 自らその暗さに飛び込んでいった……!

「エルメェス君」

一匹の馬が車と併走する。カウボーイハットを抑えながらマウンテン・ティムが言う。
エルメェスはギュッと目を瞑ると、ティムがもう一度名前を呼ぶまでそうしていた。
ハンドルを握ったまま、窓越しに二人は顔を合わせる。
ティムは柔らかに微笑んでいた。観念したように、エルメェスは天を仰いだ。

「君ほどガッツ溢れた女性は俺の周りにいなかった」
「あんたほど男前な保安官もいなかった。ムショにいるのがみんなあんたのような奴だったら良かったんだけどな」
「同僚に伝えておくよ」

固い握手が解かれると、車は前に進み、ティムは後ろに下がり始めた。
後部座席、窓越しにシーラEとティムの目線がかちあった。互いに頷くと最後の挨拶を交わす。


「アディオス、セニョリータ」
「さようなら、保安官ティム」


背後でまた音がした。背筋が冷たくなる刃物の音。三人の動きが止まった。
何かが力任せに切り裂かれた音。ねじ切られる音とすりつぶされた音。痛みに泣き叫ぶ噴上の声が聞こえた。


「行け……行くんだッ! 君たちは希望ッ! 君たちは生き延びなければならないッ!」


止める暇もなく、ティムが車から離れていく。手綱を強く引くと、興奮のあまり馬が高くいなないた。
エルメェスには何もできなかった。エルメェスにできたことはハンドルをしっかりと握り締め、前を向いて運転を続けることだった。
ただアクセルを踏んだ。できるだけ強く、できるだけ速く。
何度か光が点滅するのと銃撃音が後ろから追いかけてきたが、かじりつくようにひたすら前に進んだ。
後ろの座席でシーラEがドアを力任せに叩く音が聞こえた。

「畜生……ッ」

悔しさのあまり、うめき声が漏れた。繰り返し、繰り返し口の中で言葉を殺した。

突然強風が吹き、風に飛ばされたカウボーイハットが眼前を横切った。フロントガラスを一度だけ叩くと、後方へと吹き飛んでいく。
今止まれば、まだ間に合うかもしれない。一瞬そんなことを考えたが、エルメェスはためらわずアクセルを踏んだ。
ただ踏むしかなかった。今更止まることなんてできなかった。

再び加速した車は平原を飛ぶように突っ切っていく。
一対のヘッドライトは闇を切り裂いていき、やがて影に紛れて見えなくなった。




【ルドル・フォン・シュトロハイム 死亡】
【噴上裕也 死亡】
【マウンテン・ティム 死亡】

【残り 27人】





【5】

「うおろろォォオオオおおおおオ―――――ッ!」

意味不明な言葉を叫びながら滑空する影に、カーズは弾き飛ばされた。
反射的に蹴飛ばそうともがいたが、シュトロハイムは蟹のようにしがみついて離れなかった。
ひとつの塊になったまま芝生を転がり続ける。ようやく弾き飛ばした時には車は遥か遠くまで距離を稼いでいた。


 逃したか?/逃げ切ったか?  「いや、まだ間に合う距離だ。」 ここでこいつを 切り伏せる/食い止める!


カーズは腕から刀を抜くとシュトロハイムを無視し、跳躍した。

「貴様の相手は、我がゲルマン民族の魂の! 結晶である……この私だァああアア―――ッ!」
「馬鹿の一つ覚えか……サルめ」

薙ぎ払うように放たれた無数の弾丸。横走りしながら、無造作に腕を振るう。高速回転する刃が次々と弾を切り刻んいった。
切って、切って、切って……埒があかない。カーズは舌打ちをすると、顔の前で腕を交差した。
必要最低限のガードを残し、残りを体で受け止めた。シュトロハイムが放った84発全てを食らうと流石に足元が揺らぐ。
銃弾は全てカーズを貫通し、芝生を吹き飛ばすッ! 地面には蜘蛛の巣のようなひび割れが無数に出来上がった!
だが……ッ!

