プラスチックハート?

時間はゲーム開始直後だろうか?気が付けば少女は独り竹林にいた。
そこは少女にとって、おぼろげながらも見覚えがある場所だった。
少女はしばし黙考し、簡単ながら状況把握と整理を済ませる。
そして様々な疑問を抱えつつ、少女は数年前の記憶を頼りに、
配布された地図に記載されたある施設を目指した。


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二本目の蝋燭に火が点され、部屋の一室と二人の少女?を僅かに照らした。
この光量ならたぶんバレないわね、と少女――アリス・マーガトロイドは思った。
いま自分達がここにいるのが他の参加者に知られるのは、良くないと判断しているからだ。
施設に入る前、外周を回るなどして、現在自分以外の参加者がいないは、既に確認済みだ。
考え込むアリスに対し、もう一人の少女が訝しげに口を開こうとした。
アリスはとっさに少女の口を人差し指で押さえる。
相手はすぐ理解したのだろう口を噤んだ。私の唇とと違い、硬い感触だとアリスは思った。
そしてすぐさま思考を切り替え、まずはと、竹林に転移される前に起こった惨劇の事をアリスは考えた。


――――私は家で使い捨て用の人形を作って、そのまま一日を終えようとしていたはず。
それが、いつの間にか自分と知人達が見知らぬ場所に集められ、二人の男からいきなり殺し合いを強要された。
直後、誰よりも早く男達に食って掛かった秋穣子と呼ばれた神が、魔法使いであるアリスにとっても見当のつかない方法で殺された。
そして程なくして、これまた未知なる力で意識を失い、今度は迷いの竹林……に似た場所に飛ばされた。


……訳が解らない。
竹林だけを見てもそうだ。
最初に来た時に感じた独特の空気や、殺し合いの参加者でもある知り合いの妖怪兎による幻惑こそなかったが
幻想郷にある迷いの竹林によく似ている。今いる施設もそうだ。
殺し合いの舞台を何でここまで幻想郷に似せる必要があるのか。
本来の幻想郷を作り変えた可能性もちょっと頭をよぎったが、地図に記載された幻想郷にない施設名やや
迷いの竹林の空気の違いからなどから、それを拒否する。
次に夢かと思った。そういや今日は(多分)気分が優れない。
眠れる気分じゃなかったが、いつの間にか眠っているのかも知れない。
試しに足をつねってみる。
痛いだけで何も変わらなかった。




仕方ないのでアリスはため息をつきながら、更に考えを巡らせる。
殺し合いを強要している、太田順也と荒木飛呂彦の二人の力について考える。
私達の平穏を乱す誘拐犯どもは、私達はいつでも気絶させられ、
殺せて、なおかつ別の場所に転移できる程度の能力の持ち主で、
しかも私達参加者の素性もある程度知っている感じだ。
見た目こそ種族人間っぽいけど、人間とは思えない程の力と得体の知れない凄みを感じさせる怪人。
アリスは思考を中断させて、少女の口から指を離し、深く溜息をついた。


「ああもう、歯向かうとか考えること自体が馬鹿馬鹿しくなってくるわね」


だいぶ前に闘ったアリスが闘ったいけ好かない天人(比那名居天子)を初め
見知った参加者だけを見ても、アリス自身非常に強いと評する者は何人もいる。
だが、この状況に置いてさえ倒すのは絶対に不可能と感じさせる者はいない。
だが、あの二人は違う。
行使する能力があまりにもスケールが違いすぎる。まるで現実味がない。
大きな弱点を見つけてようやく、脅かせるかも?と思えるレベルだ。


「じゃあ、あんたは乗るの?」


呆れたような素っ気無い、小さな声での問いが少女の口から出た。
いつも聞く、でも違うアリス自身の声だ。
心の鼓動が僅かに早まったのを感じた。


「そのつもりはないわ」


即答だった。
表には出さないが、アリスにだって命への執着や未知への恐怖は人並みにはある。
かといって殺し合いに乗った方が生還できる可能性があるともアリスには思えなかった。
打倒太田と荒木、優勝。どちらを目指すにしても情報が少なすぎる。
しかも自分の武器である複数の人形や魔術書などは没収されて手元にない。
まあ、その気になれば所持してる時と遜色ない力は出せるのだが、
所持している方が心理的余裕ができるので、無いなら無いで困るのは同じだ。
このままだと自分の力を信用しきれない。
支給品を全て確認した今でもだ。名簿も確認している。




「様子見?それとも?」
「…………」


今度の少女の問いにはすぐ答えられなかった。
他の参加者はこの殺し合いではどう行動するだろう?とアリスは思った。
一応、古馴染みの霧雨魔理沙博麗霊夢は性格的にも職業的にも、いつもの異変と同一視して解決に乗り出すだろう。
あの二人の行動パターンは判りやすいし、そういう意味では安心だ。
だが幻想郷在住の、それもアリスと交流のない、もしくは少ない参加者は、この事態にどう出るかは想定し難かった。
アリスは妖怪の身でありながら、人里で人形劇を開く、住居の近くに迷い込んだ者を家に泊めてやるなど、それなりに人間とも交流があった。
だが反面、知人から妖怪退治の依頼をされてもあっさり断わったり、必要以上に関係を深く持つのを避けたり、
戦いにおいてもなるべく強敵との戦闘をしないよう行動するなど、危険と感じた面倒を避ける傾向がある。
故に今のアリスは軽度ではあるがある種の人間不信に陥りつつあった。
でもこのまま立ち止まるのはアリスにとってもっと不安だった。


