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ジョンQ

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『ジョン・Q -最後の決断- 』 映画


 医療保険制度の問題を中心に据え社会の私欲に満ちた側面をまざまざと見せ付けられた作品だった。金のある者には優しく金のない者には冷酷な病院をはじめ、労働者の同意なしに経営者のコスト削減を目的にした加入保険の変更、昇進のために市民の支持を得ようとカメラの前に姿を現す警察の本部長、さらには数字と人気のために手段を選ばないテレビとそのキャスターなど彼らの仕事の動機の元をたどれば結局私利私欲の追及である。そんな社会では弱者は生きてゆけない、特に医療の世界では。

 本来医療とは人の命を助けることを目的とし、営利を追求する手段ではない。しかし、その世界に市場という概念を持ち込めば、たちまち競争が起こり、利益を出せない者は淘汰されてゆく。そうなれば病院は金を持たない利益をもたらさない病人を相手にしない。つまり、所得の差によって享受できる医療サービスが変わってくるのである。合理的といえば合理的だが、医療の場合失われるものが人命であるだけに簡単には切り捨てられない。国がこれをどのように捉えるかで制度に違いが生じてくる。

 ジョンは明らかにアメリカが選んだ制度の被害者であった。追い詰められた彼は蛮行に走ることになり、その中で息子との別れ際に「優しくあれ、それでいて金を儲けろ」言うシーンはアメリカの医療制度の問題点を如実に指摘している。金があれば何でもできる社会、裏を返せば金がなければ何もできない社会なのである。

 この作品は日本のような手厚い制度の存在しない国の実情に触れるよい機会になった。これにとどまらずこの問題について考えを深めて行きたいと思う。

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