「こんな生っちょろい攻撃でこのカーズが止められるとも?
 こんな見え透いた、サル知恵のような武器で、このカーズが止・ま・る・と・で・もォォオ~?」

カーズは一瞬だけ体をぐらつかせたが……倒れずに、急反転。
追いすがるシュトロハイムに一気に迫る。突然の方向転換にシュトロハイムは虚を突かれた。
だが、それでいい。これがシュトロハイムの狙いだ。自らの命を撒き餌さに、時間を稼げればそれで問題ない。
シュトロハイムは目を見開き、カーズに弾丸を叩き込み続ける。

「むろぉぉおおおオオオおおおおお――――――ッ!!」

雨あられと降り注ぐ銃弾を雨風のように受け止めながら進むカーズ。一歩、一歩確実に距離を詰めると最後に強く地面を蹴る。
闇にまぎれ、その影が消えた。そしてシュトロハイムが気がついたときには既に振りかぶられていた。
月を反射した光が妖しく輝く。それが最後に見た光景。

金属が絶ち切れたとき、淡い火花が一瞬あたりを照した。シュトロハイムの体は美しいほど真っ二つに切り裂かれた。
右半身、左半身がそれぞれ重力に引っ張られ……無残にも転がった。


「シュトロハイム――――――ッ!!」


絶叫。手遅れのように思えるタイミングで新たな横槍が入る。
ハイウェイ・スターは限界まで体をばらすと、カーズの上下左右、すべてを包囲する。
幾つもの『足跡』に囲まれながら、カーズは余裕を崩さない。全身をスタンドが覆い、その養分を喰らわれようとも! 

「このカーズ相手に『吸収』勝負か? 小癪な」

スタンドを引きちぎり、弾き飛ばし、カーズは進む。月明かりにその生身を晒したとき、噴上は縮み上がった。
自分が相手するものの強さを改めて知ったとき、彼ははっきりと理解した。

俺はここで死ぬ。

いくらカッコつけようとも、いくら自分のスタンドを信じようとも!


「フフフ…………フハハハハハ――――――ッ!」


未来は変えられない。ここで俺の人生は終わる……!

その圧倒的なまでの耐久力に足が震える。自分の攻撃が通じない無力感はまるで猫を前にしたネズミの気分だった。
それでも、噴上は一歩も引かない。一歩たりとも下がったりはしないッ!
恐怖に足がすくむのはもうたくさんだ。ビビってゲロを吐く寸前までもいったってそれでも立ち向かうと決めたのだ。
だから後悔はない……。たとえここで殺されるようなことがあろうとも、噴上に後悔はないッ!

カーズは養分喰らい尽くすハイウェイ・スターを相手に自らその肉体を差し出した。
一つ、二つ始末したところでスタンド使い本体にダメージが通らないことを理解したのだろう。
戦法を変えよう……カーズはその有り余る巨体を縮めていく。そして次の瞬間、その体を自らあたり一面に撒き散らしたッ!


「そぉれ……くれてやるッ!」


『憎き肉片』ッ! 飛び散った肉片が今度はハイウェイ・スターを取り囲んだ!
肉片まみれで動きが止まるハイウェイ・スター。動きが止まったところを各個撃破でカーズは確実に息の根を積んでいく。
噴上の頬から血が吹き上がる。足元から出血が! 腕に痛みが! 本体へのフィードバックは確かにダメージを与えていることの証明ッ!
噴上は本能的にスタンドを引っ込めた。これ以上のダメージを受けては戦闘不能は避けられない……ッ!

