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ローマ人の物語6

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『勝者の混迷(上)』  塩野 七生 著


 前巻の最後に反旗を翻してきたマケドニア、カルタゴを消滅させたローマだったが、本巻では内部に手を焼くことになる。若くして護民官となったティベリウス・グラックスがその改革を断行しようとするが元老院によって阻まれ、またその弟のガイウス・グラックスも辛酸を舐めることとなる。そして、その後この役目を担ったのが先祖の名も定かではないガイウス・マリウスであった。

 本巻で最も印象的だったのが、高貴な生まれと裕福な環境に恵まれていたグラックス兄弟が命を犠牲にしてまで高貴でもなく裕福でもない人の権利を守ろうとした姿だった。彼らは大人しく出世の階段を登って行けば執政官、後には元老院の中心になれる家柄であったにも関わらず、老朽化したローマのシステムに危機感を感じ、改革を断行しようとしたのである。文字通り護民官としての役割を果たそうとした彼らには感服であった。また、彼らは改革を急ぎすぎたものの、後の指導者たちに改革の道標を提示した功績は大きいと言える。ハンニバルの言う、「先に成長してしまった肉体を維持するのに適した内臓の成長」をグラックス兄弟は始めたのである。

 彼らのエネルギーの源泉は何であったか。おそらくそれはローマの存続、発展を切望する精神であったのだろう。私はローマの将来を見据えて信念を貫いてゆく彼らの姿に敬意を表さずにはいられない。指導者たるものこうあって欲しいものであると我々の指導者を見てそう思ってしまう。

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