吸血鬼(きゅうけつき / Vampire)とは、主に人間の血を吸うことで生きている
魔人の一種。
"我々の世界"の伝承にあるそれとはやや異なる可能性があるが、基本的には同じものと考えてよい。
概要
吸血生物は他にもいるが、吸血鬼といえば普通人型のもののみを指す。外見上はほとんど人間と同一で、紅い虹彩、尖った耳、肉食動物のような犬歯といった特徴を持つ場合もある。
半グリシーであり、"通常の食事"は必ずしも必要としないものの、
霊力の摂取は生存に必要となる。また一般に長寿命で、殺されない限りは老いも死にもしないとされる(飢え死にはする)。
半グリシーであるがゆえ
魔法能力は非常に高く、その魔力を以って人間を操ったり、コウモリなどの小動物を使役したりする。その一方、例えば炎を吐いたり雷を起こしたりといった自然を操るタイプの魔法を使う者はあまりいない。精神操作を得意とすることから吸血鬼の魔力は
闇属性であるといえる。
成立
吸血鬼には原生級と伝説級の2種類があり、後者は伝承に由来するものである。なお用語は
グリシーの分類に準ずる。
原生級
後者が生まれる伝承の元となったもの。いつから存在するのかは定かではないが、自己申告で3000年以上生きたという者もいる。なお吸血鬼の伝承が生まれたのはかなり"最近"である。
数が少なく、個性が強い。全く吸血を必要としない者もいる。彼らは山奥などの人目に付かない場所に居を構え、森に迷い込んだ旅人を襲ったり、街に降りて気に入った者を攫って"家畜"にしたりする。基本的にあまり目立とうとしないのは他の魔人種にも共通する特徴である。格好も様々で、いかにもという感じの黒マントと剥きでた牙を持つ者もいるが、外見上人間とまったく見分けが付かないものも多い。
伝説級
上記原生級の吸血鬼が(あまり現れないので)神秘性を持ち、人々が漠然とした恐怖と興味を持ち始めると、やがて吸血鬼についてあることないこと色々と噂されるようになった。その結果として生まれたのが伝説級
グリシーとしての吸血鬼であり、このうちさらに具現化したり半グリシー化したりしたものがこちらに当てはまる。
日光、銀細工、十字架、にんにくなどといった弱点、コウモリを使役したり棺桶で眠るなどといった特徴は、全て伝承に基づくものである。伝承の元となった吸血鬼がこれらの弱点のいずれかを持っていた可能性は高いが、全てが当てはまるのは伝承によって生まれた者に特有な性質である。
現存する吸血鬼の大半はこちらのタイプであり、年齢は生まれて数年から500年程度と幅広い。原生級の吸血鬼にとっては自分たちの領域を侵す邪魔者であり、人間にとっても脅威であるから、なかなか哀れな境遇にいる。
食事
人間に噛み付いて血液を吸い取るのが主な捕食方法だが、実際には血液を栄養としているのではなく血液に含まれる
霊力を吸収している。
魂を持つ生物は血液にも霊力が乗っており、
気功術においては全身を巡る闘気として特に意識されている。吸血鬼はこの血液から霊力を取り込む。
人間から直接血を吸うのは、血液に含まれる霊力が体外に出ると急速に失われるためである。ゆえに、例えば献血パックなどでは一時しのぎにもならない。対象の血液をいったん器に取りそこから飲む方法では、若干質は落ちるものの後述の副作用を防げるので、人間に対して友好的な吸血鬼がしばしば取る。
吸血鬼は長く生きるほど魂の"器"が大きくなり、次第に血液を摂らなくても生活できるようになる。古い吸血鬼が吸血するのは人が酒を飲む感覚に近い。生まれたての吸血鬼はよく霊力が枯渇するため頻繁に吸血が必要になる。しばしば見境なく人を襲うため、恐れられる原因となっている。
人間が食べるような"通常の食事"に関して、霊力の摂取はできないため吸血鬼としては弱っていくものの、肉体の維持には使える(消化機能は持っている)。吸血を一切せず通常の食事を続けると魂が弱っていき、最終的には普通の人間同様の霊力と寿命になると考えられる。