「ほう、いいのか……? ガードががら空きだが?」

しかし、重りを失ったカーズはたった一歩で噴上のもとへたどり着いていた。
間一髪スタンドのガードが間に合った。が、その一寸の隙に噴上の左腕は切り飛ばされていた。
腕が飛び、アバラが折れる。衝撃はそれだけにとどまらず、数メートル吹き飛ばされ、噴上は大地に叩きつけられた。
今まで経験したことのない痛みが噴上を襲う。噴上は泣き叫び、地面を転がった。

「ああああああああぁああぁアアああああ―――――ッ!!!!」
「軟弱軟弱ゥ! ……むッ!?」
「上出来だ、ユウヤ!」

馬の嘶き、ヒヅメの音。トドメを刺そうとしていたところ、またしても横槍。急速に近づく、ヒヅメの音をカーズの耳は捉えた。
カーズは振り返ろうと身構え……左腕に違和感を感じる。更に強引に振り返ろうとして……体がうまく動かないことに気がついた!

一本のロープがカーズの体を貫いていたのだ! それはどんな槍よりも、刀よりも確実に! カーズの動きを止めていた!
『オー!ロンサム・ミー』を発動ッ! ティムがロープをたぐると分解されたカーズの体がその上を伝っていく。
ついに捉えた……! 馬上からティムは銃を放ち、さらに距離を詰める!

「!?」

だから次の瞬間、ティムは仰天した!
通常『オー!ロンサム・ミー』をくらえば相手は縄から逃れようと必死でもがく!
あるいは突然のスタンド攻撃に動揺し、動きが止まる! しかしカーズはッ!


なんとそのロープを自ら断ち切ったのだッ!


「柱の男の回復力を舐めるな、人間ッ!」


ロープが断ち切られたことでその肉体は無残にも芝生に撒き散らされた。
だが『その程度』だ。いくら肉体が切られようと、焼かれようと、打ち抜かれようと!
ティムの銃弾は雀の涙も同然だった。カーズが肉体を元の形に戻した頃に処分できたのはおよそ五分の一にも満たない肉片。
カーズにとっては少々動きづらくなった、と呼べるだけだ。

「化物め……ッ!」

ティムの目の前で肉片が集まり、肉体として積み上がった。
さすがのカーズも体力を消耗している。呼吸は荒い。だがまだ戦える。動きづらいが、まだ跳べる。
カーズとティムは沈黙の中向き合った。車のエンジン音が遠くどこかから聞こえた。馬の息の音が不規則に、不自然なまでに大きく響いた。


ティムは思った。勝負は一瞬だッ! そして一点のみッ!
この化物相手に勝利するには首輪を打ち抜くしかない。切っても撃っても喰らっても……カーズ相手ではあまりに足りない。
撃ち抜くんだ、カーズよりも速く……3センチ幅に勝機を託してッ!


ガンマンのように二人は向き合う。沈黙。睨み合い。
50メートル先で刃越しにティムの帽子が揺れた。月明かりが照らす中、ピストルの射線上、カーズのマントがはためいた。
そして……ッ!


「なにッ!?」


その一瞬! カーズは驚愕のあまり何が起きたか理解できなかった。
カーズの動きが止められた! ティムの弾丸を喰らわなかった足、左足首をがっしりと掴んだ機械の手!
シュトロハイムは半身で最後の力を振り絞った。スパークが飛び、目の役割を果たしていたライトが急速に点滅する。
同時に、ハイウェイ・スターがカーズを包むように展開される。逃げ場はない。地面にも、空中にもカーズは逃れられない!
ティムが愛馬にムチを振った!


「うおおおおおおおおおおおおおお!!」


一発、二発、三発、四発! ライフルの残弾数は残り一発!
カーズは徹底して首輪を守っている。そこだけが彼ら人間の、細い勝機とわかっているから。
すれ違いざまの一撃で、ゴーストライダー・イン・ザ・スカイの体に真っ赤な線が浮き上がった。
腹を切り裂かれた馬は鳴き、倒れる。地面が震えた。ティムは直前に跳ぶと再びカーズと向き直り、また走り出す。


「馬鹿の覚えのように突っ込んでくるか! 策がないぞ、原始人どもッ!」


カーズは叫び、そして違和感を覚えた。
ティムの眼は自分に向いていない。狙うべき首輪、カーズの光る刀。どちらも見据えていない。ならば―――なにを?


