ギイイィィィィーーー!!!



耳に障る音を立てながら、「それ」は自身が納められている容器の中をメチャクチャに暴れまわっている。
最期の力を振り絞っているのだろうか、グロテスクな見た目の「それ」は姿形が変形し、醜く膨張しながら縦横無尽に肉片を伸ばしていた。
しかしそれもつかの間、
やがて「それ」動きは弱々しいものとなり、ピクピクと痙攣しながらその活動を停止した。

物音のしなくなった容器の側には肉片を閉じ込めた張本人である男が一人
だが男はそんなことなど忘れたかのように肉片の断末魔を聞いても何の反応も示さない。


───蛍が一匹、緩やかに飛びながら男の目の前に近寄ってきた。

戦いの末死した者を悼むように
闘いの末生き延びた者を称えるように

だが、その輝きは彼の者の瞳に光を灯すことは決してない。
死が充満する激戦の後、宿敵との戦いを身も心もズタズタになりながらも生き延びた男───空条承太郎
彼は今、何を思っているのだろうか


すぐ目の前には緑色の学生服を着た少年が
背後の離れた場所にはその少年を殺した男が、物言わぬ遺体となって静かに横たわっている。




※※※




暗く深い夜の闇を天に散りばめられた星が照らしている。
キラキラといくつも存在を主張しているそれは、見るものを魅了するほどの輝きを放っていた。
しかし悲しきかな。この場においてその輝きに見入るものはおそらくほとんどいない。



放送が終わり、サン・ジョルジョ・マジョーレ教会───今は見る影もない跡地となってしまったが───辺りは激闘が繰り広げられていたときとはうってかわり、
通り過ぎる風の音以外に聞こえるものがないほどの静寂が広がっている。

「……えれーことになっちまったな。たくっ、悪いことってのはどうしてこうも重なるもんかねぇ、クソッタレが」
「………ええ、そうですね……。」

まあ、ここで悪いことが起こらなかった時間なんて無いんだがな。とジョセフは軽口に締めくくり、ジョルノはそれを少し上の空で聞き流していた。
大きめの瓦礫を背もたれにし、ジョルノは馴染みきっていない両腕を確かめるようにさする。
放送が始まる前に装着したジョセフの義手によって産み出されたそれは(「スタンドとは認識することであり、できると思えばできる」ということをジョルノは説明し、
そういえばおれもさっきスタンドが発現したときそんなんだったなあ……たぶん。 とジョセフは一人納得していた)
未だ肉がゴムでできているかのように感覚が鈍い。身体を横にしながら寝てしまい起きたときのあの腕の感覚が一番近いだろうか。

本当ならそのまま自身やジョセフ、そしてボロボロのままの仗助の亡骸の治癒にあたりたかったのだが……しかしここに来てジョルノの体力は限界に来てしまった。
そもそも彼はこの殺し合いのスタートから消耗ばかりの出来事が連続して起こっており(もう一人の自分との謎の消滅現象、プッチとの戦闘、
移動を挟みDIOとの2度に渡る衝突、合間に仲間や負傷者の治療……と、息をつけた時間はあまりない)
今まで戦ってこられたのは強靭の精神力ゆえのスゴ味によるものだ。
だがジョルノも人間……自らの腕をスタンドによって産み出し付けた直後、糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。
その姿に仗助をダブらせたジョセフはすぐさまジョルノに駆け寄り波紋を流し込み近くの手頃な瓦礫にもたれかからせた。
命に別状はないことは分かったものの、ジョセフは念のため安静を優先し放送のことは自分に任せてお前は休んでろ、とジョルノに身を休めるよう促した。
無理をする必要もないのでジョルノはありがたくその申し出を受け入れることにし、そして放送が始まり……今に至る。

(ミスタ……ミキタカ……)

再会を信じ別れた仲間
希望的観測がなかったかと言われれば嘘になる。
しかし放送は無情にもその約束は永遠に叶わぬものと彼らの死の現実を突きつけた。

(花京院……F・F……)

交流した期間こそ短いものの、打倒・DIOという同じ目的を掲げた仲間
こんな形で二人のその後を知りたくはなかった、出来れば生きていてほしいと願っていた。

(……仗助)

