イルドール大陸

イルドール(Yildor)とは、アーク・イリスの北半球にある大陸である。

アーク・イリスの6大陸の中では最も面積が狭い。
極めて強力な魔法場を持つため、広さのわりにバリエーションに富んだ気候を持っている。



概要

イルドールは東西に2000km、南北に1200km程度の幅を持ち、その面積はおよそ200万平方kmである(単位については地理を参照)。

中央部は砂漠となっており、総面積の約50%を占める。
山脈と森林地帯によって北東部、北西部、南部に分かれており、それぞれメラディン(Meladin)ルタリス(Rutalith)イデア(Yidea)と名付けられている。
各地域に中核的な国が1つずつあるが、一枚岩の国家ではなく、基本的には地方分権の複数の国の集合に近い。

イルドールにはイルドール四大種族と呼ばれる人種があり、それぞれおおむね独立して生活している。
概していうと、砂漠に住む魔力が低く身体能力が極めて高いシュルド、森に住む機敏で閉鎖的なエンフィ、寒冷地域に住む華奢で魔力が極めて高いマベイン、そして荒野に住む頑丈で器用なカークスの4種である。"我々の世界"の人類はマベインとカークスの中間くらいである。


エリア

イルドールは山脈などによって3つの区域に分断されている。現在では区域ごとに一つの大国があり、北東部の寒冷地域メラディン、北西部の荒野ルタリス、そして南部の広大な砂漠地帯イデアと名付けられている。
3区域の境界はいずれも非常に過酷な環境となっており、越境の困難さが逆にエリア間の戦争を防いでいるといわれる。実際にイルドール大陸内で人間どうしの戦争はほとんどなく、海の外から来る脅威や魔族との戦いが主である。

北東部メラディンエリア

魔法王国メラディンが統治する寒冷地帯。寒冷地帯とはいっても南部との境界付近は温帯並である。
平均海抜が高く、浜が存在しない。海岸はほとんどが海面より20m以上高く、海から北東部に進入することはほぼ不可能である。メラディン北部は特に過酷な環境で、年間平均気温は-10℃、弱い動物はおらず、凶暴な雪魔物が徘徊する。
その環境にあってメラディンがイルドール最大の文明となっているのは、ひとえに遮断結界技術の賜物である。あらゆる都市や町は遮断結界で覆われている。結界は凶暴な魔物と寒気を遮断し、内部を温暖に保つ。町の規模にもよるが直径1kmから100kmにも及ぶ半球状で、外からは町が透明なドームに覆われているように見える。この結界は人間に対しても有効で、通過するには各所にある門を通るか、結界に阻害されないように通過許可の登録を行う必要がある。結界は魔法で形成されており、その膨大な霊力を有するあたりがメラディンが魔法大国と呼ばれる所以の一つである。
北部のこの気候は西や南に移動すると激変する。まずメラディン西部にはルタリスエリアとの境界である白金山脈があり、そこに近づくにつれて気温が上がっていく。白金山脈は1年を通して冠雪しており、魔物は少ない。ルタリスエリアに行くには北海を経由するか白金山脈を超えるかしかないが、白金山脈は環境が厳しいだけでしっかり対策すれば普通に越えられるため、イデアエリアとの往復に比べれば遥かに容易い。
メラディン南部に移動すると、気温の上昇と共に湿度が下がっていき、イルドール大陸で砂漠の次に過酷といわれるヴァンドラント山脈に到達する。ヴァンドラント山脈は比較的温暖で雪を被ることもなく、緑に溢れているが、それゆえに魔物の数が尋常でなく多い。小隊を組んでも無事には突破できず、一般人による越境は不可能だった。とはいえそれも500年前までで、大災害以降、遮断結界を応用した越境大橋が建設され、一般人でも比較的容易に越境できるようになった。しかしながらヴァンドラント山脈の魔物は遮断結界では防ぎきれず、時折橋にも被害が及ぶ。

北西部ルタリスエリア

ルタリス共和国がある荒野地帯。街の周辺はよく開墾されているが、離れるほどに大地は荒廃し生物もほとんどいなくなる。地下資源(特に鉄)が豊富でルタリス政府は"外敵"の襲来に備えて兵器を製造している。
カークスたちが海を渡って来るまで、北西部には人は住んでいなかった。ほとんどが荒れ地で、生物も少なかったため、シュルドはより温暖な南部を、マベインは結界で対処できる北東部を好んだためである。そこにカークスがやってきた形となり、彼らは人の住まないこの土地を開墾して広大な田畑を作った。現在ではカークス以外の人種も多数住んでいる。ルタリスエリアはイルドールでは唯一海外との交易が可能で、時折他の大陸からの移住者もいる。
ルタリスエリアの東はメラディンエリアとの境界白金山脈があり、南下すると更に荒廃しやがて大砂漠に至る。砂漠はイルドールで最も危険な地域であり、砂漠越えはよほどの理由が無い限り誰もが避ける。