ティムの視線はカーズの後ろに向けられていた。虫の息の噴上と視線が合う。頷く。意思は伝わっている。

薄く消えかかったハイウェイ・スターの手が握っていたのはナチスご自慢の手榴弾。
カーズの頭上、わずか数メートル。そして、暗闇にまぎれ見えなかったが……ティムの左手に握られたのは同じ型のもう一発の爆弾!

カーズの目にはすべてがスローモーションのように映った。ティムの左手から放たれた手榴弾が弧を描いてカーズの元に飛ぶ。
切ることも、弾くこともできずカーズは反射的に足を止めた。この戦いの中で初めてカーズは後退を選択しようとした。
だがそれをシュトロハイムが許さない。機械の体、人間の意地。


腕の一本や二本、足の一本や二本をちぎられようとも……そして例え死んでもだッ!
一度食らいついたら決してその手から勝利を離さないッ!


両手でライフルを構えたティムが、手榴弾の向こうで見えた。ためらいは見られなかった。
二つの爆弾、噴上とシュトロハイムの首輪。それらが誘爆すればここら一帯は塵なく吹き飛ぶというのに。
振り上げられたライフルは的確に、ハイウェイ・スターが持つ信管を打ち抜いた。 そして―――…………!




【6】

徒労だった。男三人が命懸けで挑み……そして敗れ去った。決して離さないと誓ったロープは短く、ちぎれてしまっていた。
爆発とともに吹き飛んだティムの下半身をつなぐことはもほや不可能。一秒ずつ、確実にティムの命は失われていく。
そしてカーズは……そのティムの、噴上の、シュトロハイムの肉をくらい再生する。

「無駄に勇み足をふみよって……このカーズ相手に」

視線の先で目を開いたまま噴上が事切れていた。残された片腕を投げ出し、無抵抗にカーズに喰らわれるがままになっている。
その向こうでは爆発の直撃を受けたシュトロハイムが火を上げる鉄くずになっていた。
カーズに盾にされたその体は、もはや判別不可能なほど、黒く徹底的に壊れてしまっていた。
三人は柱の男を前に敗れ去った。全ては、ただの徒労に終わってしまった。

爆発の際に吹き飛んだティムの帽子が風に舞い、戻ってくる。
泥だらけであちこちが折れ曲がっている。決して地に付けないこと誇りに思っていたはずの一品。
カーズは帽子に一瞥をくれたが、興味をなくし食事に戻る。噴上の肉体はもはや肉片一つ残っていない。

(これが……俺たちの、最期か)

エルメェスは無事だろうか。ほかの襲撃者に会うことなく、休息を取れる場所にたどり着けたならばいいが。
康一は目を覚ましただろうか。シーラEは再び立ち上がれるようになるのだろうか。
康一は戦いの果てに心をすり減らしてしまっていた。ティムの後悔といえば、そんな彼にまた重荷を加えることになってしまったことだった。

すまない、そうティムは呟く。口がうまく動かなくなっていた。言葉にならず、風が過ぎ去っていく。

噴上を取り込んだカーズはいくらか体力を取り戻す。
ふらついていた体を立て直すと、その足がティムの方へと向かってくるのが見えた。
ついに自分の番が回ってきた。体力の限界と、そして恐怖がティムの瞼を重くする。
くすんだ視界で死神の姿が大きくなっていく。カーズが近づいてくる……近づいてくる……。
ティムの瞼がそっと降りた。もう、ティムが見るべきものはそこには一つたりとも残っていなかった。