「『それとも』はないわね」


不安を遮るよう苦笑しながら、もう一つの選択をアリスは告げた。
どの道、自分一人ではどうしようもないと結論は出ている。
それに自分の知り合いが、それも自分の軽はずみな行為が原因でただ死ぬというのは、
想像したくなかったし、そもそも自分も平気でいられるかどうか解らなかった。
ならせめて、二つの選択からの僅かながらの生還の可能性を見つけるべく、
他の参加者の動向を、ゲームの進行を見定めつつ方針を決めようと思った。


「もしかしたら、無いとは思うけど……霊夢か誰かが短時間で解決するかも知れないけど……
 それでも、とにかく他の参加者達を見なけりゃ、何も始まらないわよね。柔軟に対応しなきゃね」
「そうね。でも、できれば誰かと会って話くらいした方がいいわよ」


アリスの心の奥底では思っていた事、図星ともいえる同意にアリスは思わず半眼になった。
腹が立った。


「あんたを元の木人形に戻すには、どうすれば良かったんだっけ?」
「頭のあれを抜けばいいんじゃない?」


呆れ顔で額に螺子らしき物体が付いてるアリスと同じ姿の支給品は、
仮のスタンド本体――アリスの頭を指さしながらすぐさまそう言った。
アリスはそのそっけない返答に軽く頭痛を覚えた。




太田達がいた場所から竹林に転移させられた後、彼女はすぐに身を隠しつつ支給品を確認をしていた。
見つけたのは基本支給品である食料など、そして絵画に使うような素っ気無いデザインの等身大木人形。
そして見た事のない銀色の円盤。
説明書があったのでそれを読み、彼女なりに周囲の警戒をすると円盤の挿入を試みた。
好奇心と焦燥が彼女を早急の行動に移させたといっても良いだろう。
そのまま木人形に自らの姿をコピーさせたのも、その直後だった。
アリスはスタンドディスク「サーフィス」の説明書の内容の一部を思い出す。

…………木人形――サーフィス素体は触れた者の身長、体重、性格や癖などを完全にコピーする事ができます。
本来はコピーした者を操れますが、このゲームでは使えません。
スタンドDISKと合わせてご使用下…………


「…………」


アリスは自分の性格について良い悪いとか考えたことは殆どない。
しかし、こうして自分の性格をコピーした存在と会話してみると釈然としないというか
少し腹が立つというか、複雑な気分で腹がいっぱいになりそうな感じであった。
私は薄情な奴なのだろう。現に知り合いの安否を少しも気遣っていないのだから。
そう思った。


「……あんたは、誰か近づいてこないか注意してて、私はここをもう少し物色するわ」
「わかったわ」


アリスの命令を聞き、サーフィスそれに従って部屋を出た。
アリスは家具の引き出しを空けながら包帯やら衣服などを必要な分だけ、デイパックやエニグマの紙に納めていく。
取れる分だけ取ったら、ここを出るつもりだ。
時間が経てば、殺し合いに乗った参加者にとって、ここは絶好の狩場になりかねない。
吸血鬼のような再生能力が無い参加者もいるだろうし、その怪我人を狙う事も考えられる。
なぜなら彼女が今いる場所は八意永琳の診療所――永遠亭だから。


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【D-6 永遠亭/深夜:本編15話「ルイとサンソン」より後の時間軸】

【アリス・マーガトロイド@東方妖々夢】
[状態]:健康、精神疲労(小)、不安
[装備]:スタンドDISC「サーフィス」、サーフィス人形(アリスに変身中)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:遭遇、または発見した参加者を複数人観察した上でスタンスを決める。
       それまでは生存優先。
1:薬品や医療器具、衣服をある程度収集した後、永遠亭を出る。
2:サーフィスをこのまま自分に変身させておくかどうか、考え中。
3:1の後、単独でいる時は道具や情報の収集に努める。

[備考]
※参戦時期は少なくとも非想天則以降です。
※支給品は確認していますが、自分に掛けられた制限にはまだ気づいておりません。
※掛けられた制限は不明です。
※「ルイとサンソン」からの経過時間および、永遠亭でのジャイロと神子の形跡に
  アリス達がどれだけ気づいているかは後の書き手さんにお任せします。

<スタンドDISC『サーフィス』@ジョジョ第4部>
破壊力:B スピード:B 射程距離:C 持続力:B 精密動作性:C 成長性:C
アリス・マーガトロイドに支給。
等身大の木人形と同化して発動する『サーフィス』のスタンドDISC。 人形と説明書とセットで支給。
スタンド発動後、触れた人間の外見をほぼ完全にコピーする能力を持つ。
外見の違いは額にあまり目立たない(らしい)螺子のようなものが付いてるくらい。
身長、体重、指紋、声紋、性格、癖などもほぼ完璧にコピーできる。
過去の記憶がどの程度されるかは不明。スタンドなどの異能力はコピー不可。
本来はコピー先の対象と向き合えば、対象の動きを操れるが、このロワでは封印されている。
人形と一体化しているスタンドなので他のスタンドに攻撃できるが、逆に普通の物理攻撃でも破壊される可能性が。
ただし破壊されてもスタンド本体にはダメージなし。素体は木製なので衝撃や火には弱い。
破壊された後、他の等身大人形で再発動が可能かどうかは不明。

014:ルイとサンソン 投下順 016:魔王
014:ルイとサンソン 時系列順 016:魔王
遊戯開始 アリス・マーガトロイド 038:途方も無い夜に集う
最終更新:2013年10月10日 12:26