副作用
吸血鬼が吸血を行う際、捕食者と被食者との間で
霊力の接触が起こるため、特に被食者のほうに影響が起きる。吸血鬼が古来から恐れられている最大の原因はこの副作用にある。
吸血時、捕食者が被食者の霊力を吸収するのと同時に、わずかだが捕食者側から被食者にも霊力が"逆流"する。吸血鬼が持つ霊力はほとんどの場合人間にとっては猛毒であり、逆流した
霊子の量と被食者自身の霊力との関係によって4通りの結末がある。
生存
逆流量が少なく、被食者の霊力が強い場合
被食者にとって最良のパターン。流入した"毒"を自身の霊力で処理できるため、一時的な体調不良には陥るが、最終的には正常に戻る。吸血鬼の毒に耐えられる人間はそう多くないため、このパターンもなかなか見られない。
死亡
逆流量が少なく、被食者の霊力が弱い場合
吸血鬼といえばとまず連想されるのがこのパターン。被食者が持つ霊力では"毒"に対処しきれず、精神を蝕まれる。最終的には魂を完全に破壊されて、早ければ即死、遅くとも数日以内には死亡する。運良く即死しなかった場合は、「生存」できるレベルの霊力を持った者に頼んで"除霊"してもらうことで生き延びられる可能性がある。
物理的な死因としては心臓麻痺になる。吸血鬼の噛み跡以外に外傷を残さないため、古くから不気味がられて吸血鬼が恐れられる要因となった。
使徒化
逆流量が多く、被食者の霊力が弱い場合
霊力の逆流は捕食者にとっても好ましくないため、通常は逆流量を抑えるが、意図的に多めに逆流させることもある。その目的が被食者の使徒化である。「死亡」パターンと基本的には同じだが、被食者の魂が破壊されたあと、大量に余った"毒"が魂を再構成して、捕食者の意思で操れる傀儡と化す。これを
使徒という。
使徒は自分の意志では行動せず、吸血行為も行わない。基本的には
グリシーの使魔級
と同じように、捕食者(主人)から霊力を供給されて生き長らえる。使徒は自由に扱える駒であり、吸血鬼の行動範囲を補強できるが、当然ながらそのぶん消費される霊力も増えるため、霊力に余裕を持つある程度古い吸血鬼が少数使役するのが普通である。
吸血鬼化
逆流量が多く、被食者の霊力が強い場合
最も起こりづらいパターンだが、吸血鬼は通常の生殖を行わず、これによって増えるとされている。大量の"毒"が流れ込み、被食者のもともとの魂と食いあった結果、1つに混じって新たな魂が生まれる。毒を克服した結果、被食者自身も吸血鬼になるのである。
吸血鬼にとっては避けたいパターンである。寿命が非常に長い吸血鬼にとって、同族が増えると単純に食料(人間)の競争率が上がるほか、新たに生まれた吸血鬼が自分に牙を剥く可能性もあるためである。にも関わらず時折吸血鬼が増えるのは、相手を使徒化しようと思ったが予想以上に相手の霊力が強く耐えられてしまったものと考えられる。
吸血鬼が吸血鬼(あるいはその他の
半グリシー)から霊力を奪うこともできなくはないが、普通の人間から奪う場合と比べて大きな労力がかかる。霊力を温存したい吸血鬼にとっても人間からの吸血は最も効率的な手段であり、食料たる人間が減るのは好ましくない。しかしながら霊力の"逆流"は、意図的に増やすことはできても減らすことが難しく、逆流を完全に止めることは不可能に近い。吸血鬼にとっても「生存」できる人間は貴重であり、しばしば攫って"家畜化"するケースもあったらしい。
また、霊力の逆流は直接の吸血でしか起こらないため、被食者から採った血をいったん器に入れて、その霊力が散らないうちに飲む、といった方法もある。吸血鬼によれは"味"が落ちるらしいが、被食者への被害は極力抑えられるので人間をなるべく殺したくない者が取る方法である。
最終更新:2015年11月21日 21:37