集った仲間のなかでも、特に親しみを覚えた同じ年頃の少年
ぶち抜かれた腹を治してもらったとき、彼は本当に「いい人」なのだと思った。
その時の優しげな表情と、魂が天に昇っていく時の泣きじゃくった声がない交ぜになって鮮やかに残酷によみがえる。
ズキリ、と完全に治ったはずの腹が再び痛みだした気がした。

(……『父さん』……)

同じ血を引く……二人の父
彼らに対する感情は言葉にするのが難しい
片や幼い頃から顔だけは知っていた薄っぺらい写真一枚の中の神秘的な存在・DIO、
片や自身の出生の秘密をもって発覚した今まで存在すら知らなかったもう一人の実の父・ジョナサン・ジョースター
……分からない、彼らにどんな感情を抱けばいいのか。今になってそんなことを考える。


仲間の死………敗者…………黒幕…………禁止エリア…………
ジョースター…………血統………父親…………DIO…………


(ダメだ……余計なことは考えるな、必要なことを考えろ…………必要なこと……だけを)

だが思考は脳を動かそうとすればするほど抗えぬ深みにはまっていく、意識が生ぬるい泥の螺旋へと沈んでいく。

(…………ぼく、は…………)




「ジョルノ」


ハッと意識が現実へ引き上げられる。目の焦点
が正面へと絞られ、声の主───ジョセフ・ジョースターの姿がすぐ目の前にあることに気がついた。
ジョルノに目線を合わせるようにして膝を折っている。
それほど近くに接近しているのに気がつかないほど消耗していたのかと自分自身にショックを受ける。

「な、なんでしょうか」
「寝ろ」
「はい。 …………はい?」

気の抜けた返事を返してしまうジョルノ、ジョセフの顔は真剣そのものだ

「顔に書いてあるぜェ~?「今までロクに寝てなくて今メチャ疲れてます」ってな、まあなにかあったら叩き起こしてやっから安心しろ」
「ジョセフ……」
「おれ様ちゃんはまだビンッビンに元気だからヘーキヘーキ、任せとけって」

言って、右手でジョルノの頭をぽんぽんと優しく叩く、そこから感じなれた暖かい気配が流れ込んでくる。
波紋だ

(ジョセフ、やはり………後悔しているんですね……仗助とぼくを…重ね、て………)

朧になる思考のなか、浮上する言葉はしかし言葉にはできず、ジョルノはおとなしく心地よい暗闇へと意識を委ねた。


※※※


「……そうだな、もうこんな後悔したかねえーんだおれは、……ガキはガキらしく、かっこなんてつけずにわがままでもなんでもやってりゃいいってのによ。

おれはそうだったぜ、お前はどうだったよ、承太郎」

疲労と波紋によって眠りに落ちたジョルノに少し語りかけ、立ち上がりながら流れるようにもはや感じ慣れた血族の気配へと振り返る。

「……………」

その視線の先にいた男───空条承太郎はジョセフの呼び掛けにすぐさま応えずに視線を投げ返し、ついで気を失ったジョルノ
そして…………仗助の遺体へと視線を移した。
ジョセフはその姿勢に違和感を感じたが、どうやら背中に一人誰かを背負ってるらしかった。

「……放送の通りだ、花京院とF・Fが死んだ。塔の上にいたやつもだ。遺体は全員向こうにある
俺はこれからこいつと共に南へ向かってジョナサンとDIOの生死を確かめに行く、てめーは空条邸に一旦戻って噴上たちと合流しろ」

ジョセフの問いには答えずに感情が読み取れない、というより無機質な声で淡々と述べる。
こいつ、と言って顎で自らの背中を指し、背負われている人影────ナルシソ・アナスイはそれにピクリとも反応を返さなかった。
しかし承太郎がわざわざ背負いながらそのようなことを言うということは、一先ず生きてはいるということなのだろう……とジョセフは結論付ける。

「ああ?なに言ってやがる、DIOなら放送で呼ばれたじゃねえか、間違いでもない限り奴はくたばって…」
「あの野郎が「またしても」「同じように」生き延びていないとも限らねえ」

淡々と吐き出されるかのように承太郎の言葉に、ジョセフは意図が読めず怪訝な表情を浮かべるが、一瞬の思考の後にハッとして息を詰まらせる。

そう、DIOとジョースター家の因縁の始まりとなった出来事
ディオ・ブランドーがジョナサン・ジョースターの首から下を乗っ取り、百年の眠りの後に闇の帝王として君臨した…
という、ジョースター家所縁のものにとっては絶対に忘れてはならない悪の所業、それがまたしても繰り返されていたとしたら