【7】

黒焦げの機械の死体、食い散らかされた穴だらけの死体、首から上と下半身が爆発で吹き飛んだ死体。
カーズはしばらくの間、じっと三つの死体を見つめていた。ちょうど待ち合わせの時間を待っている人が時計を見上げるかのように。
右手の人差し指と中指でこめかみをゆっくり撫でる。しばらくの間そうしてじっとしていたカーズだったがやがて決心がついたように唇をきゅっと横に結ぶと、諦めたのため息を吐いた。
足元に転がったシュトロハイムの残骸を蹴り上げ、残りの肉片の回収を始める。首輪の謎は深まるばかりだった。

マウンテン・ティムを用いた首輪の実験。
死にかけのマウンテン・ティムの傷口をカーズは自らの肉片で止血し、生きながらえさせた。
そして体を地面に固定し、首輪に必要以上の負荷をかけてみたのだ。ちょうどロープで首輪を無理やり外すような動きを加えて。
予想通り、あっけなくマウンテン・ティムの首輪は爆発した。小気味良い音を立てて、マウンテン・ティムは脳髄をばらまき、そして死んだ。

そこまではいい。
死者の首輪であろうと、生者の首輪であろうと関係なく爆発は起きる。
主催者、ファニー・ヴァレンタインは断固として首輪の中身を見せたくないのだろう。

不思議なのは爆破の規模だ。
仮に首輪の中身を見せたくないがゆえに、そして禁止エリアで参加者の動きを制限したいがゆえに爆弾を仕込んでいるとしたならば……どの参加者であろうと均一に爆薬を含んでいるはずだろう。規模は違えど『参加者を殺す程度の爆発はどの首輪であろと起こる』はずだ。
つまり『こちらの首輪は爆発するが、あちらの首輪は爆発しない』なんてことは起こってはならない―――はずだ。

ティムと噴上を食べ終えたカーズは、ゆっくりとシュトロハイムだったもののもとへ足を向ける。


ところが『ここ』に『例外』が存在した。
戦闘の途中、カーズはシュトロハイムを『首輪ごと』一刀両断した。
だが爆発は起きなかった。シュトロハイムの体は美しいほど真っ二つに切り裂かれ、右半身と半身がそれぞれ散り散りに転がっただけだ。
首輪は何ら反応を示すことなく、綺麗に切り裂かれてしまった。もっともその後の爆発の余波で中身を確認することはできなかったのだが。

なぜシュトロハイムの首輪は爆発しなかったのだろう。
シュトロハイムが半人間、半機械だから? シュトロハイムの首輪だけ特別仕様だったのか?
カーズがシュトロハイムの脳天を切り裂き、生命活動を終わらせてから首輪を断ち切るまでの時間は短い。
ほとんど同時と呼んでいいくらいだ。その上、実際のところシュトロハイムは首輪が外れてから即『活動停止』とは至らなかった。
すくなくともカーズの足首を捉えるほどの働きはした……。これが意味することは一体何だろうか。

カーズは口を閉じたままシュトロハイムの残骸をじっと睨んだ。
そうすればまるで首輪の謎が自然と浮かび上がってくるかのように。切実に、ずっとにらみ続ける。
時折黒焦げになった機械部分と肉体部分の継ぎ目を指先でなぞってみた。
だがカーズにはその機械部分が何の役割を果たし、何のためにそう作られたのか理解はできなかった。


あるいは……『何らかの作用』が働いて首輪がうまく機能しなかったのか? ではその『作用』とは一体何だ?
首輪の爆発はすべて主動で行われているのか? 参加者150人全員を?

こめかみを抑え、神経を集中させる。だがいくら考えても答えは出てこない。
不確定要素が多すぎて、考えても考えても、思考がバラバラと崩れ落ちていくのカーズにはわかった。

「……忌々しい」

風が吹き、カーズのほどけた髪が額にかかる。カーズはほとんど反射的にそれをかきあげた。
月が影を落とし、芝生の上に複雑な模様を描いた。目的を持たない、長く不規則な動きで髪の毛が揺れる。
苛立ちがまた少し降り積もっていくのがカーズの中で感じ取れた。
人間三人を仕留めたにもかかわらず、その代償がこれでは……カーズのプライドは収まらなかった。
カーズは辺りに散らばった荷物をまとめようと、足を進めた。気持ちは既に次に向いていた。