南部イデアエリア

3つの区域としては最も広い面積と最も多くの人口を擁する砂漠地帯。大半はステップ気候の草原で、海に近づくと森もある。西海岸には、世界有数の森林地帯ヘルリアンがある。ほとんど人の手が入っていない自然地域で、イデア連邦の中核都市イドーリアの他には都市といえる都市がほとんど無く、村や町レベルの集落が点在するのみである。北西部のように荒れておらず、北東部のように寒いわけでもなく、肥沃な大地が広がり動物も多いイデアエリアでは、現在でも遊牧民が存在する。
大災害でシュルドの人口が激減するまではイデアエリアはほとんどシュルドしかいなかったが、大災害以降、砂漠を越えてカークスが、山を越えてマベインが流れ込み、現在では人口のほとんどがカークスかマベインである。
海岸付近は緑が多く、広大な草原が広がっている。内陸に向かうに従って湿度が下がり、やがて砂の海になる。砂漠にもいくつか町が存在するが、より大陸中央に向かうとそれもなくなり、魔物も植物も皆無の空白が広がる。砂漠の中央にはオアシスともいえる広い湖がある。これは太古に隕石が衝突した際にできたクレーター、またはカルデラ(どっちなのかは不明)とされており、その中央には数万年前のものとされる遺跡が誰に触れられることもなく眠っている。
イデアエリアには遺跡がかなり多く、そのほとんどが時期すら不明である。イデア連邦の主な成立目的は、遺跡調査を組織的に行うことで情報交換や物資の融通を効率化するためである。遺跡には凶悪な魔物が棲み着いていたり古代のセキュリティシステムが未だに生きていたりすることが多く、調査も命がけである。遺跡探索を行う者達はルインダイバーとも呼ばれ、イデアの人々にとってはある種の英雄的扱いを受けている。
南部は北部よりも生存に適した環境が多いためか、魔族の国も存在し、魔族と人類の戦争がしばしば起こる。


言語

イルドールでは全域においてイルドール共通語が標準語とされている。
古くからここに住んでいたシュルドとマベインはかつてそれぞれ独自の言語を用いていたが、コミュニケーションを円滑にする目的でマベイン側が共通語を作り出した。イルドール共通語はマベイン語の文法を基準として一部を簡略化・合理化し、シュルド語からもいくらか語彙を取り入れて作られた。
現在(イルドール紀年6世紀)でも古いシュルド語やマベイン語を使う者もいるが、基本的には砂漠に住む遊牧民族であっても共通語を取り入れている。また、カークスが入植した時点ですでに共通語が普及していたため、カークスたちも共通語を使う。エンフィは他の種族との交流を好まないため、古シュルド語を使い続けている。


気候

イルドール大陸は魔法場が極めて強く、エリアごとにがらりと変わるが、北半球の中緯度にあるため、基本的には温帯気候に属する。"我々の世界"でいう四季にあたる気候変化もあり、魔法元素の数に合わせて五季と呼ばれる。
一年の始めは風の季節("我々の世界"でいう春)である。風の強い日が多く、天気も安定しないが、冬が明けしだいに気温が上がっていく、過ごしやすい季節である。
風の季節が過ぎると雷の季節(初夏)が来る。その名の通りよく積乱雲が発達し、雷が多い。日本でいう梅雨と雷が合わさったような季節である。雷の季節の下旬には雨も減り、本格的に暑い季節が来る。
次の火の季節は"我々の世界"でいう夏から晩夏にあたる。雨も少なく、特に南部のイデア地域では非常に気温が高くなる。北東部のメラディン地域でもこの時期には氷が溶け、緑が生い茂る様子を見ることができる。南に海があるイデア地域ではしばしば弱い雨が降るが、山を隔てたメラディン地域ではこの時期にはほとんど降水が無く、生活用水は地下水や雪解け水から得る。
やがて気温が下がり始めて土の季節(秋)になる。多くの多年草や木々はこの時期に実を付け、また動物たちが冬眠の準備をする頃でもある。農業を行う地域では多くの作物の刈り入れ時であり、厳しい冬に備える。
一年の終わりは水の季節(冬)であり、メラディン地域では最も過酷な期間となる。年間を通して最も降水量が多く、風も強くなりがちである。この時期に遮断結界から出ることは自殺行為とされている。一方イデア地域では最も過ごしやすい季節であり、気温はそこまで下がらず、雪が降ることもあまりない。
北西部のルタリス地域は他の大陸に近く、イデアやメラディンに比べると季節ごとの気候の差はそこまで大きくない。
最終更新:2020年02月16日 11:48