「連中が生者と死者をどんな風にして判別しているかわからない以上、そうなった場合どっちの名前が呼ばれてもおかしくない……ってか」
「そうだ、万が一だろうがなんだろうがその可能性があるなら徹底的に叩き潰す。」

そう口早に締めくくり、承太郎はジョセフの横を通り過ぎようとする…が、一歩二歩と進んだところでジョセフが立ち塞がるように体を横にずらす。

「オイオイオイオイオイ、それだけかよ?もっと他に言うことねーのか?大体お前そんなボロボロな身体で行ってどうこうできんのかよ」
「応急処置は済ませたしてめーが思うほど動けない訳じゃねえ。……事は一刻を争うかもしれん、どけ」

語気を強め、承太郎は今度こそ歩を進めようと足を踏み出す。
が……その歩みはまたしても止まってしまう。否、止めざるを得なかった。
ガシィ!と首元が僅かに締め付けられる感覚と、身体全体への小さな衝撃。
しかし打撲・裂傷・骨折……DIOとの壮絶な戦闘で負ったあらゆる傷には十分過ぎた。
軋むかのように神経に苦痛をもたらす感覚に承太郎は顔をしかめ、内心舌打ちをする。

「何のつもりだ、放せ」
「ひっぺがしてーなら力ずくにでも引き剥がしゃあいいだろ。それともかっこつけといてホントはんなこともできねえほど弱ってるってか、承太郎さんよぉ?」

身をのりだし、承太郎の襟首を掴み、挑発的な言葉とは裏腹にジョセフは口角を上げ余裕ぶった表情を浮かべていた。

「平気なツラしてクールぶって一人で何もかも背負いやがって、余計なことは喋りたくねーてか。最強のスタンド使い?無敵のスタープラチナ?
 はっ、笑わせてくれるぜ。ボロぞーきんよりもひでぇ格好になりやがって」
「……何が言いたい」
「ちゃんと言えって言ってんだよこのスカタン、そうやって「言わなくていい」って思ってることなんも言わねえから肝心なときにトンでもないことになっちまったんだろうが」
「……隠していたつもりも言いたくなかった訳でもねぇ、それとも仲良くおしゃべりしたところで何か変わっていたか?俺が言うこと言っときゃ仗助達は死なずに済んだとでも?」

ぐっと短い勢いをつけて承太郎の体が僅かに浮き上がり、首もよりきつく締まる感覚がした。

「……そういうこっちゃねえってわかってんだろ、思ってもいねえことで上っ面だけの挑発すんじゃねーよ」

ジョセフの顔から余裕が消え、力の入った怒りの表情に染まる。殴れるなら今すぐにでも殴ると言わんばかりの表情だ
だが承太郎から俯くようにして一度視線を反らし内側の熱を逃がすように大きく息を吐くと、顔をあげ再び承太郎視線を合わせる。

「ああそうだよ、言ってやるぜ、おれ達の中でお前は誰より強かった。おめーがいなけりゃそれこそおれたちゃミジンコを潰すより容易く奴に殺されてた。
おめーがいたからおれ達はDIOの野郎と面と向かって戦えた。おめーが体張って戦ったからおれとじいさんはDIOに勝てたんだ。けどな───

おめーのその強さも無敵さも、おめー一人で突っ走るためにあるんじゃねーだろうが
おれたちゃおめーに守られるためにDIOと戦ったんじゃねえ、おめーと肩並べて、おめーと一緒に戦うために奴と戦ったんだ。DIOとはちがう」


────家族だの仲間だの友情だの、そのようなものに縋るから肝心なときに裏切られるのだ……
────このDIOを見るがいい……必要ないものは全て切り捨て、配下は服従、絶対なのは己のみである……
────裏切られる信頼など元より存在しないのだから、そのような無様な姿を見せる可能性などゼロということ………
────これがおまえたち人間と、わたしの『差』だ………


二人の脳裏にもう聞きたくもない宿敵の声が再生される。
孤高であること、絶対であること、頂点に立つべきは常に自分一人であり、すべてを支配することに固執した闇の帝王
しかしその男は血の絆で結ばれたジョースターや彼らを助けた者たちの結託によって滅ぼされた……少なくともジョセフはそう確信している。