新たな獲物を探しに、その場で反転し―――




『心が迷ったなら……やめなさい。ここで立ち止まるのは……カーズ、貴方にとって敗北ではない』



背後に立たれた感覚。耳元で囁かれた言葉。穏やかな息遣い。神々しい光。
カーズの左腕より刃が伸びる。電流を流されたかのように反応する。体を反転させ、背後を切りつける。
そして―――


「…………!? ……!? !?」


カーズの刀は空振りに終わった。何もない空間を切り裂いた刃先が、ほんの微かに、震えた。
振り返って、暗闇に目を凝らす。人影ひとつ見当たらなかった。息遣いも聞こえない。生命を感じさせる熱すらもそこには存在していなかった。

だが確かにいたはずなのだ……! カーズは間違えない。天才は間違わないのだ……ッ!
背後に立たれた感覚は確かな実態を持っていた。スタンドでも波紋でもない。それを超えた超能力でもない。
ありえない……! カーズは怒りすら感じながら辺りの捜索を続ける。
確かにいた! このカーズの背後に立っていた! 背後に立ち、そしてそっと語りかけ…………―――


「……MU?」


人影は見当たらなかったが、代わりにカーズは自らの体に起きた変化に気がついた。
『傷』が治っていた。つい今しがた人間たちとの戦いでつけられた体中の傷が!
カーズには理解ができない。それが『遺体』が起こす『奇跡』と呼ばれる現象だということに。
そして、彼に起こった『もうひとつの変化』にも……カーズは気がつきもしなかった。


「―――どういうことだ」


カーズのつぶやきに答えたのは空を覆い尽くす星空たち。淡く点滅を繰り返し、カーズの言葉は空へと消える。
そしてその首元に取り付けれた首輪も―――不規則な点滅でカーズの問に答えていた。

しばらくその場に立ち尽くしていたカーズだったが、やがて暗闇に姿を沈めていく。
腑に落ちない淀みをうちに抱え、カーズは新たな獲物を探し、また進みだす。
内に潜む何者かの力に気づくことなく……。そしてそれが、自らの問いに対する最大のヒントであることも知らず……。


カーズの頭上で登ったばかりの月が彼を見下ろしている。柱の男を縛り付ける首輪は、ひどく頼りげなく、寂しげな光を放っていた。








【G-2 中央部/1日目 夜】

【チーム名:AVENGERS】
【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → 『エコーズ act2』 → 『???』
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:右二の腕から先切断、極度の貧血、気絶
[装備]:エルメェスの舌
[道具]:基本支給品×2(食料1、パン1、水1消費)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.???

エルメェス・コステロ
[スタンド]:『キッス』
[時間軸]:スポーツ・マックス戦直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.カーズから逃げ切る。
1.運命への決着は誰も邪魔することはできない……。
2.ジョジョ一族とDIOの因縁に水を差すトランプ使いはアタシたちが倒す?

【シーラE】
[スタンド]:『ヴードゥー・チャイルド』
[時間軸]:開始前、ボスとしてのジョルノと対面後
[状態]:両腕に裂傷(中)、貧血、身体ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×3(食料1、水ボトル少し消費)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノ様の仇を討つ。
0.カーズから逃げ切る。
1.康一の治療と自身の治療に専念する。
2.ジョースター家とDIOの因縁に水を差すムーロロ、アタシが落とし前をつける?
【備考】
※参加者の中で直接の面識があるのは、暗殺チーム、ミスタ、ムーロロです
※元親衛隊所属なので、フーゴ含む護衛チームや他の5部メンバーの知識はあるかもしれません


