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帰るべき場所 待ってくれている人

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「ただいま帰りました」
「お帰り~」

玄関の戸を開けると、中から母の元気な声がしました。
その後すぐに『あ、すみません……』という声が。
どうやら電話で話をしていたようです。
私は自分の部屋に戻った後、すぐに出掛ける準備をしました。
今日は泉さんたちが誕生日パーティーを開いて下さるそうで……何だかとても楽しみです。

「それじゃあお母さん、行ってきま――」
「ああ、ちょっと待って~」

靴を履こうとしたとき、受話器を置く音とともに母に呼び止められました。
一体何でしょうか?

「どうしました――」

リビングに足を踏み入れた瞬間、

「おめでとう~!」

パンッ!と母の手に握られていたクラッカーが弾けました。

「きゃっ!」

突然の出来事でしたので思わず悲鳴をあげてしまいます。

「あら、大丈夫?怪我しなかった?」
「は、はい。平気です」

瞑っていた目を開けました。
すると母は、今度は手にオレンジ色の手袋を持っていました。

「はい、これ」
「これは……?」
「みゆきへの誕生日プレゼント。お母さんの手作りよ」

母はそのまま言葉を続けます。


「みゆき、今から泉ちゃんのお宅で皆で誕生日パーティーやるでしょ?でも帰ってきてからじゃみゆきにも迷惑かかっちゃうから、今のうちにと思って」

そしてその手の上に置かれた手袋を差し出してきました。

「だから……はい。お誕生日おめでとうみゆき。これからもずっと、頼れる娘でいてね」
「お母さん……」

手袋を手に取ります。
と同時に、母の温かい言葉を思い出して急に涙がにじんできました。

「お母さん……私……ひっく」
「ほら、みゆき。泣いちゃ駄目よ~」

母は私の頭を撫でながらそっと呟きます。

「その涙は、泉ちゃんたち皆のお祝いにとって置かなちゃ……ね?」
「ぐすっ……はい、お母さん」

流しかけていた涙を堪えます。
と、そのときに外から秋の寒さを伝える少し強い風の音がしました。

「あの……」
「なあに、みゆき?」「この手袋、早速使わせてもらっていいでしょうか……?」
「もちろんよ~。むしろそのほうがお母さんが編んだ甲斐があるわ」
「それでは……」

母から受け取った手袋を手にはめました。
……何だか母のぬくもりが伝わってくるようで、とても温かい気がします。


「ほら。早くしないと泉ちゃんたち待ちくたびれちゃうわよ?」

ふと時計を見ると、約束の時間が迫ってきていました。

「あ。……は、はい」

急いで玄関に向かいます。

「すみません。帰りは遅くなりますので……」
「大丈夫よ~。ゆっくり、いっぱい楽しんできてね」

いつもとあまり変わらない言葉。
それすらも、今の私にはありがたく聞こえます。

「それでは、行ってきます」
「行ってらっしゃい~」

母の言葉を心に。
母の手袋を手に。
私は、玄関の扉を開きました。












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  • いいね -- 名無しさん (2009-11-07 00:40:28)

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