「そら、言ってみろよ承太郎、てめーが今なにを考えて、なにを感じてるのかを、ここでたっぷりとな。いいかたっぷりとだぜ?」

再び余裕綽々といった表情で顔を弛ませ、ジョセフはほんの少しだけ承太郎を締め上げている腕の力を抜く。承太郎が話しやすいように、
しかし逃がすことのないような力加減だった。



冷たい風が吹き抜ける。無数の星とたったひとつの大きな月の光が降り注ぐ。二人の男は睨み合っている。
10秒、20秒、30秒……それほどたったか、いやあるいはそれ以上か以下か?時間がてんでバラバラに揺らめいている。まるで弄ぶかのように
だが今だけはどうでもよかった。この一瞬の重要さに比べれば

ややあって、承太郎の目が細まり、何か言いたげに首をもたげる。やっとかこのスカタンと口には出さず軽く毒づくと聞き逃さぬよう耳をすませる。






「俺はアンタだ」

「………………? はあ?」


思わず素っ頓狂な声が出た。オレハアンタダ?…………何言ってんだこいつ、イカれたのか……この状況で?そう思わざるおえない程の意味不明な応え。

「てめー頭脳がマヌケか?ちゃんと言えっつたろうが、言うことが端的すぎてわけわかんねーよ………もうちと分かりやすく」







「アンタの痛みは俺の痛みだ。…………そうだろ、ジョセフ」



何かが引き裂ける音
何かが砕け散る音
それらを拒絶する耳鳴り
そして生まれる空虚、心がバラバラになりそうなほどの痛み、魂が乖離していく感覚

彼らはそれを知っていた




〇 〇 〇 〇 〇
  ●   ●  ●  ●

ゆらり  ゆらり  揺れている

いや 揺さぶられている? 浮いている? ……分からない 上も下も右も左も、地に足がついているのかさえ
……だが不思議と不快感はない。

ふと目の前に誰かがいるのに気付く
誰だ? と思っても、その人は磨硝子の向こう側にいるかのように、目に涙がたまっているかのようにぶけてハッキリとしない
向かい合っているのだろうか、こちらが見上げあちらが見下げているのだろうか。それすら分からない


「徐倫?」


思い当たる、想っている女性の名を呼ぶ
空気が優しく揺れた気がした。『彼女』が笑った気がした。

すると、『彼女』の姿がゆっくりと滲み始めているのに気がついた。
絵の具が水に溶けるように、カラフルな糸がほどけていくように
透き通っていく
見えなくなっていく

「徐倫!」

『彼女』に手を伸ばす。もう大切な人を失いたくないと、そんな体験は二度とゴメンだと
だが伸ばした手に『彼女』が触れた瞬間、触れた所から水面の波紋のようにぶわりと拡散する。
溶けてほどけて……体に絡まっていく、馴染んでいく、広がるのは暖かいもの


………ああ、そうか、君は………お前は…………



世界は光に包まれる



重みは四人分へと、増えた


〇●〇●〇●〇●〇




「カッコ悪ぃな……情けねえぜ、おれってばよ……なあ、仗助」

今やすっかり暖かさを失いがらんどうとなった「息子」の亡骸の傍らに座り込み、返事が返ってくるはずもないとわかりつつもジョセフは喉から絞り出すようにかすれた声を漏らす。

「同じだった……おれと承太郎の痛みは、同じ……」

友を失い、守りたかった肉親を失い、救いたかった命を救えずなにもできなかった無力を味わい、自分を取り巻く世界すべてが否定されるような錯覚を覚え
現実を投げ出してしまいたくなるほどの苦痛のなか、しかし絶望に屈することなく立ち向かいその歩みを止めることはなかった。

彼らは同じだった………ジョセフはその事を承太郎のたった一言で、心と体で理解した。

「なんだよ……バカかおれは………なんだって……ちくしょう………」

吐き出したい心は形に出来ず無意味な言葉になる。

────リサリサ先生 たばこ逆さだぜ

唐突に、かつて波紋の師であるリサリサに対して掛けた言葉がよみがえる。
あのとき今までの人生を好き勝手やっていた自分が他人の心境を察し、思いやってみせた。少しは成長したかなと、そう思っていた。
だが、


────にしても、なんか寒くねーッスか? 俺だけ?


