Macopine

アマルティア・セン

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集

『アマルティア・センの魅力を探る冒険』 荻澤 紀子 著


 1998年アジア人で初めてノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・セン、私は受賞後の彼の言葉に感動した。ここでは敢えて本文をそのまま引用することにしよう。

――心配しているのは、もっと貧しい人たちのこと。インドネシアやタイの貧しい人、米国の医療保険未加入者や西欧の失業者の方だ。資本主義に修正が必要なら、こういった点である。
――アダム・スミスに始まる経済学の偉大な伝統は、貧しいものに同情・共感することであった。
――国籍に関係なく、悲惨な境遇にある人々とその暮らしに関心を寄せることこそ、経済学の真髄なのである。

 彼の業績も然る事ながら、私は彼の思想の根底に存在する価値観に尊敬の念を抱かずにはいられない。上述の彼の言葉からも窺えるように、貧しい人たちに対する彼の姿勢は慈悲深いという言葉が最も相応しいと言える。また、正統派の厚生経済学が前提とする合理的個人の行動仮説に疑問を感じているところからも、彼の価値観を感じられるだろう。彼が関心を寄せる貧しい人たちが如何に合理的個人の行動仮説で説明できないか、それを知っている彼ならではの的を射た指摘であった。

 このような経済思想家たちの考え方を眺めていると、彼らの価値観が滲み出てくるような感覚を覚えることがよくある。まるで彼らの思想それ自身が1人の人間であるかのような、それくらい強烈な印象を受けるのである。彼らの価値基準に基づいて全身全霊を捧げて生み出される思想であるから、それくらいのエネルギーを秘めていても不思議ではないのかもしれないが、やはり圧倒されてしまう。

 価値判断を多分に含んだ考え方を展開したアマルティア・センを読んだことで、今まで腑に落ちなかったことが繋がり始めた。と同時に、私の書いた論文が如何に希薄な価値観の下に書かれていたのかにも気づいた。自らの価値観ではなく常識に捉われた論文がどれほどつまらないものか。この教訓を生かし、次に繋げて行きたい。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
人気記事ランキング
ウィキ募集バナー