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星に願いを 第11話

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 11. (つかさ視点)


 こなちゃんが家に帰ってきた後、私は、しどろもどろになりながら
お昼休みにとってしまったひどい態度のことを謝った。
 でも、こなちゃんは笑顔で「気にしなくていいよ」と言ってくれた。
 どうして、こなちゃんはこんなに優しいんだろう。
 ますます好きになってしまう。

 その後、私とこなちゃんは、私のお父さん、お母さん、お姉ちゃん
たちと一緒に夕食をとって、クイズ番組を見た。
 いつもと変わらない賑やかなひと時を過ごした後、お風呂あがりの
こなちゃんが、私の部屋に入ってきた。
 私と『同じ色』をした長い髪を下ろしたまま、いちご牛乳を
ストローで吸いながらベッドに座っている。
「つかさの家っていいねえ」
「えっ」
 私は勉強机から振り向いて、ストローをくわえているこなちゃんを
見つめた。
「つかさのお姉さん達や、おじさん、おばさんもいて、凄くにぎやかだし、
楽しそうだし」

「こなちゃん…… 」
「あ、私の家が嫌ってことはないよ。お父さんも、ゆーちゃんも
大好きだから」
 こなちゃんは少し遠い目をして続けた。
「だけど、賑やかなのはいいね。お母さんもいるし」
「あっ」
 こなちゃんのお母さんは、とても小さい頃、亡くなられていて……
だから、母親と一緒にいるという記憶がこなちゃんにはないんだ。


「こなちゃん。あのね」
「なに? つかさ」
「元の姿に戻りたい? 」
「ん、どっかな」
「このままでもいいの? 」
「まあ、戻れるのだったら戻りたいけどね。でも、さっぱり方法が
分からないから」
 小さくため息をついて、こなちゃんはいちご牛乳を飲み干した。

「あのね。こなちゃん。私、思うんだけど」
「うん」
「遠からず、お姉ちゃんとこなちゃんの人格は元に戻ると思うの」

「どうしてそう思うの? 」
 足を伸ばしてくつろぎながら、言葉を返してくる。
「今の状態っていうのかな。人格が入れ替わるっていう事はとても
不自然な事なの」
「そ…… かな? 」
 今、私は不思議な感覚にとらわれている。何か未来の事が分かる予感。
 神託を受けた巫女になった感じといえば、分かりやすいかな。
 もっとも、本当は、三が日や特別の行事の時しか『巫女』の仕事は
しないんだけど。

「うん。根拠はないけど、遠からず、こなちゃんとお姉ちゃんは
元に戻ると思う」
「そうだといいけどねえ」
 こなちゃんはベットから伸ばした足を、何度もぶらぶらさせている。
「えっと、だからね 」
 私は、急にもじもじしながら、両手の人差し指を合わせて、
こなちゃんを上目遣いで見つめる。

「なに? 」
 こなちゃんが、私の熱っぽい視線に気がついた。
「あ、あのね、もし、もしよかったら、でも、だめかな」
「つかさ。何いっているのか分かんないよ」
「あうぅ、ごめんなさい」
 恥ずかしくて真っ赤になりながら、絞り出すような声を出した。
「き、昨日の続き、したいなっなんて。ダメ…… かな」
 心臓がどきどきする。マンホールでも何でもいいから穴に入りたい。
 私は、近くにあったクッションを掴んで胸のあたりに抱え込んだ。


「ふーん」
 こなちゃんが、少しだけ首を傾げて立ち上がった。
「つかさ。昨日、私が、かがみのこと好きだっていったよね」
「う、うん。そうだけど」
 なんて節操が無いんだろう。恥ずかしくて真っ赤になってしまう。
「私の本当の気持ちを知っていて、それでも、えっちがしたいの
カナ、カナ」
 最後の『カナ』をなんで2回繰り返すのか分からないけど、
私はとってもいけない子だと思う。
 そして、私の気持ちを知ってて、敢えて尋ねるこなちゃんは、
とってもいじわるだ。
「だって、仕方ないんだもん。やっぱり自分の気持ち、
抑えられないよ」

 『お姉ちゃん』の姿をしていても、中身はこなちゃんと分かって
いるから心臓がどきどきするんだよ。
 ゆきちゃんみたいに、向日葵のように微笑んで、こなちゃんと
お姉ちゃんを見守るなんてこと、やっぱりできない。
 私、とっても悪い子だから、我慢することなんてできないんだ。


「つかさ。後悔しない? 後で泣いたりしない? 」
 背中に手を回しながら、こなちゃんは、確かめるように
ある意味では、とても残酷な質問を投げかける。
「自分の事を悲劇のヒロイン、なんて思わない? 」
 こなちゃんは私に覚悟の程を聞いているんだ。こなちゃんが
おねえちゃんの事を好きだと知っていて、それでも抱いて
ほしいのかって。
「うん。後悔しない」
 私は、ありったけの勇気を振り絞って、こなちゃんに
お願いをする。
「こなちゃん。今日だけ恋人になって」
 しばらく、こなちゃんは瞼を瞑って真剣に考え込んだ。

 そして…… 苦笑未満の表情を浮かべて言った。

「つかさ。遠慮はしないからね 」
 『お姉ちゃん』の姿になっている、こなちゃんが立ち上がり、
お風呂上りのぬくもりを保ったまま、ぎゅっと抱きしめてくれる。
 私は、温かい体温と限りない幸せを感じることができた。


 こなちゃんの指先が、私のパジャマのボタンを外していく。
「つかさのブラ、今日は白なんだね」
「うん…… 色つきは透けることがあるから」
 恥ずかしさで、顔を少し火照らせながら答える。
 ついでとばかり、パジャマの下の方も、するりと脱がしてしまう。
 こなちゃんも、自分でさくさくとパジャマを脱いで、ふたりとも
ブラとパンツだけの姿になる。

 双子なんだけど『お姉ちゃん』の方が胸が大きいんだ……
なんてことを考えていると、こなちゃんがベッドに行くように
促した。
 もう冬場に近いから、暖房のスイッチが入っていて、エアコンの
音が低く唸っている。
「こなちゃんっ」
 私とこなちゃんは、もつれあうようにベッドに倒れ込む。
 身に付けているのは下着だけだから、こなちゃんの肌と
いたるところで触れ合い、体温がダイレクトに伝わる。

 私は、こなちゃんの口付けが欲しくて、意識的に唇を近づけると、
こなちゃんが「おあずけ」といって応じてくれない。
 ひどいよ。どうしてキスしたらダメなの?

「いつもキスからじゃあ、芸がないからね」
「こなちゃん、そんなことたくさんやってるの? 」
 どこか非難めいた口調になっていたかもしれない。
「ううん。陵辱もの以外のギャルゲのエッチシーンって、
キスから始まるんだよね。そこが納得いかないというか」
 こなちゃんは本当にマニアックだ。
「私は普通でいいんだけど…… 」
「今日はダメだよ。つかさ」
 こなちゃんはいじわるそうな表情を浮かべたまま、
私の太ももの間に足を絡めてきた。


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星に願いを 第12話へ続く













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