────母親を、娘を、仲間を殺され…家を失い…見つけた娘は仇に乗っ取られた上ずうずうしくも仲間入りし…味方は当てにならず…信頼していた友にも裏切られたというわけだ……
 正直、このDIOには半分も理解できん感情だが……おまえは、心のどこかでこう思ってしまったのではないか……?


―――こんな『現実(いま)』には、1秒たりとも留まっていたくない―――と



察するチャンスはそれより前にあった。気付こうとすれば気付けたかもしれなかった。だが出来なかった。自分のことで手一杯でみすみすそのチャンスを通り越してしまっていた。

「なにが少しは成長したかな、だ………結局なにも変わっちゃいねえじゃあねえかよ………」

思えばリサリサと承太郎もどこか通ずる所があった。目の前の為すべきこと、行動しなければならないときに自身の心を押さえ込んででも使命を達成するという覚悟を持ち合わせていた。

「…………」

だったら、自分はどうする
立ち上がる足はある。血の通った腕はある。考えるだけの頭もある。では他に何が必要か

「……同じ血を引くお前らがこれだけ頑張ってんだ。おれがうだうだしててどうする」

ほんの少し身を乗りだし、膝をつき、仗助の顔を覗きこむ。
後悔がないわけないだろうに、血が張り付いているその顔はしかし思いの外さっぱりとしていた。
俺のことは気にすんな、いいから前見て歩け、じじい………そう言っているかのように、気のせいかもしれないが

「おれに足りねえのはよォ、『冷静さ』とか『よく観て気付くこと』とか、そうゆうやつだ………こんなところで立ち止まってる場合じゃねえ
 もう後悔はしたかねえ、おれの目の前で誰かが死ぬのは、まっぴらだからよ」

『覚悟』はできた。立ち向かうための『勇気』もある。迷いなどあるものか
そして、だからこそ、怒りが湧いてくる。何に?決まってる。

「…………」

この悲劇を仕組んだもの
この悪夢を望んだもの
血で血を洗う殺し合いの幕を上げた黒幕

「ファニー・ヴァレンタイン………」

ドゴォ!!と響く音に気付いた時には右手が地面にめり込んでいた。あまりの勢いで血がにじんでしまっている
だがその痛みを気にすることなど出来ないほどの怒りで頭の中は沸騰するほどの熱を持っていた。

(おれ達は何一つ貴様にたどり着けてねえ、分かってんのは名前とお偉いさんってことと、てめーがこんな悪趣味を催して高みの見物決め込んでるドス黒い邪悪ってことだけだぜ)

ヒントなどなにもない、敵の実力も居場所も分からない。全貌があまりにも闇に包まれ過ぎている。その事に苛立ちが止められない。
だが、それを抑えねばならない。リサリサがそうであったように、承太郎がそうしていたように、今は自分の為すべきことに対処せねばならなかった。

「……だが、これぐらいは許してくれよな」

仗助をせめて安全なところまで運びたい
そんな思いがジョセフの中にはあった。無茶をして体を張って、かっこつけながら死んでいった息子をこのままにしておくのは絶対に嫌だった。
それが終わればジョルノと共に(今は眠っているので背負っていくことになるだろうが)空条邸で噴上達と合流してトンボ返りで承太郎達と合流する。
本当は承太郎達を今すぐに追いかけたい気持ちもあるが、承太郎も重傷を負っているから素早く行動できないだろう。パッと行ってパッと帰ってくればきっとすぐに追い付く

そんなことを考えながら仗助を抱えるために体を動かそうとする。………が、その動作は中途半端な姿勢で止まってしまった。

………なんだ?すごく………奇妙な感じがする………?