【チーム全体の備考】
※全員がカンノーロ・ムーロロについての知識をシーラから聞き、情報を共有しました。
(参戦時期の都合上シーラも全てを知っているわけではないので、外見と名前、トランプを使うらしい情報チーム、という程度です)
※シュトロハイム・噴上・ティムの基本支給品、トンプソン機関銃(残弾数70%)、破れたハートの4。以上のものは車内に放置されています。
※シュトロハイムが持っていたドルドのライフル(予備弾薬を含む)、ティムのポコロコの投げ縄、琢馬の投げナイフ二本は爆発で跡形もなく吹き飛びました。
※ティムの最後のランダム支給品は「ジョルノがカエルに変えた盗難車のうちの一台」でした。
 現在康一、エルメェス、シーラEが乗車しています。
※康一の最後の支給品は「シュトロハイムがサンタナ戦で自爆に使った手榴弾×2」でした。
※ゴーストライダー・イン・ザ・スカイは死亡しました。




【F-3 南西部 牧草地帯/1日目 夜】
【カーズ】
[能力]:『光の流法』
[時間軸]:二千年の眠りから目覚めた直後
[状態]:身体ダメージ(大)、疲労(中)
[装備]:遺体の左脚
[道具]:基本支給品×5、サヴェジガーデン一匹、首輪(由花子/噴上)、壊れた首輪×2(J・ガイル/億泰)
    ランダム支給品1~5(アクセル・RO:1~2/カーズ+由花子+億泰:0~1)
    工具用品一式、コンビニ強盗のアーミーナイフ、地下地図、スタンド大辞典
[思考・状況]
基本行動方針:柱の男と合流し、殺し合いの舞台から帰還。究極の生命となる。
0.参加者(特に承太郎、DIO、吉良)を探す。場合によっては首輪の破壊を試みる。
1.ワムウと合流。
2.エイジャの赤石の行方について調べる。
3.第四放送時に会場の中央に赴き、集まった参加者を皆殺しにする。

【備考】
※スタンド大辞典を読破しました。
 参加者が参戦時点で使用できるスタンドは名前、能力、外見(ビジョン)全てが頭の中に入っています。
 現時点の生き残りでスタンドと本体が一致しているのはティム、承太郎、DIO、吉良、宮本です。
※死の結婚指輪がカーズ、エシディシ、ワムウのうち誰の物かは次回以降の書き手さんにお任せします。
 ちなみにカーズは誰の指輪か知っています。死の結婚指輪の解毒剤を持っているかどうかは不明です。
 (そもそも『解毒剤は自分が持っている』、『指示に従えば渡す』などとは一言も言っていません)
※首輪の解析結果について
 1.首輪は破壊『可』能。ただし壊すと内部で爆発が起こり、内部構造は『隠滅』される。
 2.1の爆発で首輪そのもの(外殻)は壊れない(周囲への殺傷能力はほぼ皆無)→禁止エリア違反などによる参加者の始末は別の方法?
 3.1、2は死者から外した首輪の場合であり、生存者の首輪についてはこの限りではない可能性がある。
 4.生きている参加者の首輪を攻撃した場合は、攻撃された参加者の首が吹き飛びます(165話『BLOOD PROUD』参照)

※遺体の左脚の入手経路は シーラEの支給品→シュトロハイム→カーズ です。
※カーズの首輪に「何か」が起きています。どういった理由で何が起きてるかは、次以降の書き手さんにおまかせします。


※康一たちとカーズの移動経路はE-4→ F-4→ F-3→ G-3→G-2 です。
 その間に夜(~20時)までに発動する禁止エリアは存在しませんでした。





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キャラを追って読む

前話 登場キャラクター 次話
179:矜持 ルドル・フォン・シュトロハイム GAME OVER
175:窮鼠猫を噛めず カーズ 201:際会
179:矜持 広瀬康一 190:次の目的地に向かえ!
179:矜持 噴上裕也 GAME OVER
179:矜持 エルメェス・コステロ 190:次の目的地に向かえ!
179:矜持 マウンテン・ティム GAME OVER
179:矜持 シーラE 190:次の目的地に向かえ!

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最終更新:2017年09月04日 21:39