自らのすぐそこ、視界の右端、そこにある地面に何か違和感を感じた。
戸惑いながら、しかし思いきってそこを直視する。
そこには

「……?なんじゃあこりゃぁぁ~~?……?」

砂ぼこりと小さな瓦礫や石ころ、そして先ほど地面を殴ったときに流れたジョセフの血が、不自然なほどうごめいていた。
しばらくそれらは地面を不気味に踊ったあと、小さく震えながらピタッ………と唐突にその活動を止めた。
何かのスタンド攻撃か………?と思いつつ、周囲を警戒しながらしばらくそのまま待機していたが、それ以上のことは何も起こらない。
勇気をだし、ジョセフはその地面を覗きこむ。

一瞬「それ」が何なのか理解できなかった。砂や小石が何かの模様を描いている。じっと見つめるうちに、だんだんとそれらの正体が分かってきた。

既視感のある砂の模様の上を、血や小石が何かを示すかのように飾っている。そう、それの正体は



「………地図、か?」



ジョセフの右手に、茨の形をした紫色のヴィジョンが、うっすらと蠢きながら纏わりついていた。



【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会跡地(移動中) / 1日目 夜】


【空条承太郎】
[時間軸]:六部。面会室にて徐倫と対面する直前。
[スタンド]:『星の白金(スタープラチナ)』(現在時止め使用不可能)
[状態]:右腕骨折(添え木有り)、内出血等による全身ダメージ(極大)、疲労(極大)、精神疲労(極大)
[装備]:ライター、カイロ警察の拳銃の予備弾薬6発、 ミスタの拳銃(5/6:予備弾薬12発)
[道具]:基本支給品スティーリー・ダンの首輪、肉の芽入りペットボトル、ナイフ三本
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルの破壊。危険人物の一掃排除。
0.…………。
1.状況を知り、殺し合い打破に向けて行動する。
[備考]
※肉体、精神共にかなりヤバイ状態です。
※度重なる精神ダメージのせいで時が止められなくなりました。回復するかどうかは不明です。
※前話、承太郎の付近にあったナイフ×3、ミスタの拳銃(5/6:予備弾薬12発)を回収しました。それ以外は現場に放置されています。
※肉の芽は肉塊になって活動を停止しているようです。波紋や日光に当てて消滅するかどうかは不明です。


【ナルシソ・アナスイ plus ………?】
[スタンド]:『ダイバー・ダウン?』
[時間軸]:SO17巻 空条承太郎に徐倫との結婚の許しを乞う直前
[状態]:睡眠中、精神消耗(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:???
0.徐倫……


【備考】
ジョニィとアナスイは、トリッシュ達と情報交換をしました。この世界に来てからのこと、ジョナサンの時代のこと、玉美の時代のこと、フーゴ達の時代のこと、そして第二回の放送の内容について聞いています。




【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会西の川岸 / 1日目 夜】


【ジョセフ・ジョースター】
[能力]:『隠者の紫(ハーミット・パープル)』AND『波紋』
[時間軸]:ニューヨークでスージーQとの結婚を報告しようとした直前
[状態]:全身ダメージ(中)、疲労(大)
[装備]:ブリキのヨーヨー
[道具]:首輪、基本支給品×3(うち1つは水ボトルなし)、ショットグラス
[思考・状況]
基本行動方針:チームで行動
1.仗助………
2.悲しみを乗り越える、乗り越えてみせる……もう後悔したくない、そのためには……
3.空条邸に戻って仲間と合流する?それとも……?
4.同じ………承太郎の痛みはおれの痛み……か
5.なんだこの………地図?


※『隠者の紫』の能力を無意識に発動しました。すぐ近くの地面に地図が念写されています。地図が何を示しているかは不明です。(後の書き手さんにお任せします。)


ジョルノ・ジョバァーナ
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:体力消耗(大)、精神疲労(大)、両腕欠損(治療はしたが馴染みきってない)、睡眠中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、地下地図、トランシーバー二つ、ミスタのブーツの切れ端とメモ
[思考・状況]
基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える。
0.睡眠中
1.状況を把握しつつ、周囲の仲間と合流する。


※ジョセフの義手を装着した状態でスタンドを発動することができました。義手はジョセフに返しています。
※周囲の蛍はジョルノが意識を失ったので元の物質に戻りました。


[備考]
仗助の遺体が近くに安置されています。持ち物である基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)もその場にあります。
また周囲には花京院、ジョンガリ・A、徐倫(F・F)の遺体があります。


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180:All Star Battle -FIGHT!- ジョセフ・ジョースター 199:地図
180:All Star Battle -FIGHT!- ジョルノ・ジョバァーナ 199:地図
180:All Star Battle -FIGHT!- 空条承太郎 190:NAMI no YUKUSAKI
180:All Star Battle -FIGHT!- ナルシソ・アナスイ 190:NAMI no YUKUSAKI

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最終更新:2017年06月01日 21:23